ネイビーブルーに恋をして

バーキン片手に靖國神社

朝霞駐屯地訪問記~「輜重は要らず」と集団的自衛権

2014-07-08 | 日本のこと

朝霞には去年の秋、観閲式とその予行演習のために来ています。
わたしにとって最初の訪問だったわけですが、
そのときには駐屯地とを挟んで隣にある演習場で行われたため、
こちらの駐屯地に足を踏み入れるのは初めて。

なんでも埼玉県の朝霞市、和光市、新座市(しんざじゃなかった)
三つの市にまたがっているそうです。
たまたま三市の境目にうまいこと位置するということですが、
それにしてもこれだけでどれだけ広いかがわかろうというものです。

広いだけあって、この基地には陸自の主要な隊が、
Wikipediaの区分によると21も存在しており、その中には

女性自衛官教育隊

中央音楽隊

陸上自衛隊輸送学校

自衛隊体育学校

などもあります。




K1佐の机の後ろにはロッカーの上にだるまがありました。
写真がぶれてしまってだるまに何が書いてあるのか分かりません。
聞いてみたところ、年末の「目標達成」のときに
目を入れるのだそうです。
何の目標だったのかは・・・・忘れましたorz



ここは「総務部」。
総監部の中の総務部ってことでよろしいでしょうか。
不思議な張り紙を見つけました。

脱衣許可 

総務部内での脱衣を許可する」

どうして脱衣にいちいち許可がいるのか。
しかもその許可がハンコ付きの貼り紙になっているのか。

これは、自衛隊の被服着用についての規則に関係しています。
K1佐によると、自衛官と言うのは基本的に

「いつも制服を着ていなくてはいけない」

と決まっているのだそうです。
それは公の場ではいつも、と言う意味です。

「しかし街中で自衛官の制服を着ている人なんか
見たことないぞ。やっぱり外では着てはいけないのでは?」

とおっしゃる方、あなたは正しい。
確かに自衛官の制服で電車に乗る人はいませんね。
しかしこれは、Kさんのお話によるとですが、

「私服を着る許可を得ているだけで本来は着ないといけないもの」

なのだそうです。びっくりですね。
しかしながら迷彩服で電車に乗ると文字通り軍靴の足音ガー、
と騒ぐ「市民」がいるのでそちらに「配慮している」ということらしい。
(これはわたしの想像)

「どこにいても制服を着ていなければいけない」
=「脱衣するときには許可がいる」
=総務部内で脱衣することが多いので、脱衣許可が貼ってある

ということなのですね。
自衛官ってつくづく大変だなあ。

でも、朝霞基地周辺では街中を制服で歩くことは常態化しており、
コンビニくらいなら普通に入るし、ときには

「飲み屋にも制服のまま行くこともあります」

だそうで・・。
しかし、その辺りも「この店は大丈夫」とか、「ここはやめた方が」
みたいな申し送りが出来ているといいます。

K1佐は前任地の岡山ではどこでも制服で行ったということで、

「横に女性が座るような店もあった」

そうですから、基地周辺とかあるいは地方などでは結構
その辺がゆるいのかもしれません。
まあ、こちらが普通だと思うんですけどね。


さて、建物から広報館、愛称りっくんランドまで移動です。
わたしの車にK1佐をお乗せし、運転していきました。

最初、基地に訪問するのに車で行ってもいいものだろうか、
と心配していたのですが、もしわたしたちが徒歩ならば、K1佐は
移動のために公用車を出さねばならなかったはず。
そういうお手間をかけさせないためにも、車で行って良かったと思いました。

移動しながらK1佐は基地や建物等を説明して下さいました。
どうやら中を案内するためにわざわざ大回りしたようです。



これは東部方面情報処理隊の入り口。

陸上自衛隊の情報専門部隊で、連隊以下の部隊で収集した情報を
データベース化し、陸自指揮システムを介してリアルタイムで配信しています。

隊員になるにはまず語学能力に長けていることが第一条件だそうで、
地史についての知識も必要となります。
「地理」ではなく「地政学」というものかもしれません。

指揮官である隊長は駐在武官、つまり防衛駐在官の経験を有する
1等陸佐が充てられるそうです。



見るからにオールドタイプの輸送トラックが飾られているのは

「陸上自衛隊輸送学校」。

英語で言うとtransuportion schoolでそのままです。
輸送科隊員として必要な教育訓練の実地を行っています。

輸送科というのは旧陸軍でいうところの「輜重」。
戦闘行動における「兵站」に携わる隊で、水食料・武器弾薬・
各種資材など様々な物資を第一線部隊
に輸送して、
同部隊の戦闘力
を維持増進することが主任務となります。


ところで「歩兵の本領」という軍歌がありますね。
現在でも自衛隊ではこの軍歌が歌われているそうですが、

この7番の歌詞(別バージョンも有り)は

♪携帯口糧あるならば輜重は要らず三日四日
曠野千里にわたるとも 散兵戦に秩序あり♪

というものなのです。
前にも書いたことがありますが、自衛隊ではこの7番は歌われません。
その理由とは「輜重は要らず」の部分が

「輸送科に対して失礼だから」

なのだそうで・・・。

さらに、自衛隊的にカットされているのはこの部分だけではなく

♪千里東西波越えて  我に仇なす国あらば 
横須賀出でん輸送船 
暫し守れや海の人♪

という、旧軍的には海軍にも配慮した4番なのだそうですが、
これは「波超えて」「仇なす国」が、

「海外派兵を連想させるから」

という理由です。

こちらは「専守防衛」のモットーにそぐわないということらしいですが、
これもどうなんでしょうね。

「我に仇なす国あれば」

つまりここの部分だけなら完璧に専守防衛。
しかし、「波超えて」つまり派兵ということは、

「たとえ我が国を守るためでも海外派兵は許されない」

という、つまり今論議となっている集団自衛権に係っていたがために
自粛されていたと考えられます。


話がそれついでに、この際ですから簡単かつわかりやすく説明しておきます。
皆さんにはもう周知のことかもしれませんが。

集団的自衛権というのは元々日本が国連から認められている権利です。
「個別的自衛権」とともに国連加盟国が権利として持っています。

しかし、日本の場合、この集団的自衛権を行使する権利を有しながら
憲法の縛りでその行使を放棄していたというのが現状です。
念のためにいうと、こんな国は日本以外にどこにもありません。
日本だけが、勝手に自粛して「行使しない」と宣言していたわけです。


よく左翼が「戦争が出来るようになる」というのを
集団的自衛権行使の反対理由にしていますが、実はこれ、
「戦争が出来る国になる」というのは本質として大きく間違ってはいません。

ただ、左翼の懸念とやらと現政権の目的は全くベクトルを異にします。
現政権がもっとも期待しているところは、

「戦争が出来る国になったと宣言することで他国への抑止力とする」

ということなのです。

たとえば、中国・韓国と言う国は日本の集団的自衛権に反対しています。
中国は当然反対でしょう。

逆に中国の脅威にさらされているアジアの国々は
なべて日本の集団自衛権行使を歓迎しています。
これが南沙諸島などにおける中国への大きな抑止力となる
知っているからです。

現在どうなっているのか分かりませんが、尖閣に中国海軍が
軍艦を2隻向けてきたのも、集団的自衛権の行使が可能になりそうだという
予測を受けてのことであろうと思われます。



それでは韓国はどうでしょうか。
この国に関してはわたしも首を傾げざるを得ません(笑)

実際問題として、日本がこれを行使できるということになれば
もし停戦中の北朝鮮が韓国に対し武力攻撃を行ったとき、
本当にするかどうかは別として、
理論上は、日本は同盟国側である韓国を援助することが出来るのです。

日本が援助に出て来る可能性があるとないとでは、北朝鮮に対して
大きな抑止効果の違いとなって来ることが期待されるわけですが、
かの国はただひたすら

「日本が戦争できる国になったら我が国が危ない」

という観点に立って反対を叫んでいるのですね。

彼らが竹島を不法占拠したのは、戦後日本が占領下で武力を持たず、
自衛権もない瞬間を狙っての計画的犯行でした。
現在でも居座って、時に挑発的行動に出るのは他でもない、
日本が九条の縛りで海を越えて来ないと思っているからです。


本来、その行使は自分たちを守ることにもなるはずだから
行使できるようになることは歓迎すべきなのに、
竹島占拠を始め、日頃自分たちが日本から攻撃されるようなことをしている、
という自覚があるから、反対しているわけです。


先日、やらせくさい抗議の焼身自殺が起こりましたね。
借金で首が回らなくなった活動家を生け贄にするつもりだったのかな?
記者会見で「火病」を起こし泣き叫ぶ怪しい市議登場のインパクトで
全て吹き飛んでしまった感がありますが。

これもおそらく「抑止されたくない」国の下部組織が、
成立の動きに焦って、テロまがいの騒ぎを仕掛けてきたのだと思います。
この組織には「脱原発」「米軍基地反対」「河野談話検証反対」
につながっていることは明らかです。

わたしはいつも、こういう世論の対立があるとき、簡単な判断基準として

「デモ隊が日の丸を持っているか」

でそれをはかることにしています。
田母神氏が

「中国と韓国が反対しているから日本に取っていいことだ」

とこの集団的自衛権について発言し、一部ではそれを叩いていたようですが、
それよりもむしろ、彼らが「日本のためを思っている」のならば
デモ隊が日の丸を一本も持たないどころか、ハングルや中国の簡体字の看板を
持って抗議するはずがない、と判断した方が簡単でしょう。


つまり、集団的自衛権の行使はそれだけ日本を侵略したい国に対して
「効果がある」ということなんですよ。



さて(藁)

輸送学校の話が途中でした。
輸送学校は輸送科の任務に必要な各種技能を学ぶ教育機関です。

大型車両などによる人員・装備品の輸送のほか、輸送統制、ターミナル
業務、
道路使用規制等を行います。

また、陸上輸送(自動車・鉄道
)、海上輸送及び航空輸送全般を担当。

部隊内には自動車教習所があり、各種免許取得のための教習が行われています。
ここでは大型免許もとれますが、自衛隊の車両に限られ、
一般の大型免許を要する車は運転できないそうです。



旧軍時代から、輜重・輸送兵は兵科としても下に見られがちで

「輜重輸卒が兵隊ならばチョウチョトンボも鳥のうち」

などと揶揄される傾向にありました。
輸卒を統括する士官にしても、士官学校の成績が悪かったり
素行に問題がある者が振り分けられる傾向にあり、
決して優遇された地位ではありませんでした。

たとえば各兵科にはかならず「兵科の歌」があったのですが、
輜重兵科だけはその歌が作られることは最後までありませんでした。

士官学校で振り分けられた者の落胆も大きなものだったそうで、
そんなことからデスペレートな雰囲気が満ちていたのかもしれません。

しかし、この兵站軽視の考えは、大東亜戦争において重大な局面、
たとえばインパール作戦やガダルカナルでの補給の失敗に繋がり、
日本の敗戦を後押するという弊害を産みました。


というわけで!

戦後の自衛隊においては決して輜重輸卒、いやさ輸送科を
徒や疎かにしたり軽視することは厳に慎んでいるのです。

「輜重は要らず三日四日」

の一言に自衛隊が敏感に反応し自粛しているのも、
全ては敗戦に繋がった輸送軽視へのふかーーーい反省がこめられているのです。


たぶんですけど。




続く。