A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

未読日記889 『new message』

2014-07-11 23:37:53 | 書物
タイトル:Futoshi Miyagi : new message
アート・ディレクション&デザイン:須山悠里
編集:Nao Amino
Proof Reading:John B. Keyser
発行:[東京] : Torch Press
発行日:2013.12
形態:63p ; 21cm
注記:タイトルは奥付より
    英文併記
    Ed.304/400

購入日:2014年7月11日
購入店:YUY BOOKS
購入理由:
 京都市立芸術大学ギャラリー@KCUAにて見たミヤギフトシ個展「American Boyfriend: Bodies of Water」は、静謐な暴力性、清冽な虚無感のようなものを感じて、久々に緊張、震撼する展示だった。
 鑑賞後、もっと作品が見たいと思い、以前にYUY BOOKSで作品集を見たことがあったので、そのまま買いに出かけて購入。
 本書は写真とテキストをまとめたものだが、光に満たされた写真が美しい。テキストも湿っぽくなくて、引き込まれる。
 版元でも残部僅少とのこと。お早めに。

memorandum 166 信じる

2014-07-10 23:36:27 | ことば
 「信じる」とは何か。「信じる」というと、神や宗教の教義への信仰心がすぐに頭に浮かぶが、そのことなのか。「信じる」ことは、必然的に、理性や合理的思考とは対立するもの、あるいはそこから離脱したものなのだろうか。「信じる」という問題について考える前に、まず、理にかなった信念と根拠のない信念とを区別しなければならない。私のいう根拠のない信念とは、道理にかなわぬ権威への服従にもとづいた、(ある人物や理念への)信仰のことである。それにたいし、理にかなった信念とは、自分自身の思考や感情の経験にもとづいた確信である。それは、何かをやみくもに信じることではなく、私たちが確信を抱くときに生まれる確かさと手ごたえのことなのだ。信念は、人格全体に影響をおよぼす性格特徴であり、ある特定の信条のことではない。
エーリッヒ・フロム『愛するということ』鈴木晶訳、紀伊國屋書店、1991.3.


人に対して信仰を抱く人ってよくいる(本人はそう思ってないみたいだけど)。

未読日記888 『笑う月』

2014-07-09 23:12:51 | 書物
タイトル:笑う月 (新潮文庫)
並列タイトル:The Grinning Moon
著者:安部公房
写真:安部工房
装幀:近藤一弥
挿画:安部真知
デザイン:新潮社装幀室
発行:東京 : 新潮社(新潮文庫, あ-4-18)
発行日:2008.7第31刷(1984.7第1刷)
形態:154p, 図版6枚 ; 15cm
注記:初版は1976年11月新潮社刊
内容:
睡眠誘導術
笑う月
たとえば、タブの研究
発想の種子
藤野君のこと
蓄音機
ワラゲン考
アリスのカメラ
シャボン玉の皮
ある芸術家の肖像
阿波環状線の夢
案内人
自己犠牲
空飛ぶ男

公然の秘密
密会

購入日:2014年7月9日
購入店:ジュンク堂書店 京都朝日会館店
購入理由:
 須永順子展テキストの参考文献として購入。安部工房は好きな作家で、過去にも『笑う月』は読んでいたが、ひさびさに手に取った。装幀は全集の装幀も担当した近藤一弥氏が手がけ、表紙がよりスタイリッシュになった。読み始めてあらためて思うが、安部工房の文章はいい。

memorandum 165 それを選んだ

2014-07-08 23:29:38 | ことば
退屈きわまりないのが 平和
単調な単調なあけくれが 平和

生き方をそれぞれ工夫しなければならないのが 平和
男がなよなよしてくるのが 平和
女が潑刺としてくるのが 平和
好きな色の毛糸を好きなだけ買える
眩しさ!
ともすれば淀みそうになるものを

フレッシュに持ち続けてゆくのは 難しい
戦争をやるより ずっと
見知らぬ者に魂を譲り渡すより ずっと
けれど
わたくしたちは
それを
選んだ



茨木のり子「スクラップブック」から『茨木のり子全詩集』花神社、2010年、p.338.



わたしたちは平和を選んだはずなのに、選んだその時のことを忘れてしまっているのかもしれない。

未読日記887 『Nikukyu Issue #18 2014 Summer』

2014-07-07 23:06:30 | 書物
タイトル:Nikukyu Issue #18 2014 Summer
Editing: Atsuki Kikuchi
Art Direction & Design: Atsuki Kikuchi
Creative Direction: Akira Minagawa
Cover Painting by TOMBOSENSEI
Printing: GRAPH
発行:東京 : NEWYORKER LTD,
発行日:c2014
形態:1冊 ; 28cm
内容
Photographs by 池田昌紀
「燃ゆる頬」堀辰雄
Illustrations by とんぼせんせい
Photographs & Text by 三野新
Drawing by Lica

購入:2014年7月5日
購入店:NADiff aichi
購入理由:
 またまたSALLY SCOTTのサマーコレクション2014カタログを見つけて即購入。意外ながらも、私がいま一番愛読している雑誌かもしれない。
 今号では、関西圏ではおなじみのとんぼせんせいのイラストがフィーチャーされ、シティポップ路線?ブランドの写真は、ポートレイト写真でおなじみの池田昌紀を起用しながらも、モデルを使わない写真というヒネリがうまい。素材をパーセント表示したりして、遊び心が楽しい。毎度思うが、今回も本当にすばらしいエディトリアル&グラフィックが堪能できる1冊。

【ご案内】KAMO 14th Meeting

2014-07-06 23:52:36 | 美術
この度、トークイベントでお話させて頂きます。
アートシーンのお話をするのは初めてかもしれません。
どうぞお気軽にお越しください。

KAMO 14th Meeting
https://www.facebook.com/KAMO.OSAKA

日時:2014年7月26日(土)20時~22時30分 (19時半開場)
会場:Calo Bookshop & Cafe(大阪市西区江戸堀1-8-24 若狭ビル5階 )

トークゲスト:
平田 剛志さん(京都国立近代美術館 研究補佐員/つくるビル アドバイザー)
小島 健史さん(Antenna Media 理事長 ディレクター/Parasophia: 京都国際現代芸術祭2015 事務局スタッフ/ART GRID KYOTO 事務局次長)
参加費:1人500円(ワンドリンク付き。追加のドリンクやお料理はキャッシュオン制)

* * *

第14回KAMOは、平田剛志さんと小島健史さん、京都を拠点にアートに関する様々な活動をされているお二人をお招きします。

平田剛志さんは、カロンズネット編集長時代に京都に移り住み、現在は京都国立近代美術館にお勤めです。美術館でのお仕事以外にも、関西を拠点に、美術批評や展覧会・イベント企画など幅広く活動をされています。

小島健史さんは、NPO法人Antenna Mediaのディレクターとして様々なアートの領域を巻き込む各種企画を数多く手掛けています。現在では来年開催の「Parasophia: 京都国際現代芸術祭2015」事務局スタッフも兼務されています。

今回お二方には、これまで手がけられた企画や現在進行中の企画から、つくるビルやAntenna Mediaをはじめとした京都に拠点を構える数多くのアート系組織や施設の分布やその特徴についてまでをお話しいただきながら、京都のアートシーンを複数の角度からご紹介・分析していただきます。

今回の会場も前回と同じくCalo Bookshop & Cafeです。地下鉄四つ橋線「肥後橋」駅6・7番出口より徒歩1分です。

参加費はお一人500円で、ワンドリンクが付きます。以後のドリンク追加や、食べもののご注文はキャッシュオン制でお楽しみいただけます。アルコールやおつまみお料理も多種取り揃えていただいておりますので、どしどしご注文いただき、熱いトークの一夜をお楽しみください。


未読日記886 『すべてのものの半分はイメージで出来ている(鳥とハイヒール)』

2014-07-05 23:06:22 | 書物
タイトル:すべてのものの半分はイメージで出来ている(鳥とハイヒール)
並列タイトル:Half of all things through image. (bird and high-heeled)
シリーズ名:MYY BOOKS vol.6
Art Direction & Design : 白澤真生
Artwork : 荒木由香里
Photograph : 尾崎芳弘
発行:[荒木由香里]
発行日:[2014]
形態:[38]p ; 12cm
定価:1000円

購入日:2014年7月5日
購入店:AIN SOPH DISPATCH
購入理由:
 名古屋・AIN SOPH DISPATCHで開催された荒木由香里展「すべてのものの半分はイメージで出来ている。(鳥とハイヒール)」にて購入した1冊。
 本書は、作家の荒木由香里、デザイナーの白澤真生、写真家の尾崎芳弘の3人が共同で制作するZINE形式の作品集MYY BOOKSの第6弾。毎回、個展会期に合わせて発行しているそうで、かなり完成度が高い。作品制作と平行して印刷物を作るのは大変なのではないかと推測するが、ただの作品集というよりは遊びの要素も盛り込まれ、荒木の世界観が表現されたアートブックといってもいいかもしれない。中ほどに掲載されたドローイングもおもしろい。
 今展はこれまでの作品と異なり、同一の色彩でまとめることはせずに、モチーフのイメージによる構成が前面に出た作品群となっていた。以前と異なり、シュルレアリスム的な印象も受けたが、それは色彩が後景になり、物質性がよく見えるようになったせいかもしれない。個人的には、隅に展示されていたクマのレンチキュラーを用いた小品彫刻がすばらしかった。無作為にできたものなのかもしれないが、本作はタイトル通りクマの表情が見る角度(およそ半分)によって異なるイメージを有する点で、今展のコンセプトに通じていた。
 個人的には、オブジェ性が前面に出ると彫刻性が失われる気もするが、今後の展開がどうなるのか注目したい。

memorandum 164 誤算

2014-07-03 23:06:15 | ことば
あら 雨
あじさいがきれい
このブラウス似合います?
お茶が濃すぎるぞ
キャッ! ごきぶり
あの返事は書いておいてくれたか
レコードもう少し低くして 隣の赤ちゃん目をさますわ

とりとめもない会話
気にもとめなかった なにげなさ
それらが日々の暮しのなかで
どれほどの輝きと安らぎを帯びていたか

応答ものんびりした返事も返ってこない
一人言をつぶやくとき
自問自答の頼りなさに
おもわず顔を掩ってしまう
かつて
ふんだんに持っていた
とりとめなさの よろしさ
それらに
一顧だに与えてこなかった迂闊さ


茨木のり子「歳月」『茨木のり子全詩集』花神社、2010年、p.275.


 とりとめもない会話は、輝きと安らぎである。

未読日記885 『現代詩手帖 2014年7月号』

2014-07-01 23:56:36 | 書物
タイトル:現代詩手帖 2014年 07月号 [雑誌]
編集人:亀岡大助
表紙デザイン・写真・扉・目次・本文カット:毛利一枝
発行:東京 : 思潮社
発行日:2014.7
形態:184p ; 21cm
内容:
【特集】詩からアートへ/アートから詩へ
◎鼎談
建畠晢+保坂健二朗+田野倉康一「新しい関係性のはじまりへ――イメージ・言葉・資本」
◎コラボ作品Ⅰ――Female times
 蜂飼耳「さまよう庭をさまよう 荻野夕奈氏の作品に」
 暁方ミセイ「ネモフィラ国立公園 高松明日香氏の作品に」
 三角みづ紀「思考して、会話した 李元淑氏の作品に」
 杉本真維子「ぐるべら 久米圭子氏の作品に」
 文月悠光「生まれる日 古川葉子氏の作品に」
(Bunkamura Box Gallery「Female times Ⅲ 新たな時代を刻む、女性美術家5人展」とのコラボレーション)
◎対話
蜂飼耳+荻野夕奈「日記を書くように――新しいコラボレーションのために」
◎座談会
白川昌生+小野田賢三+住友文彦+三角みづ紀「生きる場のリアルに寄りそうために――前橋から歩きはじめる」
小野田藍「座談会を読み解くために知っておきたい9つのこと」
◎アートの生れる場所
 管啓次郎「この世界の異郷化にむかって 東京ヘテロトピア」その後」
 川延安直「言葉が開く博物館、広がる言葉」
 杉本真維子「変容する「故郷」 第二回メタモルフォーシス展に際して」
 京谷裕彰「交わりの重なりから夢想の回帰へ 関西圏における二つの潮流」
◎コラボ作品Ⅱ――詩をアートする
 横山裕一「屋敷の様相 田中庸介の詩「嗜虐的お化け屋敷の様相」に」
 富田菜摘「大岡信「なぎさの地球」に」
◎作家論
 時里二郎「柄澤齋 その「版」と「画」と「言葉」」
 江尻潔「ひかり、ひびき、ことば タカユキオバナの表現について」
 田中庸介「もの派とニュータイプと横山裕一」
 橘上「答えはない。応え続けろ。 松本人志『R100』『大日本人』から」

◎作品
 北川朱実「記憶は」(第29回詩歌文学館賞受賞第一作)
 タケイ・リエ「みとりとみどりと」
◎連載詩
 川田絢音「窪み」(短期集中連載詩・最終回)
 岡井隆+関口涼子「注解するもの、翻訳するもの 共同詩」
◎短期集中連載
 城戸朱理「共感覚(シナスタジア)とアンティ・コスモス 洪水の後でAfter the Flood――最終章・最終回
◎連載
 粟津則雄「西行覚書」
 近藤洋太「『沈める城』と『沈める城』 辻井喬と堤清二」
 金子遊「松本俊夫と詩的映像のシステム 映像詩の宇宙」
 境節「詩を生きる地[児島] 児島の、いま 半島から半島へ③」
 青木亮人「俳句遺産⑦ 同時代の熱気 「ガニメデ」の関悦史」
 吉田隼人「短歌なんか嫌いです⑦ レヴィ=ストロースの一行から 吉岡太朗歌集『ひだりききの機械』 」
◎Theater
 富岡幸一郎「受肉された言葉 笠井叡『日本国憲法を踊る』」
 谷内修三「ことばが肉体になる 錬肉工房『現代能 始皇帝』」
◎月評
 水島英己「詩書月評 はばかることなくよい思念を」
 榎本櫻湖「詩誌月評 読まれてしまった不条理の叫び」
◎新人作品 7月の作品
 森水陽一郎、照井知二、田中さとみ、橋本しおん、山崎修平、草野理恵子、板垣憲司、小縞山いう
◎新人選評
 中尾太一「今、ここ」
 中本道代「詩の地面」
Calendrier

購入日:2014年6月30日
購入店:大垣書店 烏丸三条店
購入理由:
 詩と美術は、昔から相性がよかった。瀧口修造や大岡信をはじめとして詩と美術は交流を繰り返してきた。では、現代はどうだろう。美術も詩も好きな者としては、現代詩手帖で詩と現代美術(アート)の特集が組まれるとは驚いた。現代詩も現代美術も「現代」がつくと途端にマイノリティになるが、マイノリティの私は美術ほど熱心ではないが、詩を読むのはわりと好きな方である。
 どの記事も興味深いが、なかでも京谷裕彰氏の論考「交わりの重なりから夢想の回帰へ 関西圏における二つの潮流」は、現在の関西アートシーンのレビューにもなっておりすばらしい。余談だが、本文中に私の名前も挙げられており感謝。他者の論考で名が挙げられてこその実績でもあるので、とてもうれしかった。