なんてステキな「日本イジリ」の北朝鮮お笑い事情 雨宮処凛『悪の枢軸を訪ねて』 その2

2017年11月26日 | 

 雨宮処凛悪の枢軸を訪ねて』がおもしろく、前回(→こちら)は北朝鮮プロパガンダ標語のセンスがなかなかという話をしたが、今回はお笑いの世界について。

 彼の国ではサーカスなどエンターテイメントに力を入れており、命綱なしで危険なアクロバットに挑戦したり、レスリングがあったり、お手玉の代わりにハンマースパナを使ったジャグリングなど(共産国ですから)、なかなかの充実っぷり。

 そこでは、芸人によるコントも披露される。

 そのコントはやや辛口で、そういうテイストであるなら、もちろんこと「エスニックジョーク」も満載である。


 「ポーランド人が電球を代えるには何人が必要か」

 「ヒトラーとゲッベルスとゲーリングが乗っていた飛行機が墜落した。
  助かったのは誰か?」


 といった定番のネタは各国にあるものだが、彼の国がやっつける民族といえば、もちろん我々大日本帝国臣民である。

 まず日本人役で出てくる役者の衣装というのが、

 

 「着物」

 「七三の髪形」

 「千鳥足のだらしない酔っぱらい」

 

 この三点セットであるという。

 「酔っぱらい」以外はハリウッド映画などに見られる日本人の典型であり、



 「うむ、やはり『外国人が見た間違った日本人』はこうでなくてはな」



 納得させられるものであったが、そこからの展開がなんともイカす。


 「韓国を搾取する欲深日本人を、北朝鮮の実直な若者がギャフンと言わせる」

 
 みたいな、一昔前の日本で言えばアメリカ人をやっつける

 

 「力道山、怒りの空手チョップ」

 

 みたいなわかりやすいものもあれば、ショーのクライマックスではドラムロールとともに軍服姿の男が落ちてきて、着地と同時にバックスクリーンにデカデカと、

 

 「自爆精神」



 おまけに、もうひとり落下してきて今度は、

 

 「肉弾精神」



 とどめに金正日総書記ドアップがドドドーンと映し出されて会場大拍手で終了というものも。

 なんだか笑ってほしいのか、どうしてほしいのか、これ以上反応に困るお笑いライブというのもあるまい。

 の日本なら三四郎小宮君

 

 「絶望的な活舌だから察してくれよ!」

 

 と声を荒げたとたんに、「人間魚雷」の文字がスクリーンに映り、

 

 「ボケだから異常であれ!」

 

 と諭すと「爆弾三勇士」の文字。



 「終わりでーす」

 

 と漫才が終了すると、そこに大音量君が代が流れ、浩宮様の特大写真がアップになるようなものか。

 リアクションが難しすぎるネタだが、なんたって独裁国。それでも拍手せなしゃあない

 どんなエンターテイメントなのか。おもしろすぎるではないか。

 かくのごとく、日本ではなかなか知ることのできない北朝鮮の、中でもお笑い文化を知ることができるのは、おもしろいところ。

 昨今、日本のお笑い芸人も、ヨーロッパでライブをやったり、「アメリカでデビューしたい」なんて人もいるが、やはりここはひとつ、



 「北朝鮮で政治ネタに挑戦」



 という選択肢も、あっていいのではないか。

 昨今ネットで叩かれがちな「日本ディス」なネタも、ここなら堂々とできるというか、それしかできないのも困りものだけど。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする