長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

『軍師官兵衛』  視聴メモ 第28回『本能寺の変』

2014年07月14日 17時33分37秒 | 日本史みたいな
『軍師官兵衛』第28回『本能寺の変』(2014年7月13日 演出・田中健二)


登場する有名人・武将の『信長の野望』シリーズでのだいたいの能力評価(テロップ順)

黒田 官兵衛 孝高  …… 知力84、統率力67
 (演・岡田准一)

徳川 家康      …… 知力102、統率力65
 (演・寺尾聰)

黒田 長政      …… 知力77、統率力63
 (演・松坂桃李)

明智 光秀      …… 知力93、統率力95
 (演・春風亭小朝)

井伊 直政      …… 知力69、統率力81
 (演・東幹久)

安国寺 恵瓊     …… 知力80、統率力31
 (演・山路和弘)

吉田 兼和
 (演・堀内正美)

織田 信長      …… 知力115、統率力108
 (演・江口洋介)

蜂須賀 小六 正勝  …… 知力74、統率力90
 (演・ピエール瀧)

本多 忠勝      …… 知力66、統率力84
 (演・塩野谷正幸)

榊原 康政      …… 知力45、統率力78
 徳川家康の重臣「徳川四天王」の一人。(演・中村育二)

斎藤 利三      …… 知力42、統率力71
 (演・小木茂光)

明智 秀満      …… 知力51、統率力67
 (演・鳥羽潤)

九条 兼孝
 (演・米村亮太朗)

森 蘭丸 成利    …… 知力67、統率力43
 (演・柿沢勇人)

黒田 兵庫助 利高  …… 知力78、統率力63
 (演・植木祥平)

小寺 氏職(うじもと)…… 知力38、統率力43
 小寺政職の嫡男。(演・柳下大)

小寺 政職      …… 知力44、統率力49
 (演・片岡鶴太郎)

羽柴 秀吉      …… 知力95、統率力94
 (演・竹中直人)

黒田 職隆      …… 知力72、統率力55
 (演・柴田恭平)


ざっとの感想

●前回のクライマックスでもそうだったんですけど、「敵は本能寺にあり!」の「本能寺にあり!」の部分をカットチェンジでリピートする演出って……ダサいよねぇ。そんなに強調しなくてもいいっつうの。センスのないダサさは最低よ。
 そういう映像処理って、つまりは「俳優の力量を信頼してないから」わざわざ助けてやってる、っていう考えなわけじゃないですか。失礼にもほどがあるよね! 小朝師匠、ちゃんととっておきの美声で言ってるじゃないですか。
 なんてったって本能寺の変なんですよ……こういう最大級に大事なエピソードでこんなくだらない演出をする人の気が知れません。

○あっ、お濃の方が信長のとなりで寝てる! うちゆき姫、今まで大変お疲れさまでございました……ちーん。
 『軍師官兵衛』の信長は、最期までお濃の方にやさしかったね。側室なんかひとりも出てこなかったですからね! 史実とはだいぶ印象の違う愛妻家になっていたような気がします。私も、お濃の方はこの時期には完全に信長とは別居状態(同じ安土城にいたとしても)で、それがさいわいになって江戸時代まで生き延びたという説に賛成なのですが、ここで華々しく散ってもドラマとしては OKか。
 いや! やっぱり秀吉と家康の時代を見届けて老いていくうちゆき姫も観たかったです! 残念無念。
 こういう感じでかたわらに必ず愛する女性がいたためか、『軍師官兵衛』では森蘭丸の存在感もかなりうすかったですよね。登場回数自体も少なかったし。序盤で精神的な不安定さをあらわすシーンも多かったんですけど、おおむね江口信長は健全的だったってことだ! 竹中秀吉も、今のところはずいぶんとクリーンですしね。

○スカイブルーに白の桔梗紋……明智軍の旗指物は、いつ見てもおしゃれだなぁ!
 でも、これが天下統一する迫力のある色かと言うと……なかなかむずかしい。センスとパワーは、また別物なんですよねぇ。

○あれだけの火縄銃が明智軍に備えられていたのだとしたら、本能寺の小姓たちは、旗指物を見て判断する前に、まずきな臭いにおいで警戒するでしょうね。いろんな技術の発展で火の恐ろしさがずいぶんと遠ざかった現代と違って、当時の日本人は物の燃えるにおいには非常に敏感だったでしょうし、ましてや火縄のにおいっつったら、即、戦争なんですから! こわー!!

○次の矢を信長に渡す補充役かと思ったら、お濃の方もひとりで弓矢を放ってるー!! なんという戦闘力か! 日頃のエクササイズは無駄ではなかった!!

○抜刀して闘うお濃の方が、基本的に片手持ちで日本刀を駆使しているのが妙に気になる……そんなの、女性が片手で自由に操ることができる重量じゃないはずなんですが……それもトレーニングのたまものなのか?
 はっ、思い出した!! お濃の方……じゃなくて、それを演じているうちゆき姫は、中高時代にそうとうなフェンシングの使い手(部活動です)としてその名を轟かしたお方なんだった!! なっとく!
 お濃の方の殺陣は、ヘタなんじゃなくて西洋流だったのだ。それならそうと、ちゃんと南蛮渡来の my サーベルをかまえてがんばってほしかった! でも、それだとお濃の方が明智軍を壊滅させてしまうという歴史の改変につながったかも……ええい、とことん西洋かぶれな夫婦よ!!

●毎度毎度、歴史ドラマで本能寺に攻め込む明智軍は、なんでこんなに弱いんだろうか……その鎧、ダンボール工作でつくってんのか!? 黒く塗るときは水性ペンキを使えよ、油性だと頭がクラックラしちゃうから!
 なんか、ゲーム『信長の野望』で本願寺派の城か北条家の小田原城に攻め込むときの自分と、このときの明智光秀がオーバーラップするような気がします。おまえら、利三も秀満もそろいもそろって……相手は寝巻き姿のおっさん! もっと根性決め込んでブチ当たらんかーい!!

○お濃の方は、「美濃国からとついできた姫」という意味のいわばニックネームで、いちおう本名は「斎藤帰蝶」ということになっているのですが、これは江戸時代の史料が根拠になっているため、本当にそういう本名だったのかどうか信憑性はうすいようです。私の大好きな大河ドラマの『信長 KING OF ZIPANGU 』(1992年)では帰蝶説が採用されていましたね(演じたのは菊池桃子さん!)。
 そのためか、今年の『軍師官兵衛』では信長に一貫して「お濃」と呼ばれ続けていたわけだったのですが……死ぬときまでニックネームで呼ばれるっていうのも、どうかね。
 私は山形県出身なんですけど、自分のいまわの際に嫁さんに「山形さん!」って呼ばれるのは……おもしろいけど、ちょっとイヤかな。
 最期くらい、本名で……呼ん……で……

●信長「お濃……わしの女房は、そなたでなければつとまらなかった!」
 ウソおっしゃい! あなた、わかってるだけでも10人前後の側室がいたでしょ!? リップサービスもいいとこですよ!! 信忠も信雄も信孝も羽柴秀勝も、み~んな側室とのあいだにできた息子さんじゃないの。
 「なに言ってやがんだ、こいつ……」と、お濃の方も鼻で笑って天に召されたことでしょう。誰が正室としてそいつらの面倒見たと思ってんだバカヤロー!!

○信長さん、あんた、本能寺のいちばん奥の間に自分の自画像を飾ってたのか……なんというナルシシズム!
 いや、ふつうに考えたら、たまたま本能寺の住職が信長ファンでプライベートに飾ってた、ってことになるのかな。だとしたら、信長も住職も、どっちもなんかこっぱずかしい! えっ、ウソ、本人!? キャー見ないで!!

○「生きるも死ぬも一度かぎり! 存分に生きたぞ!!」
 いいねぇ~。私も、そういうことがちゃんと言い切れる49歳になりたいもんだねぇ。

●吉田兼和と九条兼孝はそんなにフランクに立ち話できる関係じゃないんじゃないの? まぁ、こんなクソシーンあってもなくてもど~でもいいけど。

○信長暗殺の報にふれて、ずいぶんあっさりと自分も自害すると腹を決める徳川家康。それにしても、今週も寺尾さんの右目の調子は最悪ですね……
 でも、このシーンでの寺尾さんの異常に淡々とした演技は、死を覚悟しているというよりも、どう見てもそういうポーズだけを家臣たちに見せつけて、家臣たちの奮起と逃げるためのナイスアイデアを喚起しているとしか思えません! さすがは策士!!
 それに、徳川四天王中の三人もいっしょにいるんですからね! さらに忍者ハットリくんがくわわったら、もう余裕で大丈夫だろう!!

○あららっ、ここで小寺政職も、ご最期? 確かに政職の死亡時期は1582年と84年の2説があるわけなんですが、それにしてもなぜ備中国高松に潜伏していたのか!? 備後国の鞆の浦幕府に参加していたとかと思っていました。
 今回のような、人生の選択をあやまった小人物の哀感あふれる臨終という設定も実に味わい深くてよかったのですが、一度、あの吹越義昭と小寺鶴太郎との魅惑の競演も観てみたかった! 残念&お疲れさまでした。

●う~ん、やっぱり小寺政職の一人息子の斎(いつき)が元服して小寺氏職になっちゃって、演じている俳優さんが相澤侑我くんじゃなくなっちゃった! これも残念で仕方ありませんが、引き続きいいひとそうだ!

●官兵衛「なに……!?」
 長谷川宗仁からの密偵の書状を一読して驚愕する官兵衛。
 なんと……現・織田家当主である織田信忠の死がいっさいドラマで描かれておらぬとは!! ボンボン信忠の、小寺政職以上にかわいそうな最期に、戦慄を隠せない官兵衛であった……

○なにせ、NHK 大河ドラマの主人公なんでそういうことは明言できなかったわけなのですが、たぶん、官兵衛が善助に密偵の世話を頼んだときの「ねぎらってやれ。」という言葉には、2人だけにしか通じない符丁で「殺しといてね☆」という意味があったんでしょうね……それに対する善助の返事が重たかったもんね。そのくらいの秘密保持をしなきゃ、戦国武将なんてやってらんねーってばよ!!

○非常に有名な官兵衛の「御運が開けました」発言なわけですが、ここでものすごいブラックキャラになる官兵衛もさることながら、それと同時に、そんな官兵衛を有能な腹心とは別に「恐ろしい敵にもなりうる野心家」と初めて認識した秀吉の殺気も、ものすごかったですね!
 なるほど、ここが後年の「狂った秀吉」の萌芽になると竹中さんは観たわけね! ここからどうなっていくのかねぇ~。ワクワクします。


結論、「第29回がとてもたのしみです。」

 とにかく怒涛の展開! 言うまでもなく黒田孝高の生涯から観れば、有岡城幽閉と関ヶ原合戦にならぶ大転機となった本能寺の変がついにやってきてしまいましたね~。江口信長はここで堂々の退場なんですが、官兵衛も秀吉も家康も、盛り上がりはまさしくここからであります! いよいよ本腰を据えて、我が『長岡京エイリアン』も『軍師官兵衛』を注視してゆく所存!!

 視聴率17.5% か……ここからぐんぐん上がっていけばいいんだけどなぁ。ほんと、お楽しみはここからなんですから!
 来週、久しぶりに将軍・義昭公が出てきてハイテンションにはしゃいでくれるような予感、大♡  まぁ、出たって出なくたって、歴史の趨勢にはまるで影響しないんですけどね……
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しみじみ堪能、台風一過 HOLIDAY  ~お芝居2本と、ハイボール~

2014年07月11日 23時38分18秒 | すきなひとたち
 ぺいやぁ~っとぉ! どうもこんばんは、そうだいでございます。みなさま、週末の本日も大変お疲れさまでした~。夏休み、いよいよ近づいてきましたねぇ!

 まぁ、亡くなられた方も出たので大きな声じゃ言えないんですけど、少なくとも関東地方では台風8号、たいしたことなかったよね……昨日の風はものすごかったですけどね。
 昨日はもう、仕事場でも明日11日に台風が関東に来るらしいという話で持ちきりで、関係各所からも明日は短縮営業になるとか、お客さんからのキャンセルのお電話が相次いだりしてたんですが、フタを開けてみたらごらんの有様。朝からものすんごいピーカン炎天下になってしまいましたね。まさしく台風一過のすばらしいお天気!

 本日11日は私、もともと貴重なお休みをいただいておりまして、東京に出かけてお昼と夜にお芝居をハシゴするつもりだったんですね。
 だもんで、せっかく休みをとったのに、ちゃんと2本とも観に行けるんだろうか……と昨日はかなり気をもんでいたのですが、そんな心配はまったく無用だったということで、予定通りに出発することとあいなりました。
 余談ですが、実はおいら、完全なる給料日前のためにからっけつの状態でよう。今日のお芝居は1本目のチケット代が4500円(出演者予約割引料金)で、2本目が4800円ときたもんだ! たった一日で虎の子の1万円が吹き飛ぶスペシャルデーときたもんだ~い。ああ、明日から給料日までの数日間の地獄が恐ろしくてたまらない……


Pカンパニー第13回公演 『スパイものがたり』(2014年7月9~13日 池袋シアターグリーン BOX in BOX シアター)
 作・別役実、曲・小室等、演出・林次樹

 ホントにまぁ、わたくしという人間はお芝居の用事くらいでしか池袋に行かないのでありまして。またしてもシアターグリーンへ直行でございます。そういえば数年くらい前、時間のあいたときにはよく新文芸坐のオールナイト企画にも行っていたんですが……最近はもう無理ですかね~。土日に遊びに行けないんだよなぁ、どうにも!

 ということで今回は、別役実の戯曲を小室等の楽曲で送るというミュージカル仕立てのお芝居を観に行きました。ヒロイン役の女優の近藤佑子さんのお誘いを受けて観に行ったのですが、まぁ~シアターグリーンにたどり着くまでの道ゆきが暑い、暑い! これから来る夏が思いやられるよ、ホント……

 『ドラキュラ伯爵の秋』とか『マッチ売りの少女』とか、ちまたにあふれる有名キャラクターのイメージにあえてケンカを売り、そこから新たなる世界の地平を切り開くという手法が定番の別役実ワールドなのですが、今回はニヒルでダークなはずの「スパイ」というヒーロー的存在を、これでもかというほどに破壊しつくしていました。
 『スパイものがたり』の初演は1970年で、その当時にはスパイといえば映画の「007」シリーズが大ヒットしており、すでに第6作『女王陛下の007』までが公開されていたようです。そりゃあもう、めっぽう強くて頭もよくて、おまけにゃ女性にモッテモテという世界を股にかけるスパイさんに、別役実が挑戦しないわけがなかった! 映画の世界でのスパイ脱構築は、すでに1967年に番外編『007 カジノロワイヤル』(主演・ピーター=セラーズ)がなしとげていたのですが、この『スパイものがたり』は、驚くほど日本的な町に、ある日突然スパイが空から降ってきた、という『天空の城ラピュタ』みたいな始まり方で開幕してゆきます。いや、空から降ってくるのはおじさんなんですけどね。

 空から降ってきたスパイは、かといって特に何かやるミッションがあるというわけでもなく、首にかけられた赤い紐が電柱に結びついたために所在なく電柱のまわりをうろつくことになり、おしゃべりな主婦たちやしじゅう泥棒を追いかけている制服姿のおまわりさん、郵便配達夫にガラクタ屋のおじさん、そして絵本を持った夢見る少女といった、いかにも平和でいかにも昭和の日本的な人々と触れあっていきます。ミュージカルなので楽曲によっては群集コーラスもあったのですが、その中に傷痍軍人の扮装をしてる人もいたよ。え、傷痍軍人!? そんなの1970年でもなかなか見かけなくなってなかった?

 お話はもう、まさしく別役実といった感じのノスタルジックな寂しさに満ちたものだったのですが、そこにスパイと少女とのふれあいが生じることによって暖かさがともり、そしてスパイという「名前を持ってはいけない存在」を脱して、ひとりの個性ある人間として世界に飛び出したい、と思ったがために自らの手でその世界を崩壊させてしまうという悲劇に向かっていく流れは、まわりまわって再び孤独な生き方に帰るしかないスパイの哀しみを実にしみじみとつづってくれていました。
 また、小室等の音楽がいちいちいいのよねぇ。プロローグのスパイつるし上げシーンでかき鳴らされるエレキギターの感じがまんま J・A・シーザーでビックリしてしまったのですが、全曲にわたってやさしく愉快なしみじみ名曲の数々! うん、これは演劇だからといってそれぞれ1回ずつしか聴けないのが非常にもったいない! 何回でも聴きたいですよね、『雨が空から降れば』とか『ねこの歌』とか。

 こういう感じでほのかなロマンスもあり、にぎやかなダンスもあり、笑えるセリフのやりとりもありといった全体的に盛りだくさんな内容だったのですが、やっぱりそこで終わらないのが別役ワールドといいますかなんといいますか。
 突然世界に降り立ってきたスパイが、期せずして自らが招いてしまった世界の崩壊を観て、静かに荒涼とした舞台を去ってゆきます。ところが、物語はそこで終わらず、ほんとうに唐突に、今までセリフさえもなかった「小学校の先生と生徒3人」が登場して「最後の授業」を行うというエピローグに突入してしまうのです。きたきたきた~、別役ワールドの真骨頂♡  一見、それまでのスパイの物語との関係性がまるでない!!

 ここで先生が行う授業は非っ常~に意味深長な内容で、「へのへのもへじの謎」とでもいうべきとてつもない問題を子どもたちに突きつけて、答えを出さないままチャイムが鳴って終了。そのまま、黒板のへのへのもへじを無言で見つめる先生とスパイが2人ならんで暗転し、この『スパイものがたり』も一巻のおしまい、となります。
 この謎というのがね~、人を喰っているというかバカにしているというか、一生かかっても解けないようでいて、ある朝に目覚めたときに「あっ、そうか。」とわかってしまいそうなとりとめのなさに満ちているんですよね。この問題の魅力は、先生の言ったことを要約したのではまったく伝わりません。やっぱり一字一句、別役さんのつむいだセリフを俳優さんの間合いを通して空気中に響かせなければ生きてこないものなんですよね。おもしろいなぁ、ほんと。
 私はこの問題のくだりを観て、『スパイものがたり』全体についてもそうでしたが、秩序のない世界をより良いものにしようとして秩序を作ったがために、かえって世界自体の命を失う結果を招いてしまったという、古代中国の「混沌の怪物」の故事を強く思い出しました。つまり、スパイの迷い込んだあの世界も「へのへのもへじ」も、その正体がなんなのかを突き詰めてはならない「混沌」だったのではなかろうか、と……しかし、具体的にスパイらしい活動はまるで行っていないものの、「スパイ」という肩書きだけは常にはっきりとぶら下げていて、自らもそこにすがってなんとか正気を保とうとしていたスパイにとっては、そんな「ど~でもいいじゃない、なんでも」なあいまいさが息づいている世界は、いくらうらやましがっててもたどり着くことができない理想郷に映っていたのでしょうか。まさに、愛と憎しみは紙一重……

 とまぁ、そんなこんなで思う存分に堪能した別役ワールドでございました。ミュージカルということで、後半までず~っと甘口めなのかしら?と思って観ていたのですが、完全にド辛口なエピローグで「さすが!」と超満足したお話でしたね。
 俳優さんについては、やっぱり主演のスパイ役の高橋広司(ひろし)さん、郵便配達夫役の宮川知久さん、あとはガラクタ屋のおじさん役の本田次布(つぎのぶ)さんあたりが目立っていましたね。う~ん、そりゃまぁ年齢を重ねたアドバンテージがあるのは当たり前なんですが、こういったベテラン陣に伍する魅力を持った若手俳優さんがあまり目立たなかった、というのはちょっと物足りなかったですね。ソツはないんですけどね、足りないのよ、なんか。キャラクターの厚みというか半生というか、危険性が。
 私をこの公演に誘ってくださった、ヒロインの少女役の近藤佑子さんも歌とダンスで魅了してくれたのですが、なんつうか、男性キャラから見ての「理想の女性」キャラって、なにかとやれることが窮屈になるんですかね。出番自体も思ったより多くはなかったんですが、いやいや、もっと長い時間、舞台の上の近藤さんが観たかったな! 「不思議な少女」ってだけじゃあ手数が少なすぎるんですよね~。そりゃあ歌も振り付けもあったので大変だったのでしょうが、「正直やり足りなかったでしょ~? もっと引き出しあるでしょ~?」と、いじわるに申し述べさせていただきたい! 客ってのはまぁ、かくも無責任でのんきなものなのであります。

 あと雑感としては、やっぱりどんな裏設定があったのだとしても、「出番のない俳優が退場せずに他の俳優の演技を舞台の周辺から眺めている」という演出はそうそう安易に使うべきではないんじゃ?、ということ。仲良しクラブの発表会……とまでひどく言うつもりはありませんが、なんか常に「芝居はこうやって真剣に観ろよ!」とお手本を見せられているような気がして、少なくともいい気分に作用するものではありませんでした。いや、別にイヤだとまでは言いませんよ。言いませんけど、つまんなければ眠るくらいの権利は、ちゃんとチケット料金を払ったお客さんにはあるような気がするわけ。今回の『スパイものがたり』のクオリティで眠る人はそうそういなかったとは思いますが。

 本筋には関係ないんだけど、本田次布さんのヒトラーのものまねが地味に似てた! 手の動かし方がそっくりなんだよなぁ~。こういう細部のクオリティが高いひとって、やっぱり全体としても見飽きないですよね。俳優ってやっぱり、生産性のない情熱の積み重ねがいつの間にか何かを生んでいる、実に人間らしい職業なんですねぇ。すごいもんだわ、やっぱ。


UMAN プロデュース・小劇場シリーズ 『やわらかい服を着て』(2014年7月10~13日 下落合 TACCS1179)
 作・永井愛、演出・宇治川まさなり

 そったらこったらで午後4時すぎにシアターグリーンを出たあと、私は引き続きの炎天下のもと、明治通りと新目白通りを歩いて、下落合の劇場「 TACCS1179」を目指しました。池袋と下落合なんて、電車で乗り継いで30分もかからない距離にあるんですが、そこはわたくし、持ち前の貧乏根性で歩いて向かうことにいたしました。いちいちお金なんて使ってられませ~んっと! なんせ給料日前。
 道も簡単だし道のりも4km 弱ということで、1時間もかからないうちに下落合に着いたわけですが、都電荒川線とか鬼子母神とか、いちいち味わい深い風景がチラリホラリしていい感じの散歩ルートでしたね。歩いてみて初めてわかったんですけど、池袋から下落合って、ほんとにガクンと谷底に向かって降りていくような高低差があるんですね! 東京の起伏ずぁバカになんねぇもんだなやぁ! 登っていく逆ルートじゃなくてホントによかった……
 とは言いつつも、歩いていくうちに空は炎天から曇天に見る見るうちに変わってゆき、暑い日名物の夕立も降りだすくらいの変化を見せてきました。傘をさすほどでもないか……と思っていたらだんだん本降りに! しかたなく、コンビニのフランクフルトあたりを買い食べながら雨宿りをして開場時刻を待つ次第。今日もやたらとせわしない一日になってしまった……

 さて、開場の午後6時30分あたりに入場してみると、客層が意外と女性多めになっていることに少なからず驚きました。
 というのも、今回のお芝居には、つい先月に挙行された AKB48のニューシングル選抜総選挙で第71位(アップカミングガールズ枠)として悲願の当選を果たし、「土下座で感謝」というアイドルらしからぬリアクションで話題となった、田名部生来(みく チームB所属 21歳)さんが出演しているということで、もっとむさくるしい男性ファンでごったがえしているかと思っていたからです。確かに、会場には田名部さんのファン向けに増設したかと思われる舞台かぶりつきの座席列が用意されていたのですが、全体的にかなり大人しいジェントリーなお客さんがたで満席になっているという印象を受けました。当たり前ですが、上演中に声援を送るような人もおらず。

 ただ、現役のアイドルさん、しかもあの AKBグループ本社のベテラン選手が出演しているとはにわかに信じがたいこの会場の静けさは、田名部さんのファンに特に紳士淑女が多いからというわけでもなく、どちらかというと作品に対する「先入観」にお客さんが飲まれて少なからず身構えてしまったから、という理由のほうが大きかったのではないのでしょうか。

 今回の『やわらかい服を着て』は、2006年5~6月に東京・新国立劇場で初演された作品なのだそうですが、その内容は、2003年3月に開戦する可能性が濃厚になったアメリカによるイラク戦争を止めようとする世界規模での反戦活動に賛同した、日本の小さな人道支援 NGO団体「ピースウィンカー」の、2006年3月までの3年間の日々のうつろいを描くというものです。

 反戦団体、イラク戦争。劇場ロビーには当然のように、現在も続くイラクの貧困状況を助けようと募金を呼びかける実際の NGO団体のポスターが大きく掲示されており、開演前の会場でも、募金をうったえる内容のチャリティソングと、イラクの現状をうつした写真のスライドショーが展開されていました。
 う~む、重い! 率直な印象として、開演前の雰囲気はただひたすら、「重い」の一言!! これでお話が始まったら一体どんなことになってしまうのだろうかと、正直言って不安しかない心持ちで座席で固まってしまいました。この作品もまた、出演している俳優の永栄正顕さんに誘われて観に来たお芝居だったのですが、大丈夫かしら、ちゃんと楽しめるのかしらとハラハラしながら物語は開幕。その結果はと言いますと……

 いやいや、これがまた、ひっじょ~におもしろい舞台だったのよねェ!!
 観る前に先入観で勝手にかなり警戒してしまっていたのですが、開演してからの気持ちいいくらいの「良い方向への裏切り」の連発がすごいすごい! あらすじを見てもわかるように、これはごく最近ながらも過去の社会状況を扱っている複雑な群像劇になっているわけなのですが、単なる説明ゼリフの羅列にせずに、しっかり生きた会話として堅苦しい情報を観客に伝えてくれる永井愛さんの脚本テクニックには本当に脱帽してしまいました。帽を脱いじゃったよ!!

 つまり、このお芝居の中心には確かに人道支援のための NGO団体という「近そうで遠い」集団があるのは確かなのですが、そこがそれだけではなくて、それぞれの個人的な思惑もあったうえで集まっていて、みんな目指すところは同じであるはずの目的に対してだって微妙な温度差はあって、時間が経てばそれなりに亀裂も入って惚れた腫れたもあって、ただ、それでも集まって生きていこうとする「集団」って、いったいぜんたいなんなんだろう? という解けない謎を提示しているわけなのです。
 平和を目指して無償の活動に邁進する若者たちだって、ただひたすら路上で目を輝かせて大きな掛け声をはりあげるだけの気持ち悪い集まりではないのだ! ということを、この作品は実にわかりやすく、肩ひじ張らずにざっくばらんに伝えてくれるのです。うまいもんだねぇ、ほんとに!

 演じる俳優さんがたも、序盤こそ確かに「俺たちがイラク戦争を止めるんだ!」という高揚感にギラギラしてはいたものの、無情にもごくあっさりと開戦してしまう戦争に次の手を考えようとあせりだし、「戦争は仕方ないことなんじゃない? イラクは悪者なんでしょ?」と漠然と固まってしまう日本の世論に絶望し、やがては同じ団体にいる仲間とも衝突してしまうという濃密な3年間の時間の流れを、実に的確に演じきっていると感じ入りました。
 役者さんの中では、理想のために、活動に支障をきたす一流企業勤めを辞めてまでがんばろうと身を削り、その結果、なけなしのアルバイト生活に汲々として仲間たちに醜態をさらしてしまうリーダー・一平を演じる佐伯太輔さんの、情けなさも混み混みでの熱演もすばらしかったのですが、個人的には、そんなリーダーの首ねっこをむんずとつかんででも団体を存続させていこうと強くなっていく女性・シンコを演じたまつながひろこさんに惚れてしまいました。うん、こういう頼れる人は必ずいなきゃいけない!
 あと、ただ声がでっかいだけの能天気なキャラなのかと思っていたら、クライマックスであわや解散かという危機までをも出来させるトラブルメイカーになりさがってしまう青年・純也を演じた八敷勝さんね! この汚れ役がまたよかったんですよ。繊細な性格の人間だったからこそ問題を起こしてしまうわけで、その心のこまやかさをしっかり目で演じきっていたテクニックには驚いてしまいました。あ、この人ほんとはうまかったんだ!みたいな失礼な驚き。

 そして話題の田名部さんなのですが、彼女がまたうまいんだよなぁ!
 ちょっとその役にとどめておくにはもったいないおだやかな後輩・ひろみを演じていた田名部さん。セリフもさほど多くはなくて見せ場も泣き出すシーンくらいしかなかったのですが、セリフがないときにちゃんと演技しているのに妙に感心してしまいました。本職アイドルというオーラを消せるというのは、これが当たり前のようで難しいテクニックなのよね! これができる田名部さんは実に器用な方ですよ。演技が好きそうな素地があってすごく好感が持てました。
 お酒が呑めるようになったらアイドルもベテランですからね……好きこそ物の上手なれ! アイドル界屈指のヲタクと評される田名部さんの未来の選択肢は多く、そして明るい。

 この『やわらかい服を着て』は、NGO を扱った作品でありながらも、NGO だけに限定した狭いお話には決してならずに、お客さんひとりひとりが日常で関わっている集団の中で自然に起こる、生身のあれこれを強く想起させる内容になっていると感じました。私の場合は今現在働いている職場もさることながら、それ以上にかつて入っていた劇団のことをあれこれ思い出したりもしつつ。そりゃ、人が一ヶ所に集まればいろ~んなことがあるわけでありまして、ね……
 このお芝居、なにがいいって、舞台が3年間分ず~っと同じ、町工場の一角を借り受けた事務所の一幕物になってるのがいいんですよね! もともとは殺風景なコンクリート打ちっぱなしの空間だったのだとしても、さまざまな人間の笑い、叫び、汗と涙を包み込んで、その場所はその場所ならではの体温を持つようになり、おのおのの記憶の中に定着していくんでしょうね。しみじみ。


 終演後、こんなに観る前と観た後で印象の変わったお芝居も珍しいなぁ、とにかく良かった良かったと思いながら座席から立ち上がってあたりを見回してみますと、やはりおしなべて他のお客さんがたも満足顔。それにしても、アイドルのファンじゃなかろうかと思える外見の方のパーセンテージが本当に少ない客層で、どちらかというと真面目に NGOのお芝居を観に来たという年齢層高めの方々か、芸能関係で働いてらっしゃるように見受けられる「慣れた雰囲気」の大人のお客さんがほとんどでしたね。まぁ、アイドルヲタクっぽい外見のお客さんの中には、間違いなく私もカウントされているわけなんですが……アイドル好きではありますが、拙者、流派が少々ちがっておりますれば。
 そういえば、お客さんの中にもびっくりしてしまうような美男美女が少なからずいらっしゃっており、おそらくは同年か先輩あたりの出ている舞台を勉強しに来たのだろうな、という熱い視線で、私の隣のイケメンさんも舞台を見つめていました。まじめだねぇ~。

 あと、私の斜め後ろあたりにも、キャップをかぶっていても並外れた美貌を持っていることが一瞬でバレてしまうような、色白ですらっとした美女が座っており、ていうか、全体的に黒めの服装なのにそのキャップだけが明るいエメラルドグリーンであるがために、やけに目立ってなんでキャップをかぶっておられるのかがよくわからなくなっている方がいらっしゃいました。目立つ帽子をまぶかにかぶる……帽子のアイデンティティそのものに疑問を投げかける哲学的命題か!? なぞなぞ美女!?


 私はその後、衣装から着替えてロビーに出てきた永栄正顕さんにお礼を申し述べたのですが、永栄さんも、官僚でありながら NGOに所属して活動し、反体制の立場も辞さない異色の頭脳派というおもしろい役を演じていました。こんな、5人戦隊のグリーンみたいなポジションを演じる方じゃないような気がする熱い俳優さんなんですが、そのギャップがとてもよかったですね。あろうことか終演直後に、単なる客である私に缶コーヒーをおごって「どうだった?」とたずねてくる永栄さん。その熱量よ!

 ひとしきり話をすると、永栄さんは「この回を観てた知り合いの女優2人とこれから会うんだけど、いっしょに行かない?」と誘ってくれましたが、私は翌日がいつもどおりの朝6時30分おきだったので泣く泣く辞退させていただきました。すると永栄さんは「じゃあ、これ持ってってよ。」と、おそらくは公演関係者にふるまわれたかと思われる「タカラ焼酎ハイボール・レモン味350ml 」をくれました。いや、私アルコールが……ありがとうございます!! ていうか、呑めないの知ってるでしょ!?

 そんなこんなで、永栄さんと話をしながら西武新宿線に乗ろうとしたのですが、下落合駅で永栄さんは「あっ、いたいた。オーイ。」とホームにいた2人の女性に声をかけました。
 すると、あっ、お2人のうちの片方が、例のエメラルドグリーンキャップのなぞなぞ美女! というか、あれっ? よくよく顔をつき合わせてみると、このお2人、私も以前にどこかで拝見したことがあるぞ。

「こちら、年明けの舞台でいっしょだった、劇団わらくの大迫綾乃さんと、劇団B級遊撃隊のまどか園太夫さん。」

 ああぁ~! はいはい、2月に私も観た『壁あまた、砂男』のお2人だったんですね! いやまぁ、舞台で拝見したよりもずっと美人さんで!!

 結局、「美人女優2人をほっといて帰る気か、こんにゃろ!」という永栄さんのお誘いを断腸の思いで断って帰路についたのですが、内心では、真夏になろうかとしている今現在の段階でも、近年まれにみる大雪がどうこうとか言っていた時期に観た『壁あまた、砂男』の観劇記が我が『長岡京エイリアン』でまったく完成していない(2014年7月11日時点)ことに非常に情けなくなる思いで、まさしく「あわせる顔がない」というていで3人のもとを辞去したのでありました……ほんとすんません!


 いろいろあって今日も充実した時間に感謝だったわけなんですが……もらったこのハイボール、どうしよ……
 もうアレだ、カゼひいたりしたときに呑むか、薬酒みたいな感覚で。永栄さん、今回も素敵なお芝居をどうもありがとうございましたァ~ん。
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プリキュア meets ミシマ  映画『ハートキャッチプリキュア!花の都でファッションショー……ですか!?』

2014年07月09日 23時15分08秒 | アニメらへん
映画『ハートキャッチプリキュア! 花の都でファッションショー……ですか!?』(2010年10月公開 東映 70分)

 TV シリーズ『ハートキャッチプリキュア!』(2010年)の単独映画作品である。監督にはプリキュアシリーズでは初監督となる松本理恵を起用し、女性監督としてもシリーズ初の起用となった。
 音楽は TVシリーズと同様に高梨康治が担当し、物語の舞台となるフランスの首都パリを意識してアコーディオンを用いた BGMが独自に作曲されている。
 全国163スクリーンでの公開ながら、劇場公開初日2日間で興行収入2億300万円、動員は18万人を記録。公開6週目の時点で興収が8億5千万円を突破し、最終的には9億3千万円を記録した。
 映画版プリキュアシリーズの名物である劇場特典ミラクルライトは、点灯させると花柄の映像が浮かびあがる「ミラクルフラワーライト」が配布された。プロローグでの妖精たちによる「『ミラクルライト』の使用説明」は、本作では行われていない。
 2011年11月、世界各国の子ども向け映像コンテンツを取り上げるアメリカの業界誌『 Kidscreen 』が主催する「2012 Kidscreen Awards 」のキッズ向け TV映画部門の最終候補に選ばれた。東映アニメーション制作の作品が同賞にノミネートされたのは同社作品史上初である。


あらすじ
 えりかの母・来海さくらがファッションショーを行うためパリに向かうことになり、オープン記念のショーではつぼみたちが特別ファッションモデルとして参加することに。しかし、そのパリでは伝説上の怪物である「ルー・ガルー(狼男)」が出没するという噂がささやかれていた。
 そんな中、コウモリ型の新種スナッキーに追われる謎の少年オリヴィエを助けたつぼみたち。彼を追っているのは、かつて封印されたと言われていた砂漠の使徒・サラマンダー男爵。彼は不思議な力を持つオリヴィエを利用して世界を破壊しようと企んでいた。


おもな登場人物
花咲 つぼみ / キュアブロッサム …… 水樹 奈々
 花を探してパリの街を散策している途中で銀髪の少年・オリヴィエと出会う。出会った経緯から一番オリヴィエを気にかけるようになる。プリキュアシリーズとしては初めて、プリキュアに変身した姿で髪を下ろすシーンが登場した。

来海 えりか / キュアマリン …… 水沢 史絵
 母のファッションショーの衣装作りをしている。オリヴィエに自分の過去のコンプレックスを語る。

明堂院 いつき / キュアサンシャイン …… 桑島 法子
 つぼみたちと一緒にパリへやってきた。えりかの代わりに買い物にいった際、オリヴィエに自分のことを語る。

月影 ゆり / キュアムーンライト …… 久川 綾
 パリへやって来たついでに、かつてフランスで行方不明となった父親を探そうとする。その後、オリヴィエとの散歩中にサラマンダー男爵に遭遇し、彼の過去やオリヴィエとの関係を知るが、彼を父と慕うオリヴィエの気持ちを意に介さない男爵に怒りを露わにする。

来海 さくら …… 氷青
来海 流之助 …… 遠近 孝一
来海 ももか …… 伊藤 静
 フェアリードロップのパリ出店にともない、パリへやって来る。

シプレ …… 川田 妙子
コフレ …… くまい もとこ
ポプリ …… 菊池 こころ
 プリキュアたちと一緒にパリへやって来た。

コッペ
 物語のクライマックスでプリキュアたちの窮地を救うために人間の姿で現れ、最終決戦に加勢する。

オリヴィエ …… 大谷 育江
 白いマフラーを巻いた銀髪の少年。本当の名前は本人も知らず、つぼみが庭に咲いていたキンモクセイ(フランス語で Olivier odorant )と、彼のこころの花がこれだったことにちなんで「オリヴィエ」と呼ぶようになった。サラマンダー男爵からは「ルー・ガルー」(フランス語で「狼男」の意)と呼ばれている。彼のこころの花にはオオカミが憑いていて、デザトリアン化した時はプリキュア・ピンクフォルテウェイブを無効にした。
 5歳の時にモン・サン=ミシェルで母親と生き別れになった孤児で、礼拝堂で大天使ミカエルに「パパとママがほしい」と願っていたところ、封印されていたサラマンダー男爵と出会う。その後数年間は男爵と共に世界を旅していたが、やがて彼の野望で額に赤い宝石を埋め込まれ狼男に変身させられてしまう。男爵の力の源であるクリスタルを奪って逃走する途中でつぼみに出会い、行動を共にすることになる。
 擬似的な父子関係にある男爵とは互いに心を支え合っており、彼とつぼみたちとの間で揺れ動く。
 担当声優の大谷は、後年のシリーズ作品『スマイルプリキュア!』(2012年)で、妖精キャンディを演じている。

キュアアンジェ
 こころの大樹がサラマンダー男爵の出現に危機を感じ、400年前に初めて生み出した「初代プリキュア」。サラマンダー男爵を封印した。
 髪型は金色のロングヘアーで、左右に天使の羽翼の形をしたティアラのような装飾をつけている。銀色の甲冑風のコスチュームを身にまとっていて、左肩に赤いバラがあしらわれており、ステッキと仮面を装備している。
 変身者の本名や国籍及び持ち技などは全て不明。「アンジェ」とはフランス語で「天使」の意味である。イメージシーンとサラマンダー男爵のセリフにのみ登場。

サラマンダー男爵 …… 藤原 啓治
 400年前に砂漠の使徒の王(TV シリーズ本編に登場したデューンと同一の存在なのかは不明)が初めて地球に送りこんだ、最初の砂漠の使徒。常にステッキを持ち歩く紳士のような姿をしており、顔の左半分を仮面で覆っている。「虚無」から生みだされた存在である。
 ステッキの先端に付いている「赤いクリスタル」は、炎を操る能力をはじめとする力の結晶であり、これがないと人間のデザトリアン化以外の能力が使えなくなる。それでもキュアムーンライトを翻弄するほどの戦闘能力を持っている。
 性格は飄々とし、単独で行動するため、ゆりには「砂漠の使徒らしくない。」と評されている。これは、自分の居場所がどこにもない絶望や虚無感によるもので、あわれみの目で見られると激怒する。
 誕生したころから自分の存在意義に疑問を抱いており、世界を破壊することで砂漠の使徒の王の内心を知ろうと考えたが、「こころ」そのものを嫌う砂漠の使徒の王の怒りをかい、砂漠の使徒から追放された。その後、キュアアンジェによってステッキのクリスタルを世界中に飛散させられ、自身もモン・サン=ミシェル礼拝堂に封印された。
 オリヴィエによって封印が解かれたことで現代に復活し、オリヴィエとともに世界各地を旅しながら砕け散ったクリスタルの力を集めている。
 過去の経緯から、砂漠の使徒とプリキュアの双方に対して激しい憎悪を抱いており、どちらも消し去ることで自身のこころを満たそうとしていた。その一方で、封印を解いたオリヴィエとは擬似的な父子関係にあり、互いに支えあっていた。永きにわたって封印されていため、復活しても肉体は崩れかかっている。
 物語のクライマックスでは力が暴走し、孤独と憎しみを爆発させて巨大なドラゴンの姿に変身し、炎でパリを焼き尽くそうとする。
 サラマンダー男爵とオリヴィエは TVシリーズ本編の第48話でも、ゆりの父・月影博士の回想シーンで登場している。映画版のオリジナルキャラクターが後の TV本編で登場するのは、極めて異例である。

怪物
デザトリアン …… 金田 朋子
 オリヴィエの「こころの花(キンモクセイ)」をサラマンダー男爵が抜き取り、コンコルド広場のオベリスク「クレオパトラの針」と組み合わせて生み出したデザトリアン。サラマンダー男爵に協力したくないと悩むオリヴィエの葛藤を口にする。両手の石塔で敵を攻撃する。

コウモリスナッキー
 サラマンダー男爵が使役する雑兵。通常のスナッキーとは異なり、炎を吐くことが可能。また、相手をデザトリアン化させることができる。


おもなスタッフ
監督 - 松本理恵
脚本 - 栗山緑
キャラクターデザイン - 馬越嘉彦、上野ケン
作画監督 - 上野ケン
音楽 - 高梨康治
製作・配給 - 東映

主題歌
オープニングテーマ
『 Alright!ハートキャッチプリキュア! for the Movie 』
歌唱 …… 池田彩 with ハートキャッチプリキュア
 プリキュア4名のコーラスが入りコーラスの歌詞も変更された他、アコーディオンが追加され、間奏のギターソロもアコーディオンソロに差し替えられた。

エンディングテーマ
『 Tomorrow Song あしたのうた for the Movie 』
歌唱 …… 工藤真由 with ハートキャッチプリキュア
 テクノ調のアレンジとなった。こちらもプリキュア4名のコーラスが入る。


《ンも~、あったりまえのように本文マダヨです》
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『軍師官兵衛』  視聴メモ 第27回『高松城水攻め』

2014年07月08日 11時05分57秒 | 日本史みたいな
『軍師官兵衛』第27回『高松城水攻め』(2014年7月6日 演出・大原拓)


登場する有名人・武将の『信長の野望』シリーズでのだいたいの能力評価(テロップ順)

黒田 官兵衛 孝高  …… 知力84、統率力67
 (演・岡田准一)

徳川 家康      …… 知力102、統率力65
 三河・遠江・駿河3ヶ国を治める大名。織田信長の盟友。(演・寺尾聰)

黒田 長政      …… 知力77、統率力63
 (演・松坂桃李)

清水 宗治      …… 知力54、統率力74
 (演・宇梶剛士)

明智 光秀      …… 知力93、統率力95
 (演・春風亭小朝)

母里 太兵衛 友信  …… 知力44、統率力80
 (演・速水もこみち)

後藤 又兵衛 基次  …… 知力14、統率力75
 播磨国の浪人。黒田長政の幼なじみ。(演・塚本高史)

石田 三成      …… 知力92、統率力60
 (演・田中圭)

井伊 直政      …… 知力69、統率力81
 徳川家康の重臣「徳川四天王」の一人。(演・東幹久)

安国寺 恵瓊     …… 知力80、統率力31
 (演・山路和弘)

吉田 兼和
 (演・堀内正美)

織田 信長      …… 知力115、統率力108
 (演・江口洋介)

蜂須賀 小六 正勝  …… 知力74、統率力90
 (演・ピエール瀧)

羽柴 小一郎 秀長  …… 知力83、統率力75
 (演・嘉島典俊)

斎藤 利三      …… 知力42、統率力71
 明智光秀の重臣。(演・小木茂光)

本多 忠勝      …… 知力66、統率力84
 徳川家康の重臣「徳川四天王」の一人。(演・塩野谷正幸)

吉川 元春      …… 知力58、統率力85
 (演・吉見一豊)

織田 信忠      …… 知力73、統率力69
 (演・中村倫也)

加藤 清正      …… 知力63、統率力81
 (演・阿部進之介)

福島 正則      …… 知力45、統率力83
 (演・石黒英雄)

森 蘭丸 成利    …… 知力67、統率力43
 (演・柿沢勇人)

明智 秀満      …… 知力51、統率力67
 明智光秀の重臣。光秀の娘・お倫の夫。(演・鳥羽潤)

毛利 輝元      …… 知力85、統率力80
 (演・三浦孝太)

黒田 兵庫助 利高  …… 知力78、統率力63
 (演・植木祥平)

小早川 隆景     …… 知力83、統率力77
 (演・鶴見辰吾)

羽柴 秀吉      …… 知力95、統率力94
 (演・竹中直人)

黒田 職隆      …… 知力72、統率力55
 (演・柴田恭平)


ざっとの感想

○自分のまったく聞いていなかった築堤づくりでの散財に「わしを一文無しにする気か!?」と難色をしめす秀吉。しかし、それが官兵衛の策だと聞いたとたんに「さすが官兵衛!」と即 OK。
 大変な官兵衛に対する信頼度なのですが、一見「自分がない」ようにもとられかねないこの瞬時の感情転換こそが、他の並みのリーダーにはなかなかできない秀吉のフットワークの軽さというか、度量の広さなのではないのでしょうか。さて、この身軽さが、このドラマではいつごろから失われていってしまうのでしょうか……

 それにしても、アバンタイトルからずいぶんと力の入った蛙ヶ鼻築堤シーンなのですが、このくらいの規模で、水攻め作戦の提案者が宇喜多家重臣の花房正成であるという流れの歴史ドラマも、たまには観てみたいですよね! 地元の放送局さんとか、やってくんねぇかな!? 全国レベルの有名人にいいとこ盗られてばっかじゃねぇんだぞ!という気概が観たいですよね。
 もともとは花房正成の考えた作戦だったのが、秀吉サイドの天下統一に向けた全国宣伝戦略という「オトナの事情」のために官兵衛の手柄になっちゃうっていう筋とか……ありゃりゃ、いかにも三谷幸喜あたりがやりそうな感じになっちゃった! いけすかないねぇ。

○毛利家制圧の最終決戦には主君・信長に自ら出馬してもらう、という構想を口にする秀吉。「主君を超える手柄を挙げてはならぬ」という実に秀吉らしい心くばりをあらわすエピソードなのですが、これがまさか、後年に「信長殺人事件の容疑者」として疑われる重大な根拠のひとつになろうとは……
 ここらへんでホントに痛感するんですけど、ミステリーものの登場人物って、「相手の立場を考えて、あえていつもと違う判断をする」っていう、上下関係にまみれにまみれた現実の社会じゃ日常茶飯事なイレギュラーな行動がまるで許されない異常なルールばっかですよね。そんなことしたら真っ先にヘンな名探偵に「あやしい!」ってにらまれちゃうんだもんねぇ。せまっくるしいったらありゃしねぇや!
 フィクションの世界と現実の人生との溝って、結局はこういうところなんだろうなぁ。いいじゃねぇか、コワ~い上司の気ぃつかったってよう!

○さてその一方で、秀吉と同じように家臣として細心の注意を払ってビッグゲスト徳川家康の接待役をおおせつかったはずの明智光秀だったのですが、「能の出来が悪い」だの「料理の味がうすい」だのと信長にさんざんにダメ出しを喰らい、結果は惨憺たるものに!
 娘お倫との会話からもわかるとおり、光秀は決して接待に手を抜いていたわけではなく、彼なりに戦争と同じくらいの緊張感をもって全力で臨んでいたはずだったのですが、なぜ……

 実際に史実の光秀がこれほどの怒りを買ったのかどうかは疑問なのですが、これはやっぱり、せっかく地元時代の無二の弟分をウチに呼ぶんだから、尾張っぽい濃い味つけの料理を出して同窓会気分をかもしだすとかいうオツなもてなしはしてほしかった、という信長のお茶目な気分があって、それをくみ取ることができなかった光秀にも、十二分に反省の余地はあるのではないのでしょうか。「安土とか京都に呼んで京風料理って……いったいどこに笑えばええんじゃボケー!!」という、往年の松本人志をほうふつとさせる怒りが信長の胸にこみあげた!
 光秀は少し、京の風にあたりすぎたようじゃのう……信長家臣団の近畿地方担当司令官としての立場を、信長の望むものとは違う方向性で強く意識してしまった光秀、無残!

 でもさ、実際問題、お能の舞台って、どこにダメ出しすればいいの……? そういえば、あの黒澤映画の『蜘蛛巣城』でも、主人公は宴会の舞にダメ出しをした後に転落していきましたよね。舞やお芝居を途中で「ええい、やめやめーい!!」と叫んで中止させるのは、歴史ドラマにおける滅亡フラグだ! 殿様キャラはじゅうぶんに気をつけて、最後までちゃんと座って鑑賞しよう!!

○ついに戦国天下取りの最終ランナー・徳川家康が初登場!! キャー寺尾さーん!
 うわー、セリフの第一声からあやしい、あやしい! 一にあやしい、二にあやしい、三、四がなくて五にあやしい!!

 さすがは江戸幕府の創始者というべきか、徳川家康という人物は、なみいる歴史上の有名人たちの中でも群を抜いた「多面性」を持っており、その点、信長なんかはだいたい定まったカラー(キレやすい、気分屋など)があるもんなんですが(秀吉が21世紀に入ってやっとダークになってきたくらいの変化)、この家康という人物は、演じる俳優さんや物語上の立場・年代によって、色味がまぁ~コロッコロ変わる変わる! さすがは変幻自在のおタヌキさまですよ。TV ドラマで5回も家康を演じたという津川雅彦さんだって、同じ大河の『独眼竜政宗』と『葵 徳川三代』とで家康の性格設定がまるで別人になってますもんね!

 そういう意味では、今回の寺尾さんは「あやしい策謀家」という面をひたすら猛プッシュしていく方針と観た! さすがは、官兵衛サイドが主人公のドラマにおける家康です。思いっきりあくどいラスボスを演じていっていただきたい!!
 同じ「あやしい家康」でも、かつて竹中秀吉と戦った西村雅彦家康とはまるで比較にならない厚みと色っぽさがあります。なんか、「おまえらが播磨がどーたらこーたらやってた間に、どんだけひどい目に遭ったと思ってんだコノヤロー……」という怨念が満身にあふれていますよね。炸裂! 三方ヶ原ルサンチマン☆

 「それにしても、竹千代お前フケたな~!」「へへへ……吉法師先輩はまるで変わんないっすねぇ。」

●かねてから話題になっていた「春風亭小朝師匠の役作り激ヤセ」なのですが、確かに私の目からも、今回の家康接待シーンからガクンと頬あたりのこけ具合が顕著になってきたように観えました。いやぁ、いいタイミングで撮影に間に合いましたねぇ!
 でもそれが逆に、「接待で大目玉を食らったくらいでやつれ果てるなんて……それが百戦錬磨の戦国武将・明智光秀なのか!?」という不自然なメンタルの弱さにも見えたりして。やっぱり、光秀という人物の性格設定も難しいもんですね。くせものなんだなぁ。

 でも、小朝師匠の激ヤセがかすむくらいに、寺尾さんの右目の下がり具合も気になってしょうがない! 眼瞼下垂(がんけんかすい)っていう、まぶたの筋肉の衰えでしょ? あれ。撮影シーンによって開き方に差があるので、どうやら重篤なものではないようなのですが、心配ですよねぇ。今まではそんなに気にもならなかったのに。
 まぁ、いつも何かを企ててそうな策謀家だったら、しじゅう表情が左右非対称でもそれらしくていいんですが……なんか、石ノ森章太郎のマンガにしょっちゅう出てくる、サイボーグ004とか『佐武と市捕物控』の市とか『仮面ライダー Black 』のカマキリ怪人(人間態)みたいなコワ~い顔になってますよ! 大丈夫ですか!? 元気に江戸幕府、ひらける!?

●「味がうすい。」という信長の言い方といい、主人と客がいるまん前でうつむいて無口になる光秀のガラスのハートといい、明らかに視聴者を笑わせにかかっているとしか思えない家康接待シーン。そろいもそろって、あんたら子どもか!?
 接待役を降ろされて中国方面の援軍に行かされる光秀が目に見えてショックを受けている、という心象の変化もまるで納得がいきません。戦国武将が戦争の手助けに行くんだから、お客さんの接待なんかよりよっぽど本領発揮でいいんじゃないんですか?
 いまさら、同じルートをたどって謀反を起こした荒木村重をオーバーラップさせるような低い立場でもないだろうが! だから何度でも言いますけど、それがあの「信長家臣団随一の名将」明智光秀のメンタリティですかっての!?

●信長「高松城を水攻めだと? 川をせき止め、城を水に沈めるとは……」
 信長が読んだ書状にどう書いてあるのかはわからないのですが、高松城の水攻めは「川をせき止める」わけじゃなくて、「雨で川から氾濫した水をせき止める」んです。だから、大雨が降らないうちに秀吉軍は大急ぎで築堤を作っておく必要があったわけなんです。むしろ、秀吉軍は蛙ヶ鼻築堤から見て高松城を中央にはさんだ反対側に陣取った足守川の水取り口で「川を決壊させるための土木工事」を進めていたはずなのです。かんたんに川をせき止めるとか、のうのうとワインを飲みながら言わんでつかぁさい!!

○九郎右衛門「太兵衛、食いすぎだ! 年を考えろ。」
 つっても、太兵衛も27歳ですからね……おにぎりの何コか食いくらい、いいんじゃないの? 運動だって適度以上にしてるんだし。食べる前に先に手に取っちゃうのはよくないけどな! 土俵の片手パスって、どんだけ怪力なんだ……
 梅雨どきに具足姿で土俵かついで階段のぼりとは、なんという汗だく地獄メニュー……ま、戦争に比べたらなるかにマシですけどね!

○映画とかと違ってかぎられた予算の範囲内ながらも、しっかりと高松城水攻めのスペクタクルを描いてくれた製作陣、えらいぞ!
 でも、できれば蛙ヶ鼻築堤と同じかそれ以上に重要な役目だったはずの「足守川決壊部隊」の活躍もちゃんと描いてほしかった……たぶん、そっちは陣所が近い加藤清正あたりの若手チームがやっていたのでしょう。撮影するのだとしたら、水をバカスカ使うそっちのほうがずっと予算がかかることになっちゃうけどね!
 日本の映像エンタテインメントの世界で「水の大氾濫」を思う存分に描写できるようになる時代って、あと何年後くらいに来るんでしょうかね……今回の水攻めだって、津波とはぜんぜん関係ないんですけどねぇ。

○小早川隆景のセリフでさらっと流されただけだったんですが、水攻めをくらった清水宗治サイドは、城兵も非戦闘員もひっくるめてなんと5千人という人数が高松城内に緊急避難! 高松城なんてあなた、平時の総構えスペースで本丸・二ノ丸・三ノ丸・家臣屋敷をぜんぶ合わせてせいぜい13ヘクタールほどなんですから(200×300メートルの区画と200×400の区画が「く」の字に合体した城域から水堀ぶんをのぞく)、水攻めでその半分くらいが水没したであろうことを考えると、もうギュウギュウ詰め! これじゃ籠城どころか、戦争できる状態でもありゃしませんって。
 この水攻めはなにが恐ろしいって、戦争しない一般人までもが城内に殺到してあっという間に兵糧を食い尽くしてしまう、自分たちの守ろうとしている民が自分たちの籠城の最大の障害になるという点が恐ろしいんですよね。味方が自動的に潜在的な敵になるという、この無惨さ……やっぱり秀吉は、三木城攻めといい鳥取城攻めといい、中国地方に異常に過酷だ!!

○毛利家の必死の擁護もむなしく、秀吉側からの要求によって、というよりは、自らが選んだ強い意志によって自害を望む清水宗治。「寝返りはせん! それでは筋が通らぬゆえにな……」
 初登場からずっと、ひたすらカッコイイ義の武将・宗治なのですが、ただ単に、水によって「闘う場所をなくしてしまう」という前代未聞の大奇策を目の当たりにし、戦争屋としてのアイデンティティを完全に喪失してしまって「もう、ど~でもいいッスわぁ~!」と自暴自棄になってしまっただけだったのかも?
 ホント、戦場で活躍する機会が全くなくなってしまって残念でしたね、今年の宇梶宗治は! 見た目が最強なんだもんなぁ。

●小早川隆景「それはならん! 宗治を売っていったん助かったとしても、そんなことをすれば毛利は信用を無くしいずれ滅びる!」
 官兵衛の清水宗治切腹の要求に強硬に反対する隆景。確かに言うことはわかるし、毛利家にとって決して譲歩することがたやすくない正念場だとは思うのですが……
 それじゃあさ、そこまでして守ろうとする清水宗治と、あんたらが今までさんざん見捨ててきた櫛橋左京進政伊、別所長治、小寺政職、荒木村重たちとの間には、一体どんな差があったっていうんですか? 信用なんて、もうとっくの昔に残高ゼロになってんだよバカヤロー!!
 別に宗治だって生まれてからずっと毛利家家臣だったわけでもないし、備中国だってつい最近になって毛利家の領土になったばっかしなんだしねぇ。ここでの隆景のこの発言は矛盾していることはなはだしいですよ。「なにを今さら……」って感じですよね。

●なんだかよくわかんない音声カットの自主規制がありつつも、

「日の本に王は二人もいらん。」

 という重大発言をぶっぱなしてしまった信長。ま、具体的に正親町天皇をどうにかすると明言したわけではないので、NHK さんがそんなに敏感に配慮する必要もないとは思うんですけどね。のちの秀吉みたいに、日本の王位は引き続き天皇家にお願いして、自分は大陸の王になると構想していたのかも知れないし、足利義満みたいに天皇家に自分の血を無理矢理ねじ込もうと考えていたのかもしれないし。

 にしても、その信長の発言は別にどうでもいいんですが、今までこの『軍師官兵衛』で、明智光秀がそんなに過剰に反応するほど尊皇家だったなんていうキャラクター設定、あった? 私はそっちのほうがよっぽど気に入りませんね!
 信長の天皇家を軽視した発言が本能寺の変の直接の契機になったというんなら、脚本家さんはちゃんと、そこまでの物語の中で光秀の天皇家への強い敬意というものを伏線としてちゃんと張りめぐらせておかないといかんでしょうが!!
 だって、光秀と天皇家……というか朝廷が親しいっていう描写が登場したのって、つい前々回からのことでしょ!? それもミョ~に唐突に!
 それじゃあ納得いくわけがないじゃないですか。何度でも言わせていただくんですが、私は『軍師官兵衛』の、脚本のこういう行き当たりばったりななところがホンットに大っ嫌い! プロの作家さんの仕事じゃないんですよねぇ、つくづく!!

●超有名な「時は今 あめが下しる 五月哉」の句なんですが、絶対にはずしてならないのは、それが悠長な連歌会の席で披露されたということなんです。そこが明智光秀という大物のすごいところだと思うんだよなぁ。
 だから、今回の演出のように、その句を光秀がド真剣なまなざしでつぶやいたらどっちらけなわけなんですよ!! ダメだろう、そんな小心者ぶりじゃ!
 わかってない、『軍師官兵衛』の製作スタッフは、明智光秀の恐ろしさをちっともわかってない!!

●愛宕山神社、「凶」ですぎ!! もっと参詣者にやさしい配分にしないとダメでしょ!?

●信長「わしには、この国が小さすぎる。」
 なんかもう、南部信直・伊達輝宗・上杉景勝・北条氏政・真田昌幸・長宗我部元親・大友宗麟・龍造寺隆信・島津義久といった日本全国のお歴々から「なーに言ってやがるバカヤロー!!」と総ツッコミをくらいそうな「おれはビッグだ」発言ですよね。その高揚感はよくわかるけど、気が早すぎるよ、あんた! ナレーションも全然ダメよ、「天下をつかみかけていた。」なんて、甘やかしちゃダメ!!

○「わたくしは、どこまでもついていきまする……」「好きにせよ。」って、どんだけデレデレしてるんだ、信長・お濃カップル~!
 そりゃあ、息子も早めに席をはずすわな。空気よみすぎだぞ、信忠くん!!

●明智軍の雑兵のみなさん、「敵は本能寺にあり!」で「オオォー!!」じゃないでしょ!? 「……え?」でしょ、そこのリアクションはさぁ!
 当時の雑兵のひとりの古記録『本城惣右衛門覚書』の、「なんだかよくわかんないけど進行方向が京都に変わって、なんだかよくわかんないうちに戦闘が始まって終わっちゃった。」という証言のほうがよっぽどリアルで恐ろしいですよね。そういう「ざわ……ざわ……」感を映像化してほしいんだけどなぁ~、ほんとに!

○実に唐突なタイミングで息子・信長をゆるすと語った母・土田御前なのですが、たぶん、史実でほんとにそういう話をお濃の方から聞いたら、本物の信長だったら、

「うぬう……いいことが続きすぎる! イヤな予感しかせんぞ……お蘭、馬ひけい! とりあえず安土に帰る!!」

 と判断してさっさと本能寺を出て行ったでしょうね。そういう異常な豪運人間だったんですよねぇ、天正十年六月一日までの織田信長は。


結論、「第28回がとてもたのしみです。」

 私が重視したいのは、本能寺の変が完全に「光秀に政権を奪取する野望があった」政変だったのであって、信長と同じように「魔王」と恐れられた室町幕府第6代征夷大将軍・足利義教(1394~1441年)が暗殺された嘉吉の変とはまるで性質の異なるものだった、ということなんです。つまり、どう見ても怨恨がらみの殺人事件としか解釈できない『軍師官兵衛』での光秀のキャラクター描写は絶対に違うと思うんだよなぁ! 赤松満祐と明智光秀が同じスケールの人間だったとは思えないんだよなぁ。暗殺成功後のランドスケープがまるで違うんですよね。

 それはともかく、いよいよ次回は本能寺の変! たぁ~のしみだなぁ~オイ!!

 ……え? 今年はお濃の方もいっしょに死ぬ感じなんですか!? ダメダメ、うちゆき姫は生き延びなきゃダメよ~!!
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生きててよかった日本初 DVD化! でもむっちゃ眠たい!! ~映画『フェイズⅣ 戦慄!昆虫パニック』~

2014年07月04日 23時20分19秒 | ふつうじゃない映画
『フェイズIV 戦慄!昆虫パニック』(1974年9月公開 アメリカ・イギリス合作 83分)

監督    …… ソール=バス(54歳 1996年没)
脚本    …… メイヨ=サイモン
音楽    …… ブライアン=ガスコーン
撮影    …… ディック=ブッシュ
編集    …… ウィリー=ケンプレン
製作・配給 …… パラマウント映画


 『フェイズIV 戦慄!昆虫パニック』(原題『 Phase IV』)は、世界的グラフィックデザイナーとして活躍したソール=バスが監督した唯一の長編映画作品である。バスは1968年に、短編映画作品『 Why Man Creates(なぜ人間は創造するのか)』で第41回アカデミー賞・短編ドキュメンタリー映画賞を受賞していたが、その卓越した映像演出とアリたちの不気味な存在感で、自然の脅威について警鐘を鳴らす本作品を生み出した。
 日本では劇場未公開となったが、ビデオソフトが発売され、テレビでも数回放送された。その際のタイトルは『戦慄!昆虫パニック 砂漠の殺人生物大襲来』、『昆虫パニック』、『 SF 超頭脳アリの王国 砂漠の殺人生物』。
 タイトルの「フェイズ(Phase)」は「局面」「段階」の意味で、アリと人類の戦いが「フェイズ1」から「フェイズ4」まで4段階に分けて描かれる。

 作品の最重要ポイントであるアリの撮影については、ハリウッドにおけるマクロ撮影の第一人者ケン=ミドルハムが起用された。ミドルハムは、1971年にドキュメンタリー映画『大自然の闘争 驚異の昆虫世界』で撮影を担当していた。
 ミドルハムは、超クローズアップのレンズや、ハイスピード撮影、遠隔撮影の装置を駆使し、脚本に書かれたドラマをすべて本物のアリを使って撮影している。
 ロケーション撮影はアフリカのケニヤで、スタジオ撮影はイギリス・ロンドンのパインウッド・スタジオでイギリス人スタッフを中心にして行われた。

 完成した作品の、思弁的なストーリーと美しい映像は、単純明快で商業的な動物パニックホラーを望んでいたパラマウント映画の期待とは正反対のもので、特に『2001年宇宙の旅』(1968年)を思わせる「人類進化のヴィジョン」が描かれていたという結末部分にパラマウント側は猛反対した。同社は監督であるはずのバスから作品の編集権を取り上げ、最後のフィルム1巻ぶんをカットして、93分あった作品を83分に短縮。宣伝広告やポスターにもバス自身は関わることができず、先行公開されたヨーロッパではトリエステ国際 SF映画祭でグランプリを受賞したにも関わらず、アメリカではわずかな館数で公開されるのみとなった。
 現在の83分版のエンディングのあとに、人類進化のヴィジョンを示す映像があったという断片は予告編にわずかに残っており、そこには本編で使われていない、顔のない奇怪な人物の映像が一瞬だけ映されている。


あらすじ
 宇宙で突如として発生した不可解な現象を契機に、アメリカ・アリゾナ州の砂漠地帯に奇妙な巨大構造物やミステリーサークルが出現するようになる。
 興味を持った生物学者のチームが研究・対策用の隔離ドームを建造して調査したところ、これらが飛躍的に知性の発達した新種アリの集団によって造られたものであることが判明する。さらに、アリたちは人類と交信することを望んでいた。彼らは人類による数々の実験に対する怒りを示していたのだ……


おもな登場人物
ジェイムズ=レスコー    …… マイケル=マーフィ(36歳)
 暗号・言語解読に精通した生物学者。カリフォルニア州サンディエゴの海軍海底センターに所属している。

アーネスト=ホッブズ博士  …… ナイジェル=ダヴェンポート(46歳 2013年没)
 イギリス人の生物学者。アリの生態系で発生した異常をいち早く察知し、レスコーを助手に選ぶ。

ケンドラ=エルドリッジ   …… リン=フレデリック(20歳 1994年没)
 アリの襲撃から奇跡的に助かり、隔離ドームに避難してきた少女。

エルドリッジ氏       …… アラン=ギフォード
 ケンドラの祖父。農家。

ミルドレッド=エルドリッジ …… ヘレン=ホートン(46歳)
 ケンドラの祖母。

クリート          …… ロバート=ヘンダーソン
 エルドリッジ家の農場で働く男。


《はいはい途中途中》
コメント
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