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ねずみ上陸

2010-09-23 | 海軍
海軍で勤務が終わり町に繰り出すことを「上陸」といいます。
これは、例えば飛行機乗りで地続きの繁華街に行くときでもそう言ったわけですが、当然のことながら元々は艦船勤務の乗組員が「陸に上がる」ことからきています。

搭乗員がレスに繰り出すといったたぐいの「上陸」と違い、船乗りの上陸への憧れはは切実なものでした。
そりゃそうでしょう、狭くて揺れる艦内にむさくるしい野郎ばかり、寝るのはハンモックに、水が少ないためろくに入浴もできない。
一日千秋の思いでその日を待ち焦がれたものでしょう。

突然ですが、かわぐちかいじの「ジパング」をご存知ですか?
日本の最新鋭護衛艦がタイムスリップによって一九四二年の太平洋に迷い込んでしまい、大東亜戦争に参加し歴史の流れを変えてしまう、という空想戦記マンガです。

これ、大きな流れはともかく、細部的には突っ込みどころ満載のマンガなのですが、エリス中尉が一番気になったのがこの点なんですね。

迷い込んでしばらく、乗員はどこにも寄港することなく、かなり長い間海上をさ迷いますが、いかに最新鋭護衛艦でもそんな長く食べ物や燃料、水や自動販売機のジュース(お金を入れてジュースを買うシーンあり)も補給なしでいけるのか?
さらに、総員がこのように長くどこにも上陸しないで大丈夫なのか?

という・・・。


まあ、その話はともかく、海軍では上陸を例えば懲罰によって差し止めしたり、報償として増やしたりしました。
軍楽兵の楽器適性の記事の日に、音が出ないので上陸止めはしばしば、という人を紹介しましたが、それを決定するのは甲板士官や先任伍長という上官。

こっそり魚釣りをしたとか、時間に遅れたことなどに対してその程度に応じて「上陸止め何回」などと言い渡されたそうです。
連帯責任で一人の不始末のため班全員が上陸止めになったりした日には、その一人に対して皆のよせる怨嗟の声はマジで物凄いものだったと思われます。

さて、今日の話題ですが、報償として増やしてもらえる制度になんと「ねずみ上陸」というものがあったというのです。

どこから忍び込むのでしょう、艦船の中にもねずみはいました。
ねずみ撲滅の奨励策として、兵員がねずみを捕まえて先任伍長にみせると、一匹につき一回の上陸を許されるというのが「ねずみ上陸」と呼ばれていました。
嘘のようですが、というか、この名前だけで笑えるんですが。
しかし、一匹につき一回。
なかなかのグッド・ディールです。
みんなのいるところにねずみがあらわれたりしたら、みんなで俺が俺がと追いかけまわすの図が展開したのでしょうか。


さて、そうなってくると、どこの世界にも当然のことながらズルをしようという奴が出てくるわけで(^_^;)
海軍さんといえども例外ではありません。



どこからか生まれてまもない子ネズミを見つけてきて、巣ごとチェストに持ち込み、自分の食べ物の残りで大切に飼育し、かなり成長させたところで一匹おもむろに伍長に持っていったところ

あまりに綺麗で毛つやが良すぎ、ばれてしまいました。

可哀そうのなのは、逆に子ネズミの数だけ上陸止めになってしまったということで、いやー、ねずみ算で増えた子ネズミ、いったい何匹分だったのでしょうか。


また別の兵ですが、ねずみはねずみ、陸のネズミでも海のネズミでも上陸できればいいねずみと、毛沢東のようなことを考え(ちょっと違うかな)ねずみ取り機で借家の裏通りの側溝に仕掛け、ボスネズミと見られる大物を一匹捕え、苦心して艦内に持ちこみました。

意気揚々と伍長に差し出したのですが、今度は反対にあまりにもそのネズミが汚れていて、いかにもゴロツキねずみ然としており、そもそも狭い艦内で捕えられたにしては

あまりに巨大だったため、怪しんだ伍長に問い詰められ、ばれてしまいました。

報償をもらうつもりが、上官をたばかる軍人にあるまじき態度がはなはだけしくりからんということで、このたびは上陸止め二回の刑に処せられました。


古来より日本では猫は船の守り神といわれ、特にオスの三毛猫は珍重されて長い航海に連れていかれました。
守り神でもあったのでしょうが、主な目的は船内でねずみを取らせるためだったのでしょうね。
「主計大尉 小泉信吉」の手紙にも、艦内で軍医が猫を飼っていたという記述があります。
ねずみ上陸がすべてのフネ対象の制度だったかどうかはわかりません。

猫を持ちこんでいない艦だけのものだったのではないでしょうか。




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