長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

映画『電人ザボーガー』に奇跡は起きたか

2011年10月28日 14時25分47秒 | 特撮あたり
 モヘヘ~イ。どうもこんにちは、そうだいでございます。
 秋ねぇ。私の町は雲ひとつない快晴ねぇ。けど寒くなった。サンマ食いてぇなぁ!

 もしかしたらこの広い世界に何人かいらっしゃるかも知れない、この『長岡京エイリアン』をチェックなさっている「ぬらりひょんファン」のみなさま、または前回の予告にピクッとこられた「カクレンジャーファン」もしくは「ぬ~べ~ファン」のみなさま、ごめんなすって!! 今日もまた、ぬらりひょん関連とは別の話題になります。次にやるから、待っててちょーだいませ。


 そうだいはちからをためて……いました。

 おととい26日にね、また桜木町に行ってきたんですよ。もうこれは毎月やってますから! それに、秋になってどんどん歩きやすくなってきましたからね~。
 ただ、今回はちょっと変則的な行程になりました。

 まず、出発地点はおなじみあずき色の京浜急行の「鶴見市場駅」(神奈川県横浜市鶴見区市場大和町)。私、京急好きだなぁ~。のんびりしてて。乗ってるおじいさんがすべからくギャンブル好きで、おばあさんがすべからく魚料理がうまいように見える車内の雰囲気も、大好き! 完全なる偏見です。

 ところが、今回は鶴見市場から桜木町には向かわず、いったん国道14号線にのって北上し、およそ12キロ歩いて、以前に出発地点にしたこともある東急東横線の「綱島駅」(横浜市港北区)を目指しました。
 なぜかっつうと、そこにあるお店でお買い物したかったから。買い物はプレゼントですぐにお店から発送してもらったのですが、無事に届いたようで、昨日送り先から返事をいただきました。よろこんでもらえてたら、うーれしーいねぇ~!!
 そんでもって、夕方5時にお店を出たあとは、すぐそばにあった綱島台という小山のような森のような自然公園を散策し、「自然」を前面に押し出した照明設備ゼロの散策コースだったために途中から正真正銘の真っ暗闇になってしまったことには心底ビビりました。日が短くなってますからね~。遠くに残る夕陽の紅をたよりに頂上の高台に向かったんですけど、暗黒の森の先にある空だけがボヤ~っとあかく染まっていたあの情景はちょっとすごい絵だったなぁ。森の中に UFOがとまってんのか!?みたいな。

 といった風景を楽しみまして、ノッてきたわたくしは、そこから東急東横線に乗って「横浜駅」へ向かいました。
 そして、横浜駅からは横浜市営地下鉄ブルーラインに乗って1駅の「高島町駅」へ。そこから1キロ歩いてゴールの桜木町へと。
 ブルーラインには前から1度は乗ってみたかったのでムリヤリ使ってみたのですが……まぁ、また使うことはたぶん、ないんじゃないかなぁ。きれいな地下鉄なんですけど。
 人間ってのは不思議な生き物でして、なれっこになっている「初乗り130円」くらいにはなんの抵抗もないんですけど、料金ボードで「初乗り200円」を読んだ瞬間に、

「え、えぇ~……」

 とテンションが下がってしまうんですねぇ~! 100円もしない違いなのに。そんなケチケチな田舎モンは私だけかしらん?
 まぁとにかく、「ブルーラインに乗ってみたい」というのが最優先だったので乗ったのですが、桜木町駅にそのまま到着するのもシャクだったので、わざわざ高島町駅で降りて歩いて向かったというわけ。

 こんな感じの、やたらに自分の体力と財力を使う経緯をへて宵の口にやってきた桜木町だったのですが、ただそこでゴールというのでもなく、今回はちゃんと目的があったのよ。


 言うまでもない。桜木町の映画館「ブルク13」で上映している話題の映画『電人ザボーガー』(監督・井口 昇)を観る!! これだぁ~。

 いや~、楽しみにしてましたよ。なんか、観た人の評判が尋常じゃなく高いのよねぇ。

 とは言うものの、実はわたくし、特撮ファンの風上にもおけない大馬鹿タリンコでありまして、恥ずかしながら原典のTV特撮番組『電人ザボーガー』(1974年4月~75年6月 全52話)を1話たりとも観たことがないし、井口昇監督の作品もいまだ1本も観たことがなかったのです……
 私はこの『電人ザボーガー』はもちろんのこと、『マグマ大使』や『宇宙猿人ゴリ』といった「ピー・プロダクション」の作品にめっぽう弱くて。自分の不勉強じゃなく境遇のせいに転嫁してしまうのですが、実家の山形でピープロの作品をTVの再放送やビデオレンタルで観る機会はゼロに近かったんですよ! そこらへんで円谷プロの「ウルトラシリーズ」や東映の「仮面ライダーシリーズ」とは、出会いの確率において格段の差があったのです。
 しかも、『電人ザボーガー』が放送された時期は、まさしく『ウルトラマンタロウ』と『仮面ライダーストロンガー』が放映されていた時期とブッかぶり!! これを「前門の狼、後門の虎」と言わずしてなんと言う!?

 あと、井口監督の作品といえば、前作は『富江 アンリミテッド』(主演・仲村みう)ですよ。
 日本屈指のホラーヒロイン「川上富江」の話題であんなに盛り上がったわたくしならば、その最新作を観に行くのがほぼ義務に近かったのに、結局『ブラック・スワン』のほう観ちゃったんだよなぁ!! いまだに大後悔。
 あと、井口監督の「映画以外のお仕事」も、私はちょっと観てないんだよなぁ。私は自分で自分のことを「普通じゃない」と自覚してはいるのですが、井口監督のジャンルをレンタルする気には……なれなかった! 変態失格。

 そんなこんなで、前情報ほぼなしで観てしまった映画版の『電人ザボーガー』だったわけですが。


 いんや~、泣いた泣いた。なんの誇張もなく、声を出さないようにこらえるのが大変だったシーンが2~3ヶ所ありました。

 「愛」……だねぇ。
 極端な言い方をすると、私はモデルになった作品がどんなものかとか、俳優の演技とか、特撮技術のレベルとかはどうであっても良くて、とにかく「作り手の愛」がズビズバほとばしっていれば、それでいいのでございます。
 映画『電人ザボーガー』には、その愛が最初の1カットから最後のエンドロールまで、114分間ギッチギチに詰まっていたと。そう感じられただけで、私はもう充分に幸せでした。

 ざっくり言ってしまいますと、映画『電人ザボーガー』の物語は2部構成となっていまして、第1部は1970年代に放送されたTVシリーズ版の『電人ザボーガー』の、異常に予算のかかった豪華リメイクのような体裁をしているのですが、TV版とはまるで違うオリジナルな結末を迎えて終了。そこから一挙に時間は跳んで25年後。現代日本と思われる世界を舞台に第2部は始まり、くたびれた中年となった主人公・大門豊がふたたび戦場におもむくといった流れでストーリーは怒涛のクライマックスに突入していくこととなります。
 要するに、この映画『電人ザボーガー』は単なるTV版の作り直しではなく、「もしTV版に描かれた物語が、大門豊が中年になるまで続く展開になっていたら?」という、「元ネタ」と「現代日本」の両方をとりこんだ「リメイクでも続編でもない世紀をまたいだハイブリッド」になっているのです。
 このあたりの、昭和の泥臭さと、それが記憶に残りつつもキレイで味気ない現在に生きている男たち(生身の女性はほっとんど登場しない)の、過去を思いっきり引きずり続けている背中の「かっこわるい美しさ」は、ぜひとも作品をご覧になって楽しんでいただきたいと思います。
 昭和の特撮番組への愛。くたびれた市井の男たちへの愛。そして、そんな男たちからの女たちへの愛。呆れながらも菩薩のような心の広さで男たちの乱痴気騒ぎにつきあってくれる女たちの愛。

 あとはねぇ、やっぱり終盤の、東京崩壊を背景にしての中年大門と宿敵組織「Σ(シグマ)団」との最終決戦は、これはどうしてもスクリーンで観なくてはなりません! スピード感にあふれつつもちゃんとバカバカしいバイク戦&空中戦は大画面で観ないと~。

 もうね、とにかく私から申し上げられることは、

「いいから、男は必ず観て!! 女は、バカな男たちが観たかったら観て!」

 これに尽きます。いろんなシーンで、「どんだけ男は女や女体に幻想を持っているんだ?」というロマン全開の光景が展開されるのですが、対象が「女性」でなくとも、「正義」や「悪」や「大人」にさまざまな幻想を投影して作られるのが昭和のほのぼのとした特撮番組だったというわけで、そういう「筋金」の部分で、映画『電人ザボーガー』はまぎれもなく昭和特撮番組を誰よりも正当に受け継いでいる作品なのです。


 こういった感じで、『長岡京エイリアン映画推進事業部』としては「9割ホメ」なんですけれど、ホメてばっかいてもしょうがないので、それゆえに「惜しい!」といったポイントをちょっとだけ。

 問題は、映画『電人ザボーガー』に作品としての「奇跡」は起きたのか? ということ。ストーリー上の奇跡的な展開じゃあありません。それはちゃんと起きてましたけど。
 私の言いたい「奇跡」とは、何百人もの人間が集まってひとつの映画を創るにあたって、監督のセンスや俳優の才能といった一流の素材が足し算になるだけでなく、倍以上のかけ算となる「化学反応」みたいなことです。

 結論としては、私は「足し算」以上のものは生まれなかったような気がするんですね。井口監督の愛と才能がズバ抜けていて、そのうえ日本の特撮技術の粋が集まった『電人ザボーガー』がここまでの傑作となっていることは当然のなりゆきだと感じられるんだなぁ。そこを超えた、この作品だけでしか観られない理屈で説明できないなにかが私は観たかった。

 具体的に言ってしまうと、俳優さんに私は食いたりなさが残ったのよねぇ。
 前半と後半とで「四半世紀」というシャレにならない時間のへだたりがある映画『電人ザボーガー』なのですが、作品は主人公・大門豊のみ、前半を25歳の古原靖久さん、後半を47歳の板尾創路さんが演じるというアクロバットをほどこしてはいるものの、それ以外の面々は演技だけで時の流れをあらわしています。

 まぁ~、ムリよね。紫綬褒章もらった柄本明さんだってムリなんだから。

 しかも、一緒に演技している板尾さんが、演技とはまったく違う次元の「顔に深く刻み込まれた中年のしわ」というリーサルウエポンを持っているため、ならぶ人はもれなく全員、「25年」という歳月の演技にうすっぺらさをただよわせてしまうことになってしまうのです!
 策士、策におぼれる!? 「主人公2人1役作戦」がかえってアダとなってしまったか。

 俳優さんに関してもっと残念だったのは、さまざまな理由で「しゃべった途端に……がっくし。」な方がどのシーンにもかならず誰かいた、ということ。

 たとえば悪の組織「Σ団」の首領・悪ノ宮博士(い~いネーミングセンス!)を演じた泣く子も黙る名優・柄本明さんは、悪の演技にひたりすぎてなに言ってんのかまったく聞き取れないセリフだらけ。悪の女サイボーグ幹部・ミスボーグを演じた山崎真実さんはスタイルもポージングも表情も最高なんだけど、いかんせん声にまだまだ覇気が足りない。ミスボーグはいろんな鬱屈を背負って悪の世界に入ったキャラクターですから。
 Σ団に関しては、他の戦闘員みたいな扱いで出てきた5大幹部も味わいがあって良かったんですけど、こっちはこっちでアツくセリフを叫びすぎててなに言ってんのかわかんない。

 私、しみじみ感じ入りました。特撮に必要なのは、なにはなくとも「カツゼツの良さ」!
 自分の持っている「ルール」をちゃんと人にわかるように説明できる人物でなければ、特撮の世界では「ヒーロー」にも「悪役」にもなれないのです。おのれの身体ではっきりと語れない者は、ギャーと叫んで悪の組織に殺されるか、イーッと叫んでヒーローにぶっとばされるしか道はない。シビアすぎ!

 ただそんな中でも、あんまり役に立たない刑事役を演じた渡辺裕之さんの異常なまでのセリフの棒読みさかげんには感服いたしました。
 これはすごい……棒読みも55歳になるまで続ければこんなに味わい深いものになるのかと。
 渡辺さんの場合は、セリフの意味をしゃべり方で伝えているのは全体の0.5% ほどで、残りの99.5% を「顔」でカバーしている! すっごくいい初老顔!!

 この人だ……この「役に立ちそうにないのになんか信頼できる」感じ。渡辺裕之さんこそ、藤田進や佐分利信、そしてゆくゆくはあの笠智衆老師の衣鉢を継ぐ資格を有している貴重な「なんかいい棒読みDNA」の継承者であらせられるのではないか!?
 その確信が得られただけでも、十二分に映画館に行った収穫はありました。

 なんだかんだ言ったけど、映画『電人ザボーガー』はおすすめよ~!!
 亜紗美さんのむっちりアクション、万歳。
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