長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

しみじみ堪能、台風一過 HOLIDAY  ~お芝居2本と、ハイボール~

2014年07月11日 23時38分18秒 | すきなひとたち
 ぺいやぁ~っとぉ! どうもこんばんは、そうだいでございます。みなさま、週末の本日も大変お疲れさまでした~。夏休み、いよいよ近づいてきましたねぇ!

 まぁ、亡くなられた方も出たので大きな声じゃ言えないんですけど、少なくとも関東地方では台風8号、たいしたことなかったよね……昨日の風はものすごかったですけどね。
 昨日はもう、仕事場でも明日11日に台風が関東に来るらしいという話で持ちきりで、関係各所からも明日は短縮営業になるとか、お客さんからのキャンセルのお電話が相次いだりしてたんですが、フタを開けてみたらごらんの有様。朝からものすんごいピーカン炎天下になってしまいましたね。まさしく台風一過のすばらしいお天気!

 本日11日は私、もともと貴重なお休みをいただいておりまして、東京に出かけてお昼と夜にお芝居をハシゴするつもりだったんですね。
 だもんで、せっかく休みをとったのに、ちゃんと2本とも観に行けるんだろうか……と昨日はかなり気をもんでいたのですが、そんな心配はまったく無用だったということで、予定通りに出発することとあいなりました。
 余談ですが、実はおいら、完全なる給料日前のためにからっけつの状態でよう。今日のお芝居は1本目のチケット代が4500円(出演者予約割引料金)で、2本目が4800円ときたもんだ! たった一日で虎の子の1万円が吹き飛ぶスペシャルデーときたもんだ~い。ああ、明日から給料日までの数日間の地獄が恐ろしくてたまらない……


Pカンパニー第13回公演 『スパイものがたり』(2014年7月9~13日 池袋シアターグリーン BOX in BOX シアター)
 作・別役実、曲・小室等、演出・林次樹

 ホントにまぁ、わたくしという人間はお芝居の用事くらいでしか池袋に行かないのでありまして。またしてもシアターグリーンへ直行でございます。そういえば数年くらい前、時間のあいたときにはよく新文芸坐のオールナイト企画にも行っていたんですが……最近はもう無理ですかね~。土日に遊びに行けないんだよなぁ、どうにも!

 ということで今回は、別役実の戯曲を小室等の楽曲で送るというミュージカル仕立てのお芝居を観に行きました。ヒロイン役の女優の近藤佑子さんのお誘いを受けて観に行ったのですが、まぁ~シアターグリーンにたどり着くまでの道ゆきが暑い、暑い! これから来る夏が思いやられるよ、ホント……

 『ドラキュラ伯爵の秋』とか『マッチ売りの少女』とか、ちまたにあふれる有名キャラクターのイメージにあえてケンカを売り、そこから新たなる世界の地平を切り開くという手法が定番の別役実ワールドなのですが、今回はニヒルでダークなはずの「スパイ」というヒーロー的存在を、これでもかというほどに破壊しつくしていました。
 『スパイものがたり』の初演は1970年で、その当時にはスパイといえば映画の「007」シリーズが大ヒットしており、すでに第6作『女王陛下の007』までが公開されていたようです。そりゃあもう、めっぽう強くて頭もよくて、おまけにゃ女性にモッテモテという世界を股にかけるスパイさんに、別役実が挑戦しないわけがなかった! 映画の世界でのスパイ脱構築は、すでに1967年に番外編『007 カジノロワイヤル』(主演・ピーター=セラーズ)がなしとげていたのですが、この『スパイものがたり』は、驚くほど日本的な町に、ある日突然スパイが空から降ってきた、という『天空の城ラピュタ』みたいな始まり方で開幕してゆきます。いや、空から降ってくるのはおじさんなんですけどね。

 空から降ってきたスパイは、かといって特に何かやるミッションがあるというわけでもなく、首にかけられた赤い紐が電柱に結びついたために所在なく電柱のまわりをうろつくことになり、おしゃべりな主婦たちやしじゅう泥棒を追いかけている制服姿のおまわりさん、郵便配達夫にガラクタ屋のおじさん、そして絵本を持った夢見る少女といった、いかにも平和でいかにも昭和の日本的な人々と触れあっていきます。ミュージカルなので楽曲によっては群集コーラスもあったのですが、その中に傷痍軍人の扮装をしてる人もいたよ。え、傷痍軍人!? そんなの1970年でもなかなか見かけなくなってなかった?

 お話はもう、まさしく別役実といった感じのノスタルジックな寂しさに満ちたものだったのですが、そこにスパイと少女とのふれあいが生じることによって暖かさがともり、そしてスパイという「名前を持ってはいけない存在」を脱して、ひとりの個性ある人間として世界に飛び出したい、と思ったがために自らの手でその世界を崩壊させてしまうという悲劇に向かっていく流れは、まわりまわって再び孤独な生き方に帰るしかないスパイの哀しみを実にしみじみとつづってくれていました。
 また、小室等の音楽がいちいちいいのよねぇ。プロローグのスパイつるし上げシーンでかき鳴らされるエレキギターの感じがまんま J・A・シーザーでビックリしてしまったのですが、全曲にわたってやさしく愉快なしみじみ名曲の数々! うん、これは演劇だからといってそれぞれ1回ずつしか聴けないのが非常にもったいない! 何回でも聴きたいですよね、『雨が空から降れば』とか『ねこの歌』とか。

 こういう感じでほのかなロマンスもあり、にぎやかなダンスもあり、笑えるセリフのやりとりもありといった全体的に盛りだくさんな内容だったのですが、やっぱりそこで終わらないのが別役ワールドといいますかなんといいますか。
 突然世界に降り立ってきたスパイが、期せずして自らが招いてしまった世界の崩壊を観て、静かに荒涼とした舞台を去ってゆきます。ところが、物語はそこで終わらず、ほんとうに唐突に、今までセリフさえもなかった「小学校の先生と生徒3人」が登場して「最後の授業」を行うというエピローグに突入してしまうのです。きたきたきた~、別役ワールドの真骨頂♡  一見、それまでのスパイの物語との関係性がまるでない!!

 ここで先生が行う授業は非っ常~に意味深長な内容で、「へのへのもへじの謎」とでもいうべきとてつもない問題を子どもたちに突きつけて、答えを出さないままチャイムが鳴って終了。そのまま、黒板のへのへのもへじを無言で見つめる先生とスパイが2人ならんで暗転し、この『スパイものがたり』も一巻のおしまい、となります。
 この謎というのがね~、人を喰っているというかバカにしているというか、一生かかっても解けないようでいて、ある朝に目覚めたときに「あっ、そうか。」とわかってしまいそうなとりとめのなさに満ちているんですよね。この問題の魅力は、先生の言ったことを要約したのではまったく伝わりません。やっぱり一字一句、別役さんのつむいだセリフを俳優さんの間合いを通して空気中に響かせなければ生きてこないものなんですよね。おもしろいなぁ、ほんと。
 私はこの問題のくだりを観て、『スパイものがたり』全体についてもそうでしたが、秩序のない世界をより良いものにしようとして秩序を作ったがために、かえって世界自体の命を失う結果を招いてしまったという、古代中国の「混沌の怪物」の故事を強く思い出しました。つまり、スパイの迷い込んだあの世界も「へのへのもへじ」も、その正体がなんなのかを突き詰めてはならない「混沌」だったのではなかろうか、と……しかし、具体的にスパイらしい活動はまるで行っていないものの、「スパイ」という肩書きだけは常にはっきりとぶら下げていて、自らもそこにすがってなんとか正気を保とうとしていたスパイにとっては、そんな「ど~でもいいじゃない、なんでも」なあいまいさが息づいている世界は、いくらうらやましがっててもたどり着くことができない理想郷に映っていたのでしょうか。まさに、愛と憎しみは紙一重……

 とまぁ、そんなこんなで思う存分に堪能した別役ワールドでございました。ミュージカルということで、後半までず~っと甘口めなのかしら?と思って観ていたのですが、完全にド辛口なエピローグで「さすが!」と超満足したお話でしたね。
 俳優さんについては、やっぱり主演のスパイ役の高橋広司(ひろし)さん、郵便配達夫役の宮川知久さん、あとはガラクタ屋のおじさん役の本田次布(つぎのぶ)さんあたりが目立っていましたね。う~ん、そりゃまぁ年齢を重ねたアドバンテージがあるのは当たり前なんですが、こういったベテラン陣に伍する魅力を持った若手俳優さんがあまり目立たなかった、というのはちょっと物足りなかったですね。ソツはないんですけどね、足りないのよ、なんか。キャラクターの厚みというか半生というか、危険性が。
 私をこの公演に誘ってくださった、ヒロインの少女役の近藤佑子さんも歌とダンスで魅了してくれたのですが、なんつうか、男性キャラから見ての「理想の女性」キャラって、なにかとやれることが窮屈になるんですかね。出番自体も思ったより多くはなかったんですが、いやいや、もっと長い時間、舞台の上の近藤さんが観たかったな! 「不思議な少女」ってだけじゃあ手数が少なすぎるんですよね~。そりゃあ歌も振り付けもあったので大変だったのでしょうが、「正直やり足りなかったでしょ~? もっと引き出しあるでしょ~?」と、いじわるに申し述べさせていただきたい! 客ってのはまぁ、かくも無責任でのんきなものなのであります。

 あと雑感としては、やっぱりどんな裏設定があったのだとしても、「出番のない俳優が退場せずに他の俳優の演技を舞台の周辺から眺めている」という演出はそうそう安易に使うべきではないんじゃ?、ということ。仲良しクラブの発表会……とまでひどく言うつもりはありませんが、なんか常に「芝居はこうやって真剣に観ろよ!」とお手本を見せられているような気がして、少なくともいい気分に作用するものではありませんでした。いや、別にイヤだとまでは言いませんよ。言いませんけど、つまんなければ眠るくらいの権利は、ちゃんとチケット料金を払ったお客さんにはあるような気がするわけ。今回の『スパイものがたり』のクオリティで眠る人はそうそういなかったとは思いますが。

 本筋には関係ないんだけど、本田次布さんのヒトラーのものまねが地味に似てた! 手の動かし方がそっくりなんだよなぁ~。こういう細部のクオリティが高いひとって、やっぱり全体としても見飽きないですよね。俳優ってやっぱり、生産性のない情熱の積み重ねがいつの間にか何かを生んでいる、実に人間らしい職業なんですねぇ。すごいもんだわ、やっぱ。


UMAN プロデュース・小劇場シリーズ 『やわらかい服を着て』(2014年7月10~13日 下落合 TACCS1179)
 作・永井愛、演出・宇治川まさなり

 そったらこったらで午後4時すぎにシアターグリーンを出たあと、私は引き続きの炎天下のもと、明治通りと新目白通りを歩いて、下落合の劇場「 TACCS1179」を目指しました。池袋と下落合なんて、電車で乗り継いで30分もかからない距離にあるんですが、そこはわたくし、持ち前の貧乏根性で歩いて向かうことにいたしました。いちいちお金なんて使ってられませ~んっと! なんせ給料日前。
 道も簡単だし道のりも4km 弱ということで、1時間もかからないうちに下落合に着いたわけですが、都電荒川線とか鬼子母神とか、いちいち味わい深い風景がチラリホラリしていい感じの散歩ルートでしたね。歩いてみて初めてわかったんですけど、池袋から下落合って、ほんとにガクンと谷底に向かって降りていくような高低差があるんですね! 東京の起伏ずぁバカになんねぇもんだなやぁ! 登っていく逆ルートじゃなくてホントによかった……
 とは言いつつも、歩いていくうちに空は炎天から曇天に見る見るうちに変わってゆき、暑い日名物の夕立も降りだすくらいの変化を見せてきました。傘をさすほどでもないか……と思っていたらだんだん本降りに! しかたなく、コンビニのフランクフルトあたりを買い食べながら雨宿りをして開場時刻を待つ次第。今日もやたらとせわしない一日になってしまった……

 さて、開場の午後6時30分あたりに入場してみると、客層が意外と女性多めになっていることに少なからず驚きました。
 というのも、今回のお芝居には、つい先月に挙行された AKB48のニューシングル選抜総選挙で第71位(アップカミングガールズ枠)として悲願の当選を果たし、「土下座で感謝」というアイドルらしからぬリアクションで話題となった、田名部生来(みく チームB所属 21歳)さんが出演しているということで、もっとむさくるしい男性ファンでごったがえしているかと思っていたからです。確かに、会場には田名部さんのファン向けに増設したかと思われる舞台かぶりつきの座席列が用意されていたのですが、全体的にかなり大人しいジェントリーなお客さんがたで満席になっているという印象を受けました。当たり前ですが、上演中に声援を送るような人もおらず。

 ただ、現役のアイドルさん、しかもあの AKBグループ本社のベテラン選手が出演しているとはにわかに信じがたいこの会場の静けさは、田名部さんのファンに特に紳士淑女が多いからというわけでもなく、どちらかというと作品に対する「先入観」にお客さんが飲まれて少なからず身構えてしまったから、という理由のほうが大きかったのではないのでしょうか。

 今回の『やわらかい服を着て』は、2006年5~6月に東京・新国立劇場で初演された作品なのだそうですが、その内容は、2003年3月に開戦する可能性が濃厚になったアメリカによるイラク戦争を止めようとする世界規模での反戦活動に賛同した、日本の小さな人道支援 NGO団体「ピースウィンカー」の、2006年3月までの3年間の日々のうつろいを描くというものです。

 反戦団体、イラク戦争。劇場ロビーには当然のように、現在も続くイラクの貧困状況を助けようと募金を呼びかける実際の NGO団体のポスターが大きく掲示されており、開演前の会場でも、募金をうったえる内容のチャリティソングと、イラクの現状をうつした写真のスライドショーが展開されていました。
 う~む、重い! 率直な印象として、開演前の雰囲気はただひたすら、「重い」の一言!! これでお話が始まったら一体どんなことになってしまうのだろうかと、正直言って不安しかない心持ちで座席で固まってしまいました。この作品もまた、出演している俳優の永栄正顕さんに誘われて観に来たお芝居だったのですが、大丈夫かしら、ちゃんと楽しめるのかしらとハラハラしながら物語は開幕。その結果はと言いますと……

 いやいや、これがまた、ひっじょ~におもしろい舞台だったのよねェ!!
 観る前に先入観で勝手にかなり警戒してしまっていたのですが、開演してからの気持ちいいくらいの「良い方向への裏切り」の連発がすごいすごい! あらすじを見てもわかるように、これはごく最近ながらも過去の社会状況を扱っている複雑な群像劇になっているわけなのですが、単なる説明ゼリフの羅列にせずに、しっかり生きた会話として堅苦しい情報を観客に伝えてくれる永井愛さんの脚本テクニックには本当に脱帽してしまいました。帽を脱いじゃったよ!!

 つまり、このお芝居の中心には確かに人道支援のための NGO団体という「近そうで遠い」集団があるのは確かなのですが、そこがそれだけではなくて、それぞれの個人的な思惑もあったうえで集まっていて、みんな目指すところは同じであるはずの目的に対してだって微妙な温度差はあって、時間が経てばそれなりに亀裂も入って惚れた腫れたもあって、ただ、それでも集まって生きていこうとする「集団」って、いったいぜんたいなんなんだろう? という解けない謎を提示しているわけなのです。
 平和を目指して無償の活動に邁進する若者たちだって、ただひたすら路上で目を輝かせて大きな掛け声をはりあげるだけの気持ち悪い集まりではないのだ! ということを、この作品は実にわかりやすく、肩ひじ張らずにざっくばらんに伝えてくれるのです。うまいもんだねぇ、ほんとに!

 演じる俳優さんがたも、序盤こそ確かに「俺たちがイラク戦争を止めるんだ!」という高揚感にギラギラしてはいたものの、無情にもごくあっさりと開戦してしまう戦争に次の手を考えようとあせりだし、「戦争は仕方ないことなんじゃない? イラクは悪者なんでしょ?」と漠然と固まってしまう日本の世論に絶望し、やがては同じ団体にいる仲間とも衝突してしまうという濃密な3年間の時間の流れを、実に的確に演じきっていると感じ入りました。
 役者さんの中では、理想のために、活動に支障をきたす一流企業勤めを辞めてまでがんばろうと身を削り、その結果、なけなしのアルバイト生活に汲々として仲間たちに醜態をさらしてしまうリーダー・一平を演じる佐伯太輔さんの、情けなさも混み混みでの熱演もすばらしかったのですが、個人的には、そんなリーダーの首ねっこをむんずとつかんででも団体を存続させていこうと強くなっていく女性・シンコを演じたまつながひろこさんに惚れてしまいました。うん、こういう頼れる人は必ずいなきゃいけない!
 あと、ただ声がでっかいだけの能天気なキャラなのかと思っていたら、クライマックスであわや解散かという危機までをも出来させるトラブルメイカーになりさがってしまう青年・純也を演じた八敷勝さんね! この汚れ役がまたよかったんですよ。繊細な性格の人間だったからこそ問題を起こしてしまうわけで、その心のこまやかさをしっかり目で演じきっていたテクニックには驚いてしまいました。あ、この人ほんとはうまかったんだ!みたいな失礼な驚き。

 そして話題の田名部さんなのですが、彼女がまたうまいんだよなぁ!
 ちょっとその役にとどめておくにはもったいないおだやかな後輩・ひろみを演じていた田名部さん。セリフもさほど多くはなくて見せ場も泣き出すシーンくらいしかなかったのですが、セリフがないときにちゃんと演技しているのに妙に感心してしまいました。本職アイドルというオーラを消せるというのは、これが当たり前のようで難しいテクニックなのよね! これができる田名部さんは実に器用な方ですよ。演技が好きそうな素地があってすごく好感が持てました。
 お酒が呑めるようになったらアイドルもベテランですからね……好きこそ物の上手なれ! アイドル界屈指のヲタクと評される田名部さんの未来の選択肢は多く、そして明るい。

 この『やわらかい服を着て』は、NGO を扱った作品でありながらも、NGO だけに限定した狭いお話には決してならずに、お客さんひとりひとりが日常で関わっている集団の中で自然に起こる、生身のあれこれを強く想起させる内容になっていると感じました。私の場合は今現在働いている職場もさることながら、それ以上にかつて入っていた劇団のことをあれこれ思い出したりもしつつ。そりゃ、人が一ヶ所に集まればいろ~んなことがあるわけでありまして、ね……
 このお芝居、なにがいいって、舞台が3年間分ず~っと同じ、町工場の一角を借り受けた事務所の一幕物になってるのがいいんですよね! もともとは殺風景なコンクリート打ちっぱなしの空間だったのだとしても、さまざまな人間の笑い、叫び、汗と涙を包み込んで、その場所はその場所ならではの体温を持つようになり、おのおのの記憶の中に定着していくんでしょうね。しみじみ。


 終演後、こんなに観る前と観た後で印象の変わったお芝居も珍しいなぁ、とにかく良かった良かったと思いながら座席から立ち上がってあたりを見回してみますと、やはりおしなべて他のお客さんがたも満足顔。それにしても、アイドルのファンじゃなかろうかと思える外見の方のパーセンテージが本当に少ない客層で、どちらかというと真面目に NGOのお芝居を観に来たという年齢層高めの方々か、芸能関係で働いてらっしゃるように見受けられる「慣れた雰囲気」の大人のお客さんがほとんどでしたね。まぁ、アイドルヲタクっぽい外見のお客さんの中には、間違いなく私もカウントされているわけなんですが……アイドル好きではありますが、拙者、流派が少々ちがっておりますれば。
 そういえば、お客さんの中にもびっくりしてしまうような美男美女が少なからずいらっしゃっており、おそらくは同年か先輩あたりの出ている舞台を勉強しに来たのだろうな、という熱い視線で、私の隣のイケメンさんも舞台を見つめていました。まじめだねぇ~。

 あと、私の斜め後ろあたりにも、キャップをかぶっていても並外れた美貌を持っていることが一瞬でバレてしまうような、色白ですらっとした美女が座っており、ていうか、全体的に黒めの服装なのにそのキャップだけが明るいエメラルドグリーンであるがために、やけに目立ってなんでキャップをかぶっておられるのかがよくわからなくなっている方がいらっしゃいました。目立つ帽子をまぶかにかぶる……帽子のアイデンティティそのものに疑問を投げかける哲学的命題か!? なぞなぞ美女!?


 私はその後、衣装から着替えてロビーに出てきた永栄正顕さんにお礼を申し述べたのですが、永栄さんも、官僚でありながら NGOに所属して活動し、反体制の立場も辞さない異色の頭脳派というおもしろい役を演じていました。こんな、5人戦隊のグリーンみたいなポジションを演じる方じゃないような気がする熱い俳優さんなんですが、そのギャップがとてもよかったですね。あろうことか終演直後に、単なる客である私に缶コーヒーをおごって「どうだった?」とたずねてくる永栄さん。その熱量よ!

 ひとしきり話をすると、永栄さんは「この回を観てた知り合いの女優2人とこれから会うんだけど、いっしょに行かない?」と誘ってくれましたが、私は翌日がいつもどおりの朝6時30分おきだったので泣く泣く辞退させていただきました。すると永栄さんは「じゃあ、これ持ってってよ。」と、おそらくは公演関係者にふるまわれたかと思われる「タカラ焼酎ハイボール・レモン味350ml 」をくれました。いや、私アルコールが……ありがとうございます!! ていうか、呑めないの知ってるでしょ!?

 そんなこんなで、永栄さんと話をしながら西武新宿線に乗ろうとしたのですが、下落合駅で永栄さんは「あっ、いたいた。オーイ。」とホームにいた2人の女性に声をかけました。
 すると、あっ、お2人のうちの片方が、例のエメラルドグリーンキャップのなぞなぞ美女! というか、あれっ? よくよく顔をつき合わせてみると、このお2人、私も以前にどこかで拝見したことがあるぞ。

「こちら、年明けの舞台でいっしょだった、劇団わらくの大迫綾乃さんと、劇団B級遊撃隊のまどか園太夫さん。」

 ああぁ~! はいはい、2月に私も観た『壁あまた、砂男』のお2人だったんですね! いやまぁ、舞台で拝見したよりもずっと美人さんで!!

 結局、「美人女優2人をほっといて帰る気か、こんにゃろ!」という永栄さんのお誘いを断腸の思いで断って帰路についたのですが、内心では、真夏になろうかとしている今現在の段階でも、近年まれにみる大雪がどうこうとか言っていた時期に観た『壁あまた、砂男』の観劇記が我が『長岡京エイリアン』でまったく完成していない(2014年7月11日時点)ことに非常に情けなくなる思いで、まさしく「あわせる顔がない」というていで3人のもとを辞去したのでありました……ほんとすんません!


 いろいろあって今日も充実した時間に感謝だったわけなんですが……もらったこのハイボール、どうしよ……
 もうアレだ、カゼひいたりしたときに呑むか、薬酒みたいな感覚で。永栄さん、今回も素敵なお芝居をどうもありがとうございましたァ~ん。
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