嬉野温泉シーボルトの湯に浸かった。友人といっしょに。42℃。足先がジンジンした。効いているなあと実感した。ねっとりぬるぬるの湯である。肌に粘り着く。不思議な湯である。でも透明。なぜシーボルトの湯などという名称になっているのか。知らない。長崎からここまで来たのではないか、ドクターシーボルトが。長崎からは近い。ここの湯に入ると湯冷めしない。いつまでも温かい。友人の腰痛も改善したのではあるまいか。彼も頻りに湯を褒めていた。
はあはあと息を吹きかける掌、指の先に。なかなかあたたまらず。日射しが障子を明るくする。そこに干し柿の影が映る。縦に連なって。
*
謎の多い人は湖のよう。辺りの山を影にして呑み込んで、そうして静かにしている。神秘の青い色が深くなる。そこへわたしが近づいて行ってもわたしもまた、映している静かな影に過ぎないだろう。近づかない。
*
友人から電話があった。隼人瓜を分けてくれるという。出掛けることにした。我が家の隼人瓜は今年は不作だった。なったものは酒粕にして食べてしまった。これがじつにおいしい。上品な味がする。さて、お返しは何が良かろう。悩む。