詠里庵ぶろぐ

詠里庵

Korevaar

2005-10-13 01:46:47 | コンサート・CD案内
というピアニスト、元ページの風雅異端帳にも2回紹介しましたが、実力派です。オーソドックスなものからいろんなジャンルを演奏しますが、その中でDohnanyiを得意としているのが一つの特徴。ハンガリーのドホナーニ(1877-1960)は20世紀になっても後期ロマン派を引きずった技巧派ピアニスト作曲家です。そういうといまいち私の趣味には合わない人種のようですが、そうでもなく、ラフマニノフとともに例外です。今日紹介するCDはIVORY CLASSICS 71008という一枚。中身は全部ドホナーニのピアノ独奏曲で

(1)Variations on a Hungarian Folk Song, Op.29(1916)
(2)Six Concert Etudes, Op.28(1916)
(3)Pastorale(Hungarian Christmass Song)(1920)
(4)Ruralia Hungarica, Op.32a(1924)

です。(1)は東欧的悲しげなテーマに続く10の特徴的ヴァリエーションで、古今のピアノ変奏曲の中でも傑作に加えていいのではないでしょうか。

(2)はいかにも技巧的な、しかし中身も伴った練習曲集。第一曲はショパンのバラード2番の最後を思わせる音型。イ短調が全面に出ていますが第六音のファとファのシャープをぶつけるところが面白いです。第二曲は急速なスケルツォ風で和音の移り変わりが速すぎて無調気味に聞こえ、とても面白い曲です。第三曲は単音階を両手で交互に演奏するもので、これも不思議な浮遊感があって面白い。いや、ドホナーニのエチュードは面白いですよ。と言った途端ですが第四曲はあまり趣味じゃない音楽です。葬送行進曲を仰々しくしたみたいで。第五曲は非常に広い音域にわたる美しいアルペジオから浮き出るきれいな旋律。20世紀音楽とは思えないロマン派音楽ですが、その美しさには単純に惹かれます。最後の第六曲がまた面白い。終始くちゃくちゃした音楽で、初めからスピード感があるのにどんどん加速して、最後はもう無茶苦茶になって終わります。その無茶苦茶を正確無比に演奏するコレヴァールさんはリサイタルのアンコールでも演奏しました。

(3)は名の通り田園曲ですね。ベートーベンの田園交響曲や田園ソナタと同じくドとソの低音に乗る素朴な田舎を思わせる旋律です。ドホナーニで聴いた中では(もちろん全部なんか聴いていませんが)最も演奏技巧を要しない曲に聞こえます。易しくもなさそうですが。

(4)は充実感のある組曲。第一曲は(3)の田園曲のような素朴な感じ。第二曲は民族舞踏のような元気な曲。ブラームスのハンガリー舞曲と言われても違和感ないような曲です。ドホナーニはピアノ協奏曲もブラームスみたいだからなあ。第三曲は(1)のようなメランコリックな旋律とその発展形からなるドラマチックな音楽。第四曲は急速な五拍子のエチュード。迫力ある演奏だと思います。演奏会でナマも聴きました。第五曲は短くもかわいらしい舞曲。第六曲は何やら暗~い音楽。あまり和声推移がないのでロマン派的メランコリーはありません。こういう感じバルトークの初期にも見られますが、ハンガリー的な一面です。第七曲は単純元気音楽ですがさすが終曲という感じ。出だしはケスラーの練習曲の第一曲みたいに始まりますが複雑化して行き、後半、単純旋律にまとわりつく和音がいろいろ変わって面白いです。ドホナーニ得意の加速無茶苦茶終止でこの曲集を締めくくります。

デイヴィッド・コレヴァールというピアニスト、メジャーな曲目でも素晴らしい演奏をします。自分のサイトを持っていますが、そこに紹介されているCDはマイナーな曲目が多く、ちょっと食指を動かされます。聴く時間がとれるごとにこれから少しずつ買って行こうと思います。
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