三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

擦文時代の復元住宅

2008年11月17日 06時41分16秒 | Weblog



きのうは釧路での講演、午後でしたので、
午前中、レンタカーを借りて、以前から調べていた擦文時代の復元住宅見学に。
っていうわけですが、最初は釧路市博物館から。
この建物は若くして死んだ地元出身の建築家・毛綱毅曠さんの設計。
釧路市長さんが釧路市内に建てる公共建築を
なるべく随意契約にして、毛綱毅曠さんの設計作品を残すようにしていたのです。
いまは経営的に厳しい、MOOや、釧路湿原展望台などがあります。
博物館は市内の春採湖に面して建てられています。
実はこの周辺に古代の竪穴住居跡があるはずなのですが、
地図には記載されているけれど、確認できませんでした。
その代わり、湖の水面で野鳥が群れをなして魚をねらっているようすが
遠目に確認することができました。
そういう様子を見ていると、大自然の営みのほうに
こちらの感覚が慣れてきて、
日常的な時間感覚を徐々に離れていく気がしてきます。
釧路は好きなのですが、それはこういう感覚に身を浸すことが
ごく短時間のうちに可能になる、それだけ自然が豊かに
都市の中でも残されているということです。

博物館を見学後、郊外、釧路湿原展望台近くの「北斗遺跡」へ。
ここに擦文時代の復元住宅があるのです。
駐車場に隣接して「展示館」があって、ここのなかにも
住宅が復元されていますが、
ここから徒歩で丘を登って歩くこと十数分で、
復元住宅群にたどり着くことができます。
きのうは時折雨が降ったりしていましたが、
こういう自然を感じながら訪れると、よりいっそうワクワクします。
小高い丘の上になっているのですが、
遠景で目に飛び込んでくる瞬間は、ちょっと劇的で
こんなに美しい「町並み」を見たのは初めて、のような気がいたしました(笑)。

ちょうど、たぶんメンテナンスを考えてだと思うのですが
屋内で囲炉裏に薪をたきつけていて、
建物上部、茅葺き屋根の所々から、むせぶように煙があがっていて
なんともいえず、美しい。
屋内に入ると、実に暖かい。
たっぷりとした茅葺きが断熱効果を上げていて、
しかも端部が土をかぶせられていて、地中を彫り込んでもいるせいか、
空気流動感も感じられないのです。
たしかに室内で薪を焚くと、煙くて目が辛いのですが、
その煙抜きと、室内採光を考慮してやれば、
かなりいい居住環境を得ることができそうな感じがいたします。
なにより、なんとも外観がユーモラスであり、
いかにも人間の住まい、という原初的なものを訴求してきます。

当時はいまよりも海水面が高く、
この住宅が建っている位置に水辺があったので、
そこに丸木船を浮かべて、行動的な生活を営んでいたのでしょう。
場合によっては交易活動用に、遠く外洋にでるための船なども準備していたかもしれません。
集落の周りにはヒエやアワ、その他の栽培も行っていたでしょう。
海山の食品に恵まれて暮らしぶりの豊かさが伝わってきます。
住宅の素材は当然ながらすべて自然素材で、
細かく観察すると、防水性能が必須の部分、
たとえば屋根の頂部の棟木には木の皮を剥いで裏返しにしたもので
被覆してありました。
本州地域との交易が活発な時期なので、
台所には「かまど」が造作されています。
そのかまどに土器を据えて、煮炊きに利用していたのです。
アイヌの人たちの食生活から類推すれば、
土鍋料理が基本食料だっただろうと思われます。
うばゆりや木の実、ドングリなどでデンプン質は採取していたし、
動物性タンパクは魚や、狩猟によるシカ肉などが食卓に供されていたのでしょう。
この周辺は大変住みやすい場所だったようで、
相当の長期年代の間、多数の住宅群が発見されています。

徒歩で、こういう住宅群に巡り会うと、
周辺の冬枯れの景色が一体となって、
感覚も、徐々にタイムスリップしてきます。
自然と一体となって、命を紡いでいくくらし、というものが
大きくこころに迫ってくるものがありました。
またぜひ訪れてみたいと感じた次第。
って、デジカメを忘れてきたので、せっかくなのに
あんまり写真に納められませんでした(泣)。
なんと肝心なところで使い切りカメラは途中で切れちゃったのですよ。 うむむ・・・。




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