社会空間研究所 建築・まちづくり通信

社会空間研究所の所員が建築・まちづくりに関する情報等を気ままに綴ったブログです。
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特許事業による公園整備と公園まちづくり制度について

2021-12-13 17:46:07 | 公園

最近、「①特許事業による公園整備」と「②公園まちづくり制度」なるものを知りました。今回は、そのうち「①特許事業による公園整備」について整理しました。

正直、資料が少ないためまだよく理解できていません。どなたか詳しい方ご教示いただけないでしょうか。

とりあえず、こういう事業があるんだというレベルで、その概要を整理しました。

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(1)根拠法

・都市計画法

都市計画公園特許事業は、都市計画法第59条第4項に基づき民間が認可を受けて都市計画公園事業を実施するものとなる。

【都市計画法第59条第4項】

第一節 都市計画事業の認可等

(施行者)

第五十九条 

4 国の機関、都道府県及び市町村以外の者は、事業の施行に関して行政機関の免許、許可、認可等の処分を必要とする場合においてこれらの処分を受けているとき、その他特別な事情がある場合においては、都道府県知事の認可を受けて、都市計画事業を施行することができる。

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(2)都市計画運用指針(平成12年12月28日/建設省都市局長通知)における公園の特許事業に関する記載

4.民間事業者に係る公園等の整備の方針

(1)特許事業の一般事項

 法第59条第4項の規定により、国の機関、都道府県及び市町村以外の者は、都道府県知事の認可を受けて都市計画事業を施行することができることとされているが、都道府県知事は、認可に際しては事業の公益性、申請者の資力信用等について慎重かつ公正に審査し、必要に応じ法第79条の規定により都市計画上必要な条件を附することにより、当該事業の円滑かつ適正な執行を確保することが望ましい。

 なお、条件として附する事項としては、例えば次に掲げるものが考えられる。

① 詳細設計の認可

② 事業執行に対する指導監督

③ 竣工認可

④ 事業完了後の施設の管理に関する指導監督

(2)公園等に係る都市計画事業の認可にあたっての基本事項

① 公園等の整備については、地方公共団体が第一義的な責任を有するものであることに鑑み、認可は当該都市計画区域マスタープラン等を勘案して、民間事業者において整備することが適当なもののみを対象とし、地方公共団体の整備すべき公園等との適正な役割分担を図ることが望ましい。

② 公園等は、都市環境の整備改善に資するとともに、都市住民のレクリエーション活動の場、災害時における避難地等として有効に機能させる必要があることに鑑み、民間事業者により設置される施設の種類、規模、配置等が当該公園等の全区域に係る計画に照らして適正に計画されたものであることが望ましい。

③ 土地等の取得状況等からみて、事業の円滑かつ適正な実施が確実であることが望ましい。

(3)公園等の設置

民間事業者に係る公園等の設置については次によることが望ましい。

① 事業区域内において、公園等の種類及び種別に応じ、必要な緑化面積を確保する。緑化面積を定めるにあたっては、公園等の種類及び種別に応じ、緑の政策大綱(平成6年7月28日建設省決定)Ⅲ2(1)①に定める都市公園の種別に応じた緑化面積を参考にする。

② 事業区域内に設置する施設は、当該公園等の機能、位置、規模、環境等を総合的に勘案して、当該公園等の機能を全うする上で必要な範囲内のものとする。

③ 公園等のうち避難地としての機能が必要とされるものについては、非常時における避難、応急、復旧等の活動に資するよう有効な空地を確保する等の措置を講じる。

④ 公園等に設置する建築物等の面積、位置は、当該公園等が公共空地としての諸機能を発揮するために支障を及ぼさないものとする。

(4)公園等の管理及び運営

 民間事業者の設置する公園等の管理及び運営については、次の点に留意することが望ましい。

① 公園等は不特定多数の者の利用に供されるものとする。

② 公園等の利用について料金を徴収する場合においては、その料金は一般の利用に供する観点から適正なものとする。

③ 事業終了後における施設計画の変更、管理及び運営について適正を期するため、必要に応じて条件を附する。

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(3)都市公園における民間事業者導入制度の展開経緯とその構造に関する研究」(舟引敏明氏/環境情報科学学術研究論文集30(2016))における特許事業に関する記載

昭和43年の新都市計画法*で、公共以外の者による都市計画事業制度(いわゆる都市計画特許事業制度)が創設され、民間事業者が都道府県知事の認可を受けて、都市計画公園の整備を行うことが可能になった。

*都市計画法第59条第4項

昭和61年民活法、昭和62年リゾート法が成立する流れの中、昭和62年に都市計画特許事業の積極的な活用を図るため「民間事業者による都市計画公園等の整備方針について」が発出された。通知には都市計画公園決定区域の中であっても20%の建築が許容されることが明示されたこともあり、多くの民間事業者がこの制度を活用した。

【適用事例(東京都以外)】

・神奈川県湘南海岸公園:マリンランド(小田急電鉄)

・川崎市生田緑地:川崎国際CC(ゴルフ場)

・高崎市観音山公園:高崎フェアリーランド

・大阪府みさき公園:ゴルフ場、動物園等(南海電鉄)

・伊東市小室山公園:サザンクロスCC(ゴルフ場)

・水戸市千波湖公園:偕楽園レジャーセンター

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(4)東京都における都市計画公園等の特許事業

東京都HPにおける特許事業に関する記載は次のとおりであり、事業例として「お台場の十三号地公園」、「後楽園公園」、「芝公園」等があげられている。

東京都HP ↓

https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/kiban/jigyou/index.html

「特許事業」とは、都市計画法第59条第4項の規定により、民間事業者が都道府県知事の認可を受けて都市計画施設の整備に関する事業を施行するものです。

これからは、特許事業の一層の活用方策を検討するなど、民間の活力を活かして都市計画公園等の整備を推進していきます。

【特許事業の例】

東京都市計画公園8・6・15号 十三号地公園          

東京都市計画公園5・5・1号 後楽園公園    

東京都市計画公園5・6・15号 芝公園

※しかし、これらの都市計画公園のうち特許事業区域がどこか明確にはわからない。十三号地公園では船の科学館・プール等、後楽園公園では東京ドーム・後楽園遊園地・ドームホテル等、芝公園では東京プリンスホテルパークタワー・芝生広場等が特許事業により整備されたようだ。

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大都市部市街化調整区域の農地保全について

2021-12-08 11:17:46 | 農業

今後、大都市部において農地の保全が危ぶまれるのは、市街化区域内の農地ではなく、市街化調整区域の農地だと思う。

市街化区域の農地は、基本、生産緑地によって保全される。大都市部の生産緑地所有者の多くは農業収入がなくても不動産収入があることから、農業を楽しみながら続けられる環境にある。したがって、今後10年間を生産緑地とする「特定生産緑地」を指定する農家が多い(約7割が特定生産緑地になると推計されている)。

生産緑地の場合、生産緑地法の改正、都市農地の貸借円滑化法の創設等により、仮に農業の担い手がいなくなっても、市民農園・シェア畑等として活用されたり、若手の新規就農者等に賃貸される等により農地が保全される仕組みができた。

しかし、一方の市街化調整区域の農地は、それが農振農用地であっても農業の担い手がいなくなれば、耕作放棄地や違反転用により資材置き場や重機置場になる可能性の方が高い。

今、大都市部の市街化調整区域の農業を支えているのは、後継者のいない80歳を超える農業生産者であり(統計データではない。自分がかかわってきたところの実態)、5年以内に何らかの策を講じないと、農地の保全は非常に難しくなる。

後継者が全くいないわけではない。せめて、田んぼだけは守ろうとする次の世代はいる。この人たちは50歳前後で親戚や友人等を含めた自給自足用の米作りはなんとかやっていきたいと思っている。しかし、稲作に必要な農業用機械が古くなり、使えなくなったら、もうお手上げのようだ。

何百万円もする農業機械を購入する余裕はないし(共同購入も難しい金額である)、近くに農業機械をレンタルできるところもない。したがって、この部分については行政やJAがなんらか支援すべきかと思う。

基本、大都市部の市街化調整区域の農地については、そんなに稼げるものではないのだから、農業振興(農業所得をあげる)を考えるのではなく、農地のもつ多面的機能(都市住民の農に触れ合いたいというニーズ、福祉農業、生物多様性など)の充実にシフトした方がいい。

そうなると、週末農業や農的暮らしを実践したいと思っている都市住民を積極的に取り込む仕掛けを考える必要がある。

市街化調整区域の農地の魅力は、近くに里山が広がっていることにある。週末の一日、半日をこの自然を享受しながら、農業、土いじりを楽しめる環境づくりをすれば農園のニーズは十分見込める。したがって、農地の中にきれいなトイレ、キッチン、ガレージ、休憩スペース等の施設は不可欠だ。そこに、オーガニックカフェやレストランがあったりするといい。

農業振興地域でも、農業(農地)と一体的な施設として設けられるカフェやレストランであれば、立地が可能になるよう早く法律を見直した方がいい。

とりあえずは、仮設的な施設で、社会実験としてやってみるのがいいのでは。タクティカルアーバニズムである。

 

 

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