小林紀興の「マスコミに物申す」

第三の権力と言われるマスコミは政治家や官僚と違い、読者や視聴者の批判は一切無視、村社会の中でぬくぬくと… それを許せるか

総選挙で国民が示した民意は何だったのか?

2014-12-15 08:36:58 | Weblog
 11月18日夜、海外歴訪から帰国した安倍総理は解散を初めて明言した。その日の早朝投稿したブログの最後に、私はこう書いた。
 
 今日安倍総理が解散を宣言するようだ。「早まった」と後悔しているかもしれないが、ここまで来た解散風を止めることは総理にも出来まい。「争点なき選挙」と言われてきた12月総選挙だが、アベノミクスの総括が最大の争点になることは必至だ。野党間の立候補調整がうまくいけば大逆転もありうるが、野党が勝利しても所詮野合政権の再登場になるだけだ。アメリカと同様、何も決められない政治になることは必至だ。「争点は生じたが、選択肢のなくなった総選挙」と私は定義する。

 21日のブログではこう書いた。

 安倍総理は解散表明後の記者会見でこう述べた。「今回の選挙で自公が過半数を取れなければ、アベノミクスが国民から否定されたことを意味する。私は直ちに退陣する」と(19日)。つまり与党が過半数を獲得すればアベノミクスは国民から支持されたことになる、と言いたいようだ。(中略)野党の足並みが揃わないうちに解散に打って出て、今後もアベノミクスを強引に進めるための解散と考えるのが自然だろう。安倍総理は解散記者会見でこうも述べていた。「消費税増税という国民生活にかかわる大きな税制改革は民意を問うべきだ。民主政権はマニフェストにうたっていなかった消費税増税をやろうとして失敗した」。それが解散の大義だという。が、自民党単独政権時代の竹下総裁も橋本総裁も、消費税導入や増税をマニフェストでうたって総選挙を戦ったことはない。しかも普天間基地移設問題について、沖縄県民の民意が明確に示された沖縄知事選については「すでに過去のこと」と考慮に値しないことを菅官房長官は表明している。だったら3党合意による消費税増税も、今さら民意を問う必要はないのではないか。安倍総理が主張する大義は、いかにもしらじらしいとしか思えない。

 公示日(12月2日)の翌日(3日)に投稿したブログではこう書いた。

 いずれにせよ、今回の総選挙は憲政史上空前の低投票率を記録することだけは間違いない。結果として国民に選択肢がないため(野党が効果的な経済政策を打ち出せないため)、自公連立政権は継続されることも間違いないが、はっきりしていることは選挙の低投票率は、国民が突き付けたアベノミクスに対するNOであることだけは言っておく。昨日から選挙戦は本番に突入したが、「こん
なに盛り上がらない選挙は、かつてあっただろうか」という有権者の反応の実
態がもうすぐ見えてくる。

 その総選挙が昨日行われた。結果は皆さんご存じだから繰り返さない。ただ選挙戦の終盤にメディアが予想した自民党の獲得議席が、予想の300超をかなり下回る291議席にとどまったことの意味だけ明らかにしておきたい。また、投票率が戦後最低だった前回総選挙の59.32%をかなり下回る52%前後になった(朝日新聞)ことに示した有権者の意志の意味も明らかにしておきたい。メディアにその能力を期待することは無理だからだ。
 実は私は、今次総選挙の投票率は50%を割ると思っていた。史上空前の低投票率になるとの予測は当たったが、有権者の50%超がなぜ投票所に足を運んだのか。そしてメディアの世論調査による自民党の当選者が予想をかなり下回ったのか。実は同じ理由による。 

 アナウンス効果……それが強力に働いた。「アナウンス効果」とはどういう意味か。ネット解説の一つ「はてなキーワード」はこう説明している。
「報道によりその対象に影響を与えること。とくに選挙報道の際問題にされる。ある候補者が苦戦していると報道されると、激励票や同情票が集まるアンダードッグ効果(負け犬効果)が最も多く指摘されるが、組織などが優勢候補を支持するバンドワゴン効果(勝ち馬効果)もあり、実際には誰に有利になるかはケースバイケースである。多くの陣営は当落線上、当選まであと一歩と報道されることを好む」
 このアナウンス効果が強力に働いた選挙だった。選択肢がないために投票所に足を運ぶつもりがなかった無党派有権者が、自民党の一人勝ちにNOサインを突きつけるために、投票所に足を運んだ。劣勢が伝えられていた民主党が前回総選挙より議席を11も伸ばし、同じく劣勢を伝えられていた維新がマイナス1とほぼ現勢力を保ったこと、またアベノミクスに対する強烈な拒否反応が共産党にかなり集中して、共産党は議席をほぼ倍増させたことなどが、アナウンス効果が強烈に働いた状況証拠でもある。
 今回の総選挙に示した民意を、メディアはまったく理解していない。全国紙5紙の社説についての検証は、今日のブログでは書いている時間がないので、次回に延ばすが、とりあえず各紙の社説のタイトルだけ列記しておく。各紙の立ち位置が明確になる。

産経新聞…自公圧勝 安倍路線継続への支持だ 規制緩和と再稼働で成長促せ

読売新聞…衆院選自公圧勝 重い信任を政策遂行に生かせ

朝日新聞…自公圧勝で政権継続 分断を埋める「この道」に

日本経済新聞…「多弱」による勝利に慢心は許されぬ

毎日新聞…衆院選 「冷めた信任」を自覚せよ

 私が、なぜこういう列記順にしたか、読者は分かるかな? 私は各紙の販売部数順ではなく、各紙の立ち位置順に列記した。朝日新聞の地殻変動が社説のタイトルにも現れるようになった、明らかな証拠だ。

 選挙結果は、「民主主義とは何か」が改めて問われる結果でもあった。
 
 憲法解釈変更による集団的自衛権の行使を、国民が容認したと、安倍総理は主張するだろう。普天間基地の辺野古移設も、国民が容認したと主張するだろう。戦後70年を迎えようとする日本が、改めて学んだ民主主義とはなんだったのか。
 私は選挙が終わるまで書くのを控えてきたことがある。
 選挙のたびに立候補者が有権者に約束するマニフェスト(公約)。国民の多くは政治家のマニフェストは「空手形」だと思っている。選挙の時にはおいしい話を並べ立てるが、選挙が終わって当選したとたん、政治家は有権者に約束したことをすっかり忘れてしまうと。
 確かにそういう側面はあるが、もっと大切なことがある。メディアはその大切なことに気付いていない。
 政治家が選挙のときに訴える「政策」の本質だ。
 実は政策とは、薬と同じなのだ。
 薬には必ず副作用がある。薬として製造・販売する時、また医者が薬を処方するとき、調剤薬局で薬を買うとき、なぜ「おくすり手帳」の提示が求められるのか。処方する医者や薬剤師は、ほかにのんでいる薬との複合副作用の有無を確認するためだ。
 政策も同じく、実行に移した場合の効果だけではなく、副作用もある。その副作用を、政治家は有権者に一切説明していない。
 たとえば経済政策も、メリットとデメリットの二つの側面を必ず持っている。いま安倍内閣が日銀・黒田主流派とタッグを組んで進めようとしているインフレ政策も、メリットだけではない。当然デメリットもある。政策のデメリットが、薬で言えば副作用に相当する。副作用を、政治家なぜ国民に説明しないのか。説明しない副作用を、選挙に勝ったら国民が是認したと言われても、私たちは困り果てるだけだ。
 アベノミクスの失敗については、OECDも勧告しているし、安倍さんがあれほど恋焦がれてきたオバマ大統領からも「失敗だった」と烙印を押されている。

 選挙でメディアが予想したほどの票は取れなかったが、安倍自民党は大勝し、自公は衆院議員の3分の2を超えた。憲法改正の発議を行える数だ。
 選挙戦突入後にOPECが原油の生産調整を回避したことは、安倍さんにとって思いもよらぬ「クリスマス・プレゼント」と「お年玉」が同時に飛び込んできたようなものだった。私が11日に投稿したブログの追記に書いたことを想起していただきたい。
 もしOPECが原油の生産調整を決めていたら、原油価格は現在進行中の暴落とは逆の、大暴騰になっていた。アベノミクスの失敗に原油価格の暴騰が重なっていたら、日本経済と国民生活は致命的な大打撃を受けていたはずだ。私は主なメディアの読者や視聴者の意見受付窓口には、そのことを伝え、全員が私の考えに同意してくれていた。が、選挙結果の分析で、そのことに触れた社説は一つもなかった。頭の悪い人しか、全国紙の論説委員にはなれないという、明白な証拠でもある。