グランド・ブダペスト・ホテル(原題: The Grand Budapest Hotel)
2014年 ドイツ=イギリス
監督・脚本:ウェス・アンダーソン
製作:ウェス・アンダーソン、スコット・ルーディン、ジェレミー・ドーソン、スティーヴン・レイルズ
出演:レイフ・ファインズ、F・マーリー・エイブラハム、マチュー・アマルリック、エイドリアン・ブロディ
ウィレム・デフォー、レア・セドゥ、ティルダ・スウィントン
現代のある日、東欧のどこかの国。女学生が亡き作家の銅像の前で本を読み始める。
1985年に執筆されたその物語は、作家本人がある人物から聞いた実話に基づくものだという。
1968年、作家はかつての名門グランド・ブダペスト・ホテルに滞在していた。大富豪でありながら
萎びたホテルを所有し続け、年に数日をそこで過ごすゼロ・ムスターファに興味を惹かれ、聞き出した
伝説のコンシェルジュにまつわる物語。
それはナチスが台頭し始めた1932年頃、ゼロは駆け出しのベルボーイだった。
当時ヨーロッパ随一と呼ばれたグランド・ブダペスト・ホテルを切り盛りしていたのは、グスタヴ・H。
最上のサービスを宿泊客に提供し、マダムたちの夜のお相手もこなすグスタフが、常連客だったマダムDの
遺産相続の騒動に巻き込まれ、ゼロと共にヨーロッパ中を駆け巡る。
テンポの良い大スペクタル劇にもかかわらず、臨場感は薄く、どこかおとぎ話のように遠く感じる。
また聞きの、また聞きというような幾重もの入れ子構造と時代経過のためか、ハナから結論がわかって
いるような切ない気分。
大富豪となったゼロは、年に数日だけ今や古びたグランド・ブダペスト・ホテルの狭い使用人部屋に
寝泊まりする。それは、師であるグスタヴを思い返すためではなく、最愛の妻アガサと出会って幸せな
日々を過ごした頃の思い出のために。とてもとても愛していたんだなと、想いの切れ端が胸の奥に甘く
淡く広がって、物語は幕を閉じる。
そして、今は誰もいない。すべては昔々、あるところで、のお話。
どこまで真か幻か、グスタヴ・Hの伝説だけが残る。