「ドナルド・トランプ初号機、リフトオフ!」。
と思わず号令しそうになったのは、あるナイスな映像を見たからであった。
すでに伝えられた通り、注目のアメリカ大統領選は、当初の予想を大きく裏切って、ドナルド・トランプ氏が当選を果たした。
政治経済にうとい私であるので、この結末には株価とか日米同盟がとか以前に、
「きっと、だれかが恐竜狩りツアーで、うっかり蝶を踏みはったんやな」
なんて思ってしまったわけだが(意味がわからない人はレイ・ブラッドベリの『サウンド・オブ・サンダー』という短編を読みましょう)、世界はまさかの逆転に大混乱らしい。
たしかになあ。イデオロギーうんぬんは別にしても、インパクトだけなら
「日本で奥崎健三が総理大臣に」
くらいのものであろうか。もしくは羽柴誠三秀吉。でも、日本も石原都知事とかいたし、あまり人のこと言えないかも。
まあ、結果はともかく、こういう世界的イベントというのは、その国の歴史や文化を学ぶ良いチャンスで、私もこれを機にデイビッド・ハルバースタムの『ザ・フィフティーズ―1950年代アメリカの光と影』を読んだり、映画『リンカーン』を鑑賞したりした。
それら付焼刃的学習の中で、いくつかおもしろかったものを今回は紹介してみたい。
まず、映画『ウォルマート~世界最大のスーパー、その闇~』。
何年か前、「松嶋×町山 未公開映画を観るTV」で見たのを再見。
アメリカの大手スーパー「ウォルマート」が、いかにえげつない手口で勢力を拡大し、アメリカの格差を肥大化させたかを暴くドキュメンタリー。
最初見たときも、経営側のあまりの非人道的、かつ巧みなやり方にゾッとしたが、あらためて見直してもヒドイ話。
私の世代だと、『包丁人味平』に出てきた「マイク赤木商法」といったらわかりやすいと思うけど、
「こういうアメリカを作ったのが、ヒラリー側の人間」
と言われたら、そらいくらトランプがアレでも、票を集めるのもわからなくもない。それくらいに、「資本家の横暴」が凄惨。
世が世なら、革命起こってまっせ! って、あそうか、トランプ当選ってのは、その意味では「暴動」「打ちこわし」「米騒動」みたいなものなのか。
「未公開映画」シリーズは、どの映画も良作ぞろいで、
「キリスト教原理主義」
「イラク戦争をあおったFOXテレビ」
「ヒーロー幻想によるステロイドの過剰使用」
「神父による子供の性的虐待」
などなど、日本ではなかなか知ることのない「アメリカの暗部」にふれることができる。とても興味深いモノばかり(映画の予告編は→こちら)。
次は識者の論文。
トランプ当選に関しては、某コメンテーターが「オレの言ったとおりだろ」と自慢して醜態をさらしていたが、そんなオレ様アピールよりも、実際のところなぜにてドナルドが勝てたのか、ちゃんとした分析がなされているなら聞きたいところだ。
そのひとつが、マイケル・ムーア監督の「ドナルド・トランプが大統領になる5つの理由を教えよう」という記事。
まだ大統領選前に発表されたものだが、もちろんのこと思想的にマイケルは反トランプ。
だから、きっと「自分の予言が当たらないでくれ!」と祈りながら書いたことだろうが、結果はむなしかった。
ただ、分析の内容自体は、なるほどと感じさせてくれ、読みごたえはある(「5つの理由」全文は→こちら)。
笑えるものもひとつ。
ここまでは、わりとまじめな話ばかりだったので、最後はスカッとバカなもの。
いろんな所で紹介されているみたいだけど、エール・ダミアーニさんという人が監督したショートフィルム。
トランプ大統領といえば、
「メキシコとの国境に壁を作って、不法移民を皆追い出す!」
この発言が有名だが、まさにこれは強大な壁が国境に建てられているという設定。
しかも、その向こうからバンバン人が飛んでくる。なんと、大統領自らが操縦する「巨大トランプ・ロボ」が、不法移民をつかまえて、次々と壁の外側にロングスローで放り投げているのだ!
ダッハッハ! なんちゅうもん作るのか。しかも、こんなおふざけなネタなのに、映像のクオリティーがめちゃくちゃに高い! トランプ・ロボ、カッケー!
しかも、それに対抗するのがメキシコ名物のアレとかコレとか、最終兵器があんなとか、もう爆笑! アステカの偉大なアレがアイツかよ! フンしてるし!
ベタななんだけど、作り手のセンスがいいからか、えらいことおもしろいの。だれか、日本とか世界各国版も作って!(トランプ・ロボの活躍は→こちら)