待ちに待ったデアゴスティーニ『隔週刊コンバットタンク・コレクション』(第49号)、チャーチルMk.Ⅶがやってきました!
・・・思ったよりちゃちい。(まーこんなもんか)
「チャーチルの何が好きか?」って言ったら、
なにもかもが独特なことです。
ひたすら車体が長いことも独特だし、何もかもを犠牲にして遅い速度を得たことも独特だし、こんな巨大な車体を持っていながら砲がきわめて細いことも独特。
美意識がひと周りしてかっこいい。
「英国戦車はどれもクセがある」といわれる中で、この人がピカいち。
「チャーチル」と名付けられたのは、戦車が不足していて緊急増産の要があった英国で、たくさんあった戦車案のなかから英国首相ウィンストン・チャーチルが強く推したため、これが制式採用されたと伝わるから。チャーチル好みの戦車なんですよ。
チャーチルはタイプがMk.ⅠからMk.Ⅷまであって、完成形がこのMk.Ⅶ。
残念ながら戦車ゲームでは私のチャーチルはまだMk.Ⅰです。
(※ゲームではMk.ⅠとMk.ⅦとMk.Ⅲ(←課金戦車?)しか出ない)
チャーチル戦車は英国戦車の独特なノウハウが絶頂的な時期の作品でして、人によっては「傑作」だとも「理解できない」だとも言われます。
各バージョンの特長については、ウィキペディアによりますと、
Mk.Ⅰ(1941年)
超重量な硬い装甲を実現した。
当初搭載予定だった6ポンド砲が間に合わず、暫定的に2ポンド砲を付けた。
2ポンド砲では榴弾が撃てないので、もうひとつ車体に榴弾用の3インチ砲も付けた。
2ポンド(口径40mm)と3インチ(口径73mm)は全然規模が違うように思うかも知れないけど
徹甲弾を撃つ2ポンドの方が主砲ですよ。
英国歩兵戦車が無慈悲に放つ徹甲弾は敵将ロンメルをも驚嘆させたくらいですからね。
Mk.Ⅱ 結局榴弾なんて英国軍は必要としないので、機関銃と取り替えた。
(※榴弾とは、歩兵を殺戮するための爆裂する弾のことです。
徹甲弾は爆発しない。ただ貫くだけ。人と地球に優しい紳士の弾)
Mk.Ⅲ(1942年)
ようやく6ポンド砲(57mm)搭載。
これでティーガーとも対抗できるぜ。(←できなかった)
でもチャーチルは歩兵を大切にする戦車なので、やはり榴弾は搭載しない。
(※ゲームに登場するMk.Ⅲはソ連バージョンのチャーチルだそうです。
ティーガーに体当たりで挑む戦車だとか)
Mk.Ⅳ 砲塔の制作方法を溶接式から鋳造式にしました。
Mk.Ⅴ 主砲とは別に榴弾を撃てる砲を付けました。オマケですよ、あくまでオマケ。
Mk.Ⅵ 75mm砲を搭載し、主砲から徹甲弾も榴弾も撃てるようにしました。
オマケですよ、榴弾はあくまでオマケですったら。
Mk.Ⅶ 強力な75mm砲を軸に更に巨大化できるよう車体構造を大幅に改変しました。
Mk.Ⅷ 榴弾メインの戦車にしました。
チャーチルからはこれ以外にも多種多様な派生体が生まれています。
制式化はされませんでしたが、1945年にはチャーチルではどうしても勝てないティーガーをバリバリ踏みつぶすためだけに生み出された「スーパーチャーチル(=エドワード黒太子)」や、もはや歩兵戦車でも巡航戦車でもないその名も“主力戦車”センチュリオンも誕生しています。
こんなにバリエーションが生まれるなんて、チャーチルが皆様にどれほど愛されていたかが伺われますね。(※センチュリオンはチャーチルとは関係ない)
逆に、“どうしようもなく使えなかった機体”として有名なカヴェナンター(スコッチの長老派与党・1939年)なんて、Mk.Ⅳまでの改修までで諦められて放り出されてたそうですからね。
チャーチルの動画。
いくつかの種類のチャーチルが映っていますよ。
ややこしいのは、英国戦車には「巡航戦車」というのと「歩兵戦車」というのがあって、それぞれ別々に開発されていたこと。つまり、チャーチルは歩兵戦車としてはMk.Ⅳなんですけどこの「Mk.Ⅳ」という番号は、上の派生体としての「Mk.○」とは別だということです。つまりチャーチルⅦはMk.ⅣのMk.Ⅶ。(わけわからん)。巡航戦車のMk.Ⅳは1939年で歩兵戦車より進化サイクルが速い。軽戦車のMk.Ⅳというのもありまして、でもまったく活躍しなかった無名の戦車。それとは別に英国軍には傑作車両として有名だった(←第一次大戦の時に)「マークⅣ戦車」というものもあります。
で、Mk.Ⅳのチャーチル戦車はⅠからⅧまであって、それは同じ戦車なのですが、チャーチルの先々代歩兵戦車を「マチルダ」といって、そのマチルダにはⅠとⅡがあります。でも、同じ名前なのに「マチルダⅠ」(歩兵戦車Mk.Ⅰ)と「マチルダⅡ」(歩兵戦車Mk.Ⅱ)は全然別の戦車で、さらに歩兵戦車Mk.ⅡのマチルダⅡにはタイプがMk.Ⅰ~Mk.Ⅳまであるという。マチルダⅠのバリエーションは知らん。
ね、ややこしいでしょ?
私のマチルダ。砂漠の女王。ゲームにはマチルダは一種類しか登場しない。(課金戦車で「マチルダ黒太子」というのがあるそうです)
チャーチルのフォルムの話です。
チャーチルの車体が長いのは、「国境に無数に掘ってある塹壕を乗り越えるため」。
チャーチルとは、そのためだけに存在しているといってもよい。
中途半端な長さだと、穴に落ちちゃうんですよね。
ダンジョンズ&ドラゴンズかなんかで、冒険者の基本装備として20フィートぐらいの竹竿を背負うことが推奨されていたことを思い出しました。
この履帯に装甲カバーがかかっているせいで、模型がいやにオモチャっぽく見えてしまうのですよね。
履帯むきだしのチャーチルⅠの方が見た目がかっこいい(と思う)。
が、この履帯というのは戦車にとっては弱点の一つで、重装甲にするにはここには是非ともカバーはつけないとならない。
ゲームでは、チャーチルのこの長いキャタピラ部分が、絶大な盾になります。
ここ(履帯)を横から走れなくなるほど撃たれても、本体にダメージは無いという。
逆に、チャーチル最大の弱点は右と左のキャタピラに挟まれた本体の下の部分で、履帯で隠すようにして本体下部はなるべく敵には見せてはならない。
ここを隠すための作戦というのが、「昼飯を食べる」という、関ヶ原の戦いで毛利秀元も使ったという由緒正しい戦法なんですって。
「戦場へは、弁当を食べに来たと思えばいいんですよ」
戦場で、昼飯を食べるに最適な角度を作ることが実は一番勇気の要ることなんですけどね。難しくてなかなかできない。(敵が近づいてきたら逃げられなくなるから)
それから、横から見たひとつひとつの転輪のこの小ささ。
意外とこれによって、チャーチルは巨体でありながらあらゆる地形を走破できるようになったのだそうです。小さいので敵から狙いにくい、ますます履帯が盾化、というメリットも。(とにかく戦車は履帯を横から撃ち抜けばよいものだ)。一方で、チャーチルはこのたくさんの小さな足のおかげで、ムカデのような最悪の鈍足になってしまったのですが、だれもチャーチルには速さなんて求めませんでしたから、良かったのでした。
思えば、ウィンストン・チャーチルの遙かなご先祖である初代マールバラ公ジョン・チャーチルは戦争の達人で、卓越した機動戦術で名を馳せました。20世紀となった今となっては、機械化機動戦術なんて誰もが使う稚拙な技(とウィンストンは思ったであろう)ですから、敢えて逆の鈍重戦術で敵の裏をかき、歴史に名を残そうとしたんですね。
チャーチルの砲の細さについて。
細く見えるかもしれませんが、この砲もそんなに悪くないものなんですよ。
(チャーチルⅠの2ポンド砲はさすがに貧弱すぎますが)
(↓ゲームでの初期装備。チャーチルⅠの2ポンド砲)
チャーチルⅦでは75mm砲。
これは良い砲。弱くも無く、強くも無い砲。
そもそもチャーチルは歩兵戦車ですから、強い砲など積む必要はなかったのです。
(※そんな私も今ではチャーチルⅠに75mm砲を取り付けてますけど)
ゲームに毒されていますと、「チャーチルほどの巨体に強力な砲を搭載しないなんてもったいない」「頭おかしいんじゃないのか」と思うと思いますけど、英国紳士たちの考えは違ったそうです。英国には「巡航戦車」と「歩兵戦車」がある。(「軽戦車」もありますが、活躍しませんでした。「重戦車」はありませんでした)。歩兵戦車は歩兵と一緒に正面突破を狙います。あくまで戦うのは歩兵で、戦車はその補助です。歩兵にはする仕事がいっぱいあります。もし敵の戦車があらわれたら、兵隊は歩兵戦車の後ろに隠れます。歩兵戦車は盾です。固ければ固いほど歩兵が助かります。一方で、歩兵戦車が敵戦車を撃破する必要があったのかというと、それは「巡航戦車」の役割です。戦車は横から撃て。正面が一番硬くなるように作ってあるからです。ですから、足が遅くて常に敵はチャーチルの正面から現れるチャーチルが強い砲を積んでも無駄なのです。どうせ撃ち負ける。装甲の薄い横や後ろ方面から撃破を狙うのは、別の奴の役目。チャーチルはその分、攻撃力を惜しんで装甲に廻しましょう。歩兵戦車は盾。ですから英国では、重量のある硬い大きな戦車は強い砲を持たず、逆に装甲が薄くて足の軽い小さな戦車の方が強力な砲を持っていたのです。
(※これはチャーチル登場時までの話で、1942年以降はドイツは容赦なくチャーチルを屠るようになっていきましたから、更に膨大な防御力に強大な17ポンド砲を持った重い戦車ブラックプリンス(別名・超チャーチル)やもはや歩兵戦車でも巡航戦車でも無いセンチュリオンが造られていくことになります)
他の国では巡航戦車のことを曲解して駆逐砲とか自走砲とか言ったんですけどね。英国の紳士は駆逐とか自走とか野蛮な言葉は使わない。あくまでクルーズ。
ゲームでは歩兵がいません。
「チャーチルは硬い」はずなのに、チャーチルが本来護るべき歩兵がいなくて、ただ対戦車戦をするだけなので、思いっきりチャーチルには不利なゲームです。「どこが硬いのか」と思うほどチャーチルはたやすく打ち抜かれ、たった一発で撃破されてしまうこともしばしば。チャーチルの砲では全く装甲を打ち抜けない相手も多い。ただ、「足が遅い」と言われながら、マチルダより少しだけ速い気がするんですよね。チャーチルで走るのはなかなか楽しい。マチルダの足の遅さは絶望級です。ただ、マチルダの徹甲弾に専門化された主砲は発射速度がきわめて速く、また命中精度もとても高いので遊んでいてとても気持ちがよいのですが。(マチルダも硬いはずなのに、チャーチル以上に一撃で大破されてしまう率が高い)
このシリーズのチャーチル本も買ってあったはずなんですけど、本棚を捜しても見当たらない。これがあれば各部のことも詳しく分かるはずですのに、
砲塔の上のぴんと立った3本のうち、真ん中のやや短くて太いやつって、なんでしたっけ?
(ちょっとゆがんで写ってしまってますけど、箱から出したときちゃんと直さずに撮ってしまったからです。ていうか、実物はまっすぐ立っているように見えるのに、写真にするとこんなに曲がって見える。小さいモデルですからね)
このモデルは小さいのでこの部分がただの棒のように見えますが、もっと精巧な写真だとグルグル廻すハンドルのようにも見えます。こんなところに? 調べてみるとマチルダにはこれが付いていませんが、シャーマンには似たようなのがある。
「潜望鏡かな?」「灰皿かな?」と思ったのですが、チャーチルの場合、この写真では5ヶ所ある水色に塗ってあるところが潜望鏡(ペリスコープ)だそうです。潜望鏡って潜水艦みたいにきゅるきゅるきゅると1mぐらいのばして水面から出して使うようなものかと思ってた。
なので結局、「このハンドル(?)もアンテナだ」と思うことにしました。
タミヤの1/35の箱絵のこの部分がアンテナっぽかったから
へー、チャーチルってアンテナが3本(?)もあるのにゲームでは偵察行動が苦手なんですねー。
その後ろの下に付けてあるのが消火器。形状から「投擲弾?」と思ったけどこんなところに付けるわけがない。消火器は左右に計2ついてます。
そのとなりの黄色い筒は「コンテナ」と書いてあって信号のための道具を入れてあるというんですけど、「ここから信号弾を打ち出すのか」と思ったら、中には手旗信号用の旗が入っていて、手で降るんですって。さすがアナログ。
あとは面白いのは最後尾にある電話機。
チャーチルは歩兵戦車ですから、チャーチルのまわりを徒歩で走っている歩兵たちが走りながらふるさとのかあさんに近況を伝えたりするときに使うそうです。
わたくしの戦車愛好は何がきっかけだったんだろう?
今となっては全く覚えていませんが、15年くらい前には九州のプラモ屋でこれを買った記憶があります。
10個ぐらい戦車模型を買って、1つか2つ作ったんですが(主にティーガーを)、「ガンプラ以上に戦車は塗装が大変」「力を入れて塗装をしなければ何にもならない」ということに気づき、戦車の模型の箱は私の部屋ではただ壁面を飾るアート的な存在になりました。あのころ買ったエアブラシセットは、どこにいってしまったのかな。
田宮のチャーチルもまたMk.Ⅶですけど、調べてみますと各種模型会社からチャーチルのバリエーションは結構たくさん出ているみたい。ⅡとⅧ以外は全部ネットで揃うみたいです。やったね。
と、、 金が潤沢にある頃だったらきっと全部買ってしまったでしょうけど、どうせ組み立てないからなあ。
私のチャーチルⅦの箱には、買った当初に組み立ててみようと思ったけどやっぱりやめた痕跡がありました。
デアゴスティーニのこの戦車コレクションは、とても小さいのにひとつ2000円です。
でも、「塗装はめんどくさい」ことを思うと、いくら細部がちゃっちくても、いろんな変な戦車を揃えてくださることにはありがたく思うのでした。
「このシリーズって何号まであるんだっけ?」と思って見てみたら、「全100号完結予定」ですって。
なんと! まだ半分でしたのか!
いくらなんでももう付き合えないよね。(毎号2000円は痛い)と思いつつ、あと50巻でスーパーチャーチルやマチルダは出るのかどうか、と思ったりもしてみちゃっちたりするのでした。
そうそう、田宮のモデルを引っ張り出してきましたら、
箱のここの部分にニコリとしてしまいました。
なんでやねん。
人形にやたらと力が入っている。
田宮のプラモデルにはいろんな小人形が付いてくることは恒例ですが、こんな牧歌的なのはチャーチルのみだと思いますよ。
そういえば、
戦車ゲームでは、英国軍にはおしゃれアイテムとして「紅茶とプティング」を購入することができます。
でもこれは洒落アイテムなので決して買ってはいけませんよ。洒落にならないくらい軍費を圧迫して、泣くことになります。
日本軍の場合はこれが「おにぎり」なのですが、、、
何て高価なおにぎりなのだ。