さ。そろそろ時間だ。頭にタオルを巻き付けて、畑に出て行く時間だ。4時まであと少し。することはいろいろある。まずは殺虫剤を撒こう。瓜虫が来ている。瓜蝿が来ている。とにかく五月のこの時季は、わんさわんさ涌いて来る虫と競争だ。放っておくと、せっかく植え付けた苗物がぎざぎざぎざに毟られてしまう。その苗物様方がヘルプミーのサインを出している。わたしは彼らにとっては正義の味方スーパーマンだ。その気取りをしているところが笑えちゃう。
聴診器を当てる。わたしに。わたしがわたしの胸の辺りに。心臓が規則正しく打っている。元気だ。呼吸音も清々しい。
もう1箇所にも聴診器を当てる。これはわたしの肉体に宿っている主人公様だ。はつらつにしているかどうかを聴診器で聞く。
よろしい。はつらつとできている。痩せているが、痩せていることに文句も言っていない。声高くしていない。自慢もない。世間様に恨みを抱いているふうでもない。収支決算をゼロにしている。飄々として、それで軽々と軽い。
何処に聴診器を当てたかだって? 瞑想をしていると幽体が見えて来る。これは肉体よりもやや大きい。肉体を包むようにしている。そこを意識して当てる。
身心(しんじん)を脱落させし人の横 落とし物らも草に寝ている 薬王華蔵
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こういう短歌を作ってみた。禅宗でいうところの身心脱落(しんじんだつらく)だから、この人は悟りを開いた後に、悟りのお後を大切にして行脚をしている雲水さんだ。ちょっと旅の疲れが出て休憩中か。
草に寝ているのは、落とされた物、つまり身と心の方だけど。身心を落とし主(あるじ)は、まさか、その隣でそれが寝ているなどとは思いもするまい。
5月の空がよく晴れている。新緑の山々が続いている。落とし主と落とされた落とし物とがそれを仰いでいる。いい気持ちになっている。椎が花をつけて真っ白い。夏鳥の子規(ホトトギス)が甲高く鳴いている。
5
韓国料理でよくでる白菜漬けキムチは大蒜の臭いが強烈だ。だが現地を旅行している内に食べ慣れてしまった。真っ赤だが、この赤さは何の赤さだろう。そういえば韓国の空港に降り立ったときに,空港ロビーがこの臭いがした。また韓国を訪ねていってもいいなあ。一度、夕食に生のまんまが出されて驚いた。周囲を見よう見まねで食べてしまった。食後、歯と歯茎がなまなましく臭った。
4
中国料理を巧くするためには欠かせない。はず。大蒜の入っていない餃子は気が抜けているサイダーに等しい。西洋料理にもこれが使われているようだ。料理番組を見ていると、よくこれが材料にあげてある。微塵に切って、初めに高温でさっと炒めて味付けにしている。精力をつけるための薬瓶にもこの大蒜の絵が添えてある。スーパーで買うと案外高価だ。
3
小さい頃、小学校の隣の席の友達がよくこの臭いをさせていた。毎日この臭いがした。彼が座っている席に近づかないようにしていた。それをまだ覚えている。亀川君といった。短く切った毬栗頭が青々としていた。無口な方だった。喧嘩が強かった。やがて遠くへ越していってしまったので、もう長く会わない。一度だけ、友人から関東あたりで暮らしている彼の話を伝え聞いた。
2
僕は大蒜が好きだが、家族の者は食べない。食べると臭くって職場で迷惑を掛けるという不安があるらしい。たしかに臭い。それでも栄養価は高いらしい。僕は、それで、ときどきお願いをする。ステーキを焼くときなどに、これを炒めてもらう。そして食べ終わった後と寝る前と朝起きたときに歯磨きをする。
1
大蒜(にんにく)がもういいかなあ。一株掘り上げてみようかなあ。そろそろ葉っぱの先が黄色くなってきた。種になるのを1個買ってきて、割った子房の分だけ植え込んでいた。施肥が十分だったと見えて能く肥っている。茎がすっと伸びている。
午前中、ちょっとだけ畑に出た。草取りをした後で、蔓なし隠元豆と蔓あり隠元豆の種を蒔いた。いやあ、それだけでもう暑かった。直射日光の下で働くのが躊躇われる頃となった。
作業に掛かる前に、下着を取り替えた。夜は長袖、昼は半袖。一日に2度も着替えをしなくちゃならない。面倒臭い。
カメムシが臭い。小さい小さい亀の形をしている。独特の匂いだ。鼻に刺さる。どうやら農作業中に服に移動をしてきたらしい。神経質だが、そこで着ている上着下着を脱いで、叩いた。
しばらく家の中に居て休憩をする。寝椅子に寝て昼寝をしてもよさそうだ。4時になったら、腰を上げよう。空は晴れ渡っている。そおら、眠くなって来た。
メモリースティックを買いに行った。一番小さいので、税込み1020円だった。
うどん屋さんで、お昼。冷たい笊うどんにする。400円。暑くなると冷たいものが欲しくなる。すぐに運ばれて来た。つるつるつると啜った。簡単に済んだ。