A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

未読日記124 「狩野永徳」

2007-11-01 22:39:26 | 書物
タイトル:狩野栄徳
編集:京都国立博物館
デザイン:株式会社エヌ・シー・ピー+ツムラグラフィーク
発行:毎日新聞社NHKNHKきんきメディアプラン
発行日:2007年10月16日
金額:2500円
内容:
平成19年10月16日(火)より11月18日(日)までを会期として、京都国立博物館、毎日新聞社、NHK京都放送局、NHKきんきメディアプランが主催する特別展覧会「狩野永徳」の解説付総目録。(p.28 本書凡例より)

論考
「狩野永徳の生涯」山本英男(京都国立博物館保存修理指導室長)
[図版]
墨を極める
永徳と扇面画
為政者たちのはざまで
時代の息づかい-風俗画-
桃山の華-金碧障屏画-
壮大なる金碧大画

ほか作品解説、関連作品、史料、落款・印章、年表、参考文献、出品目録収録。

購入日:2007年10月27日
購入店:京都国立博物館
購入理由:
今年春から待ちに待った本年度最大の「特別展覧会」。大げさだが今年はこの展覧会を見るまでは死ねないと思っていた(実は展覧会を理由に秋の京都に行きたかったのが本当の理由なのかもしれないが)。
約320pの大作図録というだけで、この展覧会にかける美術館の意気込みが伝わってくるが、内容もお腹いっぱいになるボリュームある展覧会だ。
新聞の一面で取り上げられたことでも話題になった今年の美術界の事件といえる永徳新発見の「洛外名所遊楽図屏風」もこの展覧会で初公開。戦火によりその作品の多くが消失したため回顧展を開くことは困難とされてきた狩野永徳の全貌がいま明らかになる。
<唐獅子図屏風>、<檜図屏風>などダイナミックでエネルギッシュな奇想感ある画面構成は見る者を圧倒する。こってりとした肉汁したたるハードコア金碧大画の傑作。そうかと思えば<洛中洛外図屏風>などでは金雲の間から洛中洛外の市井の人々を繊細に丁寧に描き出していく。こちらはさっぱりとした京料理の繊細さでヒューマンストーリーの傑作を作り出した。忘れてはいけないのは水墨画だ。<花鳥図襖>のどこまでも伸びていくような枝の動き、大木のツイストするような身ぶりを目撃できることはこの展覧会に足を運んだ者だけが得られる特権である。
その画業は驚くほど多様でテクニシャンな狩野永徳。では、なぜいま狩野永徳なのだろうか。永徳の作品は安土城、大阪城、聚楽第など特定の場所に飾るため描かれたものだ。それも時の権力者信長、秀吉に重用された絵師だ。そのスケール感、豪壮華麗な画面は現代の美術には消滅してしまったと言ってもいい。そんな時代だからこそ狩野永徳が召還されたのかもしれない。私たちは狩野永徳の短い帰還に、恐れおののきながらその作品の前に立ちすくむしかない。

なお、京都国立博物館では来年4月に「河鍋暁斎展」、2010年には「長谷川等伯展」を予定しているという。いま、京都がすごいことになっている。






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