■5月 某日 あるゴールデンウィークの日記
朝8時起床。休日の起き時間としては奇蹟的に早い。
ちょっと損した気分なのは、寝坊チャンスを一回フイにしたから、とか考える私は、きっと死ぬまで出世に縁がない。
黄金の日々ということで、ちょっと贅沢に朝風呂。本当は銭湯に行きたいけど、混んでるだろうから家のせまいバスタブで我慢。
ゆっくり湯につかりながら鼻歌を歌う。曲は『ギャランドゥ』。
それもヒデキではなく、昔『ヤンタン』でダウンタウンの松っちゃんがやってた、へたくそなモノマネ版。われながら、どういうチョイスなのか。
風呂上がり、うちわであおぎながら濃いめのカルピス。極楽。起床後40分で、すでに仕上がっている模様。すばらしいスタートダッシュだ。
朝食は紅茶にチョコクロワッサン、はちみつ入りのヨーグルト、ネーブルオレンジ、豆乳。
BGMにGO!GO!7188『月と甲羅』。チャットモンチー『真夜中遊園地』。Peachy『スーパージェットシューズ』など。
わが家では昔うさぎを飼っていたので、「あたしはピンクロックなうさぎになる」という歌詞を聴くたび、ほえーっとなる。うさぎはかわいい。黒うさなら、なおのこと。
食べながらスマホをチェック。戦争のことは陰鬱になるので、スポーツを中心に。テニスのことなどあれこれ。
カルロス・アルカラスの大爆発について、地元の先輩ダビド・フェレールがほめまくり。
今期はリオに、マイアミとバルセロナのビッグタイトルも獲得して、世界ランキングは9位。すげえなー。プレーも見たけど、こりゃ本物だ。今後に、期待大。
現れるものがいれば、去る者もいるということで、35歳のケビン・アンダーソンが引退。
ビッグサーバーで、派手さはない選手だったけど、ウィンブルドンとUSオープンの準優勝はすばらしい戦績。こうしてまた、時代はめぐる。
午前中は映画を観る。今日はスタンリー・キューブリックの『バリー・リンドン』。3回目くらい。
スタンリーの中では比較的マイナーというか、長いこともあって賛否両論だけど、私は大好き。
歴史ものでは、『スパルタカス』がイマイチだったんで、期待してなかったけど、これは大当たり。『博士の』『2001』『時計じかけ』あたりにも負けていない。
絵がすばらしいし、世界史好きなので退屈と言われがちなストーリーも楽しめた。ダスティン・ホフマンの『小さな巨人』といい、うさんくさい人物の評伝が好きなのかも。
なんとなく網戸をそうじして、昼食。
オリーブオイルを熱して、ナス、唐辛子、アスパラガス、その他冷蔵庫のものをテキトーに放りこんで、トウバンジャンと炒める。
そこに、ゆでたスパゲッティをイン。SF作家の田中啓文さんオススメの簡単スパ。
食事のBGM代わりに、YouTubeで満州帝国を紹介する動画を見る。
昭和レトロは楽しい。いーなー、満州帝国を観光したいなー、あじあ号乗りたいぞ。
そこで殺人事件が起こって、名探偵である私が美人助手と、その謎を解決するのだとか妄想してしまうのが、ミスヲタのサガ。
助手にはぜひ、長濱ねるさんでお願いします。たまたま見たNHKの「SDGs日記」って番組で、ポーっとなっちゃったよ。メチャクチャかわいかったなあ。
午後からはコーヒーを飲みながら、ひたすら読書。
私は本さえあれば無限に時間をつぶせる人間なので、人生で退屈というのを味わったことがない。
ルートヴィッヒ・リース『ドイツ歴史学者の天皇国家観』。
明治時代、東京帝国大学で教鞭をとった、いわゆる「お雇い外国人」の著者が、当時の日本を政治的視点や、人物の評伝、庶民の風俗など様々な角度から描いたもの。
一時期、われらがバックパッカーの大先輩、イザベラ・バード姐さんの影響で、明治大正の日本を「外国人視点」で書いた本をあれこれ読んだけど、これもその一冊。
偏見などを極力抑えた、非常にクレバーな文章が並び、それだけでも読んでいて心地よいし、勉強になる。
夕方は買い物がてら、少し散歩。近所の商店街でお祭りをやっていたので、少し冷やかす。
子供のころ、祭というのは不思議な魅力があり、友達とたいして美味くもない焼きそばや、りんご飴を食べながらそぞろ歩いたものだが、そんな姿が妙にキラキラと、美化されて思い浮かぶ。イメージはレイ・ブラッドベリ。
子供のころに嫌な思い出とか、そんなにない割には「昔に戻りたい」とかあまり思わないタイプだけど、こういうとき少しだけ、気持ちがわからなくもない。
もっとも、これは本当の昔ではなく、「今のこの気持ち」で彩られたテーマパークのようなものに、戻りたいと錯覚してるだけなんだろうけど。
きっと、映画とか撮る人って、こういうのがモチベーションになるんだろう。「幻想」に彩られた、本当には存在しない「現実」を再現する。
存在しない「恋」、存在しない「家族」、存在しない「愛」、存在しない「正義」、存在しない「古き良き時代」……etc.
夕食は海鮮丼。
スーパーで半額になった刺し身を買って、ご飯を炊いて、そこにわさびと、冷たいだし汁をたっぷり注いで、ノリふって、あとはぶわっさぶわっさとかきこむ。豪華なんだか、貧乏くさいんだか、よくわかんないや。
食後はパソコンを開く。お茶しながら、YouTubeやラジオなど。
山田五郎さんの美術講義。もともと美術音痴だったのが、「へー、絵っておもしろいんだなあ」と思わせてくれたのが、山田さんの『知識ゼロからの西洋絵画入門』。
西洋の美術を、ロジックとゴシップで読み解いていく山田さんの手法は興味深くも、実はそれが「正統派」な王道鑑賞法。マジで美術館に行きたくなる。
寝る前に少し読書。ディック・フランシス『興奮』。
夜寝る前に、オモシロ本を手に取ってしまうのは悪手なんだけど、ここでもやらかしてしまった。
ミスヲタのくせに、「競馬シリーズ」は恥ずかしながら初めてなんだけど、いやもう、ストーリーはいいしキャラもシブいし、訳も読みやすいわで、文字通りの「興奮」でやめられない止まらない。
やっちまったよと夜も更けるが、明日も休みなので問題なし。
徹夜本に、なにはばかることなく、どっぷり浸れる幸せ。嗚呼、ゴールデンウィーク万歳! 終わらないでほしかったよ。