最近、住宅相談を受けた方で、
鉄骨造の住宅のリフォームのご相談がありました。
聞くと、一度ある業者さんに相談した際に建築の図面を渡したのですが、
その後、その業者さんが倒産して
図面も行方不明になってしまったという、お気の毒なケース。
寒くてたまらない家、ということで、
困っていて、リフォームしたい。けれど、
相談するにも、特殊な構造なので図面がなければ、頼まれる方も困る、
というような事例でした。
何人かの建築家のみなさんと相談されて、
一定の方向性が出たようでした、が、
結構、こういうケースは多いものなんですね。
というか、経緯はどうであれ、図面保管がなされていない家は多い。
場合によっては、中古で買っても図面がないというのもある。
これまで、そういう決まりが社会的に存在していないので、
それでも中古売買が成立してきたとも言えます。
国でも、ようやく今回の超長期住宅政策で、
こういう問題の重要度を追認してきていて、
「記録の保管」方法に対して、啓蒙する方向にはなってきたようです。
こういう国の施策をリードしてきているのが北海道。
北海道では、かねてから「北方型住宅」の基準の中で、
インターネット上で記録を入力させて、北海道が責任を持って保管する、
というシステムを稼働させています。
地域自治体という、存続可能な社会組織が責任を持って記録を保持します、
ということなのです。
これに対して、国レベルのものでは、大手ハウスメーカーに
保管責任を持たせる。というような考え方になっているようです。
しかし、これでは、その会社が倒産したり、なくなった段階で
大変な社会混乱が生じてしまいます。
企業による「顧客囲い込み戦略」に国が協力するという結果しか生まない。
そういうことなので、さっぱり記録保管が進まない。
悲しいけれど、こういうのが現状なんですね。
北海道の「北方型住宅」の場合には、
建築途中の、たとえば「断熱施行」状況の確認、というものでも
写真としても証拠が保管されたりしているのです。
こうした安心感というのは、ユーザーにとって心強い。
写真は、江戸中期の住宅の記録古文書。
昔の農家住宅で大型のものは、資産価値も高く、
その記録はしっかりと「家宝」のように保管されてきて、
そういうものを「家督」相続という、責任の所在の明確化のなかに組み込んでもいた。
いわば責任感を相伝するようなシステムがあったのですね。
しっかり見ていくと、実に豊富な記録になっていて、
この時点の建築工事が「増築建て替え」であった事実がつまびらかになり、
しかも構造材の種類や材質といった基本的なことから、
誰々が、どのように支援してくれたのか、まで具体的に表記されている。
有力者は材料をプレゼントしてくれたり、
貧しい人も、労働奉仕してくれたり、工事中の職人のための食事の素材提供など、
まことに豊かな社会関係・システムが
こうした「普請」には、ぎっしり詰め込まれていた様が見て取れます。
現状と、こういう江戸期の知恵を見比べて、
さて、いまは進歩しているのかどうか、
考えさせられてなりません。う~む。
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