A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

未読日記869 『仁王と月』

2014-04-25 23:21:38 | 書物
タイトル:浅井眞人詩集 仁王と月
著者:浅井眞人
装丁:和兎
発行:調布 : ふらんす堂
発行日:2014.4
形態:98p ; 22cm.
内容:
暗い蛍光灯は肩が凝ると 毘沙門天が言いにきた

俗と聖が渾然一体となり
ファンタジックな身ぶりのなかに
ユーモラスな異界のものたちによる厳粛にして
不穏な世界(コスモス)が現出する。

月の満ち欠けは仁王の呼吸によっている
それは交互に繰り返して
この世で一度も途切れたことがない
阿吽(あうん)の像は 月の満ち欠けをあらわす
阿形が満ちる月 吽形が欠ける月
村人は 時折ここに来て手を合わすが
仁王は 今裏山で桃に袋をつけている

頂いた日:2014年4月25日
 出版社よりご恵贈頂きました。どうもありがとうございます。
 少し読み始めて、仁王の振る舞いがユーモラスで、近所のおじさんの日常を読んでいるような気になってくる。凡そ日常では発しない単語「仁王」が、「山に腰掛けて炭焼きをした」り、反り橋を架け替えたり、日常的なしぐさや日曜大工のような行為をするのである。仁王と聞けば、奈良の東大寺と興福寺を思い起こすが、それは仮の姿で、仁王像にはもうひとつの面があるのかもしれない。
 浅井眞人は、仁王のシチュエーションや行為の滑稽さを強調するわけでもなく、淡々と写実的に描く。それが、月光の照らす夜道のように、静かな余韻となって残るのである。
 装丁のエンボスで罫が入ったカバー、辛子色のような表紙の色、触感もすばらしい。


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