社会空間研究所 建築・まちづくり通信

社会空間研究所の所員が建築・まちづくりに関する情報等を気ままに綴ったブログです。
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第34回適塾路地奥サロン(web)を拝聴

2021-05-17 14:36:32 | 講演

2021年5月14日(金)、第34回適塾路地奥サロン(web)を拝聴しました。

■講師  龍谷大学研究フェロー、博士(社会環境科学) 矢作 弘氏  
■テーマ『コロナ禍で都市は変わるか ~欧米都市からの報告~』

いろいろおもしろいお話が聞けました。

以下の内容は、当日画面に表示された資料とわたしの講義メモを基に作成したものです。

したがって、聞き違い、理解不足もあるかもしれません。

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①コロナ禍をめぐる密度論争について

○ニューヨーク市、カリフォルニア州、全米(州)の人口密度と感染率を見る限り、人口密度と感染率の相関はない。日本の第一波の都道府県の人口密度と感染率を見ても人口密度と感染率の相関はなかった。

○密度で考えるならば都市規模の密度ではなく、㎡単位の密度が問題。つまり狭い家に何人住んでいるか、接触の仕方の問題。

○ニューヨークの地区別感染率を見ると、マイノリティ、低所得者の多いところが感染率が高い。対面での仕事をしている人が多いため、人と接触率が高いのでやむを得ない。

○「「高密度年が感染症の潜在的リスクが高い」というのは理論的に正しい。しかし、実際はいろいろな条件が重なり、その間は等式で結ばれることはない。私たちはこれからもサステナブルな都市の「かたち」=コンパクトな都市の「かたち」を希求しなければならない」(OECDなどの研究報告)

ポストコロナの時代に、スプロール開発推奨の反動的都市計画思想に戻ることはできない!

 

②地下鉄叩きはやめよう - 公共交通主犯説批判

○公衆衛生経済学者のMR.ハリス(ハーバード大学)が地下鉄が感染を広げているという説を展開したが、いろいろなデータの分析を基にそれは間違っているという批判が相次いだ。

○しかし、NYの地下鉄の乗車率は戻らず、累積赤字が増えている状況にある。一方で車利用者が増加し、渋滞が復活してきている。これにより、日本のトヨタ等自動車販売は絶好調だ。

○こういう状況の中、排ガス、健康、交通事故、モビリティの平等主義等の観点から公共交通の便益を再評価する動きがある。

ポストコロナの時代に、「公共交通叩き」の反動的都市思想にしっかり対峙しなければならない!

 

③コロナ禍はリモートワーキングの追い風になるが突風にはならない

【在宅勤務の割合】

○シカゴ大学+アトランタ連銀調べ(2018,2019年調査/コロナ前)によると、少なくとも週1回の在宅勤務の割合は1割前後。

○ライフスタイル別に見た今後の住まい方は3つに分けられるのでは(ホワイトカラーの就業者)。
 ・「猛烈出世志向タイプ」:オフィスに通勤する
 ・「家庭と仕事のバランス再考タイプ」:郊外暮らし&都心回帰
 ・「プライベートライフ重視タイプ」:サンベルト&山岳中小都市に移住

【誰がNYを脱出したか?】

○住民の25%以上が脱出した地区の特徴を見ると、白人が68%、中間世帯所得が11万9000ドル、家賃(中間値)2223ドル、大卒以上の比率76%、通勤手段:自転車39%、徒歩23%。

※講義では、地区というのがどういう単位かわからなかった。

○マンハッタンの大企業は「社員にオフィスに戻れ!」と言っている。

○リモートワークのご本家、最先端を行くGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)は意外にもリモートワークをやっていない。

ということで、リモートワークはそんなに進まないのでは。

 

④ポストコロナのスーパー都市の「かたち」

○NYは小売り、レストラン・カフェ、ホテル等は大打撃を受けた。ブランド店、星付レストラン、有名ホテルの閉店、ブロードウェイの閉鎖等。

【都市は危機から甦る!】

○疫病史(ペスト、コレラ、・・・・・・・、スペイン風邪等)、9.11のテロ、1970年代の都市危機・破綻寸前からも甦った。都市の新陳代謝は不可避。都市は甦る。

【GAFAの動向】

○家賃が下がったので将来を見越して不動産を借り上げ(買い上げ?)、リノベーションしている。郵便局、ハドソンヤード、5番街の旧百貨店等。

【スーパースター都市、復活の理論】

・消費者選考説:素敵なレストラン、美術館等の文化施設、SHOP等魅力的な消費の場があるところに人々は集まる。
・差額家賃論:家賃が下がればそこに人は戻る。

【短期的にオフィスの供給過剰が続く】

○テレワーク、地方移住が進んだ中でオフィスが余る。しかし、質の高いA級オフィスには空きは生まれないだろう。家賃が下がったことでB級オフィスの企業がA級に移ってくる。同様にC級オフィスの企業がB級に移ってくる。この結果、C級オフィス(ランクの低いオフィス)に空きが出る。

○そして、ランクの低いオフィスはかつてビレッジやソーホー地区がそうだったように、住宅、ブティックホテル、工房等にコンバージョンされ、スタートアップ企業やアーチスト等が移り住んでくるのでは。

 

⑤パンデミック・災害は忘れられる?!

○リチャード・フロリダは「人は時間が経てばパンデミック・災害を忘れてしまうだろう」と言っている。

 

⑥都市のハードの「かたち」で記憶を残した事例(NY)

○19世紀前半の大火 → 木造建築から石造り中高層へ、高規格道路=アベニューの整備

○19世紀後半の豪雪 → 地下鉄建設

○9.11 → ワールドトレードセンター記念公園+周囲の超高層ビル群

 

⑦新型コロナ感染パンデミックで何が残されるか?

○NY:パークアベニューの完全プロムナード化(46-58丁目)!?

○パリ:中心部に居住者以外のマイカー乗り入れ禁止!?

コメント
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