華やぐ時間

時の豊潤なイメージに惹かれて 。。。。

” 遠い声  遠い部屋 ”   カポーティ著

2006-11-04 09:50:05 | ★本
映画に刺激されて カポーティが23歳の時に発表し 賞賛された半自伝的処女作を 再読した 
同性愛者への偏見が強かった時代1948年に ホモセクシャルであることを公言したのである
IQの高い早熟の美少年カポーティは 登場からして  すでに センセーショナルである
両親が離婚し 母が亡くなり 親戚を転々として育ち  学校へはあまり行けなかったようである
文壇デビューしてからの派手な私生活  露悪的な言動  アルコールとクスリに溺れていく後半生
”冷血”執筆では 自作のために犯人たちの死を間接的に願ったカポーティの少年時代の一端を読んだ 


小説のあらすじ
母が亡くなり  生存を知らなかった父親から 訪ねて来るようにと手紙が届く
埃っぽい風が吹きつけてるような 人の心もあけすけな南部の小さな町に 13歳のジョエルが着く
馬車で半日も乗るような まだ遠くの屋敷へ やっと辿り着く
荒れて大きな屋敷は 父の後妻エイミー  その従兄弟ランドルフ  台所仕事をするズーがいる
階上から密かな物音がし 赤い玉が転がってくる   なかなか 父に会わせてもらえない 
エイミーやランドルフの気だるさ  雪を希求するズーと過ごしながら 邸内の不気味さが増す
湖の奥には廃墟と化したホテルがあり  黒人のまじない師が住んでいる
遠く離れた近所には 同じ年頃の双子の女の子がいる  
町のお祭りで出会った小人のミス・ウィスティーリア
森を歩き 耳をすませ  かつての町の悪友たちを思い浮かべるジョエルの心は 饒舌で詩的である
ランドルフに誤って背中を撃たれ  父は全身麻痺で寝たきりになっていた
双子の一人 アイダベルと一緒に この環境から逃亡を試みる
もの言わぬ二つの空洞の目が自分を見つめていると思ったとき  探しに来たランドルフが立っていた
雨に濡れ 高熱で数日を病床で臥すベッドの中で ジョエルは さまざまのことを思い出し 振り返る
陽差しを喜び 樹々を見上げ 屋敷の暗闇に怯えた少年を  高熱は剥ぎ取っていったのだろうか
看病して いつもベッドのそばにいてくれるアルコール中毒のランドルフを 愛していると呟く     
遠い声 遠い部屋のドアを  自ら 開けて入っていく


黒人女性ズーへの暴行  ミス・ウィスティーリアの寂しい微笑み  少女愛への予感  女装趣味
こういうことを通して在る人の生を  13歳のジョエルは 無垢な視線でみつめている
心の底に 澄んだ詩情があるなら一歩を踏み出そうとも 失われるものではないだろうけど
少年が 少年を終わっていく予感が  なんとも哀しい
カポーティは ここから始まり  他人をも自分をも見つめ続けて  酒とドラッグで自滅を選んだ

  
コメント (4)
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