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かつての敵に囲まれて〜ソビエト連邦海軍潜水艦 B-39

2018-01-05 | 軍艦

ところで、このお正月、「スターウォーズ」観た方おられます?

話の出来についてはいろんな意見があるかと思いますが、それは抜きにして、
自己犠牲により我が同胞を守る、という行為が一度ならず語られ、しかも
それが絶賛されて(というか感動的に語られて)いましたよね。

ホルド副司令の「Godspeed rebels」が出たとき、わたしなど内心
「おおっ」と色めき立ってしまったのですが(笑い)、
皆様はどうご覧になりましたでしょうか。


さて、年末に途中までお話ししたソ連潜水艦B-39の続きです。

前部魚雷発射室からハッチを抜けたところにある士官区画を抜けると、
次に来るのがメインコントロールルームです。

ここはいきなり夜用の照明、つまり真っ赤でした。

昼夜の違いがわからない潜水艦内では、自衛隊の場合昼間は白灯、
夜間は赤灯に切り替えていると以前ここにも書いたことがありますが、
このソ連海軍潜水艦B–39は夜間という設定のようでした。


照明を赤くするのは、ここメインコントロールルームだけになります。
なぜかというと、夜になると当たり前ですが海上は真っ暗です。
潜望鏡を覗くとき室内が明るいと、外の暗さに順応できず、何も見えません。

だから、潜望鏡のある発令所は暗くしておく必要があるのです。
なんでも赤いライトは白色より目に対する刺激が弱く、夜間に暗順応
(明るい所から暗い所に移った場合に目が慣れること)を乱さない、
というのが第一の効果で、昼夜を認識するというのは実は副次的な効果です。

同じ理由で夜はその他の居住区も暗くしておきます。

潜水艦のふるさとであるグロトンで潜水艦見学をしたとき、
彼らが艦内で使用していたトランプのハートとダイヤに黒の縁取りがされ、
赤色灯の下で赤のカードがが見えるようになっていたのを思い出しました。

ソーナーも暗い方がモニターを見やすいので暗くしていましたし、
電子式の潜望鏡になって全員で外の状況をモニターで見られる現代でも
暗い方が画像がわかりやすいという事情は同じでしょう。

ほとんど替え電球やコードリールなどの物置と化しているようですが、
ここがレーダー室だったのかもしれないと思ったり。

ここでまたしてもハッチをくぐります。
あれ?ところで、メインコントロールルームに入るハッチに

「音と光のショー」

って書いてあったはずなんだけど何も起こらなかったぞ?

ハッチの厚みは約40センチ。
というわけで、ここを潜るにはまず片足を向こうに踏み入れ、
一瞬40センチの部分に馬乗りになるようにして上半身を横向けにして
潜って移動することになります。

でも、実際に非常時の乗員はそんな悠長なことしてられなかっただろうな。

ハッチを出たところに謎の文字が書かれた全く何かわからない機器が。
今ロシア語アルファベット表を引いたところ、

「F M SH ー200」

英語のアルファベットに変えるとこうなりました。
余計わかんねーし。

他のハッチは蓋が外されていましたが、ここのはちゃんと元のまま残っています。
ロシアは日本と同じメートル表記なのでわかりやすくていいですね。
しかし、このハッチに書かれた数字の意味はやっぱりわかりません。

縦型テレビ?

ではなくて、こちらに向けてテレビ画面を見せるためには
立てて置くしかなかったのだと思われ。

それにしても内装がアメリカの潜水艦より木造部分が多いのに気づきます。
まるで掃海艇の中のようです。

ここも一応は一人で寝ることができるベッドが・・・。

先ほどの士官用より一回りくらい小さな食堂兼休憩室がありました。
明らかに作りは雑です。

食事はこれは世界共通だと思うのですが、一日4回、
0700の朝食に始まって、夕食、夜食、(6〜7時)、
ティー&スナック2200に提供されました。

やはり潜水艦なのでソビエト海軍の中でもっとも内容が豪華で充実しており、
栄養価も非常に考慮されたものであったということです。

誕生日には恒例としてスペシャルケーキがつきました。
(誕生日を迎えた人だけだったのか、皆で食べたのかは謎です)

こちらも一人部屋・・・・なので、もしかしたら兵用のバンクは
全く別のところにあって、これらも12名の士官用なのかもしれません。
ここなど通気用高なんだかわからない大きな機械と一緒なので
決して静かに寝られそうにはありませんが、それでも

「ホットバンク」(二人でベッドを交代で使う)

でないだけましというものですし、何より一人で寝られるのは
潜水艦勤務では何よりの贅沢というものでしょう。

ここも一人部屋のようです。
ソファは夜ベッドになるということでしょうか。

士官用に飲み物やスナックを用意するスペースまであります。

わざわざロシアの食料品店に行って買ってきた缶詰、おかし、
ビールなどが展示されていて、なかなか凝った演出です。

ソビエト海軍は潜水艦の中で酒を飲むことが許されていたんでしょうか。

なんでもロシア人は酒好きで、嫌なことがあったらウォッカで忘れる、
みたいなイメージがありますし、最近でも入浴剤や工業用アルコール、
飲んではいけないものを酒がわりに飲んでしまうという話もあるのですが、
それはまあ特殊な例としても、潜水艦の中でお酒が飲めたのか、
どなたかご存知でしたら教えてください。

こちらはキッチンです。

ロシア人もマスタードを食べたのか・・・。
それにしても、言葉がわからないというのは、こういうものも
全く読めないので本当に困りますよね。

外国人が日本に来て日本語しか書いていないとどれだけ困るか、
なんだかこれで初めてわかるような気がします。

この中で中身が想像できるのは赤のケチャップだけ。
あっ、ケチャップの横、オートミールって読める(ような気がする)!

左側に説明板があって、Tで始まる何かが書いてあるのですが、わかりません。
何かをテストする部屋のようです。

ここで何段かの階段を降りて行きます。

こちら、潜水艦の心臓部、エンジンコントロールルーム。

ここには兵用の三段バンクがあります。
アメリカの潜水艦と比べると、ちょっとしたスペースがあると
寝床にしてしまっているという感じに見えます。

エンジンコントロールルームの一部。

トイレは案外広いスペースにあります。
足元にレバーがあってそれで水を流していたようですね。

アメリカの潜水艦のトイレと違って、ちゃんと木の蓋がありました。
しかもこの蓋が装飾的で案外なレトロ風おしゃれ。

ここはもう後部魚雷発射室となります。

ベッドに登る乗組員は、靴をいつどこで脱ぐんだろう、と
しばし真面目に心配してしまいます。
まさかベッドの上まで土足ってことはないと信じたい。

しかもこの梯子段だと、寝ている人の上を歩いて
空いているスペースまで行かなきゃならんよね?

ホットバンクの意味は、例えば一つのスペースを二人で使う、といったような
計画的な?ものではなく、このベッドを見る限り、

「自分が寝る時間になった時、空いているスペースでどこでもいいから寝る」

といういいかげんシステムだったのでは・・・((((;゚Д゚)))))))

大きめの薄型モニターでは、冷戦時代のドキュメンタリーが流れていました。
これは・・・アメリカの潜水艦ですよね?

ところで、この部屋に来た途端、結構色彩が華やかというか、
その原因はあちらこちらに付箋が貼ってあるからだということに気がついたのですが、

どこかで付箋を配られて、感想を貼り付けているようです。
そのほとんどが左のようにジスイズソークール、というレベル。
右のは

「MIND BLOW! 」(びっくり、ショック、面白い)

として、絵文字風の顔が書いてあります。
ちなみにこの夏、アメリカではどこにいっても「Emoji movie」の宣伝をしていましたが、
割とみんなEmojiが日本語であることを知らないようでした(笑)

後部魚雷発射管は4基あります。

魚雷発射管の部分は立ち入り禁止のネットが貼ってあったのですが、
皆が付箋を貼るために乗り越えるので、こんな風に垂れ下がってしまって・・。

まあ、どうせ貼るならチューブに貼りたいとか思うんでしょうけど、
それにしてもアメリカ人行儀悪すぎ。

というわけで、外に出るための階段を上がっていくことにしました。
その途中にこんな棚があって・・・

なんとこんなところでも寝ていたようです。

甲板の上は直接歩くことはできず、このデッキを通って外に出ます。

上から覗き込んでみました。

どうも鳥のおうちになっているようです。

セイルの部分も、鉄板の継ぎ目がこんなに浮き上がっています。
よくこんなで潜水できたなあ・・。(木曽艦長的感想)

ここは出口だから入っちゃダメ、とシェパードを連れた
兵士が"Comrade"(同士)と呼びかけて注意しております。

「コムラード」というのは苦労を共にしてくれるような親しい僚友、
仲間、同志、組合員、共産党員という意味で、
もともとスペイン語の「同室の仲間」から来ているそうです。

これを製作したアメリカ人は、「共産党員」という意味があることから
てっきりロシア語源だと思い込んでいたか、アメリカでは
ソ連時代のロシア人がしゃべる時の一つの「パターン」としてこの
コムラードを使っているのかもしれません。

ところで、どこを探してもなぜこの潜水艦がアメリカにあるのかがわかりません。
サンディエゴ海事博物館のHPには

「冷戦終結を告げるベルリンの壁の崩壊から20年も経たないうちに、
彼女はここサンディエゴ湾、かつての敵国にその姿をつながれています」

とあるだけで、ここに来た経緯が全く説明されていないのです。

かつてのソ連海軍潜水艦として、間違いなく米船を攻撃して来た側の彼女の
甲板に立つと、確かに”かつての敵国”の船に囲まれているのを実感します。

っていうか、今でも一応敵国か。


B-39シリーズ 終わり。