ミケランジェロ・プロジェクト(原題:The Monuments Men)
2014年 アメリカ
監督:ジョージ・クルーニー
製作・脚本:グラント・ヘスロヴ、ジョージ・クルーニー
製作総指揮:バーバラ・A・ホール
出演:ジョージ・クルーニー、マット・デイモン、ケイト・ブランシェット、ビル・マーレイ、ジョン・グッドマン、 ジャン・デュジャルダン、ボブ・バラバン、ヒュー・ボネビル
撮影:フェドン・パパマイケル
編集:スティーブン・ミリオン
音楽:アレクサンドル・デスプラ
美術:ジム・ビゼル
衣装:ルイーズ・フログリー
ロバート・M・エドゼルの著作『ナチ略奪美術品を救え 特殊部隊「モニュメンツ・メン」の戦争』を基に、第二次世界大戦下でナチス軍に奪われた美術品や文化財の奪還に奔走した男たちの実話を描く。
7人の美術専門家たちが招集され、基礎訓練後、作戦をたてて2人組ないし単独でヨーロッパ各国に散らばっていくのだけど、大規模な戦闘シーンもないし(他の戦争映画へのオマージュはたっぷり)、個別の作戦となるとどうにもチマチマしてしまって、ヒトラーは緊張感のない後ろ姿しか出てこないし、“ジョン・ウエイン”のシーンは何かナヨナヨしているし(え?他は豪華キャストなのだから、ここで更に大物ゲストあってもよくない?)、前半は特に地味な印象があった。
このプロジェクトの指揮をとるハーバード大学付属美術館長のフランク(ジョージ・クルーニー)は「本当のことを言おう。成功が期待されているミッションでは無い」と、モニュメンツ・メンらに切り出す。軍幹部は美術品のことなどどうでもいい。戦争で多くの人が死ぬ。しかし、いずれ平和になった世界で人口は増えるが、美術品は決して戻ってこない。歴史は消えてしまう。積み重ねてきた文化が失われてしまう。我々は文化と生き方を守らなくては・・・と。
学者だ。学者さんの考えだな、と思った。それも正論だとわかるけど、でも・・・どうにもひっかかって、そこに執着して見てしまった。このまま彼らが歴史的文化財を守ったという美談を描いていくのかな、と思いきや、任務中の仲間の死を受けてモニュメンツ・メンはひどくショックを受ける。兵士とは違う。死に慣らされていない者たちの、どうにもやりきれない顔。そう、人の命より美術品の方が重く扱われるなんてことは、よくある事実かもしれないけれど、しかし、人ひとりひとりも歴史であり、文化なのだ。そこを踏まえた上で、それでも自らの命を賭すから、誇りが生まれる。
それをよくわかっているのは、ナチス略奪品の搬送先と元の持ち主を緻密に記録し続けた学芸員クレール(ケイト・ブランシェット)だと思う。人類共通の財産であると同時に、個人所蔵の美術品はその人の人生の記録であったり、その家が代々伝承してきたものだったりもする。彼女とMET所長グレンジャー(マット・デイモン)のやりとりは小気味よくって、ロマンティックだった。これらエピソードだけにスポットを当てて1本の映画にしちゃっても良かったのでは!と思うけど、他のモニュメンツ・メンらの細かなエピソードを積み重ねることで、美術品に対する多彩な想いが垣間見えた。