蒼ざめた馬の “一人ブラブラ、儚く、はてしなく”

山とスキー、車と旅、そして一人の生活

春から夏の復活、と言うか3つの修理記録-その1

2013-08-10 19:04:43 | 朽ちゆく草の想い

55歳で会社を早期退職した時、今後は、「群れず」、「蓄えず」、「浪費せず」、と決めた。

「林住期」を生きるのだから、「群れず」はあたり前、働かないから、当然「蓄えず」、蓄えないから、仕方なく「浪費せず」と言う事になる。

そして、やっとワタクシの「個」は確立した。
「林住期」を生きる、という事は、実存的である、と言えるのかも知れない。

後はワタクシが、これからのイキザマに値するかどうか、だけだ。
まぁ、ダラ~っと、ボォ~っと、デレ~っとしておれば、群れず、蓄えず、浪費せずですけど。

しかし「林住期」は、この次に来る「遊行期」に備えての準備、身を軽くしないといけない時期でもある。死に場所を探しての「遊行」に荷物は要らない。

と言う事で、機会ある度に不要なモノを棄てる様にしているが、動いていたモノが止まったから即、棄てましょ、と言う訳にはいかない。
修理して動くモノは使わなくても棄てられない性分。

社会人を辞めてからボロいスーツと靴はすぐ捨てた。しかし、それらとセットで使っていた腕時計は残していた。
特に高価なものだと言う訳ではない。数千円の子供が使うようなモノと、勤続10年かナンカの記念で貰った、多分、数万円のモノ、これは一応SEIKO。

4月の終わりごろ、フト見るとこれらはホコリが被ったまま止まっていた。ベルトの皮はボロボロ。とにかく全体がボロボロのイメージ。
このまま、燃えないゴミの袋にポイしたらオワリだが、ナゼか気が進まない。電池、入れ替えたら動くンやろか?

垂水駅前のショッピングビル入口にある、小さな間口の時計屋サンへ持っていって、「電池入れ直したら動きます?」と、差し出した。
「チョットやってみます」、店のオヤジサンはワタクシよりかなり年長の修理職人さん。
「動きますけど、どうします?」
電池と、ベルトをつけ直して2つで4千7百円、多分ほとんど腕に巻くコトは無いが、エエでしょ。

「ところで、家の道具箱に多分30年以上前のロンジンが、多分30年近く前から止まったまま入っとンですが、直ります?何度か燃えないゴミに出そうと思たンですが、なかなか棄てられヘンのですわ」
「多分直せると思います、そう言う古い機械式の方が得意なンです、ゴミに出す前に是非こっちへ持ってきて下さい」

このロンジンは、最初に勤めた会社の経理課にいた時、頂戴したモノ。
その会社は船舶室内艤装メーカーで、海外出張するエライさんとか営業がいて、出張費精算の際、為替差益が出る様にして、それを経理内で内緒でプールし、実務責任者のオバサンが海外旅行の度、その隠し金で高級時計を買ってきて、それを経理課員が順番に頂く、そう言うナラワシがあって、ワタクシも頂戴した。

しかし、全体が金ピカで、成金オヤジのようで趣味が合わない。ほとんど使わず、道具箱に放り込んでいた。

5月初め、そのロンジンをオヤジさんのところへ持って行った。

「チョット見てみます」、と言ってオヤジさんは店の中に消えた。
しかし、直ぐ中身を持って出て来て、「ここサビてます」、確かに竜頭のシャフトがサビていた。
「しかし完全分解したら動きます」、と言った。費用は数万円。修理期間は約1ヶ月。

数万円、直して何の価値があるのか。少しためらった。これは浪費なのだろうか?
しかし、お願いします、と言ってしまった。「ついでにキズだらけのガラスも替えといて下さい」

20日程経って、修理完了のTELがあった。

チョット感激した。ナンセ、30年近くズッと止まっていたのだ。

オヤジさんは約30年振りに動いた時計を、何の感慨もなくワタクシに見せた。オヤジさんにとっては、極フツーの修理作業だったンだろう。

「ガラスは替えときました」、とキズだらけの外したガラスを見せた。ナント、プラスチック製だった。
「これ、取説なんてもうないンですが、日付合わせるのどうするンですか?」
「竜頭をグッと押してください」
「ズッと腕に付けて動かしとかンと止まるンですよね?」
「竜頭を右に静かにチョット廻しても動きます」
「ところで、コイツ、ホンモンのロンジンですか?どこにも made in Switzerland て書いてへんし」
「イヤ、チャンとしたロンジンですよ、中に書いてあったかなぁ、イヤ、ここに書いてますよ」

014 確かに、下の枠ギリギリにswissと書いてあった。

コイツ、一日でも腕に巻いて動かさなければ、止まってしまう。また、一日に約一分遅れる。
しかし、何もせンでも、電池切れるまで狂わず動くノより、ナンカ有機的、生物的。かまってやらないとオネンネしたまま、ヘンに面白い。金ピカの成金趣味だけど。

しばらく腕に巻いてやることにした。


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