A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

memorandum 332 自信

2016-07-24 23:39:30 | ことば
 自信とは自ら持つものではなく、他者から与えられる一つの評価基準を言う。自分が持つものではなく、他人が持つ思いなのだ。
 この他人が感ずるものであったことが、現代では忘れ去られている。自信とは、何事かに一途に向かっている人、または何事かを成し遂げた人に対して、あの人には自信がある、と他人が勝手に思う気持なのだ。

執行草舟『生くる』講談社、2010年、135頁。


自信は持たず、ひたむきに生きること。自信を持たないほど、生きるのが軽くなる。

著者の論は以下に続く。

「もともと、自信を持つことなどは誰にもできない。また持つ必要もない。大切なことは、他者から見て自信のある生き方をすることにある。目の前に置かれた状況に全身全霊ぶつかっていく。その結果、次々と展開される事態に対して、どんどん体当たりしてぶつかっていく。後を振り返らずに、前進する。現在が如何に納得できず、自分の考えと違っていても、一切かまわずぶち当たって、より良いと思われる方向に向かっていく。」
上掲書、135-136頁。

「失敗したら、次には失敗しまいと思って進む。成功したら、成功の中にある不満足な点を見つけ出して改革していく。何が起こっても、自信など持たずに進んでいく。初めから自信など持たなければ、決して自信喪失はない。いかなる不満があっても、乗り越えればよい。乗り越えられなければ、次に乗り越えようと思う。前進前進、改革改革、創意創意、工夫工夫。いつでも今が出発である。目の前の現状にとにかく立ち向かう。あとは人生が解決してくれる。これを続けていれば、自分のことを自信がある人だと、他者が見てくれる。自信など持とうとしなければ、この生き方は誰にでもできる。
 自信を持とうとしている人は、本当は他人を羨んでいるのだ。他人と比較して、自分をえらいものだと思いたがっている。つまり、卑屈なのだ。ただ一途に、ひたむきに生きようとするものにとって、最も障害となるのが他人との比較である。比較が傲慢と卑屈を生む。ひたむきな生き方は、自分に与えられた環境を全面的に受け入れれば、誰にでもできる。自信などまるっきり必要ない。それどころか邪魔でしかない。そんなもののために、如何に多くの人が足踏みしているか。 
 自信のような、馬鹿げた観念に縛られていなければ人生はどんどん前進できる。自分は決して縛られてはならない。縛られなければ、結果として、他者から見て自信のある人生となる。人生にとって最も大切なひたむきさが、自信を持てば失われてしまう。」
上掲書、136頁。




最新の画像もっと見る

post a comment