夕食も済んだ。酒も飲んだ。風呂も済んだ。後は寝るばかりよ。お風呂の中でもう眠ってた。だらしのないこった。
9
いいじゃないかいいじゃないか。おれはそんなふうに、おれを慰める。安っぽい男だ。自慰行為が専門。妥協男。いつ嘘っぽい。
それはよくない、断じてよくない、というふうにいいこわって、抵抗をしない。だから、進歩というものがない。同じところを行きつ戻りつしている。
人間は昨日よりも今日を一歩半歩、とにかく進歩をするために日々を新たにしているっていうのに。
8
ラジオで、さっそく、夜の「ベストオブクラシック」を聴いている。おれは愚者。音楽なんて何にも分かっちゃいないのに、聴いていると天人界の住人になれるのである。なんだろう、これは。お安いではないか。
でもでもでも、専門家が『では、あなたは何を聴いたのですか?」と尋ねられたら、わたしは口を閉ざすだろう、きっと。つまり、全部、右の耳から左の耳へ、ただただ聞き流したに過ぎないのだから。
7
今日のスマホ教室でラジオを聴けるようにしてもらった。しめしめしめ。NHKのAM、教育、FMが聞ける。無料で。ヤッホー。眠れない真夜中も聞けるぞ。オマケに聞き逃していたのも、遡って聞ける。けひゃけひゃけひゃ。退屈しないぞ。ああ、これで朝夕のクラシックが、寝そべって、聴けるぞ。うひひひひ。それを考えただけで上機嫌。おれは簡単にできている。
6
わたしの胸は、凹んだ鳩胸。ちっとも男らしくない。筋骨隆々でもない。胸回りが細い。狭い。背中までが薄い。自慢にはならない。よくもまあこれで、この年まで生き延びて来られたなあと、あらためて感心する。
女は、男らしい男に惹き付けられる。生物学的にも、おんなは逞しい男性の種を残そうとする、必然的に。僕にはその要素がまるでなかった。妻にはすまないことだった。
5
外に出ても、それだけのことしかしていないのに、背中と腹が汗びっしょりになった。蒸し暑い。仕事止め! 慌てて風呂場へ来て、で、着ているものをみんな脱いで、冷水で拭き上げた。清々しくなった。
汗さまさまである。汗が出ていなかったら、こうまで清々しい気分を味わうことは出来なかった。汗の前には? そうだった、蒸し暑さがあった。蒸し暑さの前には? 雨が降っていた。
4
それから垣根に野薔薇が長く長く伸びていたので、これを根元の方で、剪定鋏を使って切除した。硬く尖った棘が痛かった。更に短く切って、焼却炉の中に放り投げた。お天気になれば燃やしてしまおう。人が怪我してしまわぬうちに。薔薇にはトゲがあるばかりに。
3
ほったらかしにしていた胡瓜を、抱き上げて、ヒモで支柱に結び付けて回った。地を這っていたので、雨に濡れ泥まみれになっていた。すまんすまんを言って詫びた。詫びる前に、行動に出ていればいいのに。
1
夕方が来ている。夕方という時間帯は一日を終わる準備に入る時間帯だ。おごそかな時間帯だ。
2
雨が止んでいるものだから、野良着に着替えて庭に出てみた。畑に出てみた。
はなたら・やまさか・あわあわ。
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文字を列べただけだけど、それでもそれがなんか訴えて来るようにも感じるなあ。
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ことばというのは奇っ怪だなあ。
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いったい何処から此処へ来ているんだろう。とことことこと歩いて来る足が、あるのかなあ。
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なくても、よかったのか。
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わたしのなかにも、生まれて来る。生まれ出て来る。
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それがまあ、宇宙の智慧というものか。法・ダンマというものか。
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そこにもここにも自ずからにして満ち満ちている。