◎虚空蔵菩薩求聞持法の周辺
(2009-11-28)
釈迦は6年間の苦行を捨てて、ヨーグルト(乳糜)を食べて体力を回復し、菩提樹下でメディテーションに入った。
そして、中国に伝わった最古の仏伝とされる修行本起経では、釈迦の覚醒時、『明星が出た時、釈迦は廓然として大悟し、無上の正真道を得た。』とする。
キーワードはヨーグルトと明星。ヨーグルトを食し、然る後に明星が出た途端に大悟したという二つにアクセントを置いた修行法、それが虚空蔵菩薩求聞持法のステップの中にある。
空海が虚空蔵菩薩求聞持法の典拠としたものは、善無畏訳「虚空蔵菩薩能満諸願最勝心陀羅尼求聞持法」とされ、今残っている最古の求聞持法テキストは、覚禅鈔(求聞持同異説)か阿娑縛抄(第百四)(承澄作)とされる。
このテキストに、蝕とヨーグルトのことやら、虚空蔵菩薩のイメージ・トレーニング(観想)をしながら、マントラ百万遍を唱えることが書かれてある由。
またその中に毎日早朝(後夜)、明星を拝む手順があるが、朝に金星を拝めるのは一年のうち半分だけなので、蝕日を満行の日とし、また金星が朝出ている時期を修行期間に当てるという当時ではかなり高度な天文知識がないと修行期間の設定すらできなかったのではないだろうか。
空海はあらゆる経法の文義を暗記する力を得るために、高知県室戸崎で虚空蔵菩薩求聞持法を修した。すると谷響を惜しまず、明星来影した。ごうごうたる阿吽(オーム)の響きたる谷響のうちに、明星がやってきたということだろうか。(空海はヨーグルトにはこだわっていないようだ。)
中心太陽は、クリシュナムルティには星と見えたことがあり、ダンティス・ダイジでは紛れもなく太陽と見えていることから、空海がだんだんと中心太陽に接近する様子を「明星来影す」と表現している可能性がないわけではない。
いずれにしても明星とヨーグルトで、求聞持法の修行者は自分を釈迦に擬する。
明星来影について、空海はそれ以上明かにしなかったし、覚鑁(かくばん)も何が起きたかについて多くは語らなかった。