蒼ざめた馬の “一人ブラブラ、儚く、はてしなく”

山とスキー、車と旅、そして一人の生活

やはり車は生き物なのか

2012-06-28 23:42:47 | 車でブラブラ

自動車、特にイタリア車が「官能的」と、雑誌や本なんかで度々読んだりしていたが、その意味が良く判らなかった。

手元にある40年以上前の広辞苑では、「官能」とは感覚器官の機能、感覚と同意に用いる、と書いてあるが、「官能的」とは肉感をそそるさまであること、となっており、「肉感」とは肉体に起こる感じ、性欲に訴える感じ、となっている。

と、言う事は自動車、特にイタリア車は性欲をそそる、と言うコト(?)

しかし、そそられて車に抱きついてもカタイし、冷たいし、エンジンルームは熱いし。どう考えても性欲を満たす対象ではない。やはり、抱きつく相手は柔かく、温かくないとネ。

‘70年代初め頃の五木寛之センセの作品に、自動車が関係する主人公の小説がいくつかあって、その中に、恋するBMWの写真を見ながら自慰行為にふける少年の話があり、ワタクシも自動車は好きだったが、マスかける車などなく、不思議な感じだった。
しかし、恣意的に姉を死なせたその彼氏(不倫相手?)を呼び出して轢き殺した少年が、最後は車が勝手に動いて轢いた様だった、と言ったセリフを吐く作品もあって、これは判る様な気もした。
五木センセは以前から、車が生き物だと言う様な事をよくおっしゃっている。

自動車が単なる工業製品ではなく、生き物ではないか、と言う感覚は確かに判る。
確かに数時間かけて丁寧に洗ってやった後は、機嫌よく軽快に走りよる。いや、これは気のせいでしょう。機嫌よく気が軽くなったのは、長い間洗車をサボっていて、やっとそれを済ましたワタクシのホッとした気持ち。

しかし、数万(数十万?)の部品によって組み上がっている車、しかも外気温はさることながら、トルク、つまり滑りなどのセンサーも色々組み込まれていて、こう言う複雑、精密、多層なる機械は、なんでやろ、よう判らん、と言う事が多く、気まぐれな生き物だとしても不思議ではない。
実際、ディラーのオニイチャンとの話でよくあることだが、ある現象の一義的な原因は説明されても、ではその原因の原因は?、となると、「さぁ、よく判りません」

ドイツとイタリアのスーパーカーメーカーは馬、そのライバルのイタリアンメーカーは牛、かつてラリーを席巻していたイタリアンメーカーは象、サソリもいるし、フランスにはライオン。動物のエンブレムを付けている車は多い。
ただ単純にスピードを楽しむ文化として、車を捉えているヨーロッパ人は、昔からそれらを動物として扱っていた様な気がする。

で、ワタクシ、5月連休明けに蓮華岳大沢へ行った後、名神が集中工事で夜間通行止め、昼間は渋滞気味になって、急に信州へ走る気合いが失せたが、それでも未練がましくスタッドレスを履いたままだった。
6月になってやっと春の山スキーとはフン切りをつけ、夏用タイヤに履き換えたが、ホィールも鍛造軽量に替ったわけで、今年もバネ下重量軽減を体験して喜んでおりマス、恥ずかしながら。

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そして、用もないのにあっちこっちブラブラ、と言うかブンブン走っていたら、先日、右前輪辺りからの異音に気が付いた。

そもそも硬くセッティングされているらしいサスのスプリングを、(エエ歳こいて)更に硬いのに替えているので、段差を乗り越える時などはゴツン、とビックリする様なショックを感じることもあったりするが、そんなゴンと言う音ではなく、チョット荒れた、ザラザラする様な路面で、コトコト、カタカタ、音がする。

夏用タイヤに履き換えた時、ディラーのオニイチャン、脚周りもチェックしてくれているハズなので、トンデモナイ破損等が起きているとは思わなかったが、3日前、加古川~加西に抜けて、播磨中央公園まで来て休憩した時にボンネットを開けてみた。

最近の車のエンジンルーム内はブラのカバーだらけで、我が愛車もエンジン本体、バッテリー、パワステフルードタンクとかがカバーに覆われているが、このカバーを留めているのはプラスチックのクリップ。
しかし、これが硬化、劣化して浮き上がったり、無くなったりしていることもあった。2年程前に予備として5個、準備したが既に3個使っている。
今回もパワステフルードタンクのカバーを留めている1ヶ所が浮いていた。カバーを動かすと、確かにコトコト、カタカタ、音がする。どうやら異音の原因はこれの様だ。
浮き上がったクリップを抜いて見ると、硬化はしているが欠けはない。なので、締め直そうとしたら、エンジンルーム内にコロコロコロと落してしまった。

車の下を覗くと、地面には落ちていない。どこかに引っかかっているのだろうか。公園の駐車場を走り回ってみたが、落ちてこない。どこにいるの?クリップちゃん。

取りあえず予備の新品で締め直し。
家まで60km程度、エンジンルーム内のどこかにいるクリップは、途中で落ちるかもしれない。ゴミを出してしまうが仕方ない、ゴメンナサイ。

90分後、家へ着いてオドロいた。
いつものスペースに駐車し、いつもの様に車を降り、ロックして、車の前の地面にフト眼を落とすと、そのクリップが落ちていた。

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「ワタシもクッついて一緒に帰ってきたよ、ワタシを捨てて行かないでェ」

「当然だ、君を捨てたりしないッ、ズッと一緒だ」

そのクリップは、車内の小物入れに納めておくことにした。

やはり、コイツら、生きている。