山里からは山が見える。山を見る。慰められる。
山は静かだ。いて見ても静かだ。乱れることがない。
1
かわさら・あま・たなはっ! 今朝の呪文。愉快痛快、「快の蔵」の扉よ、ヒラケゴマゴマ!
言葉はそもそもが呪文。願いを風に込めた。すると願いは言葉になった。言葉は炎のようにゆらめき、呪文となって立ち上がった。
愉快よ痛快よ。快の蔵よ。宇宙は快の蔵、捲っても捲っても、ますます快の蔵。この扉を開けないで、生きたと言えるか。快の蔵を我が住むところとしないで、みすみす死んでたまるか。
かわさら・あま・たなはっ! 鋭く気合いを込める。呪文は合気道。大空に快の旋律が流れて行く。
1
かわさら・あま・たなはっ! 夕方の呪文。愉快の蔵の扉よヒラケゴマゴマ呪文。
2
手の甲に静脈の血管が浮き出ている。腕にも盛り上がっている。此処を赤い血が流れている。体の外側の見えるところにも、内側の見えないところにも、流れている。わたしが意思して、命令をして、流しているわけではなく、自律して流れている。このお陰で、体内60兆箇の細胞が、必要なエネルギーをもらって活動をしている。
3
血管も血管を流れる血液も、わたしがどういう人間であるかを、知らない。知ったら?
どうするんだろう?
いつもおれはおまえを踏みつけて来たが、おまえはそこでおれをしっかり支えていた。そして立ち上がらせて歩かせた。
夕方、麻痺の左足の足底を写生した。
9
こうして老いた。やっともうすぐ終わりが来る。長く生きた。これでよくまあ生きて来られたもんだ。結局、みんな許されて来たことになる。死を以て、あれこれあれこれの間違いの、ケリをつける。お詫びになる。それで安らごう。
10
もうすぐ午後3時。お昼はひとり。チキンラーメンにお湯を掛けてすました。腹が減って来た。何か喰うものはないか。トマト以外には、ない。
5
そして大きな顔をする。周りに大きな声を出す。自分ばかりが正義主張になりたがる。そんな正義者じゃないのになあ。
6
そんな全般的な反省をする。することがある。でも、また間違う。そして「おれは間違っていない」とまた開き直る。
7
ああ、間違いだらけだなあと思う。生涯間違いだらけだったと思う。常に相手を責める。責められるのが嫌なくせに。相手に非を見つける。
8
妻との間だってこうだから、ね。他人様の間に出れば、そりゃあもう。そりゃあもう、迷走迷妄の氾濫筑後川でありました。
1
おれが間違っていたからこうなったんだろうな、と思うことがある。それで相手を間違わせてしまったんだろうと思って、すまなさが湧き上がる。
2
夫婦喧嘩のこと、これは。
3
おれは、いい檀那じゃないのに、妻にはいい妻になっていてほしいと思う。そこからまず間違っている。
4
我が儘なんだなあ、つまるところ。己は我が儘を通していながら、相手には通させない。此処もヘンだよなあ。どうもヘンだよなあ。
5
この話はここまで。空しくなる。
トランプさんは早々と今度は北朝鮮へ。不平を言いに行ったんじゃないみたいだけど。
4
不平は色々あるよ。不満も色々あるよ。それを言い出し合っていては、喧嘩になるばかりよ。
相手に不平もあるけど、恩義もあるよ。不満もあるけど、満足もあるよ。
お陰様お陰様で暮らして来られたのよ。相手に、やさしくしてもらったので、今のわたしがあるはず。
相手に不平を言うけれど、それと同じだけ相手からの不平もあるはず。不平を言い出すと不平だけが大きく大きく見えて来る。
相手からしてもらったこと、その恩義を思うと、それもまた大きく大きく見えて来る。
3
不平不満を言い出すと切りがないよね。
不平はいろいろあるよ。不満もいろいろあるよ。どちら側にも。人と人との間にも、国と国の間にも。
相手に不平と不満を多くさせると、競争に勝つ。逆か。競争に勝つといよいよ相手側に不満と不平を募らせる。競争に勝った強い国が弱い国に不平不満をより重く持たせることになる。
この押し付け合いをしているのが、国と国との政治なのかなあ? 人と人との場合だってそうだものね。不平と不満は先に言った方が勝ち、大きな声で言った方が勝ち。最後まで言い通した方が勝ち。これでいいのかなあ?
バランスなのじゃないのかなあ。利益のバランス、不利益のバランス。バランスを取り合って共存共栄の、ウインウインの、友好関係を維持するのが、政治じゃないのかなあ。