思い出の釣り・これからの釣り

欧州の釣り、竹竿、その他、その時々の徒然の思いを綴るつもりです

Hardy 150th Anniversary Saint George

2022-11-12 20:12:48 | Hardy Reel

1872年にWilliam HardyはAlnwickのPaikes Streetに銃砲店を設立しました。翌1873年、Williamは弟のJohn Jamesを共同経営者として迎え入れ銃砲に加え釣具等の販売を開始致します。以来釣具の製造を続けるHardyは今年創立150周年を迎えました。

この150周年を記念するリール群が今年発売されております。Light Weightシリーズ、1939年モデルのBougle、そして1912年チェックを装備し1928年リールフットを装着したSt. George 3'です。
Spitfire仕立てのこのリールには赤瑪瑙のラインガードが装着されております。

リールフットを下に上から見たところ。

ラインガードを下に上から見たところ。

リールの背面にはRod in Handのブランドが赤く刻印され、The 150 Anniversary "St. George" Reel 1872-2022と刻まれております。

全世界で150個が製造され、主に米国市場向けに販売されたと言われておりますが、手元にあるのは英国から入手した53番目に製造されたリール。

本リールの最大の特徴は1912年チェック。

これはテンションを一番緩めた状態。黄金色のトングの先端はリール外縁に着きバネへの負荷は最低。

ドラグのネジを巻いていくとトングの先端が押し下げられ、バネに圧力が加わり、チェックの抵抗が強くなっていきます。写真は最大限にドラグがかけられたところ。

この1912年チェックはその繊細な機構により製造コスト増につながり、コスト削減、製造工程の簡素化により次の1917年チェックに換わられてしまいます。この1917年チェックはほぼ現在まで続くHardyのチェックメカニズムであり完成形と言えます。その性能には文句の付けようが無いのですが、1912年チェックの味わいにはそれとは別のものがあります。

拙宅にある今から100年以上前に製造された1912年チェックを持つPerfect 3 3/8を一緒に見てみます。

Perfectの方は当時の工作精度の問題か、公差が現代のものよりあり、それがよりチェックのシルキースムーズ感を出しております。一方、21世紀のリールは工作精度の高さでしょう、スプールとリールのフレームがピッタリと密着する感じでチェックシステムのシルキーさの点では未だ硬さを多少感じます。

上のPerfectのラチェットの形状は三角形ですが、St. Georgeのそれは、通常の1917年チェックで使われる取り外し可能な切れ込みの入ったもの。そうした違いはあるものの、100年後も1912年チェックのリールを折に触れ出して貰えるのはありがたいことです。


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2 コメント

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違うものですね。 (yugawaski)
2022-11-13 13:25:11
こんにちは。
目の前にあるアブのデルタやアメリカのオーシャンシティと比べると、同じフライリールでも随分違うものだなぁと(笑)
アニバーサリーモデルは鋳物ではなく削り出しなのでしょうね。
工作機械が進歩する前は削り出しは珍重されたものですが、コンピューターで精密に削り出すことができるようになった今は、鋳物の肌合いが恋しくなったりするから不思議です。
「削り出し」のオーラが薄れつつあるような気がします。
昔は板金加工で作られていた高級カメラのボディも今は削り出しになっていたりしますが、おそらく一番楽に作れるからなのだろうなぁと。
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その通りです (budsek)
2022-11-13 19:22:26
yugawaski様
コメントを頂き大変ありがとうございました。
まさにご指摘の様に、この21世紀のSt. Georgeはアルミ合金の精密削り出しに違いないと思います。
20世紀までのハーディーリールは鋳造でラフな鋳物を工作機械で削り出して形を整えていたのですが、この手間を削り出し工法は省くと共に、精度も向上させておるものと思います。
100年超前のPerfectと比べるとその質感には大分違いが感じられ、St. Georgeには剛性感が昔のリールの何倍も感じられます。
その精密さが仇となってか、1912年チェックのシルキー感はオリジナルPerfectに軍配を上げざるを得ないところが忸怩たるところですが、これはこれで使い込んで良い味を出していければ良いかなと思う次第です。
使わずにとっておき将来の値上がりを狙うという数年前から欧米で流行りの、金融緩和の鬼子である釣具投資の対象にもなるかもしれませんが、それよりも釣りに使って愉しむことを優先したいものです。
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