~Agiato で Agitato に~

再開後約20年になるピアノを通して、地域やほかの世代とつながっていきたいと考えています。

セミナー受講

2007年12月10日 16時39分48秒 | レッスン&セミナー
午前中あるセミナーに行ってきた。

タイトルは「ピアノ教師でもあった大作曲家たち」で、講師はムジカノーヴァなどによく執筆されているT先生。
内容は、モーツァルト、ベートーベン、メンデルスゾーン、ショパン、リスト、ブラームスが弟子たちにどういうレッスンをしていたか、ということで、半分は私の大好きなワイドショー的こぼれ話。それも大変巧みな話術で、笑いっぱなしの2時間だった。

ワイドショー的話は書くとキリがないので、またおいおい何かのついでに書くとして、今日なるほどと思ったことをいくつか。


<トリルの話>

トリルは、こと子どもの場合は大変難しい。
講師のT先生が師事された先生は「トリルは隣あった指ではなく一本おいた指で弾くこと」と指導されていた。
巨匠が弾く映像などを見ると、意外にゆっくり入れているのに気付くことと思う。
ホールが大きくなればなるほどゆっくりきちっと入れることが多い。
トリルは速く何個入れられたからいいというものでもなんでもなく、音としてしっかり弾くべき。ウィーンで学生がワルトシュタイン第3楽章のトリルを全部書いているのを見たことがあるけれど、それくらいの気持ちで。
また、トリルは手のふりおろし1回で弾かれるので、いってみれば巻き舌にも似ている。ピアノを聴くとその人がドイツ語がうまいかどうかわかる、と言った先生もいる。




<ベートーベンの強弱とフレーズ>

ベートーベンはあの不幸な生涯、言い伝え、日本人の精神性から、なんだか根性とかフォルテとかいうイメージが強いが、実はベートーベンは大変弱音に魅力を感じていた作曲家だった。
実際、ソナタの1~3番はpで始まるし(※今私が見てみたら、4番もそうだし、pで始まるソナタは大変多いです)、熱情の第3楽章でさえ、ffは6箇所?(※私の本では8箇所)だけ。
またベートーベンは大変フレーズにうるさい教師だった。悲愴の第3楽章など、けっこう細かくフレーズが切れているのに、これを続けて弾いてしまっているケースが大変多い。



<脱力について>

脱力の一番の敵はレガートといってもいい。脱力の練習をレガートでやろうとすると腕がガチガチになる。
まずはゆっくり一音と一音ノンレガートで練習する。ショパンは最後の最後まで弟子にはレガートで弾かせなかったといわれている。
また付点のリズムの場合、「タッカ、タッカ、タッカ、タッカ」というリズムは「タッ・カタッ・カタッ・カタッ」というように区切って、「タッ」のあとで力を抜く。
鍵盤は押す時は50グラムの力がいるとしても、返ってくるときは25グラムでいいので、指を跳ね上げるなくても離せば自然に戻る。
脱力は「抜き」と「支え」のトレーニングがいるのだが、前者は1年くらいで出来るとしても、後者は大変時間がかかる。後者はたとえば「ドレミファ」を音を立てずに一緒に押さえて、あと5の指でソだけを連打するなどの地道なトレーニングが必要。


<小さな音できれいに弾く>

ステップなどで子どもたちが弾くのをみると、大変無理なフォームが目だつ。
これは「しっかりはっきり大きな音で弾きましょう」といわれたがためと思われる。私は(T先生)小さな音で弾いている子につい良い点をつけてしまう。それは、きれいな音とフォームで弾いているから。
クラウディオ・アラウが「(ピアニストの)力量と音量は比例する」というようなことを言っているが、まさにそうで、初心者に大きい音が出せるはずがない。ショパンも「初歩段階では、大きい音で弾かない、速く弾かない」と言っている。
ただ、コンクールなどでは音の小さいのは不利と思い、先生方はどうしても「はっきり・しっかり」と言ってしまう。「小さな音で弾くコンクール(またはステップ)」を開催したいくらいだ。



<4の指について>

4の指は無理にきたえられるものではなく、薄皮を一枚一枚重ねるように強くなっていくものだ。
もし現在4の指が弱くでちゃんと弾けないとしたら、小さい音量でそっと弾けばいい。それがその人の今の実力です。
できる範囲でだんだんと大きくしていく方がよい。無理に「4の指付点練習」とかはやらないほうがいい。



だいたいは「子どもを教える場合」という前提なので、大人の場合は必ずしもこればかりではないかもしれないが、いろいろ考えさせられるお話ばかりだった。

こういうセミナーをこれまでいくつかきいているのだが、だいたいお話はあるところで同じところにつながるもので、自分のなかでもだんだんと道というか流れがはっきりしてくるような気がする。もちろん、毎回毎回受講したことをいろいろ試したあげくのことではあるが・・・・・。