これは初めての経験だった。
昨日畑の蕗を摘んだ。指先で筋を剥いた。それからポキンポキンと短く折った。笊いっぱいになった。指が蕗の灰汁で黒く染まった。熱湯で茹でてもらった。
今朝の朝食の、味噌汁の具になっていた。これがおしかった。歯触りもよかった。若布といっしょで、なおさらおいしかった。味噌汁にして蕗を食べてのは初体験だった。案外、味噌とは相性がいいということを知った。
こういう食べ方があったんだ。これは先日通りかかった集落の若い人に蕗を一抱え差し上げたときに、教えてもらった。その若い方のお母さんがそういう料理法をしておられたらしい。いまはおられないので、ひどく懐かしい気持ちが起こってきたと話された。
その若い方の真似をしてみた。その方もきっとそうされただろう。お母さんを懐かしまれただろう。蕗は我が家の土を好んでいるらしくてよく育つ。他所さまに地下の地下系ごと掘って差し上げたこともあったが、そこでは寝付かなかったらしい。
蕗は葉っぱの傘を差している。大きな一枚の傘だ。この傘の下にはアイヌの神さまが立っていて、通りかかる人を見上げていてくださっているらしい。見上げられている自分を想像すると温かな気分になる。