もう一度聴きたいドイツの詩歌曲「ローレライ」
原詩 ハインリッヒ・ハイネ 訳詩:近藤 朔風(明治42年)
なじかは知らねど心わびて
昔のつたえはそぞろ身にしむ
さびしく暮れゆくラインのながれ
いりひに山々あかくはゆる
うるわしおとめのいわおに立ちて
こがねの櫛とり髪のみだれを
梳きつつくちずさぶ歌の声の
くすしき魔力(ちから)に魂(たま)もまよう
こぎゆく舟びと歌に憧れ
岩根もみやらず仰げばやがて
浪間に沈むるひとも舟も
くすしき魔歌(まがうた)うたうローレライ
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「ローレライ(Loreley)」は、ドイツの作曲家フリードリヒ・ジルヒャー(Friedrich Silcher1789-1860)による1838年作曲のドイツ歌曲。Christian Johann Heinrich Heine(1797-1856)が詩を付けた。日本では明治42年近藤朔風が訳詞して広く愛唱されるようになった。聞いても聞いても名詩だ。
ローレライ(Loreley)は、ライン川流域の町ザンクト・ゴアルスハウゼン近くにある、水面から130mほど突き出た岩山の名。そしてここライン川の急流に身を投げた悲しい乙女の名。ライン川下りでも有名で、周辺にはフドウ畑や古城が点在し、ローレライの岩の上に登ることもできる。ローレライの岩のあたりは、川幅が少し狭く流れも急になるため、昔から遭難する船が多かったという。
魅惑の美声で人々を惑わす妖精ローレライ伝説に因んでこのドイツ歌曲が作られた。ローレライには、昔からいくつかの妖精の伝説が残されている。内容には多少の違いがあるようだが、ローレライとは不実な恋人に絶望してライン川に身を投げた乙女の名で、水の精となった彼女の声は漁師を誘惑し、岩山を通りかかった舟を次々と遭難させていったという。(以上 引用)
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さぶろうも若い頃ここを旅したことがあった。ライン川下りの観光船に乗ってこの岩山を眺めた。悲恋というのは世界の何処にもあるようだ。これを歌にして歌い継いで、乙女の魂を慰めているのだろう。中学生の頃に音楽の時間に習ったので、歌いやすい。さぶろうは今夜この曲をバリトンで静かに歌っている。歌っていると恋する乙女の恋心が乗り移って来るようにも思われる。