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含み益は確定しないと利益にならない・・・投資家のATMと化す中央銀行

2020-04-25 03:12:00 | 時事/金融危機
■ ガラス玉バブル ■

仮に、ここに一つのガラス玉があるとします。非常に美しい玉です。

ある人が1万円でこれを買ったとします。それを見ていたガラス職人が10個の似た様なガラス玉を売り出しました。それに1万円という値をつけます。「このガラス玉は〇〇さんが1万円で買った値打ち物だよ」と宣伝します。多くの人が、ガラス玉を欲しがり、2万円で売ってくれとガラス職人に持ち掛けます。10個のガラス玉は2万円で売れました。

これに気を良くしたガラス職人は100個のガラス玉を作って2万円の値段を付けました。朝、店を開けると、店の前には長い列が出来ていました。300人は居るでしょうか。その内の一人の男が、「オレ達で話合ってガラス玉を3万円で買いたいヤツを100人し絞ったよ、さあガラス玉を売ってくれ」。そう店主に持ち掛けました。店主は喜んで3万円で100個のガラス玉を売りました。

評判が評判を呼んで、街中の人達がガラス玉を欲しがり出します。しかし、店主が作れるガラス玉は1日100個が限界でした。人々は銀行で借金をしてガラス玉を買おうとしました。ある人は既に持っているガラス玉を担保にして借金をしました。

こうして、街中の殆どの家にガラス玉が飾られる様になりました。人々は毎日、ガラス玉を磨きながら、「このガラス玉は50万円で手に入れた貴重品だと」と自慢し合いました。

3か月程したある日、娘の結婚でお金が必用になった男が、市場でガラス玉を売りに出しました。しかし、既に街中の家のガラス玉が有るので、ガラス玉は男が買った50万円ではうれません。お昼を過ぎた頃に男はガラス玉を20万円でようやく売る事が出来ました。町一番の金持ちが「20万円ならもう一個買っても良いかな」と言って買って行きました。

翌朝、ガラス玉が20万円でしか売れないという噂が街中を駆け巡りました。人々は我先にガラス玉を売ろうとしますが、10万円でも、5万円でもガラス玉は売れません。とうとうガラス玉は3000円まで値下がりしました。

すると、最初にガラス玉を買った男たち10人程が、町中のガラス玉を全部買うと言ってくれました。人々は渋々、ガラス玉を男たちに手渡し、3000円を受け取りました。

その日の夜、街はずれの酒場で、ガラス屋の店主と11人の達が酒瓶を大量に空にしていました。

「いやー、今回も儲かった」
「まさかあんあガラス玉に50万円払うヤツがこんなに居るとはな」
「もう、こんな街には用は無い。長居は御免だ。次の街に行こう」
「今回作ったガラス玉は手元にあるからな、次は楽に稼げるぜ」


まあ、極端な例では有りますが、バブルなんて、だいたいこんな感じで、仕掛けるヤツが居て「儲かる」という噂に引かれて、後からやって来たヤツがカモになります。

一所懸命に貯めた老後の資金などが一瞬の内に消えてしまいます。中には資金をギルドに預けている人も居るでしょう、しかし、ギルドもガラス玉に投資をしていたので、ギルドの金庫も空になってしまいました。(年金積立金とかですね)


■ バブルで膨らむのは含み益 ■

リーマンショック以降の金融緩和バブルで株価が上がり、債券価格も上がり(金利は下がる)りました。これらの資産に投資している方は、値上がりすると「儲かった」と考えます。しかし、これらの投資で儲けが出るのは、資産を売却して利益を確定した時です。ガラス玉は売るまでは利益を生みません。

誰でも高値で売って利益を最大にしたいと考えます。しかし、多くの人が資産を売却すると、値段が下がってしまいます。最悪は「暴落」する。

結局、バブル化した市場で儲かるのは最初に売却に成功した人で、後の殆どは損をします。昔から言われている事ですが、1割が得をして9割が損をするのが資産市場です。


■ そろそろ最後のカーニバルが始まる ■

リーマンショック以来の金融緩和バブルですが、昨年夏頃から少し様子が変わっていました。値下がりの傾向が顕著だった。FRBは利上げを続けて資金供給を少しずつ減らしていましたし、日銀は年間80兆円の国債を買い入れるとアナウンスしながらも、実際には30兆円程度しか買い入れをしていなかった。

そこで投資家達は、株や債券を売って「バブルが崩壊するぞ」と中央銀行を脅した。慌てたFRBは利下げに踏み切り、さらに短期金融市場への資金供給量を増やして事実調のQE4を開始しました。

コロナ騒動が始まると、ヘッジファンドを始めとした投資家達は、空売りで儲けます。ある程度稼いだ彼らは、次の準備として、再び株や債券を買い始めました。これは、明らかに次のチャンスを狙っています。

世界中の国はコロナ対策で大量の国債を発行して、大量の資金を国民にバラまきます。このお金の何割かは、資産市場に流入します。コロナも終わったし、株価も債券価格も上がると考えるからです。

これこそが、投資家達が狙っていた最後のチャンスとなります。彼らは、空売りのポジションを積み上げておいて、一気に売り浴びせます。中央銀行からボーナスを巻き上げた彼らは、後は野となれ山となれと、阿鼻驚嘆となる人々を高みの見物と決め込みます。

暴落した株が底値になるまで、じっくりと待てばよいのです。


■ 実際の市場はこれ程単純では有りませんが・・・ ■

実際の市場は、様々なヘッジやデリバティブで複雑に構成されているので、これ程単純では有りませんが、しかし、リーマンショックを例に取るまでも無く、市場が恐怖に支配されると、バブルは容易に崩壊します。

コロナショックで日銀は株式市場を買い支えていますが、これは見方を変えれば空売りを仕掛けたヘッジファンドなどにボーナスをプレゼントしているに等しい。

昨年夏の市場の圧力にFRBが屈した時点で、中央銀行は貪欲な投資家達のATMとなっているのです。そして、これから最大のプレゼントが振舞われ様としています。これを止める手立ては既に有りません。各国の国民がコロナに怯えた時に結果は決まってしまったのです。

■ 「フェイク」を「リアル」に替えるトリック ■

人々の老後資金など「リアルマネー」は容易に市場から回収する事が出来ます。一方、借金によって投資された「フェイクマネー」は借金が変さされる次点で消えてしまいます。要は信用収縮によって、あったハズのお金が消える。

現在の金融市場は「フェイクマネー」の方が大きく膨らんでいますから、これを利益(リアルマネー)に替えるには中央銀行にお金を出させるしかありません。

要は、暴落した資産を中央銀行に買い取らせれば良い。これはリーマンショック後に金融緩和で行われて来た事です。一時、価値を失ったMBSをFRBは大量に買い入れ、お金を投資銀行などに配りました。(実際には投資銀行は商業銀行に吸収されて存在していない事にされていましたが)

今回はコロナショックで世界の景気が大きく落ち込む事が予測されていますから、中央銀行の財布も緩みがちです。資産市場で大幅な下落が起きた場合、各中央銀行は大量の資金を市場に供給するハズ。