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「戦車を撃つのは卑怯」?ドイツ軍の高射砲〜国立アメリカ空軍博物館

2024-05-17 | 博物館・資料館・テーマパーク

国立アメリカ空軍博物館の展示から、
爆撃機関連で今日は高射砲をご紹介します。

■88mmFlaK 36高射砲

FlaKとはFlugabwehrkanone
(フルーク アプヴェーア カノーネ)
の省略形で、ドイツ軍では8.8cm対空砲であることから
「アハト-アハト(Acht-Acht)」
連合軍は88の英語読みでエイティエイトと呼んでいました。


FlaKという言葉は言いやすいので、
連合軍でも将校以外はこのように呼んでいたようです。
単語に分けると、

Flug(フルーク)=航空機
Abwehr(アプヴェーア)=防衛
Kanone(カノーネ)=大砲


となります。

汎用性の高い88mm砲は、第二次世界大戦中、ドイツの主力対空砲でした。
88mm弾が高度で爆発すると、ギザギザの金属片が飛び散り、
近くの航空機(とその内部の人間)を切り裂く威力がありました。
また、空には特徴的な黒い雲が垂れ込めたといわれています。

88mm砲の高速射撃は対戦車砲としても威力を発揮し、
遠方の地上目標に対しては通常砲としても使用することができました。

ドイツ軍の「砂漠の狐」として英雄だったエルヴィン・ロンメルの副官、
ハインツ・シュミット中尉という人の回想でこんな話があります。

北アフリカで捕虜になり尋問を受けていたイギリス軍の戦車兵が、
彼らを負かした88ミリ高射砲を憎らしげに見ながらこう言いました。

「高射砲で戦車を撃つのは卑怯ですな」

それを聞いたドイツ軍の砲兵が、勢い込んで口を挟みました。

「”アハトアハト”以外では撃ち抜けない装甲の戦車で攻めてくるのは
それ以上に卑怯じゃないか!

解説しよう。

装甲の強さで定評のあるマチルダII歩兵戦車に絶対の自信を持ち、
北アフリカの208高地に攻め入ったイギリス戦車隊ですが、
待ち受けていたドイツ軍の88ミリに装甲板を貫かれたのです。

作戦開始から三日でイギリス軍は撤退しましたが、
その戦車損失の原因の大半は高射砲にありました。

ついでにロンメルが出たので、思い出した昔読んだ本の一節によると、
ロンメル将軍は連合国軍からも畏敬の的となっており、
イギリス(軍?)では「Do Rommel」という言葉が

たしか「うまくやる」という意味に使われていたとかなんとか。

ちなみにロンメルは、その人気と名声を周りに妬まれたのもあって、
ヒトラー暗殺計画関与の疑いをかけられ、自決してしまいました。

惜しい人を亡くしたものです。

【ゆっくり解説】エルヴィン・ロンメル ゆっくりでごめん


閑話休題:博物館の88ミリ砲は、連合軍の戦略爆撃作戦中に
ヨーロッパで使用されたドイツ軍の典型的なタイプとなります。



砲身にペイントされた白いリングは、いわゆる「撃墜マーク」で、
砲員によって撃墜された航空機の数を表しています。



対空砲火の直撃は爆撃機にしばしば壊滅的な損害をもたらしました。

写真の爆撃機もちょうど高射砲弾がヒットしたところですが、
驚くべきことに、このB-17の10人の乗員のうち5人は、
制御不能に陥る前にベイルアウトすることに成功しています。


(おそらくボール砲塔砲手は脱出できなかったでしょう)



「FlaKの煙は、外に出てその上を歩けるほど分厚い」

とは、対空砲火の激しさを言い表す常套句でした。
写真に見える黒い雲は炸裂する対空弾によって生成されます。



このチャートはドイツの各種対空砲の射程距離を示しています。
最小の7.92mmと最大の150mmでは、
その射程距離に38フィートの開きが出てくるということがわかります。

88ミリ対空砲は有効射程26フィート、
最大射程33フィート、マキシマムで36フィートまで届きます。
スペックでは、

有効射程14,810m(対地目標)
7,620m(対空目標)
最大射程11,900m(対空目標)


とされています。
チャートは連合国側によって作成されたもので、
米空軍の重爆撃機は、これを踏まえて有効射程の限界で飛行していました。


対空砲が構造物に当たった時の衝撃を表す壁の展示です。

ここに20ミリ対空砲実物が展示してあるのですが、
20ミリ砲が当たった時こんなふうになるものでしょうか。

これは戦車も破壊する88ミリの痕ではないだろうか。



20mm対空機関砲 フラークヴィアリング38
Flakvierling 38 20mm Antiaircraft Gun

20mm Flakvierling 38は第二次世界大戦中のドイツの対空砲です。
Vierlingとは、四連装を意味します。
ドイツ語で「四つ子」というときは「ヴィアリング」というそうです。
そういえば、双子は「ツヴァイリング」だったっけ。

共通の架台に4つの砲身を搭載し、折り畳み式シート、

折り畳み式ハンドル、弾薬棚を備えていました。

架台は三角形の台座で、各脚には砲を水平に保つジャッキが付いています。
トラッカーは2つのハンドホイールを使って手動で砲を

トラヴァース(旋回)&エレベート(上昇)させます。

砲は2つのフットペダルによって発射され、自動またはセミオートで作動。
低空飛行する連合軍機に対して広く使用され、
しばしば対空砲塔やその他の常設架台に設置されました。


訓練中

仕様
口径:20mm(0.79インチ)
銃身長:4.08m 51½インチ(フラッシュハイダー含む)
重量:1,509kg 3,200ポンド
高さ:1.6m 10フィート1インチ(銃を高くした状態)
最大垂直距離 4,012ヤード
発射速度:実用800発/分

サイクル1,400発/分 サイクリック
マガジン装弾数:20発
装弾数:16マガジン(320発)


制作はマウザー社。
88ミリ砲はクルップ社です。

■ドイツ戦車兵グッズ

「フライヤーの脅威;対空砲火」

壊滅状態に至ったといえ、ドイツ軍の対空砲火(対空砲火)は、
アメリカ空軍の飛行士たちをますます苦しめていました。

戦闘機・爆撃機のパイロットの任務は基本低空で行われますが、
任務中、もし対空砲火の直撃によって機体が致命的な打撃を受けたとき、
もし低空だったらベイルアウトできるだけの高さがありません。

対空砲はFliegerabwehrkanoneの略で、
大都市で見られる128mm砲まで様々なサイズがありました。

最も効果的な対空砲は、20mm軽対空砲と有名な88mm両用砲でした。



1、ルフトバッフェ・ヘルメット
ドイツ軍の高射砲手が防護のために身につけていた標準タイプ

2、FlaK砲手のバッジ
対空砲に従事する砲兵が身につけていた

3、FlaKコンバットバッジ
受賞された高射砲手に与えられた戦闘バッジ



スポッティング双眼鏡
ドイツ製10倍双眼鏡。地上から狙いをつけるため使用。



6、ルフトバッフェ・ベルトバックル
多くの高射砲手がドイツ空軍の所属でした。

7、20ミリ対空砲弾
典型的な20ミリFlak対空砲の砲弾。
(太い万年筆かと思った)

8、コンピュータ
レンジと方向を計測するコンピュータ。
88ミリ砲の砲手たちが使用していたもの。

最後に、とんでもない誰得おまけを。

wikiの20ミリ高射砲のページにこの武器が登場する映画、
ゲーム名が掲載されていて、ゲームだと「艦つく」「ウォーサンダー」、
映画だと「インディジョーンズと運命のダイヤル」なんかがあります。

そして、もう一つ高射砲が登場する映画が問題の


「Eine Armee Gretchen」(陸軍のグレッチェン)

この作品は、第二次世界大戦末期、人員不足のドイツ国防軍に
主に士気を高めるという目的で金髪女性派遣団が結成されるという話。

戦闘シーンもそれなりに出てくるようですが、
つまりは「そういう」映画のようです。

しかも、たった一件寄せられた評価によると、深みはもちろん演技も酷く、
そっち方面から(そっちってどっち)見ても中途半端な駄作ということです。

それにしても、ドイツ人がこんなおふざけ映画を?と思ったら
案の定制作はスイスで、発表当時も低評価の嵐だったようです。

でもwikiに載ってるくらいだから、少なくとも高射砲は
ちゃんとしたレプリカか本物を使ってたってことなんだよなあ。

小道具担当が意地を見せたか、それとも現物を手に入れたか。
それを確かめたくても、日本でこの映画見る方法は多分ないと思いますが。



続く。