「ダビド・フェレールこそが男である!」と独眼鉄先輩は言った その2

2015年01月08日 | テニス
 前回(→こちら)の続き。

 クレーのみならず、芝やハードコートでもその実力を発揮し、トップ10を常にキープし続けるスペインの実力者ダビド・フェレール。

 2013年はフレンチ・オープンで悲願のグランドスラム決勝進出を果たすなど充実いちじるしかったし、2014年もややランキングは落としたが、それでも世界10指の実力者であることに変わりはなかった。

 にもかかわらず、彼はいまだテニス界に君臨するほどの実績を上げることができていない。

 フレンチ・オープンをはじめビッグタイトルはまだなく、世界ランキングも最高4位どまり。

 彼の力なら、もうワンステージ上にいてもおかしくないと誰もが認めるというのに、なぜなのか。その理由はといえば、これが実にはっきりしていた。

 そう、「ビッグ4」と呼ばれる存在。

 昨年、テニス界ではスタン・バブリンカ、錦織圭、マリン・チリッチといった選手が大ブレイクを果たしたわけだが、その少し前まではテニス界で頂点を極めようと思ったら、この4人の男を倒さなければならなかった。

 ノバク・ジョコビッチ、アンディー・マレー、ロジャー・フェデラー、ラフェエル・ナダル。

 この鉄壁の4人が、フェレールその他、上位に食い込もうとする選手に冷徹に立ちはだかるのだ。

 ダビドはこの4人に、いかに痛い目にあわされてきたか。

 たとえば、2012年のグランドスラム大会では、まずオーストラリアン・オープンはジョコビッチに。

 フレンチ・オープンはナダルに、ウィンブルドンはマレー、USオープンでは再びジョコビッチと、すべて4強の壁にはばまれている。

 また、優勝した7つの大会も、決勝の相手はすべて4強以外の選手に勝ったもの。逆にジョコビッチやナダルと当たった大会ではことごとく一敗地にまみれているのだ。

 つまりは、フェレールというのはナンバー2の選手によくあるような、トップとの戦いには勝てないが、その他の選手には無敵状態であったといえるわけだ。

 4強がいない、もしくは番狂わせで消えた大会なら優勝、そうでないなら準優勝かベスト4くらい。

 なんてわかりやすい。

 かつて将棋の世界では、谷川浩司九段が羽生善治名人にどうしても勝てない時期があった。

 竜王戦や棋聖戦などタイトル戦で7連敗を喫し、ついにはすべてのタイトルを奪われ「七冠制覇」を許してしまうという屈辱を味わった。

 この結果だけ見ると、「谷川、どうした」と言いたくなるが、逆に考えれば、タイトル戦で7連敗したということは、

 「7回もタイトル戦に出ずっぱりだった」
 
 ということでもある。

 その間、谷川は森内俊之や佐藤康光、郷田真隆、森下卓といった若手精鋭たちを押さえて、ずーっとタイトル戦の舞台に立ち続けたわけだ。

 つまりは、羽生善治相手以外にはほとんど負けていない、無敵モードだったわけ。この時期の谷川は、とにかく他の追随を許さない、ものすごい強さだったのだ。

 ただ、最後の一人にどうしても勝てない。

 その一点だけで、それまで積み上げてきたものが、すべてがご破算になってしまう。それが勝負の世界のきびしいところであり、ナンバー2選手の苦しいところだ。

 谷川はあの時期超人的に強かった。だが羽生がそれ以上に神がかっていただけだ。

 ただ、他で勝ちまくっても、決勝戦で負けてはなんにもならない。それだったら、いっそ山の途中で負けてしまう方が、どれだけ気が楽だろう。

 2012年のフェレールもまた、谷川浩司に似たところがあった。

 身長175センチ、体格差をスピードと強靱な精神力でおぎなって戦う姿は見ている者の心を高ぶらせずにはおれないが、結果がなかなかともなってくれない。

 だがそんな、なかなか報われない道を歩きながらも、その闘志がいっかなおとろえる気配がない。その精神力の強さこそが、「男」フェレールの持ち味でもあるのだ。


 (続く【→こちら】)



コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「ダビド・フェレールこそが... | トップ | 「ダビド・フェレールこそが... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。