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護衛艦「さみだれ」乗艦記

2012-06-29 | 自衛隊

呉を案内して下さった元艦長氏夫妻について、夫婦関係のことなどをだらだらと書いていたら
紙幅?が尽きました。
今度こそ本当に乗艦記と参ります。

心構えはまず外面の準備から。というわけで、乗ったことは無いけれど、
戦うためにできている軍艦というものの内部が、いかに狭い通路、急な階段を通るものか、
海軍好きの末席を汚すものとして多少なりとも知っているつもりのエリス中尉、
この時はどんな動きにも対応できるようにちゃんと運動靴で出かけましたよ。

さて、本日乗りこむ護衛艦は、「むらさめ」型の6番艦として平成12年に就役した「さみだれ」。
旧軍の駆逐艦「五月雨」はこれの先代であり、初代にあたります。

初代五月雨は、ミッドウェー、第三次ソロモン、マリアナ沖のそれぞれの海戦を戦い抜きましたが、
マリアナ沖海戦直後の1944年8月、輸送任務にあたっているところを米潜水艦に撃沈され、
パラオ諸島海域の海底で永遠の眠りについています。

乗艦の際、さみだれについてのパンフレットを頂くのですが、それに当然のことながら
先代「五月雨」のスペックや歴史が書いてあります。
しかーし。

「五月雨」の歴史には、なぜか肝心の、戦争中に撃沈されたということが書かれていないのです。
当然、誰に攻撃されたかということも書いていません。
ついでに、「五月雨」を初代軍艦「さみだれ」と、なぜかひらがなで表記しているのです。

何を、誰に遠慮しているのか海上自衛隊。

小さなことだけど、こんな風に気を遣うくらいなら、そもそも旧軍の名称を使うのもアウトでしょ?
堂々と
「パラオ諸島北端で座礁中米潜水艦「バットフィッシュ」(SS-310)の雷撃を受け沈没した」
って書くべきでしょ?

・・・・・・いかんいかん、わたしは何に怒っているのだ。



これがそのパンフレット表紙。
「さみだれ」のマークは、右下のペガサスです。
いかにも駆逐艦らしい俊敏なイメージのマークですね。
ついでにこのJSですが、少し前まで護衛艦は「JDS」=Japan Defence Shipだったそうです。
英語の名称から「防御」を外した。これはわたくし賛同します。


もう軍ではない、ということを占領軍とひいては国内のある勢力に向けて表明するために
戦後海軍は「自衛隊」「護衛艦」という言葉をひねり出しました。
しかし、自衛隊はともかく、護衛艦の英訳は、世界的に見て

「ディフェンスなんてわざわざ断る必要あんの?

国を護るために戦うのは当たり前だろーが!
そもそも軍艦っちゅうのは攻撃するもんだろーが!」

と不思議がられるネーミングであることに、彼ら自身もようやく気付いたと見えます。
(そういう理由ですよね?)


          

前回の写真でお分かりと思いますが、「さみだれ」は同型の駆逐艦が二隻並んで、
仲良く接岸している、その外側に位置します。
ですので、手前の艦「いなづま」から乗り、ジョイントというか通路を渡って乗りこみます。



ちなみに、この「いなづま」はこの艦としては4代目。
旧海軍時代から、艦名は天象、気象、山岳、河川、地方(旧国名)から採用されてきました。

このネーミングについては本が出るほどいろんな話があるのですが、
駆逐艦だけに限ると、だいたい気象関係の名前になります。

ちなみに、このむらさめ型の護衛艦は、ほかにも「はるさめ」「ゆうだち」「きりさめ」。
実に雅な響きで美しゅうございますね。

 「いなづま」を通り抜けるときお迎えしてくれたボンレスハム状態の人。

これは、いったいなんのためにあるのでしょうか。
まだ艦長の説明が始まっていなかったので、気になっていたけど聞きそびれました。
救助訓練用の人形?戦闘時擬装用のダミー?(というのもわけわかりませんが)

隊員の間では、絶対なにか名前があるに違いない。「カイジ」とか。

  

ヘリコプターが離着艦するヘリポート。艦尾にあります。



搭載ヘリコプターはSH-60K。
4名の乗員で運行しますが、この乗員は普段は別の基地にいて、
「さみだれ」にヘリが搭載されるときには「さみだれ」の指揮下に入ります。




さて、いよいよ主要武器の見学に突入。
ただし、先にお断りしておきますが、エリス中尉、現在の武器に関しては全く知らないので、
今後の説明に何か間違いがあったらすみません。



この上にあります、と言われたので、素直に写真を撮ってみました。
垂直式短SAM発射装置(VLS for short range SAM)。(がこの上にあります)。

VLSとはVertical Launching System 、垂直発射システム。
SAMとはShip-to-Air Missile、つまり 艦対空ミサイルのことです。

短、というのは短射程を意味し、つまり一行で言うと、
垂直式発射システムによる、短い射程距離の艦対空ミサイル
というのがこの武器の説明です。わかりやすいですね。




パネルはおそらく見学者のためにだけ出してくるもの。
RIM-1662(ESSM)の発射4コマ劇場(と書いてある)


性能要目(RIM-7Mとの比較)

1、最大射距離     さらによく飛ぶ
2、最大速度      相当速い
3、高高度        かなり高い

って、全く説明になっていない気がするんですが。
まあ、詳細は「軍機」ですから、一般には公開していないっていうのはよくわかります。
中国のスパイだってこういうところには簡単に来られるわけですからね。

   SSM-1B/HARPOON

水上目標に対処するため(つまり、敵艦船攻撃のときですね)HARPOONミサイルを発射する。
演習のときの写真で、ここからミサイルがぶっ放されているのを見ましたが、ものすごいです。
下のパネルは、国産のミサイルSSM-1Bについての説明。

せっかくだから全文書き写してみます。

90式艦対艦誘導弾(SSM-1B)

慣性+アクティブレーダー誘導、ジェットエンジン推進をする国産初の艦対艦誘導弾である。
艦から発射後、敵艦のレーダーの目をくぐり抜けるため、海面へ降下し、
低高度で水平飛翔を行う。

最終段階ではミサイルの頭からレーダーを出し、敵艦を捜索、探知および誘導、
そして目標に命中する。



すっげー!
三枚の写真には上から

「発射!」
「海面ぎりぎりを飛行中」
「敵に命中!沈没!」

と子供にも分かるように三コマ仕立てで説明がされています。

ミサイルの頭からレーダーを出し、敵艦を捜索、探知、ミサイルは誘導され敵艦に命中。
そういえばこれ、「ジパング」で護衛艦「みらい」がうっかり使ってしまってませんでした?
「みらい」がレーダー補足したのは、航空機でしたっけ。

しかし、こんなもんで戦争したら、持ってる方が勝つにきまってません?
しかも、これ国産なんですよね。持ってるの、うちだけ?
同じような兵器で戦ったら、一瞬の速さが勝敗を分ける、ということなのだろうけど、
我が日本の自衛隊の錬度は米軍から見ても「絶対に戦争したくない」というものであった、
という話を聞いたことがあるから、本当なら日本が圧勝だ!(←お気楽すぎ?)



三連装短魚雷発射管(Torpedo tubes)


案内は、「さみだれ」艦長ご本人自らがご一緒して下さいました。

いくら「特別見学者」とはいえ、一般人に見せられる護衛艦の設備なんて知れています。
特別と特別でない見学者の違いというか、元自衛官の紹介ならではの「お得」って、なんだったの?
と後から考えないでもなかったのですが、もしかしたら「艦長自ら艦内を案内してくれた」という点?

しかし、誰がいつ来ても艦長が案内するものなら、別段特別扱いでもありませんよね。
普通はどうなのかしら。
ここは、一般見学をしたことがある方の証言をぜひ聞いてみたいところです。


それはともかく、艦長は歩きながら説明をして下さるのですが、なぜか当然のように
この一団の中心人物、というかこの企画を立てさせた張本人であるところのエリス中尉よりも、
はっきりいって付き合いで来た程度のTOに向かって話をするのです。

艦長、TOに向かって説明→TO、ほーとかへーとかの返事→エリス中尉、質問→
艦長、TOに向かって説明→TO、素人以下の相槌→エリス中尉、TOに分かりやすく説明
→以下ループ

艦長さん。
護衛艦を見に来るのは、軍おたくの旦那と、仕方なくくっついてきた奥さんだけじゃないんです。
さすがにこのループを三回くらいして、ようやく艦長はわたしにむかって説明するようになりましたが。

素人以下と言えば、この魚雷についての説明を聞いたときも、TO
「魚雷って、潜水艦だけが持っているんだと思っていました」なんて言うんですよ~。
恥ずかしいからどうかこれ以上しゃべらないでくれ、と思っていました。

後で調べると、この魚雷は対潜水艦攻撃用のようですね。
そのときにはこの発射口が海面に向き、圧縮空気によって魚雷が発射されます。

62口径76ミリ速射砲

空中、水上、いずれの目標も攻撃可能な無人砲。
オトー・メラ―ラ製のこの速射砲のコンパクト版がこれです。
なんと日本製鋼でライセンス生産されている模様。これも一応国産だ。

一分間に100発射出可能だそうです。
このとき
「うーん、五月雨撃ちなんてものじゃありませんね」
よせばいいのに、つい口をついてこんなことを言ってしまったエリス中尉。

「・・・・・・・・・・」

かんちょうの へんじがない きこえなかった ようだ


聞えないふりをした、とも言えるな。

 高性能20mm機関砲(CIWS)

まあよくぞあっちこっちにいろんな武器を搭載しているものです。
全方位ぬかりなく「防御」するためには、これもいたしかたなし。いいぞもっとやれ。

これは対空砲です。
こちらからは見えない、この白い物体の艦橋に向いた方向に20mmの銃口がついています。

これは自動手動、切り替え可能。
このイニシャルはクローズ・イン・ウェポン・システム
「近接する対空目標、即ち敵航空機にぶっ放すもの」
って理解でよろしいでしょうか。


駆逐艦「五月雨」乗艦記、まだまだ!続きます。








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4 Comments

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CIWS (鷲)
2012-09-11 20:40:29
>このイニシャルはクローズ・イン・ウェポン・システム。
>「近接する対空目標、即ち敵航空機にぶっ放すもの」

エリス中尉、映画「バトルシップ」のシーンで、米軍の駆逐艦と「みょうこう」がエイリアンのドラムカンのような武器で攻撃されるシーンがあったのを覚えておられますか?

あのシーンでCIWSが、空中で、あのドラムカンを打ち落とすシーンがありました。

この武器は、基本的に敵航空機ではなく、近接してくる敵のミサイルを打ち落とすのが目的なんですよ
あれですか! (エリス中尉)
2012-09-12 10:36:28
覚えています。
「バトルシップ」について書いたとき、
「なすすべもなくやられてしまう『みょうこう』などと書きましたが、そういえば反撃していましたね!

それにしても、ミサイルを撃ち落とせるのなら、航空機も当然撃ち落とせないのかしら、などと思ってみたりもするのですが、大戦末期のように「飛行機がフネを攻撃する」という戦闘形態は現在あまり想定されてない、ということなんでしょうか。
それとも、いまどきの戦闘機が速すぎるので海上で上空からフネを狙うのは危険(海に落ちるという意味)だからなんでしょうか?
(なんかまたものすごくへんな質問をしている気がするけど・・・)
航空攻撃 (鷲)
2012-09-12 20:56:09
エリス中尉の疑問
>ミサイルを撃ち落とせるのなら、航空機も当然撃ち落とせないのかしら
は当然ですね

当然、射程距離内を飛行する敵機がいれば、あっと言う間に打ち落としてしまいます。

しかし、現代の対艦航空攻撃は、全てStand-Off攻撃が基本で、長射程のミサイル攻撃が全てと言っても過言ではありません。
要するに、CIWSで打ち落とせる距離にまで近づく敵機は、ほぼ100%いないのです。

私も現役時代、ハープーンミサイルによる模擬攻撃訓練を何回も行いましたが、それは目標から〇〇(ここ「ピー!」がはいる処)マイル以上離れた距離から行っておりました。

もっとも、P-3Cで肉薄攻撃なんかしたら、CIWSの前にオットーメラーラにやられてしまいます
こんなメールが (エリス中尉)
2012-09-13 09:42:32
ブログ主があまりにわかっていないため、時折詳しい方から見るにみかねてコメントが入る当ブログでございます。

このような内容のお便りをいただきました。

「P3Cも時速でマッハなんて出ません」
わたしもそう思います。
「最高速度でせいぜいそれの約半分、多分500から600位です。その位の速度では現代の兵器(艦砲)は目標として簡単に捕捉できてしまうという事です」
「P3Cは大型機ですから運動性なども良くないのでなおのこと
(ゼロ戦とかの様な宙返りも出来ませんから(^^!))」

哨戒機ですものね。


「漫画の「ジパング」では「みらい」の戦闘場面で同様なのが何回か出てきましたね?
当時の艦砲では、あの様なピンポイントの対空射撃は不可能だったのが物語の中では「みらい」の艦砲により(コンピューター制御等で)次々に撃墜されてしまったので「脅威」となった訳です」

「現代ではそれが可能=常識という事です。あの様な解り易い「構図」の艦対空の戦闘(接近戦)など起こらない(だろう)という事です」

鷲さんのコメントの「近づいたらオットーメラーラにやられてしまう、というのからも、兵器の近代化によって戦闘のかたちも常に変わっていっている、ということはよく理解できました。

今後、科学がもっと発達して兵器が進化し続けたら、戦争の形はどうなっていくのでしょうね。

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