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The Game is Afoot

ミステリ関連を中心に 海外ドラマ、映画、小説等々思いつくまま書いています。

「蒼ざめた馬」アガサ・クリスティー著

2020-03-10 | アガサ・クリスティ
”The Pale Horse”

「蒼ざめた馬」ハヤカワ文庫、クリスティー文庫 2004/8/18
アガサ・クリスティー(著)、高橋恭美子(翻訳)

≪内容≫
霧の夜、神父が撲殺され、その靴の中に九人の名が記された紙片が隠されていた。そのうち数
人が死んでいる事実を知った学者マークは調査を始め、奇妙な情報を得る。古い館にすむ三人
の女が魔法で人を呪い殺すというのだ。神父の死との関係を探るべくマークは館へ赴くが…。オ
カルト趣味に満ちた傑作、新訳で登場。
(「BOOK」データベースより)

~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ 

「蒼ざめた馬」”The Pale Horse”は1961年に出版された アガサ・クリスティーによる推理小説で、
今作は、ポワロもミス・マープルも登場しないいわゆる”ノン・シリーズ”です。

以前BBC版ドラマ放送をご紹介した内容と重複する部分もありますが、ドラマの日本放送を前に
(何時になるか不明ですが)随分久し振りに再読しました。

主人公は学者であるマーク・イースタ―ブルック
彼の視点での語りが途中何か所かに挿入されています。

原稿執筆の為チェルシーに部屋を借りているイースターブルックが立ち寄ったパブ(?)で2人の若い
女性の激しい取っ組み合いを目撃する。一方の女性は髪の毛をごっそり抜かれるが痛くなかったと・・・・
(この辺アレ?っとなりますわね←重要な伏線の1つになっています)
その後、彼は新聞でその女性の死亡記事を見る事になります。

イースタ―ブルックは従姉家族が住むマッチ・ディービングという田舎の教会での募金活動への
協力を依頼する為 知り合いで著名な推理作家であるオリヴァー夫人を訪れる。

一方、霧の夜ある女性の臨終を看取った神父が 彼女の死の間際に残した謎のメッセージと9人の
名前を書いたメモを靴の中に隠したが、その後その神父は帰宅途中に何者かに撲殺されてしまう。

神父の残したメモを偶然見る事になり、そこに書かれた名前の中には 知り合いを含む名前の中の
数人が死んでいるという事実を知ったマーク・イースタ―ブルックは一方で、”誰かを消したければ
『蒼ざめた馬』に行けばいいと言う噂を耳にしたことから 3人の魔女が住むという『蒼ざめた馬』
という名の古ぼけた館を訪れる事になる。
3人の魔女達は魔法による呪いにより人を殺す事が出来るという噂があった。
この噂と死亡した人たちに関連があるのか・・・・。 しかし彼らは明らかに”病死”とされていた。

村で知り合ったジンジャーと呼ばれる女性と共に謎を追い始めるイースタ―ブルック。
ロンドンでは 殺された神父の後を追っていた怪しい男を見たと名乗り出た薬剤師のオズボーン。

又、村に住むヴェナブルズという富豪で車椅子の老人。

オカルト風の魔女による呪いがどの様に実際の事件に結びついて行くのか・・・。

イースタ―ブルックは噂を確かめるために 魔女に依頼し、友人のジンジャーが囮になるという危険
を冒す事になります。
ルジューン警部の協力を得ながら、ジンジャーの身を心配しながらも事実を確かめようとするイースタ―
ブルック。 ジンジャーは身の危険を顧みず、勇敢で行動的な女性で魅力的なキャラクター。
(ところで、このルジューン警部はなかなか良いキャラクターで気に入っています)

アガサ・クリスティーがまさかオカルト殺人でした。となる筈も無く、どの様に納めて行くのか興味を
持って読み進めますが、最後、犯人と殺人手段はなかなか予想も出来なかった結果で驚かされます。
そして、イースタ―ブルックとジンジャーは・・・・。

他のポアロやミス・マープルものとは異なり、若い素人探偵となるイースタ―ブルックの語り口が軽や
かで爽やかにも感じられ、彼を取り巻く女性陣のキャラも賢く、強く、重いテーマにも拘らず読後感も
良い作品で、こんなクリスティー作品も好きです。

ただ、アリアドネ・オリバー夫人の出番は少なく、この点は少し残念。
(にもかかわらず、思わずニヤリとさせられたり 流石の存在感ではあります)
些細な部分ですが、
彼女が うろ覚えであった「蒼ざめた馬」の名前を「ピンクの馬」とか?と言う場面では、とんでもな
くいい加減な記憶かと思ってしまいそうですが、これは翻訳本の辛いところで、英語で言えば ば ”Pink
Horse” であり、”Pale Horse” とは”P” 繋がりですから 当たらずとも遠からずなんですけどね。

ところで、
前にも書きました様に、BBC版(サラ・フェルプス版)ですが、これまで何度も繰り返し書いてはいたの
ですが、既に製作、放送された作品は全て独自の解釈での脚本となっていて、どの作品もビックリさせ
られていたものですが、今回の「蒼ざめた馬」に関して 少しだけ(チラッと)英国放送後の評価を読ん
でみると、やはり戸惑いの声も出ている様です。
原作に拘るか、新しい解釈が気に入るかはそれぞれだとは思います。
が、個人的には過去作品もやはり原作の方が好きでした。

今回はどうなっているのか どちらにしても観てみないと・・・・ですね。

日本での放送が決まりましたら又ご紹介しましょう。

※ BBC版「蒼ざめた馬」の情報はこちら



BBC版『蒼ざめた馬』

2020-01-27 | アガサ・クリスティ
”The Pale Horse” : アガサ・クリスティー原作

BBC One : 2エピソード

昨年夏頃でしたか 第一報として製作発表記事をご紹介したのですが、先日英国にての放送日
が発表されました。
BBC Oneにて2月9日からの放送との事

前回の書いた事の繰り返しにもなりますが、再度内容をご紹介しておきます。

「蒼ざめた馬」”The Pale Horse”の原作は 1961年に発表されたアガサ・クリスティーによる推理
小説です。
ポアロもミス・マープルも登場しない、いわゆるノンシリーズ作品ではありますが、アリアドニ・
オリヴァー夫人が登場しています。
(ITVによるTVドラマ版ではミス・マープルが登場していましたが・・・・)

今回のBBC版は再びサラ・フェルプスの脚本によるもので、過去作品は、

「そして誰もいなくなった」(2015年) ※概略はこちら
「検察側の証人」(2016年) ※概略はこちら
「無実はさいなむ」(2018年)
「ABC殺人事件」(2018年)

に続く5作品目となります。



キャストは、
監督:レオノーラ・ロンズデール
脚本:サラ・フェルプス
出演:
ルーファス・シーウェル(「女王ヴィクトリア」のメルバーン子爵(首相)、他)
カヤ・スコデラリオ
リタ・トゥシンハム
バーティー・カーヴェル
ヘンリー・ロイド
ポピー・ギルバート








↓ trailerはこちら
https://youtu.be/L7fGhHzRGG4

サラ・フェルプス版は、過去4作品共原作と大きく異なる解釈で描かれているので、原作に親しん
だ者としてはどう反応して良いか迷うところもあります。
個人的な感想としては、あまり原作とかけ離れたビックリする結末やら、犯人迄変えてしまう様な
作品作りはあまり好ましく無い様な気もするのですが、これはこれ、と割り切って観れば又別の面
白さもあるのかなぁと・・・・。
むしろ原作を読んだ事が無い、あるいは内容を知らない方が楽しめるのかと思います。

兎に角、過去4作品共日本で放送されていますので、今回の作品も遠からず放送されるのではな
いかと思って居りますが、又吹き替え版が先になるのかしら? 何れにしても字幕版を待ちます。

ご参考までに、原作本もご紹介しておきます。

『蒼ざめた馬』(ハヤカワ文庫-クリスティー文庫)2004/8/18

アガサ・クリスティー(著)、高橋恭美子(翻訳)

 原作に関する記事はコチラをご参照下さい。




アガサ・クリスティー”Death on the Nile" Movie 2020 

2019-10-11 | アガサ・クリスティ
『ナイルに死す』 “Death on the Nile” 2020


2017年公開となった ケネス・ブラナーがエルキュール・ポアロを演じる「オリエント急行
殺人事件」に続く第二作 ”Death on the Nile” 「ナイルに死す」又は「ナイル殺人事件」
(どちらになるのか現時点で不明)の公開日がようやく発表されました。
以前何度かご紹介したのですが、公開が随分延期されましたね。

それと同時にキャストも発表されました。

製作 : リドリー・スコット、マーク・ゴードン、サイモン・キンバーグ、ケネス・ブラナー、
ジュディ・ホフランド
製作総指揮 : マシュー・ジェンキンス、ジェームズ・プリチャード


出演:
ケネス・ブラナー(『オリエント急行殺人事件』、『刑事バランダー』その他多数)
ガル・ガドット(『ワンダーウーマン』)
アーミー・ハマー
レティシア・ライト(『ブラック・パンサー』)
アーミー・ハマー(『君の名前で僕を読んで』)
アネット・ベニング(『キャプテン・マーベル』)
ローズ・レスリー(『ゲーム・オブ・スローンズ』)
その他
製作:20世紀フォックス映画、
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン

なかなか興味深いキャストです。

原作はアガサ・クリスティーが1937年発表した「ナイルに死す」”Death on the Nile”

この作品は過去にも映画化されており、以前もご紹介したので重複しますが念のため記しておき
ます。

1978年「ナイル殺人事件」のタイトルで公開されましたが、この時のキャストは超豪華版でした。
エルキュール・ポアロにはピーター・ユスティノフが扮していたのですが、原作のイメージとは
チョット違う様な気もしました。貫禄あり過ぎ? ポアロはもう少しアクが強いと思ったりしま
したが。



共演者は、
デヴィッド・ニーヴン
ベティー・デイヴィス
ジョン・フィンチ
オリヴィア・ハッセイ
ジョージ・ケネディー
アンジェラ・ランズベリー
マギー・スミス

今改めて見ても何と凄い豪華なキャストで贅沢な作品だったと驚きます。

又、TVのデヴィッド・スーシェ版でも製作されていました。


何でも直ぐに良く忘れる私ではありますが、流石にこの作品に限っては良く覚えています。
勿論原作本も読みましたし、映画もドラマも何度か観ています。
何しろエジプトの雰囲気たっぷりですから・・・・。
そして、この作品はナイル川クルーズの客船で起こる事件が描かれている訳ですが、当然ながら
エジプトの風景、史跡も盛りだくさんに描かれています。

何度か訪れたエジプトですが、ナイル川クルーズだけは経験がなく、時間の余裕だ出来たらプラ
イベートで是非乗りたいと思いつつ 遂に実現出来ずにいる状態です。
そんな訳で、せめて映像で楽しみたいと期待している所です。

今回の作品も当然ですがエジプトでの現地ロケも進んでいる様です。
どんな風に描かれているでしょう?

”ポアロ”といえば、デヴィッド・スーシェが一番原作の雰囲気に合っていると思っていたので 
サー・ケネスのポアロも「オリエント急行殺人事件」では、ポアロの雰囲気と違うかな?という
気もしたのですが、流石に素晴らしい役者さんです。 サー・ケネスのポアロも良いかな?と思
う様になってきました。

因みに、「ナイル川クルーズ」というのは、
一般的なのがアスワンとルクソール間を運航する3泊4日或は4泊5日のクルーズで昇りか下りがあ
ります。
そして、各所で停泊して遺跡を観光するという形になっていますね。
アスワンやルクソールの名所の河岸には何隻ものクルーズ船がつながって停泊していて壮観です。

↓ こちらはアスワンのOld Cataract Hotel

 
このホテルはアガサ・クリスティーがこの作品を執筆した時に滞在したと言われている由緒ある
雰囲気のある素敵なホテルですし、過去作品でも使われていたので今回も?と思っているので
すが・・・・(因みに、私も泊りました)

今回発表された公開日は
アメリカが2020年10月9日
日本公開も2020年秋とされています。1年後ですよ!
又日本タイトルも「ナイルに死す」になるのか「ナイル殺人事件」となるのか未定。

原作は、
『ナイルに死す」(ハヤカワ文庫ークリスティー文庫)2003/10/1

アガサ・クリスティー(著)、加島祥造(翻訳)





BBC版 『ABC殺人事件』BSプレミアムにて日本初放送

2019-05-03 | アガサ・クリスティ
“The ABC Murders” by Agatha Christie : BBC


以前書きましたこのドラマがようやく日本初放送となります(チョット先の事ですが)

BSプレミアムにて
7月13日(土)、7月20日(土)、7月27日(土)
午後5時~

このドラマのご紹介はチラッとこちら に書きました
※ BBCドラマ『ABC殺人事件』アガサ・クリスティー原作

又、原作を再読した感想チョコッはこちらに書きましたので、参考になれば幸いです。
※ アガサ・クリスティー『ABC殺人事件』 : 再読

但し、過去に何度も書きましたが、”サラ・フェルプス版”は下記過去作品がそれぞれ原作とは異
なる解釈で描かれていたので、今回の『ABC殺人事件』も多分原作通りでは無いだろうと想像し
ています。 

↓ trailerはこちらです。
https://youtu.be/3mGS-GCv-K8

↓ 番組公式ページはこちら
https://www4.nhk.or.jp/abcsatsujin/

又、この作品の初放送に先立ち、同じく過去のBBC版のクリスティー作品(サラ・フェルプス版)
の再放送もあるとの事。

「検察側の証人」”The Witness for the Prosecution”

6月8日(土)、6月15日(土)
午後5時~

「無実はさいなむ」”Ordeal by Inocence”


6月22日(土)、6月29日(土)、7月6日(土)
午後5時~

上記前作に関しても過去拙記事で触れていますのでよろしければご参照下さいませ。
 アガサ・クリスティー原作:BBCドラマ『検察側の証人』
 BBC『無実はさいなむ』アガサ・クリスティー原作:12月日本初放送

さて、ジョン・マルコヴィッチのポアロはどんな風になりますか・・・・。
そして、サラ・フェルプスはどの様な解釈で描いていますか・・・・。

又、今回の再放送には入っていない様ですが、同じくBBC版の『そして誰もいなくなった』に関しても下記に
BBCドラマ『そして誰もいなくなった』


今回BSプレミアムでの放送は吹き替え版の様ですので、こんなご紹介を書きながらワタクシ自身は多分他局で
の字幕版をジッと待つことになると思います。
何てったって、アクセントフェチの私としては マルコヴィッチのフランス語訛りの英語を聞いてみたいので(笑)
(trailerを聞いただけですが、余りフランス語訛りは強くない様な・・・・)






アガサ・クリスティー『ABC殺人事件』 : 再読

2019-04-15 | アガサ・クリスティ
”The ABC Murders” 

『ABC 殺人事件』 ハヤカワ文庫ークリスティー文庫:2003/11/11
アガサ・クリスティー(著)、堀内静子(翻訳)

内容(「BOOK」データベースより)
注意することだ―ポアロのもとに届けられた挑戦状。その予告通り、Aで始まる地名の町で、Aの
頭文字の老婆が殺された。現場には不気味にABC鉄道案内が残されていた。まもなく第二、第三
の挑戦状が届き、Bの地でBの頭文字の娘が、Cの地でCの頭文字の紳士が殺され…。新訳でおくる
著者全盛期の代表作。

この作品は1936年発表されたクリスティー18作目の長編であり、エルキュール・ポアロシリーズ
の長編としては11作目にあたる作品で、クリスティーの作品中でも知名度、評価とも高い代表作
の一つです。

BBC版のドラマを観る前に(とは言え日本での放送は未定ですが)久し振りに再読しておこうと思
い立ちました。
何時ものフレーズですが、むか~し、むかしに読んだ為細部は憶えていないんですね。
勿論、デヴィッド・スーシェ版のドラマも観ていますが、これとても大分前の事。
新たな気持ちで読みました。
この作品も長年にわたり何度も新翻訳で再販されていますが、今回はハヤカワ文庫版を読みました。

冒頭、『ABC殺人事件』に寄せてというタイトルで、アガサ・クリスティーの孫でありクリスティー
財団の理事を務めているマシュー・プリチャード氏のコメントが載せられています。
これも以前の版にあったのかどうか不明、霧の中ですが。

※ 一部ネタバレありますがお含みおき下さい。

この作品では、ポアロは公式には引退をしていながら時折興味を惹かれた事件に携わっている、
又ヘイスティングス大尉は南米に移住している為ポアロは一人住まいと言う時代です。
丁度所用で久々に英国に帰国したヘイスティングスの手記という形で物語が進行します。

ポアロの元にABCと名乗る謎の人物から届いた予告、挑戦状。
頭文字”A”で始まる場所で起こる”A”で始まる名前を持つ女性の殺害事件が起こり、遺体の傍に
はABC鉄道案内が置かれていた事を発端に、予告状は続き ”B”で始まる場所で頭文字 ”B”の名前
を持つ若い女性の殺害(又もやABC鉄道案内が置かれている)、そして、遂に”C”の場所で”C”
の頭文字を持つ名士の男性の殺害と続くことになる。

この作品では、ジャップ警部は直接捜査にあたらず、若い功名心に溢れたクローム警部がポアロ
と行動を共にするが、このクローム警部はポアロを快く思わず何事においても反発するなかなか
やりにくい相手となっている。

ポアロと久々に再会したヘイスティングスはポアロの髪の毛が以前より黒いし若返って見える事
に驚くと同時に、自分の髪が薄くなってきた事を気にかけている(ポアロはその謎を白状するんで
すが)そんなチョットした描写で年月の移り変わりを実感しつつ、久々にポアロと行動を共にする
事に喜びを感じて張り切っている様子が微笑ましいのです。
ポアロとの掛け合いや口論も含めお互いにかけがえのない、無くてはならない存在である事を再
認識出来ます。

ヘイスティングスの手記の合間に別人(カスト氏)の手記が挿入され、この三人称の視点での描
写は章を追うごとに変化するこの人物の心情や 追い詰められた絶望勘を醸し出しています。

被害者達の共通点も見いだせず次第に追い込まれ苛立つポアロ一行。
読み手としては、何度か挿入される語りの主人公カスト氏が犯人に違いないと先入観を持ちそう
だけど、そこはそれクリスティーですからそんな安易な手法は摂りませんわね。
AからC迄連続した殺人が”D”でパターンが崩れ、失敗したか?に思われるのですが、その事がポ
アロに真相へ導く確信を抱かせる事になり、そして、どんでん返し。
とは言え、色々勘ぐる傾向がある読者としては 途中から多分コイツが犯人だろうな・・・と思
われる人物の存在、言動は要注意です。

因みに、事件が起きる地名は、
”A” アンドーヴァー →”B” ベクスヒル→ ”C” チャールストン → ”D” ドンカスター 
又、カスト氏のフルネームは、アレクサンダー・ボナパート・カスト(ABC) でもあります。

そして、最後にカスト氏にも救いがあるのも後味の良い終わり方をしています。

法月綸太郎氏が 巻末の解説を書かれているのも贅沢で嬉しいところ。
氏も書かれている様に、今作はミッシング・リンク”失われた環”の代表作と言われ、又真の犯行
動機をさとられないよう、一連の無関係な被害者グループの中に、本当に殺したい相手を紛れ込
ませる、「ABC パターン」という着想はこの後の数々のミステリーにも応用されているのです。

久々に再読してみて、改めてこの作品がクリスティーの作品中でも1,2を争う名作であった事を
実感しました。

先日書きましたBBC版ジョン・マルコビッチによるポアロの「ABC殺人事件」はどの様に描かれて
いるのでしょうね。
※ 情報はこちらに → BBCドラマ『ABC殺人事件』アガサ・クリスティー原作

又、デヴィッド・スーシェ版も観直してみたいと思って居りますので、機会があれば再度触れて
みるつもりです。
(そう言えば、デヴィッド・スーシェ版でのカスト氏だけは妙に記憶、印象に残っています)






アガサ・クリスティー原作 『ねじれた家』 日本公開情報

2019-02-08 | アガサ・クリスティ
”The Crooked House”

2017年公開
Sony Pictures
配給:KADOKAWA

アガサ・クリスティーが自ら”最高傑作”と語った 『ねじれた家』(1949年発表) が70年の歳月
を経て2017年初の映画化され、日本初公開となります。
2019年4月19日(金)から

原題の”Crooked House”は作品中にも引用されているマザー・グースの童謡”There was a crooked
man”(ねじれた男がおりました)の最終節の歌詞 ”in a little crooked house”に由来する。
(Wikipediaから)

無一文から巨万の富を築いた大富豪の毒殺事件を巡り、容疑者となった”心のねじれた”一族が巻き
起こす人間模様を描くミステリー。
英国上流階級の生活、衣装、背景、インテリア等の見所も多い様ですね。

この作品のキャストは、

監督:ジル・パケ=ブレネール
脚本:ジュリアン・フェロウズ(『ダウントン・アビー』等)他
出演:
エディス・デ・ハヴィランド : グレン・クローズ
チャールズ・ヘイワード : マックス・アイアンズ
ブレンダ・レオニデス : クリシティーナ・ヘンドリックス
ソフィア・レオニデス : ステファニー・マルティニ
タヴァナー主任警部 : テレンス・スタンプ
マグダ・レオニデス : ジリアン・アンダーソン
クレメンシー・レオニデス : アマンダ・アビントン











↑ アマンダも出ています← サラッと流す。そっけないかしら?

テレンス・スタンプをはじめ、グレン・ローズ、ジリアン・アンダーソン、マックス・アイアンズ等々
とても贅沢な配役です。
因みに、テレンス・スタンプの姿を見たのは随分久し振りなのですが、すっかり落ち着いた老紳士に
なってますね。

何度も言い訳をしていますが、アガサ・クリスティーの作品は殆ど全部読んだのですが、何しろ大昔の
事とて、詳細を忘れている作品が多く、この作品もその一つです。 
なので、これを機会に又読み直してみる事にしようと思っているところです。

この数年アガサ・クリスティー作品が次々と映像化されています。
サラ・フェルプスが手掛けたBBC版のドラマ(『そして誰もいなくなった』、『検察側の証人』、『無実
はさいなむ』)が既に放送されていまして全部観ましたが、3作共にサラ・フェルプスの独自の解釈で原
作とは異なる描き方がされていました。
特に、『無実はさいなむ』はビックリでしたねぇ。
すべての登場人物のキャラクターの描き方が原作とは異なり、しかもドロドロ感が強く、挙句の果ては
犯人も原作とは違っています。 原作を読まずに観れば あれでれはあれで・・・という感じ方もある
かと思いますが、個人的には原作の方が好きでした。

次の作品である『ABC殺人事件』”The ABC Murders” は日本放送は未定ですが、これも気になるところ
です。 (情報はこちらに書きました)

映画版『ねじれた家』はどの様に描かれているのでしょうか?
是非観たい作品です。

↓ 日本語版予告編はこちら
https://youtu.be/V4_lEXb1K7w


原作翻訳本
「ねじれた家」(ハヤカワ文庫―クリスティー文庫) : 2004/6/14

アガサ・クリスティー(著)、田村 隆一(翻訳)

DVD(PAL版)

£5.99(現在価格、subject to change)





BBCドラマ『ABC殺人事件』アガサ・クリスティー原作

2018-12-22 | アガサ・クリスティ
“The ABC Murders”

BBC製作 全3 エピソード

BBCで製作されたアガサ・クリスティー原作の「ABC殺人事件」の情報です。


原作は1936年発表された アガサ・クリスティーの18作目の長編で、エルキュール・ポアロ
シリーズの長編11作目にあたる作品です。

製作は過去に放送された作品同様サラ・フェルプス。

既に製作放送されたサラ・フェルプス版のクリスティー作品は、
2015年:「そして誰もいなくなった」 ”And Then There Were None”
2016年:「検察側の証人」 ”The Witness for the Procecution"
2018年:「無実はさいなむ」 ”Ordeal by Inocence” ※ 12月24日 日本初放送予定
に続く4作目となる作品です。

そして、
過去の3作品は、ポアロもミス・マープルも登場しない作品でしたので、今回このシリーズとして
は初のポアロ物になります。

そして、今回初のポアロを演じるのがジョン・マルコビッチ。 

以外なキャスティングですね。
ポアロと言えば、何と言ってもドラマ版のデヴィッド・スーシェの印象が強く、個人的にも一番原作
のイメージに近いと思っているのですが、どんなポアロになるんでしょう。
外見もこれまでのポアロとは大分異なっている様です。
まず、
ポアロ独特の口髭に加え、アゴ髭も・・・。
そして白髪ヒゲ。
高級そうなスーツも過去作品と比べやや現代的な感じ。



過去ポアロを演じた俳優は、映画版ではアルバート・フィニー(「オリエント急行殺人事件」)、
ピーター・ユスティノフ(「ナイル殺人事件」)、そして昨年のケネス・ブラナー(「オリエント急行
殺人事件」)、いずれも英国人俳優(勿論、デヴィッド・スーシェも)でしたので、今回初めてジョン・
マルコヴィッチがアメリカ人としてポアロを演じる事になる訳ですね。
ポアロはフランス語訛り英語なのでアクセントの点は問題ないかと・・・・。

そして、

クローム警部を演じるのが ルーパート・グリント。
「ハリー・ポッター」シリーズのロン君ですよ。 もうビックリですねぇ。 あの子が(偉そう)警部
ですよッ! で、ヒゲですよッ!
年月を感じますねぇ。(自分が齢をとる筈だわ)

その他、
フランクリン・クラーク:アンドリュー・バガン(「ブロードチャーチ」等)
レディー・ハーマイオニー・クラーク:タラ・フィッツジェラルド(「ゲーム・オブ・スローンズ」等)


英国での放送は、2018年12月26日~ (日本での放送は未定)

サラ・フェルプス版クリスティー作品は、これ迄原作とは大きく異なる解釈で描かれていたので
今作もどの様な形になっているのか興味があります。

これ迄放送になった作品はこちらに書きました
☆ 「検察側の証人」
☆ 「そして誰もいなくなった」

尚、BBCは今後アガサ・クリスティー作品として、 「死が最後にやって来る」 ”Death Comes as the
End” 等を含む複数の作品をドラマ化予定しているとの事。

原作翻訳本

「ABC殺人事件」(ハヤカワ文庫ークリスティー文庫)2003/11/11
アガサ・クリスティー(著)、堀内 静子(翻訳)

※ 追記:放送前に再読しました
アガサ・クリスティー『ABC殺人事件』 : 再読







          ~ ✩ ~ ✩ ~ ✩ ~ ✩ ~ ✩ ~




          
     May all the joys of Christmas fill your heart throughout the New Year !







BBC『無実はさいなむ』アガサ・クリスティー原作:12月日本初放送

2018-10-18 | アガサ・クリスティ
“Ordeal by Inocence”

BBC One 2018 Apr.BBC One にて初放送
3 episodes

BBC One製作のアガサ・クリスティー原作の「無実はさいなむ」がAXNミステリーにて12月
24日(月)
に日本初放送となるそうです(字幕版の様です←一安心)

本作は、2015年に「そして誰もいなくなった」 ”And There Were None", 2016年「検察側の証
人」に続きサラ・フェルプスが脚本を担当。 2017年年末にオン・エア予定であったが、出演
者の1人のスキャンダルが原因で配役を替え再撮影となり、放送日が2018年4月に延期された
もの。

キャストは、
監督:サンドラ・ゴールドパッカー
脚本:サラ・フェルプス
原作:アガサ・クリスティー


出演:
ビル・ナイ
アナ・チャンセラー
エレノア・トムリンソン
クリスチャン・クック
アンソニー・ボイル
モーヴェン・クリスティー
アリス・イブ
マシュー・グード
エレノア・トムリンソン
エラ・パーネル


レオ・アーガイルを演じるビル・ナイは「パイレーツ・オブ・カリビアン」、「ラブ・アクチュア
リー」等多くの作品に出演してる経験豊かな俳優さん。
アナ・チャンセラーは、「ダウントン・アビー」、「ニュー・ブラッド」等
マシュー・グードは、「イミテーション・ゲーム」、「ダウントン・アビー」、「高慢と偏見そし
て殺人」等。そして2018年9月に放送開始された”Discovery of Witches”ではバンパイアを演じて
いるんです。このドラマ興味があって観たいな~と思っていたのですが日本での放送はどうなり
ますか・・・・。


原作は1958年に発表された「無実はさいなむ」、1984年にはドナルド・サザーランド主演で映画化
(『ドーバー海峡殺人事件』←この邦題も何だか・・・)。

この作品の概要は :
時は1954年のクリスマスイヴ。資産家レイチェル・アーガイルが何者かに殺害された。現場に残さ
れた指紋から、彼女の養子の一人ジャックが逮捕される。彼女と夫の間には5人の養子がい
た。ジャックは無実を訴え続けるが、獄中死してしまう...。そして事件から18か月後、アーサー・
カルガリー博士と名乗る男が現れ、ジャックのアリバイを証明できる話す。ジャックは本当に無実
なのか? 彼でなければ、レイチェルを殺したのはいったい誰なのか・・・.。・・・
(海外ドラマNAVIより)

既に放送されていた「そして誰もいなくなった」、「検察側の証人」共に原作とは異なる解釈で描か
れていたので、今回の「無実はさいなむ」も同様の描き方がされているのではないかと予想してしま
うのですが・・・。

過去に何度も良い訳をしていますが、アガサ・クリスティーの作品は大昔学生時代に読んだので細部
は全て霧の中。
なので、前の2作品も放送前に原作を読み直しました。
今回も放送迄に大分時間がありますので原作を再読する時間はたっぷりありますよ。

原作本は、
『無実はさいなむ』ハヤカワ文庫(クリスティー文庫)2004/7/1

アガサ・クリスティー(著)、小笠原 豊樹(翻訳)

又、AXNミステリーではこのドラマの放送に合わせて 「そして誰もいなくなった」、「検察側の証人」
の再放送及び他クリスティー作品の再放送も予定している様です。
詳しい日程は後日ご案内出来れば・・・と思っています。

尚、過去に放送になった2作品に関してはザッと書きましたので、拙記事をよろしければどーぞ。

☆ 「検察側の証人」
☆ 「そして誰もいなくなった」







BBCドラマ『そして誰もいなくなった』

2018-01-06 | アガサ・クリスティ
BBC ”And Then There Were None”


英国BBCにより制作され、2016年に放送されたドラマです。 (3エピソード)

数か月前にBSで放送された時、吹き替え版であった為途中で脱落しまして 字幕版を待っていた
のですが 今回AXNミステリーでもやはり吹き替え版で(残念!)、仕方なく(暴言)吹き替え版
で視聴しました。

原作は1939年発行された アガサ・クリスティーによる作品
クローズド・サークル、童謡による見立て殺人の代表作と言われ、彼女の作品の中でも最も評価
人気共に高い作品の1つとされています。

過去にも何度か映画化、ドラマ化された作品ですが、他の作品も観た様な曖昧な記憶があるものの
すっかり忘却の彼方。 原作も大昔読んだきりだったので、今回再読しました。

原作を読んでいない方、そして、これからドラマをご覧になる方の為になるべくネタバレしない様
に書くつもりですが・・・・。

脚本 : サラ・フェルプス
演出 : クレイグ・ヴィヴェイロス
原作 : アガサ・クリスティー

出演
アンソニー・マーストン : ダグラス・ブース
ロレンス・ウォーグレイヴ : チャールズ・ダンス
ヴェラ・クレイソーン : メイヴ・ダーモディー
ウィリアム・ブロア : バーン・ゴーマン
エセル・ロジャーズ : アンナ・マックスウェル・マーティン
ジョン・マッカーサー : サム・ニール
エミリー・ブレント : ミランダ・リチャードソン
エドワード・アームストロング : トビー・スティーブンス
トマス・ロジャーズ : ノア・テイラー
フィリップ・ロンバード : エイダン・ターナー
派手では無いですが豪華なキャストです。

舞台は原作と同じ1939年の設定です。
イギリス、デヴォン州にある孤島 ”兵隊島”にある屋敷に招待された男女8人。 そこで執事の
ロジャース夫妻に迎えられる。 全員お互いに面識はなく、皆主人のオーウェン夫妻からの招待
状により集まって来た人々。



招かれた人々は招待者のオーウェン夫妻を直接知っている者はおらず、又当の招待者も後から来
るとの事で不在。

高名な判事であるウォーグレイヴ、家庭教師のヴェラ、元陸軍大佐のロンバード、皮肉屋の老婦人
エミリー、退役した将軍マッカーサー、医師のアームストロング、遊び人のマーストン、元警部
のブロア。そして同じく雇われただけの執事ロジャースとその妻で料理人のエセルの10人。

招待された理由は全員異なり、何となく不審に思いながらも島に集まった8人(プラス2人)

招待者の各部屋にはわらべ歌「10人の兵隊」の詩が飾られている。
そして食卓には10体の人形が置かれていた。 (この人形像は他作品ではインディアン人形
だったり、兵隊人形だったりした記憶があるのですが、この作品の像はデフォルメされた人形像)


初日の夕食後突然スピーカーからオーウェン氏らしき人物の声が流され 集まった10人がそれ
ぞれ過去に犯した罪が法で裁かれず過ごしている事を糾弾する。
当然ながら全員動揺しつつ その言葉を否定したり、言い訳したり認めようとしないが、それ
ぞれは心の奥底に潜んでいた過去の罪の記憶にさいなまれ始める。

そして、その晩アンソニー・マーストンが飲み物を飲んだ食後急死する。
死因が毒殺であると判明した直後、例の人形が1つ減って9個になっていた。
その後、ロジャースの妻が、そして続いて1人づつ殺されていく。
そして、その死に方は わらべ歌「10人の兵隊さん」になぞらえられ、そして、飾られていた人形
の数が1つづつ減っていく。

「10人の兵隊さん」”Ten Little Solgier Boys” の内容は :

Ten little Soldier boys went out to dine;
One choked his little self and then there were nine.  
10人の兵士が食事に行った。1人がのどを詰まらせて9人になった

Nine little Soldier boys sat up very late;
One overslept himself and then there were eight.
9人の兵士が夜更かしをした。1人が寝坊をして8人になった。

Eight little Soldier boys traveling in Devon ;
One said he’d stay there and then there were seven.  
8人の兵士がデヴォンを旅した。1人がそこに残り7人になった。

Seven little Soldier boys chopping up sticks;
One chopped himself in halves and then there were six.  
7人の兵士がまき割をした。1人が自分を真っ二つにして6人になった。

Six little Soldier boys playing with a hive;
A bumblebee stung one and then there were five.  
6人の兵士がハチの巣で遊んだ。 1人が蜂に刺されて5人になった。

Five little Soldier boys going in for law;
One got into Chancery and then there were four.
5人の兵士が法律を志した。1人が大法官府に入って4人になった。

Four little Soldier boys going out to sea;。
A red herring swallowed one and then there were three.
4人の兵士が海に出掛けた。1人が燻製のニシンに飲まれて3人になった。

Three little Soldier boys walking in the zoo;
A big bear hugged one and then there were two.
3人の兵士が動物園を歩いた。1人が大きなクマに抱きしめられて2人になった。

Two little Soldier boys playing in the sun;
One got frizzled up and then there was One.
2人の兵士が日光浴をしていた。 1人が焼け焦げて1人になった。

One little Soldier boy left all alone;
He went out and hanged himself and then there were none.
1人の兵士があとに残された。自分で首を括って、そして誰もいなくなった

招待者の名前、”O.N.Owen” は入れ替えると ”Unknown” (誰でもない)と気付き オーウェンが実在
しない事が判明する。 では、この招待者は誰なのか? 
屋敷の中には他に誰もいない筈、或は殺人鬼が何処かに隠れているのではない、それとも招かれた招
待客の1人が犯人なのではないか・・・・。

外界から閉ざされた孤島から脱出する事も出来ない状況の中、残された人間達は追い詰められ、お互
いに不信感を抱き疑い、そんな極限状態の中生き延びようと必死になる。
又、それぞれが犯した犯罪の記憶が映像可され挿入されるので それぞれの状況が分かりやすく丁寧
に描かれている。

3話構成ですが、最初の2人の犠牲者が出るまでは1話使っていますが、その後ピッチが上がり次第に
緊迫感が増す構成になっている様で原作を知っていてもハラハラ感が募って来ます。

後半はヴェラに視点が充てられていて 記憶のフラッシュ・バックシーンが多く入れられているので 
彼女が糾弾されていた犯行の経緯が丁寧に描かれています。
そして、次第に追い詰められて精神的に究極状態になって来たヴェラの表情がどんどん変化してきて、
髪を振り乱し、顔色が悪くなり、目の下にクマが出て狂気をはらんだ迫真の演技が際立ってきます。

全体を通してかなり原作に近い構成になっていると思いますが、ただラストだけが原作と大きく違っ
ていて 最後の1人の前に犯人が姿を現し 何故自分がこの様な犯行を決行するに至ったかを話す作
り方になっていて、これは評価が分かれる部分かもしれませんが、犯人の心情が分かりやすく描かれ
ている様にも思えます。
(原作では犯人が経緯を書き残したボトルレターを海に捨て、偶然拾った刑事達が真相を知るという
経緯だったと思います。) 

経験豊かな出演者達の演技に惹きつけられ、中でもウォーグレイブ判事を演じるチャールズ・ダンス
はあちこちでお見かけするんですけど、何と言っても”ゲーム・オブ・スローンズ”のタイウィン・
ラニスタ―ですよね。 冷徹な眼差しや傲慢な雰囲気を醸し出すのがお上手(偉そう)で強烈な印
象で 存在感がある俳優さんだと思います。

それと、マッカーサー元将軍のサム・ニールも懐かしかったし、ブロア元刑事のバーン・ゴーマンは
”トーチ・ウッド”で初めて知って以来随分アチコチで見かけます。”ゲーム・オブ・スローンズや、
”ドクター・モーガンの事件簿”等々にも。

この作品で目立っちゃったのは、ロンバートを演じたエイダン・ターナー。 もう無駄にセクシーさ
全開でね。
腰にタオルのシーンは、オイオイ、危ないじゃないか?とついつい気になってしまって・・・・。
↓ これですもん!

(これは、ロンバートが持ち込んだ銃が行方不明になった為、全員の部屋の捜査と身体検査をする為
にこんな事になっているんです)
このエイダン君、私は「ビーイング・ヒューマン」の記憶が大きいのですが、「ホビット」にも出演
していました。
2016年度の「最もセクシーな男性」の1位だったそうで、なにやら007の次期ボンド候補の1人にもなって
いるとか・・・。 
あ、話がそれました。

このドラマは英国では”R-15 “の指定だそうです。
と云うのも、あまり直接的では無いもののラブシーンがアリの、同性愛に関して触れるセリフはアリの、
コカイン(?)らしき薬物で乱痴気パーティーはするは、言葉が汚いの 等々原作からの改変に関して
本国では「BBCはアガサ・クリスティーに対して何てことやらかしたんだ!」 みたいな見解もあった
様で。

↓ デイリー・メイル・オンライン記事
http://www.dailymail.co.uk/tvshowbiz/article-3357749/What-BBC-Agatha-Christie.html


そんなこんなはありますが、実力のある俳優陣の演技と共に、非常に丁寧に作られている作品であった
と感じます。

ところで、個人的に拘っていた字幕版ですが、下記の予定で再放送になります。
AXNミステリーチャンネルにて、
1月8日(月)8:00pm ~(オリジナルノーカット版、字幕版)

↓ 公式案内はこちら
https://www.mystery.co.jp/programs/and_then_there_were_none

もう一度観なくちゃ!


こちらが原作翻訳本

(ハヤカワ文庫 -クリスティー文庫)2010年版

こちらが既に発売されているDVD(NHKエンタープライズ)




ところで、
余談ですが、先日(1月3日) 「夜の来訪者」の再放送があり、偶然再試聴したのですが そのドラマで
高慢な母親を演じていたのが この作品にも出演している ミランダ・リチャードソンでした。
全く記憶に残っていないボケでした。
実は、番組表を全くチェックしていなかった為 このドラマの再放送も全く気付いていなかったのですが、
当日たまたま「アクセスランキング」を覗いたところ、お昼ごろからこのドラマについて書いた記事
(1年半程前ですが)の閲覧数が急激に増えたのです。
もしや?と思いAXNミステリーを見たら やはり再放送になってて、丁度始まったところでしたので久々
にこのドラマを再試聴する事が出来ました。

皆様の反応の速さに又もやビックリすると共に、ご訪問頂いたお蔭でこのドラマに再度巡り合える機会を
頂いた様で、皆様に感謝しております。
有難うございました。


アガサ・クリスティー原作:BBCドラマ『検察側の証人』

2017-12-28 | アガサ・クリスティ
BBC  ”The Witness for the Prosecution”

2016年12月英国初放送 
エピソード1&2

アガサ・クリスティーによる短編小説、それをもとに書かれた戯曲で、1925年発表された後、1933
年書籍として刊行され、後に1953年に戯曲が初演された作品です。

この作品もかなり大昔に読んだのですが、最後のどんでん返しでビックリさせられた記憶がある
ものの細部は何時もの通り霧の彼方なので 今回のドラマ放送を前に再読しました。

又、この作品は1952年ビリー・ワイルダー監督により映画化されており、日本語タイトルは『情婦』。
(この日本タイトルもどうだかなぁと思うのですが・・・)
出演は、タイロン・パワー、マリーネ・ディートリッヒ。 (さすがにこの映画は観ていません)
日本でもこの原作をもとにリメイクされた様ですが、これも観ておりません。

今回のBBC版ドラマのキャストは :
監督 : ジュリアン・ジャロルド
脚本・制作総指揮 : サラ・フェルプス他
原作 : アガサ・クリスティー

出演
レナード・ヴォール : ビリー・ハウル
エミリー・フレンチ : キム・キャトラル
ジョン・メイヒュー : トビー・ジョーンズ
チャールズ・カーター卿 : ダヴィッド・ヘイグ
ロメイン・ハイルガー : アンドレア・ライズブロー
ジャネット・マクリンタイア : モニカ・ドラン

「シャーロック」S4の「臥せる探偵」”The Lying Detective”でシャーロックの宿敵カルバートン・スミス
を演じたトビー・ジョーンズが弁護人のジョン・メイヒューを演じています。
脚本のサラ・フェルプスは、同じくBBCで2015年に放送された「そして誰もいなくなった」の脚本も手掛
けています。
(「そして誰もいなくなった」も後日機会があれば触れてみるつもりです)

原作は、金持ちの初老(中年?)の夫人を殺害した容疑で起訴された青年(ヴォール)とその妻(ロメイン)、
そしてヴォールの無罪を信じる弁護士を中心に展開する法廷サスペンス戯曲です。 かなり短い作品ですので
2エピソードのドラマにするにはかなりの肉付けと事件の背景が追加されていると思ってはいました。

が・・・・、
ドラマは弁護士のメイヒューにフォーカスが当てられていると感じます。


戦争から帰還し 仕事も失う状況にあるヴォールがフレンチ未亡人に見込まれ 屋敷に入り浸る様になる。
そのフレンチがある日殺害され、メイドの証言によりヴォールが起訴されるが、ヴォールの妻ロメインが彼
のアリバイを証明する。

無実を訴えるヴォールだが、フレンチ夫人は莫大な遺産をヴォール宛てに送る遺言を残しており、ヴォール
の殺意が疑われる中 弁護士のメイヒューは彼の無実を信じ それを裏付けるための調査を開始する。

妻のロメインが彼のアリバイを証明するも、妻の証言はアリバイとしては認定されにくく、又ロメインは
オーストリア人でショーガールをしているという立場で裁判での印象は良くないだろうと、メイヒューは
ロメインの周辺も調査し始めるうち、ロメインにも感情移入をしてしまう様に見受けられる。

メイヒューは若い息子を戦地に送り、戦死させてしまったことにより罪の意識にさいなまれ、又その事に
より妻との関係も拗れ 冷たい夫婦関係を送っている。
又、自分の健康状態の不安も抱える中、ヴォールに自分の息子を投影させて 何が何でも彼の無実を証明
しようと奔走する。


裁判が始まり ロメインも証人としてヴォールのアリバイを証言する場に立つが、突如これまでの証言を
覆しレナードのアリバイを否定する。
驚愕するレナード、メイヒュー・・・・・

そして・・・・・

なのですが、
この先ネタバレになりますので書かずに置きますが、、
原作でも 良く知られた2転、3転のどんでん返しがあって、最後の最後で衝撃の展開になるのですが、
このドラマでは終盤オリジナル部分でさらなるどんでん返しが用意されており、 予想もしなかった驚
愕の展開となります。
(そんなに どんでん返さなくても・・・と思ってしまう程)
これにはビックリさせられました。

原作では、余りにも夫を愛した女性が 愛ゆえに犯した罪と 受けた裏切りに翻弄される哀れさ等がテー
マだと感じて、裁判の情景、時にユーモラスに交える会話も楽しめる短いながらも流石クリスティーと
驚かされる作品だと思っていたのですが、今回のドラマは初めにも書いた様に メイニューに重点が置
かれていた為 翻弄されるのがメイヒューであったという事。 その為原作の様なロメインの心情、行
動がぼやけた感もあります。

原作を読まずに、或は読んでも原作には拘らないのであれば、このドラマ自体は良く色付けられた法廷
ミステリードラマとして最後まで引っ張られる内容になっているのかとはおもうのですが、
全く個人的な感想なので反論もあるかも知れませんが、ワタクシは原作の方が良かったと感じました。

尚、このドラマは AXNミステリーのオンデマンドで 12月26日から1月20日迄配信されていますので
機会があればご覧頂ければ と思います。



こちらが原作翻訳本です。
「検察側の証人」 ハヤカワ文庫―クリスティー文庫 2004年



1952年公開 ビリー・ワイルダー監督による映画版「情婦」DVDです


これを機会にビリー・ワイルダー版の「情婦」も観てみたいと思ってるところ。