三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

袖壁と軒の出

2009年10月17日 10時01分37秒 | Weblog



写真は、先日取材してきた美幌モデルハウスのなかの
山岸建設さんの住宅です。
FAS工法のビルダーさんですが、デザインも頑張っていました。
無落雪で、シンプルなボックスタイプですが、
南側面の開口部をクローズアップした写真です。

美幌は太平洋側、というかオホーツク海側の気候で
冬の積雪はそれほどではなく、
太陽日射は比較的多く取得可能な地域。
そこで南側面に対して大きな開口を設けるスタイルができれば欲しい。
でも、そのためには断熱気密の技術レベルがしっかりしていないと、
大きな熱損失を招いてしまう。
そのあたりは、自信たっぷりに大きな開口を開けていますが、
逆に、冬場でも断熱気密がしっかりした住宅では、
オーバーヒートの問題が出てくる。
実際に夏場には、そういう心配が現実なんですね。
そこで、この建物では、南側面を大きく袖壁と屋根の軒の出を連続させて
ちょうど枠でしっかり囲むようにデザインしていました。
建築家・難波和彦さんの「箱の家」シリーズに着想したようなデザイン。
こういうプランは、まさに合理的で、
現代住宅のひとつの方向性を表しているといえますね。
ただし、この枠の太さや、力感がデザイン上の大きなポイントではあると思います。
全体のバランスや、表面の仕上げ材料の質感との調和など、
シンプルに仕上げるなかで考えなければならないポイントは案外多い。
ここでは、白っぽい枠に対して、窓面の方を黒っぽい色合いにして
よりくっきりと印象させています。
その分、枠の厚みはやや薄めで、奥行きも90cm程度と
軽やかな仕上げ。
奥行きを深くするほど、若干、コスト高にはなると想定できるので、
そのあたりのバランスを考えたデザインかなぁと、推察できました。
このようなデザインでは、日射の移ろいを反映して
建物のメインの南側が微妙な変化を見せていきます。
太陽光という、一番普遍的な要素をデザインに取り入れることができる。
まぁ、なかなかにうまい手法だと思いますね。

北海道で大きく発展したボックスタイプの住宅プラン。
わたしたち北海道人にすると、
冬の雪対策を考えていった結果、やむなく到達した無落雪屋根住宅の
必然的デザインであり、結果、屋根のデザイン要素が
奪われてしまった、というように感じるのですが、
難波さんのような設計者から、逆にこういう方向性を提示されて、
わたしたち自身も、そのデザイン性を磨き上げると言うことに気付いてきた、
っていうような思いがあります。
以前にも、東北地域の設計者のみなさんと話していて、
ボックスタイプのデザインに憧憬を感じていると聞いて、
「そういうものか」と思った経験があるのですが、
南と北、それぞれ、ないものに憧れるということなのだろうかと、
思い至ったことを思い出します。




北のくらしデザインセンター
NPO住宅クレーム110番|イザというときに役立つ 住まいのQ&A
北海道・東北の住宅雑誌[Replan(リプラン)]|家づくり・住まいの相談・会社選び
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