県道から千畳敷へと至る道を進むと左手にこの神社がある。千畳敷入口のバス停の所には、「不動明王磨崖仏」と書かれた標柱があるので、この神社のどこかに磨崖仏があるのだと思い、神社を訪ねてみた。石段を上がると、古そうな鳥居と狛犬が出迎えてくれた、境内は狭く、本殿があり、その左手に大きな岩石があった。だが、岩石の頂上付近に小さな鳥居と祠のようものがあるだけで、どこにも磨崖仏の姿は見当たらなかった。神社のふもと付近に民家があったので、そこでたむろしていたおばさん達に「戸河神社の磨崖仏と言うのはどこにあるのでしょうか？」と問うと、おばさんは石と本殿の間の隙間を指さし、「その隙間をすり抜けて岩の向こう側に行くとある」と答えた。見ると２０センチほどの空間しかない。そのおばさんは「お兄さんなら通り抜けられるが、私には無理」と言った。確かにおばさんはその体型だが、私は行くしかないと思い、その隙間をすり抜けてみた。無事に岩の反対側に出たが何もない！諦めて元に戻り、「磨崖仏なんてどこにもないですよ」と言うと、おばさんは「小さい頃からそこにあると聞かされてきたんです。私は７０年近くここに住んでいますが磨崖仏はまだ見た事がありません」と釈明した。するとおじさんが「磨崖仏は、５０～６０年前に波に浸食されて消滅してしまったんだよ」と答えた。つまり、磨崖仏の場所を教えてくれたおばさんが物心ついた頃には既に磨崖仏は消滅していたのだ。わずかに岩石部分に「庚申塔」や「大黒弁天」の石碑が残っているだけである。私は「では、磨崖仏はないと言う事でよろしいですね」とおばさん達に念押しをしてこの神社を去った。後で、岩の反対側へは道路側から到達できる事を知り、あの隙間を決死の思いで通り抜けたのは何だったのかと思った。千畳敷の突端には弁天崎があり、そこに弁天堂があると案内図に書かれていたので行ってみたら、弁天堂は基礎部分だけを残し、全て消滅していた。波と地震で破壊されたのだろうか？結局、お目当ての史跡にはめぐり会えずじまいの戸河神社であった。http://www.digibook.net/d/8555c333a01d8e4c37e6aac70231ee20/?viewerMode=fullWindow
