ワタクシが幼稚園児の前から、社会人の28歳まで棲息していたのは、六甲山中の布引谷。オフクロもアラサ-からアラ米寿まで、そこに棲息していてた。
40年程前、6月から9月に掛けて、大雨や台風の度に避難騒ぎが何度かあったので、オフクロはいつでも持って逃げれる様に、大事なモノを、ダッサいボロボロのナップザックに入れていた。
オフクロが亡くなって、葬式終わるまでワンワン泣いていたワタクシ、一人になると、まずそのナップザックの存在を確認した。
ナンセ、そのナップザックのなかには、銀行のツウチョウが入っている。
それは、その後のワタクシの「バラ色の人生」になる、ムフフ。
欲深いバカムスコはその時すでにお一人様、新たな「バラ色の人生」を独り占めしたい。
ナップザックは難なく見つかり、ツウチョウを確保。それを相続して、「バラ色の人生」はワタクシのものになった。
そして、ナップザックからはオフクロの健康保険証とか年金証書も出て来た。これらはワタクシには関係ない。
捨てたろか、と思ったがそう言う訳にはいかない、チャンと手続きをして役所に返した。
返した時、「あぁこれでオカンは社会的にも亡くなったンやな」、と感じて、チョットだけ泣いた。
その4年後、バカムスコは「バラ色の人生」を送れているのかどうか、よく判りませんが、60歳になったので、昨日、年金請求の処理をした。
須磨の年金事務所へ10時40分着、45分待たされてワタクシの番。対応20分でオワリ。
ンヶ月後に年金証書が送られ、ンヶ月後にン月分が振り込まれ、と社労士の職員サンから色々と説明を受ける。
「ン?年金の証書?、そんなンエエから、早よお金振り込んでよぅ」、と半畳を入れると、「1~2ヶ月後、こう言うのが送られてきます、振り込みはその後です」
職員は証書のサンプルを見せながら言った。
それには見覚えがある。そうか、あのダッサいボロボロのナップザックから出て来た、オフクロの年金証書と同じものなのだ。
当然と言えば当然だが、オフクロと同じ「身分」=年金受給者となった訳で、その実感は、ナンカ侘しかった。
現役高給取りの頃は、自分の保険料が現行受給者への支払いに廻されていても、まぁエエかまだ元気で稼げるし、それにお年寄り養うのは義務、との気概らしきものもあった。しかし、自分が受給者になると、それはつまり養われていると言うか、お恵みを頂いている様で、チョット情けない。
ところで、今回初めて知ったが、配偶者がいて、生計を一にしていて、それの年収が850万以下の場合、加給年金と言うのが受けれるらしい。その額最大39万/年、へぇ~ッ。
ワタクシ、まだ配偶者いますが、生計は何年も前から別、よってそれは受けとれませんのでどうでもいいけど、大体世間に年収850万以上のヨメハンなんているンだろうか。
「本人が中小企業の社長かなんかで、奥さんがそこの役員かなんかしてた場合、年収850万以上のケースありました。ほとんどありませんが、税金などの扶養控除限度と比べると非常に甘いですねぇ」
へぇ~ッ、要するにヨメハンが、そこそこの高給取りのキャリアウーマンでも、フツーに最大39万/年頂ける、と言う事だ。
と言うか、手続きに来て、ササッと戸籍謄本と住民票を出して、「配偶者とは生計は別、よって加給年金などいらん」と言ったワタクシの身の上が、フツーではないだけか。
しかし、年収850万以下のヨメハンに39万/年の加給。これも一種の税金と言えど、それらはかつての部下、後輩から徴収しているお金。
職員はキーボード叩いて、今年の年金見込額をプリントアウトした。それは昨年の「ねんきん定期便」に記載されていた見込み額より4千円程少なかった。
毎年、年金額減らさざるを得ないのは仕方ないとして、その前にこの加給年金の年収制限とかを、もう少し常識的レベルにまで下げるべきでは、と思うけどね。まぁエエけど。
「年金基金への加入時期がありますが、基金から請求の案内来ましたか?」
「イヤ、ないけど」
「直ぐ連絡取って下さい、取りあえず企業年金連合会へ連絡してください、ここから支払われる場合もあります、それと障害手帳とかお持ちではありませんか、年金増えますよ」
「生まれてからズッと、カラダ、どこも悪いトコ、ないねン、色々アリガト」
学校卒業して最初に入った会社は、確かに厚生年金基金だった。年金記録にもそう載っている。
しかし、まだ若い時期で会社の業績も良くなく、給料も安かった。10年程いたが、神戸の本社を売却したりして、益々業績悪くなったので転職した。
いずれにせよ大して払っていないので、大した年金額にはならないはず。
しかし、何の連絡もないし、直ぐ連絡取って下さい、と言われると急に心配になって、企業年金連合会のコールセンターへTELした。
3回目にやっと繋がって、事情を話すと、10年以上勤めているので給付はその年金基金からになります、と言われ神戸の連絡先を教えてくれた。
その年金基金には直ぐに繋がって、同じ様に事情を話すと、書類を送るので住所は中央区のママですか、と聞かれた。前の住所がまだ控えられているらしい。訂正した。
「書類を6月末までに送る様、準備しています、着いたら色々記入して頂いて、住民票と証書のコピィと一緒に送り返して下さい」
「証書?」
「年金の証書ですよ、今日年金の手続きされたンなら、1~2ヶ月後に送られてくるはずです」
ナルホド、誕生月に年金請求の処理して、1~2ヶ月後にならないと年金基金の方は処理できない、要するにオトナシク待っとけばヨカッタだけだ。
年金事務所では、加給年金なんていらん、というイサギよさを演じていたのに、急に浅ましくなったワタクシ、あぁ情けない。