A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

未読日記159 「見出された時Ⅰ」

2008-01-29 23:54:26 | 書物
タイトル:失われた時を求めて12 第七篇 見出された時Ⅰ
著者:マルセル・プルースト 鈴木道彦訳
装丁:木村裕治
カバー画:キース・ヴァン・ドンゲン「記憶の喚起」
発行:集英社/集英社文庫ヘリテージシリーズ
発行日:2007年3月25日
金額:1100円(本体1048円)
内容:
一人の召使いが音をたてまいとしていたにもかかわらず、皿にスプーンをぶつけてしまったのだ。すると不揃いな敷石が与えたのと同じ種類の幸福感が、私のなかに入りこんできた。
(本書帯より)

第一次世界大戦が始まり、語り手は療養生活にはいる。戦時中のパリで、ヴェルデュラン夫人はサロンを開きつづけ、ドイツ贔屓になったシャルリュスの男色癖は嵩じて、すさまじいマゾヒズムの快楽に耽っている。戦後しばらくして、語り手はゲルマント大公夫人のパーティに赴く。ゲルマント邸の中庭に入ったとき、不揃いな敷石に足がとられてよろめいた感覚が、突如ヴェネツィアのサン・マルコ寺院の敷石を思い出させて、言いようもない喜びを覚える(第七篇Ⅰ)。
エッセイ:辻原 登
(本書カバー裏解説より)

購入日:2008年1月26日
購入店:紀伊國屋書店 渋谷店
購入理由:
前編の「第六篇 逃げ去る女」はすばらしかった。メランコリックな雰囲気が全体に漂い、ひとつの感情の終りと始まりがまるで映像のフェードイン・アウトのように、入れ混じり、溶け合って至福の読書体験を得ることができた。すばらしい本に出会うといつも思うことだが、このまま読み終わりたくないと思う。終わらない小説。ひょっとするとプルーストもまた、物語を終わらせたくなかったのかもしれないなどと想像してしまう。
そしていよいよ長大なる「失われた時を求めて」も最終篇。残り少ない酒でも飲むようにチビリチビリと味わうことにしよう。