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経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

「シン・コロナ」の真の目的・・・インフレは起こるのか?

2020-04-12 05:02:00 | 時事/金融危機
 

■ 「シン・コロナ」と財政支出 ■

日本政府が不必要な緊急事態宣言を出してしまったので、5月、或いは世界の外の国の解除が遅れれば6月まで、現在の不自由な生活が続くかも知れません。

ただ、精度の高い抗体検査キットの開発も進んでいる様なので、世界の国々は抗体獲得者から順に社会復帰させる部分的解除を徐々に開始し、集団免疫が確立した時点で、ロックアウトの全面解除に進むと思われます。

しかし、先進各国とも2か月近くも経済を大きく停滞させる訳で、普通に考えればGDPは大きく落ち込み、30%のマイナス成長になるという試算も有ります。

各国とも落ち込んだGDPを財政出動によって穴埋めせざるを得ませんが、日本のGDPは500兆円程度ですから150兆円規模の財政出動しなければGDPはマイナスになります。政府は「108兆円の経済対策」と胸を張りますが、その内訳は、「納税や年金の納付の延期」や「財政投融資による貸し付け」などでかさ上げされており、財政支出は39兆円程度だとされています。ただ、その中にIMFへの支援出資が含まれている可能性も有り、実際にはさらに低い額かも知れません。

■ 「シン・コロナ」収束後の世界 ■

「シン・コロナ」がヨーロッパやアメリカで大流行するに当たり、株式市場は大きく値を下げていますが、今の所、「クラッシュ」と言える状況には陥っていません。むしろ過度の金融緩和によってバブル化していた市場が、安定した価格に落ち着いたといった感じになっています。

(私的には日経平均が1万6千円割れ、ダウが1万9.千ドル割れ当たりで市場はパニックになるかなと妄想しています。)

「シン・コロナ」の厳戒態勢から世界が抜けだし、財政出動が本格化すると、市場は「期待」で動きますので、むしろ株価は大きく値を戻すはずです。もっとも、これだけ世界経済がダメージを追えば今年の世界のGDPは大きく落ち込む事は確実なので「期待」は長続きはしないでしょう。

ただ、多くの投資家が「値を戻す」「値上がりする」と予想するので、値上がりペースは速く、一種の「祭り」状態になるのでは無いかと私は妄想しています。

■ 気の緩みからインフレ率がポンと跳ね上がる可能性 ■

コロナが去った後、各国国民はしばらく解放感に浸るかも知れません。国からお小遣いも貰うので、気が緩んでパァーと消費に走る可能性が高い。一方で、生産が滞り、物流も回復していない供給制約の状態になっているので、ポンとインフレ率が上昇する可能性が有ります。

莫大な金融緩和でもなかなか達成されなかったインフレですが、短期的に「物価水準の財政理論」(FTPL) の条件が満たされる可能性が有る。

物価上昇に引っ張られる形で短期金利がポンと上ると、これにAIが反応する可能性は低く有りません。

■ 債券市場が一瞬で混乱する? ■

昨年中ごろから短期金融市場が何やら不安定になっていますが、金利上昇はここを直撃する可能性が有ります。コロナ・ショックの初期にも混乱が生じたのでFRBが大量の資金を注入して沈静化を図りました。

金融機関は短期金融市場で資金をやり取りする事で日々の決済を潤滑に行っています。リーマンショックの際に、各金融機関がドルを手放さなくなった為、短期金融市場の資金が枯渇して、一瞬にしてオーバーナイト金利が沸騰しました。(流動性の危機)

AIがどこまで「歴史」を学習しているか不明ですが、短期金利の上昇を察知して、一気にリスクオフのプログラムが走り出すとヤバイ。

最初の反応が株価に出れば、痛手は少ないと思いますが、リスクが高い割に金利が低いジャンク債や、格付けの低い社債が売られると危機は拡大します。債券市場の金利上昇(価格は下落)をAIが察知して、売りが売りを呼ぶ様な状況になれば、債券市場に大混乱が起きないとも限りません。


■ 今回のバブルの正体は「社債券バブル」 ■

リーマンショックの正体は「住宅債券バブル」でした。アメリカのMBS(住宅担保証券)が世界中にバラ撒かれた事によって起きた危機です。

リーマンショック以降の金融緩和バブルの正体は「社債バブル」です。リーマンショック以降、世界の金利水準は極端に低下してしまったので、世界は金利に飢えていました。本来なら考えられない様な低い金利で「危ない会社」の社債が発行され、それを投資家が買っていました。その最たる例がアメリカのシェール企業です。

社債市場の金利が低いので、アメリカでは「自社株買い」というスキームも流行します。安い金利で社債を発行して、自分の会社の株式を買うのです。株には配当が伴いますから、株の発行数が少なくなれば配当負担が減ります。さらに発行株式が減る所に買いが入るので、株価が上昇し易くなります。こうして、アメリカでは多くの企業が大量の社債を発行して、それらを投資ファンドなどが買っていました。そして、最終的には年金マネーや個人の投資マネーがそれに吸い寄せられていた。

さらには信用力の無い企業のローンをまとめて証券化したCLO(ローン担保証券)なる商品も開発され、金利に飢えた日本の金融機関が大量に保有しています。これなど、まさに企業版のサブプライムローンです。

短期金利が上昇する事で、債券市場の金利が見劣りすると、これらのリスクの大きなチンケな金利の債券は売られ易くなる。債券市場の規模は株式市場よりもずっと大きいので、債券市場の混乱は「金融崩壊」に繋がり易い。

■ 国債が市場に溢れる ■

リーマンショックの直後、ドルの信用に一時期疑問が持たれました。これはドルの流動性が失われた為で、FRBが狂った様に市場にドルを供給した事で、ドルの信用は回復します。信用というよりも「決済機能」が回復したと言った方が良いでしょう。

今回の危機は違う動きになると思われます。コロナ・ショックによって各国とも国債を大量に発行するので、国債市場は供給過多の状態になるはずです。これは国債価格の下落(金利上昇)を招きます。

世界はリーマンショック以降、チンケな金利の国債で溢れ返っていますから、国債金利の上昇によって(価格下落)、金融機関の多くは含み損が膨らみます。そして、損切で国債が売られ易くなる。そうやって各国の国債価格は下落のスパイラルを止められなくなります。(金利は上昇)

これを止める方法はただ一つで、中央銀行が余分な国債を市場から吸収すれば良い。この過程で大量のマネーが市場に流出します。


■ 行き場を失うマネー ■

リーマンショックの時には各国中銀が狂った様に資金を供給する事で金融システムの崩壊を止める事が出来ました。FRBは一時的に紙屑同然となったMBSを市場から買い上げ資金を供給しました。

今回も同様に金融機関は、値段が下がったジャンク債や社債、さらには国債を中央銀行に買わせようとするでしょう。多少の混乱は有るとしても、中央銀行はこれに応えるしかありません。日銀などは株式市場を直接買い支えているのですから、ハードルは低いはずです。

こうして、大量のマネーが供給される一方で、お金は行き場を失っています。

ここでハタと皆気付くのです。「お金が有るのに買い物が出来ない・・・」「何だかお金が有難くない・・・」

庶民は投資で失敗してスッテンテン。さらにコロナショックの後遺症で失業率も高まります。一方、資産市場はお金ジャブジャブなのに安全な投資先が無い・・・。

漠然な言い方ですが「お金の機能が失われる」状態が発生します。これこそが「通貨危機」であり「通貨の信用の喪失」では無いか・・・。

■ スタグフレーションの発生 ■

通貨の信用が失われると、人々は通貨以外の物で価値を保とうとなります。金は買われるでしょう。土地や家の値段も上がるでしょう。優良企業の株も買われます。コモディテーに資金が流れるかも知れません。原油が買われ、穀物が買われ、その結果物価が上昇します。

一方で実体経済はコロナ・ショックと金融パニックで相当に痛んでいますから、景気は相当に悪化している。

不景気の中で物価が上昇する・・・いわゆる「スタグフレーション」の発生です。

オイルショックの時代、欧米の先進国は原油価格の上昇によってスタグフレーションに陥りました。各国は財政拡大でこの危機を乗り切ろうとしますが、財政赤字が膨らむだけで、経済は好転しませんでした。

その反動で生み出されたのが「供給サイドの経済学」です。中央銀行の資金供給によって経済をコントロールするという考え方ですが、結果は10年周のバブルを生み出し続けます。そして、バブルの規模は回を追う毎に大型化して、リーマンショックでは金融市場の破壊の一歩手前まで行きました。

今回の危機は、「リーマン超級」ですから、金融市場は崩壊する可能性が高い。さらには通貨制度も破壊されるかも知れません。


■ システム疲労から成長の限界に達した世界 ■

私は現在の世界は、現在の通貨制度のシステム疲労の状態で成長の限界に達しているのだと妄想しています。

アメリカがドルを大量に発行して世界経済を回す為には、アメリカが世界の消費を支える必要が有りますが、アメリカの消費など直ぐに飽和してしまうので、金融市場がその受け皿になった。

しかし、このシステムはバブルを繰り返して自壊する性質が有るので限界に達した・・・。

今回の危機は、限界に達した現在の通貨システムをリセットする為の危機だと私は妄想しています。多分、次の通貨システムは「電子マネー」を基軸に構築されると思われますが、これにより現在の銀行を中核としたシステムは大きく様変わりするはずです。


■ お金というデータ ■

紙や金属の拘束から解き放たれたお金は「データ」となります。データの最大の特徴は「流通スピードの速さ」と「データ事体の価値」になります。

例えば誰かが事業を始めたり、融資を受けたい時、その人の信用がお金のデータとして蓄積されているので、融資の判断が早い。

従来は銀行が経験から個人や企業の実績から信用を判断していましたが、お金というデータ自体が判断基準になる。お金がデータ化して銀行を介さずに流通するので、余ったお金を持っている人達は、「スコアー化した信用=金利」を目安に直接投資する事も可能です。

これは一種のクラウドファンディングの様なもので、世界を電子のマネーが駆け巡る時代がやって来ます。

アジアの片田舎でビジネスを立ち上げようとした時、その人の成功率がマネーの記憶によって判断され、金利という形で市場に表示される・・・。


一朝一夕で達成される事では有りませんが、この様なドメスティックな変革は「危機」を切っ掛けに達成される事が多い。所謂「ショックドクトリン」という方法です。歴史を振り返ると、世界の経営者は意外に「ショックドクトリン」がお好きの様です。



今回は、あまりに不可解な「コロナ・ショック」を元に世界が変革されようとしているという妄想に耽ってみました。


まだ、自分の中でもモヤモヤしたイメージなのですが、この様な大きな変化が無ければ、先進国の多く、いや、中国まで含めて高齢者に押しつぶされて衰退する世界しか想像できない。