内定2号

2002年06月10日 | 家族

「炊飯器買いたいな」女房が呟いた。
「釜のテフロンコートが剥げちゃってるんだ」
「そうか。買ってから5年たってるもんな」
「どうしてそんなこと覚えてんの」

なぜ覚えているかというと、
私が山梨に単身赴任した97年の5月に買って、
そのとき使っていた古い炊飯器を
私が山梨に持っていったからです。
炊飯器のことだけで、
私は過去のどうでもいいことを、
いろいろ思い出してしまう。
「そんなことまで覚えてるから、
 あんたは疲れるのよ」
よく女房にいわれる。
この性分は自分でもいいとは思ってないが、
生まれつきのもので、今さらどうにもできない。

夕方、近所のラオックスに行く。
昼間の暑さはおさまり、
気持ちいい風が団地の中を吹いていた。

20分ほどで炊飯器を買った。
「今日は、値切らなかったね。
 それに一番安いものじゃなかった。
 これまではいつも一番安いものを買ってたよ」
ラオックスを出て女房がいう。
そういえば、私は必ず値切って買っていた。
安くしてくれなくても、いうだけはいわなくては、
という気持ちがあった。
7,980円の炊飯器を値切る気持ちはなかった。
それに、5年前買った炊飯器は失敗したと思っていた。
ご飯の炊き具合があまりおいしくないのです。
5,980円のものもあったが、それはやめた。
それにしても現在の炊飯器は高いものがありますね。
IH釜方式なんてものがあった。
店員に訊いたがよく分からなかった。

息子の内定が決まったことが、
私の心をゆるやかにしていたのかもしれない。
買った炊飯器を駐車場の車に置いて、
ビックAに食料品を買いに行く。
女房が、「パルマ(手拍子)を叩いて」という。
また始まった、と思った。
私は、等間隔に左右の掌を打ちつけた。
そのリズムに合わして彼女がステップを踏む。
途中から女房の足が刻むリズムが狂う。
そのたびに「もう1回やって」という。
何回も何回もやらされる。
こんなことをしていたら、
いつになっても買い物なんて出来ない。
いつまでも明るいなと思っていたが、
そのうちあたりが薄暗くなってきた。

「もうこれで最後」
「もう1回」

コメント
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