午後9時。今夜はまだ眠らずにいる。めずらしい。夕食に酒を飲んで酔っ払って、すぐにごろんと寝てしまう。今日は、テレビを見ている。NHKのワイルドライフという番組を見ている。今夜はドイツが舞台だ。ドイツにこんなに広大な森が広がっているとは思っていなかった。ドイツがこんなに豊かな森の国だとは知らなかった。動物たち、魚たち、昆虫たち、鳥たちを見せてもらった。興奮した。
午後9時。今夜はまだ眠らずにいる。めずらしい。夕食に酒を飲んで酔っ払って、すぐにごろんと寝てしまう。今日は、テレビを見ている。NHKのワイルドライフという番組を見ている。今夜はドイツが舞台だ。ドイツにこんなに広大な森が広がっているとは思っていなかった。ドイツがこんなに豊かな森の国だとは知らなかった。動物たち、魚たち、昆虫たち、鳥たちを見せてもらった。興奮した。
テレビを見ている。フォレスタの歌声を聞いている。うまいなあ。痺れてしまう。
人間の声ってスゴいよ。歌が歌えるんだよ。おとこは男の声。おんなは女の声。
声が恋を歌うと、恋が、たまらずに、そこに立ち上って来る。僕を、ここへ、無理やり、誘い込む。
昼の星、朝の闇、夜の太陽は、なるほど見えない。
山口県のあの有名な女性詩人が言うように、あるものでも見えない。
同じことが言える。
ないものでも、見える。見える人には見える。あるように見える。こころに見える。
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あるものでも、見えない人には見えない。
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見えないものを見る視力というものがある。
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文章を書く人は、文章の背後に、ものが見えているに違いなあ。想像は、そうでなくちゃ、描けないはず。ありありとは描けない。音楽だってそうだろう。
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宗教だってそうだろう。いや、宗教は見えないものだらけの世界だろう。それを見ているのだ。
アメリカ芙蓉は、昼間、月のような大きな顔をしている。月は黄色いが、アメリカ芙蓉は真っ赤である。庭の片隅に草丈高くほっそり立っている。見てやらねば、腹を立てそうで、見てあげる。じっとじっと見てあげる。
そうだよなあ、こんなにでっかく美しく豪華に咲いたのだからなあ。誰かが褒めてやらねば気が治まらないだろうなあ。このままじゃ、散っていきたくないだろうなあ。
人人に恋する人のありながら我が目にあるは雲と夕月 薬王華蔵
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どの人にもどの人にも恋する人がいてたのしくも哀しくも生きていて、わたしにあるのは雲と夕月である。
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こんな歌を作ってみた。人は恋して恋して生きているべきである。死ぬが死ぬまで。というのに、われは。
たちまちにきみのすがたを霧とざし ある楽章をわれはおもひき 近藤芳美
*
恋しい人と一夜をともに過ごした。明け方、そのおんなの人をお返しした。わたしはあなたを、山里の古い門の處で見送った。霧がたちまちに涌き出でて来て、奪い取って行った。あなたは霧深き世界の人となって、消えた。するとシューマンのバイオリンソナタの、あの悲しい楽章が、わたしの胸の中に流れて来た。
人を恋うということは、こうして常に未完成なのだ。こうして会っても会っても。
さなさな、やわ、たわう、けも。
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夕食を終わった。缶ビールの小を1缶飲んだ。それ以上は飲めなかった。老いた。
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肉体が老いたのなら、精神で、それを補うしかあるまい。などと思う。
じゃ、どうやって?
ううん、答に詰まる。
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精神は、肉体ではないから、老いることはない。非物質なんだから。物質の真似をすることはない。
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7時前10分。一瞬明るい日が射して来た。
きくさ、た、あやは、なま、らわか。庭に鳳仙花が咲いている。
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鳳仙花、これは。小さい頃、呉座に座って、ままごと遊びをした。花びらを揉んで、爪を染めた。赤く染まった。わたしはおんなの子と遊んでた。女々しかった。
いまでも、あんまり変わっていない。
蜘蛛がいる。部屋にいる。夜🌃も昼もいる。いつもひとりでいるわたしを慰めようというつもりなのか。いつもしょんぼりしているわたしを元気づけようという算段なのか。障子戸を行ったり来たりしている。大きい。かさかさという音を立てる。
鹿の子ユリ、これはピンクの。わたしのお気に入りの夏の花。
我が庭に咲いている。美しく咲いている。雨に打たれながらも、美しく。
ねっ、可愛いでしょ‼️