ネイビーブルーに恋をして

バーキン片手に靖國神社

ウミネコの蕪島と種差海岸〜青森・八戸訪問

2018-06-22 | お出かけ

いろんな行事が相次いで、それについてお話しすることを敢えて優先したため、
ずいぶん昔のことになってしまいましたが、一泊二日の泊りがけで
秋田県八戸市を訪問したときの話をしようと思います。

この旅の目的は、八戸にある海上自衛隊基地への表敬訪問です。

まだ山麓には雪がうっすらと残っていますが、実は連休の後です。

秋田県には、もう遥か昔、息子が生まれる前にTOと旅行に来たきりです。
小岩井農場、十和田湖、温泉宿という王道の観光コースでした。

前回来た時には、そもそも東北新幹線も全通しておらず、
確か盛岡まで新幹線で来て、レンタカーで周遊したものです。

小さな車でうっかり八甲田山中にドライブに入ってしまい、霧が出て
思いっきり怖い思いをしました。

後からなんども

「夏車で走ってあんな恐ろしいところをよく雪中行軍なんかするよね」

と思い出しては身震いしたものです。
しかし今でも遭難した旧陸軍青森歩兵第5連隊と同じ名前を持つ
陸上自衛隊第5普通科連隊は、慰霊と訓練を兼ねて
雪中行軍ならぬスキー演習を八甲田山で行なっているそうです。

そのときの旅行でもう一つ印象深かった景色を、この初めて来る新幹線の駅
八戸駅(新八戸でないことに注意)に降り立って思い出しました。

「種差海岸・・・・・行きましたねえ」

「地震で被害があったって聞いたけど元どおりみたいね」

看板の下には種差海岸の前に「三陸復興国立公園」とあります。


わたしたちが八戸駅に降り立ったのは、基地訪問予定日の前日でした。

基地訪問に先立ち、八戸のポイント観光に連れて行ってくださるという
ありがたいお申し出をいただいたので、一日前乗りしたというわけです。

最初に連れて行っていただいたのは八戸駅から車で少し行ったところにある
食のアミューズメント施設、「八食市場」。

八戸観光に来た人たちが必ず訪れるという大きな市場です。
ずらりと並ぶ八戸ならではの海産物に圧倒されます。

ホヤは日本ではここ三陸地方でしか採れないらしいのですが、
また鮮度が落ちるのが早いので、ここ以外で店頭に並ぶことはありませんし、
またホッキ貝も北海道と青森でしか味わうことのできない海の幸です。

買ったばかりの食材を、七輪を借りて焼いて食べるコーナー。
これはいいですね。
今度来たらホタテやアワビを買ってやってみたい。

世の中にはカニというと目の色を変える人もいますが、
わたしは特に甲殻類には興味がないので、(というか食べるの面倒臭い)
毛ガニの値段を見ても実のところ高いのか安いのか判断できないのですが、
大きな毛ガニが1パイ6,000円・・これって安いですか?

そうそう、昔旅行で来た時にも旅館でいちご煮が出たんだった。

「どうしてイチゴ煮っていうんでしたっけ」

「なんだったですかね」

「前にも聞いて納得した覚えがあるけど忘れちゃった」

ウニとアワビの汁物のことで、イチゴに似てるからイチゴ煮。
案内してくれた方二人のうち一人は単身赴任なので、
缶詰で買ってよく食べるということでしたが、もう一人は

「わたしはイチゴ煮はあんまり・・・」

ちなみにお二方とも地元の生まれではありません。

「わざわざ一緒に食べるものでもないという気がします」

確かにウニもアワビも贅沢で、力技的料理で客人向けではありますが、
一緒に食べて単体より美味いのかというと、そうでもないかも・・・。

ここで、ムラサキウニを食べてみることにしました。

購入すると、トレイに半分に割ったウニの殻と、わさび、
醤油と小さなスプーンを付けてくれます。

通路のところどころに設置されたテーブルに座っていただきます。
もしもしTOさん、お醤油こぼしてますよ〜。

それにしても、このウニ、信じられないくらい美味でした。
大げさなようですがこの人生で一番美味しかったかもしれません。

殻付きの牡蠣が300円!

これはぜひ生をツルッとやってみたい。
わたしは生牡蠣が大好物なのですが、過去何度かあたったことがあり、
産地と新鮮さが保証されないと怖くて手が出せないのです。

でもここならきっと・・・。

市場の中にはお酒のコーナーもありました。
純米酒「どんべり」という名前にウケたので。

地酒を100円で試飲できる自動販売機がありました。
昔は無料で試飲も行なっていたのでしょうが、物が物だけに
試飲と称してちゃっかりしっかり飲んでしまう酒飲みさんが多く、
苦肉の策として試飲を有料にせざるを得なかったのでしょう。

ちなみに、案内してくださった方のオススメは「八仙」だそうです。

さて、八食センターの後は、蕪島というところに連れて来てもらいました。
蕪島には神社があり、この蕪嶋神社そのものがウミネコの繁殖地でもあります。

昔はこの蕪島部分だけが本当に島だったそうなのですが、
埋め立てて地続きにしてしまい、現在に至ります。

これが1922年ごろの蕪島。

1942年、内務省と海軍省に委託されて海軍が工事を行い、
蕪島自体を地続きにしてしまったというのです。

うーん、海軍がなぜこんな工事を?

横須賀の軍港は水路を掘って島を作ってしまうし、
追浜や呉は埋め立てて海を陸にしてしまうし、古来帝国海軍、

いろんなところの地形をドラスティックに変えた前科があるのだけど、
そのいずれにも防衛上の何かしらの理由があったはず。

横須賀も呉もその理由はよくわかるんですが、それでは蕪島はなぜ?

噂によると、神社の裏手の海に面した風穴に、

船艇の発着所があった

大砲など武器を備えていた

防空壕があった

ということですが、戦後、いち早く風穴は埋め立てられてしまい、
そこに何があったかは今でも謎になっています。

っていうか、調べればこんなのすぐわかるんじゃないの〜?

神社は修復工事中。
2015年11月5日未明の火事で神殿が焼失したので、現在は再建中です。

「原因はなんだったんですか」

「漏電ではないかと言われています」

八戸基地の自衛官の皆さんは、定期的にここの清掃をボランティアで行い、
自衛隊としても参拝をすることもあるそうです。

三陸海岸はウミネコの産地として国の天然記念物に指定されている場所が
何箇所かありますが、蕪島もその一つ。

後ろの岩がところどころ白いのは、ウミネコの糞です。

ここを歩く時に空爆を受ける可能性があるので、案内所の入り口には
ビニール傘が備え付けてありましたが、その時はその時、と思い、
手に取りませんでした。

もし命中していたら着替えもないのにどうするつもりだったんだろう、わたし。

ちなみに、この近くではウミネコの爆弾を再現した、

八戸うみねこバクダン

なるお菓子を土産物として売っており、TOがお土産に買っておりましたが、
職場の女子は

「ちょっとリアルすぎるかも」

と引き気味だったそうです。

止まれそうなところには全てウミネコが占領しているのが蕪島。

柵の向こう側の斜面はもっとたくさんいたはずです。

それにしても、カモメと似ているなあ。

5月の蕪島はウミネコと菜の花の絵になる取り合わせが見られます。

向こうから巣に使う材料を咥えたウミネコがやって来ました。

右脚に鑑識用のリングをはめています。

そういえば、メリメの「カルメン」原作では、カルメンは黄色い花
(フサアカシヤ)を咥えて
踊る、という表現が出てきましたっけ。

こちらでは小さなウミネコ(右)が大きなのに向かって
文字通りニャーニャー鳴いて何かを訴えていました。

「・・・・可愛いですね」

案内の方がついつぶやいていましたが、子供のウミネコの声は
確かにとても可愛い。

「我輩は海猫である。名前はまだない。どこで生まれたかとんと見当がつかぬ。
何でも標高17m、面積1.8ha、周囲800mの島(あとで知ったが世間では蕪島と言うらしい)
でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している」

というパロディがあるとかないとか。

ちなみにウミネコは一夫一婦制で、死ぬまで添い遂げるそうです。

ウミネコとカモメの違いを図解で説明していたので上げておきます。

くわ〜〜〜っ!

って、実はウミネコってとっても凶暴な鳥相なのね。
とにかく識別のポイントは目の周りの隈取りと嘴の赤です。

しかしこれだけ似ていて決してお互いが交わらないというのが不思議。

蕪島から後ろにある港の情景。
このおどろおどろしい佇まいの建物は、震災に耐えたわけですね。

この付近が津波に襲われる様子がちょうどyoutubeで見つかりました。

 

蕪島の鳥居のところまで水が来ているのが写っています。

震災当時の蕪島付近。
当時の観光案内所は流され、今のは再建されたものです。

この震災の時、高台にある八戸基地には人々が次々と避難してきて、
海自は同所にある陸自とともに震災対応を行いました。

これだけの津波に遭いながら、八戸の死者、行方不明者はともに1名でした。

白いウミネコの中を飛び回って大変目立っていたカラス。

わたしはこれを見ていて、参加したばかりの練習艦隊のレセプションで、
周りからほんのり遠巻きにされていた代議士HSK先生のことを思い出してしまい、
案内の方についその話を(ネタとして)してしまいました。

軽率だったとは思いますが反省はしていません。

次に連れて行っていただいたのが・・・なんと!
わたしたちが19年前に訪れた種差海岸でした。

海沿いにありながら青々とした芝のなだらかな坂が続く不思議な海岸。
いつまでも強い印象を残す特別な場所として記憶されていただけに感激もひとしおです。

そこに立つだけで浩然の気が養われ、心が洗われずにいられない、
自然の作り出したそんな場所があります。

種差海岸はその一つであるとわたしは思ってきましたが、
ここに設置された説明板で見た司馬遼太郎先生のお言葉は、
それを裏付けるもので、まさに我が意を得たりの感がありました。

曰く。

「むしろどこかの天体から人が来て
地球の美しさを教えてやらなければならない羽目になったとき、
一番にこの種差海岸に案内してやろうとおもったりした」

種差海岸は現在蕪島も含め「三陸復興公園」と呼ばれています。

さて、その後駅前のホテルにチェックインし、夜になってから
もう一度集合し、夕食を皆さんとご一緒しました。

「八戸一お洒落なところにご案内します」

と聞いていましたが、こりゃ確かにお洒落だわ。(棒)
掘り炬燵があって、個室でその気になればカラオケもできるぞ。

ところで、このお土産やさんの伝票入れの横で見て気になっていた
「八戸せんべい汁」ってなんなのかしら。

「それではせんべい汁を注文しましょう!」

鍋に南部せんべいを割って入れるのがせんべい汁。

汁じゃないじゃん?せんべい鍋じゃん?と思いましたが、
汁にせんべいを入れる「せんべい汁」も現存しており、
せんべいを入れた鍋も「せんべい汁」と呼ぶんだそうです。
これ八戸の鍋業界では基本なんだとか。

旧帝理系卒補給出身の幹部氏が責任を持ってせっせと補給してくれる
このせんべい鍋、普通に鍋として美味でしたが、時間が経つと
せんべいがふにゃふにゃになって
ちょっと麩のような感じになります。

イチゴ煮ではないけど、なぜここにせんべいを入れる?というのが正直な感想。

「どうせ恵方巻みたいに”仕掛け人”がいるような名物なんでしょ?」

心が汚れているわたしはそんな風に勘ぐってみたのですが、
なんとこのせんべい汁、天保の飢饉の時に生まれ(なんでだ)
200年にわたって食べ継がれている立派な郷土料理だそうです。

これも郷土料理、ざんぎです。

「そういえばざんぎの念にたえないとか言いますよね」

「言いません」

「どうみても唐揚げですがこれは」

「唐揚げと何が違うんでしょうねー」

そこにいる誰一人として地元出身者ではないのでラチがあきません。
例によってTOがその場で調べたところ、

「下味付けの際に醤油やショウガ、ニンニクなどで味付けたもの」

「それ普通に唐揚げでしょ」

「粉・卵などを合わせ高温の油で揚げて施したもの」

「だからそれ唐揚げだって」

「明確な区別がない場合も多いようである」

なんだ、結局唐揚げのことをこの辺りで「ざんぎ」と言ってるだけ?
どなたかざんぎの定義をご存知でしたら教えてください。

楽しい一夜が終わり、明けて翌日。

これが新幹線の八戸駅前である。本当に何もない。

しかし、八戸というところは何を食べても美味しいのには驚きです。
昨日のいわゆるチェーン店の居酒屋ですら出てくるものすべて美味しかったし。

この日ホテルの宿泊費(安かった)に込みだったサービスの朝食もこの通り。
朝から鮮度が命であるイカのお刺身だなんて、さすがは八戸、漁業の町です。

 

さて、今日はこれから、海上自衛隊八戸航空基地にご案内いただき、
基地内部を見学させていただくことになっています。
お昼には基地内で食事もいただけるとか。

この調子だと八戸基地で頂く食事は無茶苦茶美味しいに違いない!
と本末転倒な期待に胸を膨らませるわたしでした。

 

続く。