「ダビド・フェレールこそが男である!」と独眼鉄先輩は言った その3

2015年01月10日 | テニス
 前回【→こちら】に続いて「男」ダビド・フェレール戦記の第3弾。

 実力は充分だが、ナダルやフェデラーなど「4強」という厚い壁にはばまれ、なかなか2番手グループから抜け出せないフェレール。

 だが、そこで腐らないのが彼の立派なところだ。

 ライバルが強力だろうが、ビッグタイトルになかなか手が届かなかろうが、常に気持ちを萎えさせることなく全力で戦うのが彼のスタイル。

 グランドスラムやジャパンオープンだけでなく、ファイトあふれるフェレールの本領をもっと学びたければ、団体戦を見るのがいいかもしれない。

 基本的に個人戦であり、歴史的にオリンピックとも縁が薄かったせいか、なかなか「国を背負って戦う」という熱さと結びつかないテニスであるが、デビスカップは別である。

 国別対抗で行われるこの団体戦は、ウィンブルドンなどとはまたちがった熱気がある。

 一度見ていただければわかるが、その会場は、普段はクールなテニスの会場とは思えない、サッカーのワールドカップのような歓声と怒号に包まれる。

 ダビド・フェレールはそこで無類の力を発揮する。他の国とくらべて仲間意識の強いスペインの選手は、必然団体戦には大きな力を見せることとなるのだ。

 デ杯といえば、一昔前はトップ選手は出たがらない大会だったが、スペインに関してはナダルが積極的にエントリーしたことから、「無敵艦隊」が実現。ここ10年で4回の優勝を誇る常勝チームとなった。

 このデ杯での栄冠を支えてきたのが、なにをかくそうダビド・フェレールなのだ。

 デ杯は初日シングルス2本、2日目ダブルス、最終日シングルス2本の、3日で計5本勝負というシステムになっている。

 これだと一人のエースが単複フル回転すれば勝てるケースもあるが、そういったエース依存のやり方はリスキーでもある。

 その選手が調子を落としたり、果ては欠場したりすると、どうしても戦力が大幅にけずられてしまう。

 その点、スペインはナダルにフェレールという、シングルスに「ダブルエース」をそろえていたのだから、強くないわけがない。

 ましてやそれがスペインのホームで、真っ赤なクレーコートを敷かれて待たれていた日には、勝てる気がしないというもの。

 ダブルスを死ぬ気で取ったとして、土のコートでナダルとフェレールから4戦して2勝以上する。

 気の遠くなるような夢である。相手からすればいっそ家で寝ていた方がマシなくらいであろう。それくらい、絶望的なスペインのオーダーなのだ。

 そんな「ミスター・デ杯」であるダビド・フェレールのすごさは、優勝を逃した2012年度の戦いからもかいま見える。

 ナダルの欠場で大きな穴があいてしまったスペインチームだが、燃える男フェレールの大車輪の活躍で2年連続の決勝に。

 そこではイワン・レンドルの時代以来、30年ぶりの悲願を成し遂げるべく勝ち上がってきたチェコ相手に、フルセットの末に屈しはしたが、フェレールはシングルスで2勝をあげ気を吐いた。

 それどころか、フェレールは大会を通じても、シングルスで一度も負けていなかったのだ。

 スペインチームはデ杯を取れなかったが、ダビド・フェレールはその誇りにかけて、一度もコート上では膝を屈しなかった。

 まさに試合に勝って勝負に負けた。

 嗚呼、なんてカッコええんや……。

 スペインは、ナダルの穴を見事にフェレールが埋めて戦ったのだが、おしむらくは専門誌も指摘するように2番手の「フェレールの穴」が埋められなかった。

 それほどに、この「絶対的なナンバー2」が、スペイン勝利のキーポイントだったのだ。

 判官びいきとともに、

 「仲間のために熱い男」
 「チームのために日陰に徹する男」

 というのも、日本人のハートにはドスンとくる。

 独眼鉄先輩の問いに、私は自信を持って「それは、ダビド・フェレールのことである」と答えたい。

 人気、実力ともに、フェレールは世界でももっと評価されていい男だ。それには、とにもかくにもグランドスラム優勝が必要だろう。

 一番期待が大きいのがフレンチ・オープンであろうが、もうすぐ開幕のオーストラリアン・オープンでのテニスも悪くはない。

 好漢の、メルボルンでの大暴れに期待だ。


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