Kimama Cinema

観た映画の気ままな覚え書き

イブラヒムおじさんとコーランの花たち

2011年09月18日 | 2000年代 欧州
「イブラヒムおじさんとコーランの花たち」(原題:Monsieur Ibrahim et les fleurs du Coran)
2003年 フランス
監督:フランソワ・デュペイロン
出演: オマー・シャリフ / ピエール・ブーランジェ / ジルベール・メルキ / イザベル・ルノー / ローラ・ナイマルク / イザベル・アジャーニ

1960年代初頭のパリ。
モモは、父とふたり暮らしをしている13歳のユダヤ人の少年。
毎日の買い物や、食事を用意する役目をしているモモは、トルコ移民の老人の食料品店で、いつしか万引きすることを覚えていた。しかし店主のイブラヒムは、そんなモモに優しかった・・。

このまま進むのかと思いきや、物語があっちいったり、こっちいったりして、おもしろかった。
少年の性的な成長記かと思えば、父・息子問題だったり青春映画っぽかったり
移民問題、訴訟がはじまるかと思えばロードームービーばりに・・・
ひと粒でいくつもの味が楽しめるような、楽しい映画でした♪

そして、その中で主人公の少年であるモモが成長していったり
たちどまったりする姿が、なんとも愛らしかった。

モモは、例えば誰かに立ち向かったり戦ったりしないから
目に見えて強くはない。
でも、お父さんが出て行ってしまったときに、女の子に誘われて
道ばたでダンスするくらいの、余裕がある。
一時的な感情に流されているようで、それでいて、どこかタフだ。
ちゃんと物事をみてる。
芯が強くて、ひとつひとつ学んで成長して行ってる。

それをあたたかく見守るイブラヒムおじさん。
愛情に満ちた言葉とまなざしに、ぐっときました!!


つぐない(映画)

2011年09月14日 | 2000年代 欧州
2007年 イギリス
監督:ジョー・ライト
キーラ・ナイトレイ/ジェームズ・マカヴォイ/ロモーラ・ガライ/ブレンダ・ブレッシン/ヴァネッサ・レッドグレイブ/シアーシャ・ローナン
13歳の少女は、自分の姉と庭師の息子との逢い引きを偶然、目にしてしまい・・・。

豪邸に住む、官僚の娘、勝ち気でいて、ひた向きなセシーリア
その妹で、作家志望で多感な少女ブライオニー
姉妹と同じ家で生まれ育った庭師の息子で、実直なロビー

3人の想いが絡まり、運命に翻弄されていくさまが
哀しく、美しく、切ない。

妹は、ひそかに憧れていた庭師の息子ロビーと、自分の姉
セシーリアの情事を目撃し、ロビーを性犯罪者として告発。
成長するにつれ、自らの愚かさを知ります。

この妹の未熟さが、もどかしくもあり、懐かしくもあり・・・。

それぞれの視点から、同じ場面を繰り返す手法が撮られ、
誰か一人に共感するのではなく、この3人ともの気持ちに
想いを馳せさせられます。

物語の流れもカメラワークも俳優たちの表情も
切なさ満点。

心の奥底の鐘をこれでもか、これでもかと、ばかりに
打ち鳴らすような作品でした。


ラブ・アクチュアリー(映画)

2011年05月30日 | 2000年代 欧州
DVDにて鑑賞。

ラブ・アクチュアリー(Love Actually)
2003年 イギリス=アメリカ
監督:リチャード・カーティス
出演:ヒュー・グラント、リーアム・ニーソン、コリン・ファース、エマ・トンプソン、
アラン・リックマン、ローラ・リニー、ビル・ナイ 他

12月のロンドンを舞台に繰り広げられる9つの物語。

●新しくイギリスの首相に就任したデイビッドは、自分の秘書の1人に一目惚れして、
仕事に身が入らない。
●首相である妹のカレンは、3人の子供たちと会社経営者である夫:ハリーと幸せに暮らしていた。だがハリーの部下であるミアの執拗なアプローチに彼の心は揺れ動いているようで・・。
●そんなハリーの会社に勤めるサラは、入社以来ずっと同僚のカールに恋心を抱いているが、彼女には目の離せない家族がいる。
●最愛の妻を亡くしたダニエルは、義理の息子であるサムがまったく口を利かなくなってしまったことに心を痛めていた。しかしサムが悩んでいたのは、同じ学校の女の子に対する片思いだった。
●作家のジェイミーは、傷心旅行先の南仏のコテージで、メイドのオーレリアと言葉が通じないなりにも、気持ちを通わせていく。
●ケータリングの仕事をするコリンは、ナンパをするも失敗続き。友人が止めるにもかかわらず、アメリカ娘を狙いに単身でウィスコンシンに発つ。
●濃厚なラブシーンをテスト撮影中のジョンとジュディは、普通なら気まずくなるようなこのシーンを、他愛もない会話で楽しく撮影できることに喜びを感じていた。
●ビリーは、かつての持ち歌をアレンジしてカムバックを果たそうとする老いぼれのロック歌手。長年のマネージャーが必死に売り込みを続けるも、ビリーの過激で下品な発言が世間を騒がせてばかり。
●親友ピーターの結婚式でホームビデオを撮影するマーク。新婦のジュリエットには冷たく接するマークだが・・。

よくこれだけの要素を135分の中に詰め込んだなあ・・と思います。
それぞれに違う愛のカタチをちゃんと描き出しているのは、
豪華キャストとメリハリの良さのせいかな。

すべての恋がうまく行くわけではないけれど、
それでも、ささやかな幸せを求める登場人物たちに
ほんのりあたたかい気持ちにさせられます。

それにしても、この映画のために来日した際のヒュー・グラントも
ブラックユーモア満載で、だいぶ前にみたインタビューですが
かなりインパクトに残っています。
どこまで冗談でどこまで本気なのやら。
彼のこうしたギャップがたまりません。

(今回、ヒューがイギリス首相役を演じたので)
「もし実際に首相の立場になったら、こうしたら良いのでは?と思うことは」
との質問に対し、

ヒュー:私がもし権力を手にする立場にあったら、思い切りそれを乱用したいですね。
女性は権力に弱いですから、権力を使うチャンスを逃す手はないと思います。それで女性をものにします。

「劇中、素敵なダンスを踊られていましたが、どこかで習われたのですか?」

ヒュー:練習は一切なかったよ。僕があんなにイヤだと思ったことは今までなかったぐらいさ。もちろん映画の上ではとてもいい場面なんだけど、実際演じているときはとても恥ずかしかったよ。あれは映画史に残る最悪なシーンといえるよ。

「とてもリズム感がおありですよね」

ヒュー:あれは編集でリズムを合わせただけなんだよ。

いやはや。
また来日して欲しいです♪


あなたになら言える秘密のこと(映画)

2011年02月27日 | 2000年代 欧州
あなたになら言える秘密のこと(原題:The Secret Life of Words)

2005年 スペイン
監督:イザベル・コイシェ
出演:サラ・ポーリー/ティム・ロビンス/ハビエル・カマラ/エディ・マーサン

ハンナは工場で単純作業をこなす、物静かな女性。
彼女は急に上司に呼び出され、「勤務態度がまじめすぎる」ため、なかば強制的に
休暇を取る事をすすめられる。

どこか旅行にでも・・という上司の言葉のまま、
ハンナは休暇をとり、荷物をまとめた。
旅行先で、ハンナは海上の油田掘削所で事故がおき、怪我人がいると聞いて
自分は看護師だと名乗りでる。

海の孤島である油田掘削所には、うちつける波を数える学者がいる。
波の数ほどノックをされても動かなかった彼女の心の扉は
患者であるジョセフの世話をするうちに、少しずつ開きはじめる。

「死ぬまでにしたい10のこと」の監督:イサベル・コイシェ、主演:サラ・ポーリーの
再びタッグを組んだ本作は、死から生へと向かう再生の物語。

冒頭「南の島のプールでエアロビクスでもして・・」との上司のすすめに
「エアロビクスは義務ですか?」と無表情のまま、聞き返すハンナ。

何の変哲もないシーンだけど、深く閉ざされた彼女の心の内をみるようで
はっとした。
決まったものしか口にせず、耳が不自由な彼女のシンとした世界。
他人の気持ちなど入り込む余地がない。

ジョセフがもし火傷も負わず、目も見えていたら
彼女の心に近づくことなど、できなかったんじゃないだろうか。
弱いから、支え合えるのだ。

ジョセフとハンナがそれぞれ心の奥底に抱えた秘密のやりとりは、
決して甘いものではないけれど
恋は、すべてを超越していくことができる翼なのだ、と
信じたい。


ベルヴィル・ランデブー(映画)

2010年10月13日 | 2000年代 欧州
ベルヴィル・ランデブー (原題:LES TRIPLETTES DE BELLEVILLE)

<アニメーション>      
フランス=カナダ=ベルギー 2002年
監督:シルヴァン・ショメ
声の出演:ジャン=クロード・ドンダ、ミシェル・ロバン。モニカ・ヴィエガ

フランスのある小さな街に、おばあちゃんと孫のシャンピオンがふたりで暮らしていた。
おばあちゃんは内気な孫を気づかい、数々のプレゼントを与えた。
その中のひとつが三輪車だった。

夢中になって三輪車を乗りまわすシャンピオン。そして月日は流れ、成長したシャンピオンとおばあちゃんは毎日自転車の猛特訓を続け、世界最高峰の自転車レース“ツール・ド・フランス”へ出場するまでに至った。

ところがレースの最中、救護車になりすましたマフィアの一味にシャンピオンと他の2選手が誘拐されてしまった。おばあちゃんは愛犬ブルーノの嗅覚をたよりに愛する孫を捜索。シャンピオンを乗せた船を足こぎボートで追いかけ、行き着いた先は“ベルヴィル”という名の大都市だった・・・。

まず鳴り出した音楽で一瞬のうちに、ベルヴィルの世界にひきこまれる! 
レトロでファンタジックな画像に心は鷲づかみ!! 

そして、奇妙にデフォルメされ、それでいて地味で無口な登場人物たち・・それぞれに個性的で、一くせも二くせも持った動きが何ともいとおしい。おばあちゃんの一心に孫を思う気持ちもまた、いとおしい。

大海原のシーンでは、ばあちゃんのあまりの頑張りに、思わず「ばあーちゃーん」と呼びかけてしまった。

ほとんどセリフがないだけに音楽や街のざわめきなどの効果が絶大。
細部にまで気を使った光の表し方や3D映像との融合が見事で、愛情と手間がじっくりかけられたことが見てとれる。
決して派手さはないけれど、あったかくて、ちょっぴりもの悲しい余韻に心が震えた。