The Game is Afoot

ミステリ関連を中心に 海外ドラマ、映画、小説等々思いつくまま書いています。

グラナダ版 『マスグレーブ家の儀式書』 : (4)

2017-08-31 |  ∟グラナダ版SH
グラナダ版 ”The Musgrave Ritual ”(4)

(1986年) The Return of Sherlock Holmes : S3E3 

 

・・・・・(4) 最後です



ブラントンの行動を推理する事により事件を再構築するホームズは、
ブラントンの知的水準は最高レベルであり、謎を解いてここを探り当てた。 自分のスカーフを
結び付け石の蓋を持ち上げようとしたが1人では持ち上げられない。 助けが必要だが外部の人間
は信用出来ない。 となればレイチェルだ。 休んでいたレイチェルに甘い言葉で宝と結婚をほの
めかし助けを求める。


レイチェルを地下に伴い、ブラントンが石の蓋を持ち上げた隙に薪でつっかえ棒をする様に指示
する。 辛うじて石の蓋を支えた後ブラントンが下に降り宝の入れ物らしき箱を見つける。
「200年眠っていた宝だ」と興奮するブラントンが開けた箱の中にはガラクタの様な金属片が入って
いた。 これを布袋に入れレイチェルに手渡したが ブラントンの事を信用していなかったレイチェ
ルは自分を裏切ってジャネットと逃げるのだろうと復讐の気持ちが再燃し錯乱し始める。 ブラン
トンが上に上がろうとした時に重みに耐えかねたつっかえ棒が折れ蓋が落ち中に閉じ込められてしまう。
中から助けを求めるブラントンの叫びを後に布袋を手に自分の部屋に戻って取り乱すレイチェル。
ホームズの推理を聞いたワトソンは、それで翌朝の彼女の態度の説明が出来ると言います。


推理を聞かせたホームズが穴の中の古びた箱の中から取り出してワトソンとマスグレーブに見せたの
はチャールズ1世のコインでした。
ホームズは池の中から見つかった袋の中には他にもある筈だと言います。

屋敷に戻り池から見つかった布袋の中身を調べる3人。

ホームズが「諸君」と言って見せたのは宝石らしきもの。 そしてマスグレーブに確認します。

先祖のサー・ラルフは騎士だったね?と聞くと、「チャールズ2世が亡命中 側近だった」。
ホームズは満足そうに「それで全てが繋がった。 君主がその座を追われたらどうする?」 そして、
貴重な宝を復位するまで何処かに隠して置く。と言うホームズ。
金属片を示しながら、「金だ。マスグレーブ」、そして、ワトソンに「その手にあるのは金銭的価値
があるばかりで無く歴史的な価値のあるものだ。」そしてサッパリ分からない・・・の2人に向かって
金属片を組み立てながら 「これこそ古代イングランド王の王冠の一部だ」
信じようとしないマスグレーブに、儀式書に書かれていた言葉を思い出させます。


”Whose was it ?”(それを所有する者は?)、”His who is gone”(去りし人のものなり)、つまり、
それは処刑されたチャールズ1世。
”And then who shall have it ?”(それはなん人のものか?)、”He who will come”(やがて来る
べき人のものなり)、つまり出現を待たれていたチャールズ2世。
「この潰れてバラバラの王冠が昔スチュアート王家の頭を飾っていたのだ」と説明するホームズ。


しかし何故それが自分の家にあるのか問うマスグレーブに、チャールズ1世の処刑時に王冠は分解されて
100ギニーで売りに出されそれ以来行方不明になっていたと。「今迄ね」とホームズ。

何故チャールズ2世はその王冠を奪回しなかったんだろうと言うマスグレーブに、それは永遠の謎だ。
というホームズ。


過去のイメージシーン


馬上の騎士が王冠の入った袋を投げ ブラントンのご先祖さまが胸に十字を切りながら受け取った。

マスグレーブの先祖は何らかの理由によりその意味を伝えずに儀式書を子孫に遺した。
父から子へ伝えられ、ある男が謎を解き宝を手に入れたが命を落とした。


事件を解決してワトソンと共に馬車でマスグレーブ邸を去るホームズ。
ワトソンは、「つっかえ棒が外れたのは偶然だったのだろうか」と言うと、ホームズは「秘密を胸にし
まったまま遠くへ去ったのだろう」と。

しかし、その後、ジャネットが池に浮かぶレイチェルを見つけます。


(このシーンはグラナダ版オリジナル部分ですが、恋敵の目の前に浮かび上がるレイチェルの死体は
なかなか強烈で 悲惨な結末を示しては居るものの、幻想的で美しささえ感じさせられる、まるで
ミレーの「オフィーリア」を連想させる印象的で素晴らしい演出だと思えます)

↑ こちらがミレーの”オフィーリア”
このオチは原作を超えた見事な脚色だと思わせられます。 
(因みにこの最後のショットもNHK版ではカットされていたとか・・・)


このエピソードは冒頭にも書きましたが、正典では若き日のホームズの経験をワトソンに語って聞かせ
る形式になっていたものを、時制を変えワトソンを伴い一緒に行動する形に変えられています。
これを見て、改めてワトソンの役割が重要であるかを再確認させられます。
如何にホームズが魅力的なキャラクターであっても、1人で捜査する昔語りは今ひとつ盛り上がれない
と言う感があり、あ、尤も正典ではマスグレーブがワトソン的な役割は担っていましがが・・・
今回はサー・レジナルドがワトソンにくっついていて(笑)何時もツーショット! ”ワトソンその2”
の様な役割を果たしています。 
この事からも、このエピソードが シャーロック・ホームズ&ワトソンX2の構造になっていると感じます。
そして、何といっても サー・レジナルド・マスグレーブです。
正典で旧家の鼻持ちならない跡取り貴族でホームズも辛らつな評価をしていますが(グラナダ版でも冒頭
結構ぼろくそに評してます)、このエピソードを見る限り マスグレーブを演じたマイケル・カルバーが
このエピソードの魅力を更に引き出している様に感じます。
旧家の御曹司でどこかノンビリ、おっとりした雰囲気でいかにも先祖代々の宝物にも無頓着に過ごして
きたか、そして切れ者の執事にしてやられそうになっていたお殿様振りが良い雰囲気です。
冒頭ホームズが酷評していた様な「プライドが高く皆から敬遠されていた・・・とか、封建時代の遺物
(この点は当たらずとも遠からずって感もあるが)」高慢な姿は余り感じられなかったのは ホームズ
が抱いていた学生時代の印象が中年になっていい齢を重ねて変わって来たと言う解釈になるのか?
兎に角ホームズとワトソンの後を一生懸命追っている姿が微笑ましい。
何時もワトソンにぴったりくっついているのも可愛いい(笑)

それとは別に、ブラントンは恐るべし!
ホームズと同じレベルの知力を持ち、ホームズに先んじて謎を解き宝迄到達していたにも拘らず、もし
レイチェルの復讐心、裏切りが無ければ そのままマスグレーブ殿様は家宝を持ち逃げされてしまった
訳ですからねぇ。 レイチェルの性格を甘くみていたし、女癖の悪さが身を滅ぼしてしまった訳で・・・・。

そして、この作品の面白さを増しているのは、チャールズ1世からチャールズ2世に至る清教徒革命と王政
復古という歴史的背景に、それを伝える古文書の謎が古い邸宅を舞台に展開されるスケールの大きさ。
単なる謎解きだけでは無く味わい深い作品になっていると感じます。
BBC版の「最後の事件」ではシャーロックが古いお墓の数字からユーロスの歌の解明をチャチャっとして
しまって説得力がなかったのですが、この作品での儀式書解明は正典とは一部変更されていたとはいえ
ホームズの古文書の謎解きもテンポ良く、それなりに説得力があった様に感じて楽しませてくれます。


ところで、ドラマ化には含まれませんでしたが、正典の冒頭でワトソンの語りの中で、ホームズが如何に
一緒に住みにくい同居人であるかを愚痴っているのですが(笑)、この中で、

曰く、
ホームズの思考様式については 非常に几帳面で体系的な人物であり、服装もきちんとしている事を好ん
だが、個人的な習慣は最もだらしがない人間であり同居人を落ち着かない気分にさせる。
そして、行動は、
⇒ 石炭入れに葉巻を入れる
⇒ ペルシャスリッパの爪先にタバコを入れる(★)
⇒ 返事をしていない手紙をジャックナイフでマントルピースの真ん中に突き刺す(★)
⇒ 肘掛椅子に座り反対側の壁に銃弾100個を使ってV.R.(Victoria Regina=ヴィクトリア女王のイニシャル)
を文字を撃ち込む(★)
(※ (★)はBBC版にも踏襲されています。 ただし、銃で壁を撃った・・・はBBC版ではスマイルマークに)

そして、短期的なエネルギーの爆発は彼が著しい快挙を遂げた後 その反動としての倦怠が続き、書籍と
ヴァイオリンを回りに置いて横になっているし、ソファーとテーブルの間を移動するとき以外は殆ど動か
ず、書類は溜まりに溜まり部屋の四隅に積みあがって来る。
そこで、グラナダ版冒頭でのホームズのセリフ→「君が何時も部屋を片付けろと小うるさく言うからだ・・・
にリンクしてくる訳です。
ホームズとワトソンの正確や2人の生活ぶりがさり気なく描かれています。

以上、この作品「マスグレーブ家の儀式書」から かなり多くの部分がBBC版シャーロックS4E3のみならず、
これまでのシリーズの中にも数多く取り入れられている事に改めて気付かされました。
S4E4とは異なり(って言いたくは無いんですが)、この作品(正典原作も)はとても好きだし面白く味わい
深い作品でした。





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『オスロ警察殺人捜査課 特別版 アイム・トラベリング・アローン』

2017-08-27 | ブックレヴュー&情報

『オスロ警察殺人捜査課 特別班 アイム・トラベリング・アローン』 :”I'm Traveling Alone”
サムエル・ビョルク(著)、中谷 友紀子(翻訳)

ディスカヴァー・トゥエンティワン出版 (2016/12/23)
A六版(512P) ソフトカバー

『北欧発!世界中が震撼!北欧ベストセラーのサスペンス・スリラー、待望の日本上陸。』
(↑ 内容紹介より)

『てんとう虫、てんとう虫
早くお帰り
お家が火事で、
子どもたちは死んじゃった――』
↑ 内容(「BOOK」 データベースより

オスロの山中で見つかった六歳の少女の首吊り遺体。首には「ひとり旅をしています」のタグがか
けられていた。鷲のタトゥーの男、謎の宗教団体、忌まわしい過去―。 それぞれの物語が複雑に
絡み合い、ひとつにつながっていく。 北欧ベストセラーのサスペンス・スリラー。

以前ご紹介しましたが 近年北欧発のドラマ、書籍がかなり増えてきて人気も上昇しているようです。
特に意図していた訳ではないのですが、思い返してみても最近読んだ何冊かも偶然北欧の作家さん
の作品でした。

この作品は 特にレヴュー、抄評、内容も調べず何気なく手に取りました。
そして、この著者の作品も始めて読んだ訳ですが、多彩な才能を持つ方の様で エンタメ性も感
じられます。
500ページを超す分厚さ(二段組)なので 果たして読み切れるだろうかと一瞬不安を感じたので
すが、読み始めた途端一気に引き込まれましたね。 特に後半からは 寝なきゃ!と思いつつ途中
で止められず睡眠時間が足りなくなりましたです。 
英語タイトル”I'm Traveling Alone”「ひとり旅しています」は猟奇的な殺人事件の被害者と
なった少女の首に下げられていた航空会社のタグ。そしてその少女は人形の様なドレスを着せられ
ていた。 果たしてこれらの事が何を意味するのか? これらが事件の特徴であり手掛かりの1つ
になります。

何より主人公達のキャラクターが魅力的で、
元殺人捜査課に所属していた敏腕刑事であったミア・クリューゲル。
彼女はある事件を機に職を離れ心を病み 孤島に1人暮らしをしながら自分の死だけを考えながら
日々を過ごしている。 家族の死、一身同体であった双子の姉の死というトラウマに取りつかれ
自分の自殺する日をカウントダウンしながら酒と薬物のみで日々をすごしていた。
又、彼女の上司であったホールゲル・ムンクは数学オタクでこよなくタバコを愛する初老の優秀な
刑事。 ミアが退職したきっかけになった同じ事件で左遷されていたが、少女の殺人事件が起こり
これが特別な事件と判断した上層部の意向で殺人捜査課を再興、ミアの特殊な腕と判断力が必要と
判断したムンクが彼女を呼び戻し復帰させる。

全てを放棄して生きる希望も失い過去を引きずりながらも ミアは特殊な判断力や推理で事件を
追ううちに次第に仕事に没頭し始める。 そんなミアを全面的に信頼しているボスのムンクも妻
と別れ孫とのふれあいだけを楽しみにしている 介護施設に居る母親との関係等で悩みも多いな
がら 経験豊かなベテラン刑事。 硬軟兼ね備え部下たちを巧みに扱う魅力あるボス像を持って
いる。
ことろで、このミアはキャロル・オコンネル作品のヒロインであるキャシー・マロリーを彷彿と
させるキャラクターの様に感じたし、ミアとムンクの関係もマロリーと相棒のライカ―との関係
を思い起こさせられる。ただ、ミアもマロリー程のクールさには到底届かないかな?
因みに、キャシー・マロリー シリーズの最新版「ルート66」も先日読み終えましたので、これ
に関しても機会があれば残して置きたいと思っています。が・・・どうなりますやら(汗)

チームメンバーも個性豊かで新人ハッカーの参加等もありながらそれぞれがボスに全面的な信頼
を置き捜査に立ち向かっていく。 
猟奇的な少女連続殺人事件が 過去の乳児誘拐事件、新興宗教等と絡み合いながら1つの事件に
結びついて本筋にたどり着く過程が興味を惹き付けていく。

北欧の独特の空気感を漂わせる背景、イメージをくっきり浮かび上がらせる登場人物の丁寧な描
写、台詞と独白は素晴らしく テンポよく一気に最後まで読ませるストーリーテリング、スリリング
な展開は最後まで飽きる事が無く読者を引っ張り込みます。
特にこの作品の場合、訳者の技量によるものも大きい様に感じます。

実は読みながら途中で犯人はこの人では?と想像出来たのですが(ミステリー中毒の弊害か)それ
でありながら簡単には終わらない犯人の動機の複雑さ、心の闇に迫るミアが追い詰める捜査はハラ
ハラさせられます。

周囲に心を閉ざしたミアと彼女が父親の様に信頼するムンクとの親子の様な関係が実に魅力的で
2作目も出ている様なので翻訳を楽しみに待ちたいと思います。










グラナダ版 『マスグレーブ家の儀式書』 : (3)

2017-08-23 |  ∟グラナダ版SH
グラナダ版 ”The Musgrave Ritual ”(3)

(1986年) The Return of Sherlock Holmes : S3E3 : 



・・・・・続きです(3)


再び庭に出る3人。
(謎解きモード突入となったホームズは、あのブランケット掛けていません。 それにしても
今回のマフラーがえらい長いんです(笑)
ホームズは元この場所にあった樫の木の高さはどの位であったかをマスグレーブに尋ねると、
64フィート(19.5メートル)あった、子供の頃家庭教師に三角方の勉強の為計らされたのだ
といいます。
ブラントンに同じことを聞かれなかったと尋ねるホームズに、「思い出したぞ」とマスグレーブ。

回想シーン。

庭に居たブラントンに不審を持ち(ここは私の庭だ・・・なんて料簡の狭い事を云う領主さま。笑)
何をしているのか尋ねると、やはりこの場所にあった樫の木の高さを猟場の番人と賭けをしていた
のだと言います。
作り話に乗せられてマスグレーブから64フィート(19.5メートル)だと聞き出し、してやったり
満足そうに、自分が賭けに負けたと言いながら去っていくブラントンは途中で意味ありげに風見
鶏を見上げます。

(風見の装飾には鶏と共に樫らしき物が取り付けられている!)

それを聞いたホームズは風見鶏を見ながら、「あれが樫の木だ! あの樫の木の上に太陽が来た
時の楡の影の位置を探れば良いのだ」と言います。

だが、もう楡の木は無いと言うワトソンに、ホームズは「問題ない。ブラントンにも出来たんだ。
我々にも出来る。答えは三角法にある」と言い屋敷に戻りながらマスグレーブに屋敷中にある釣
り竿を用意する様に言います。


ワトソンがロープに目盛りを作り、ホームズは木を削り杭を作ります。
そんな中マスグレーブが手持ち全ての釣り竿を持って来ると最適な釣り竿を選びワトソンが作った
ロープを釣り竿の根元に結ぶように指示するホームズ。
これらの道具と儀式書を持って再び庭に出る3人。


庭に釣り竿を立て、風見の樫と太陽の角度で釣り竿の影の長さを計るように指示するホームズ。
ロープで影の長さを計ったワトソンが、9フィート(2.7メートル)だと。
6フィート(1.8メートル)の釣り竿の影が9フィートであるなら?に、ワトソンが98フィート(30メートル)?
と言うと、マスグレーブが96フィート(29メートル)だよと訂正します。
(さすが三角法を熟知した御領主さま。 そして計算を間違えたワトソンを 黙って”だめだろう”の
目で見るホームズが良いんです)。

その距離をロープで測り杭を打とうとしたホームズは5センチ横にブラントンが付けたらしき跡を見つ
けます。そこから儀式書に則り歩数を計り始める3人。





(ここからのシーンはこのエピソードの見所、ホームズが先頭でキビキビとそして優雅に歩く、
その後を真剣に歩数を数えながらついて行くマスグレーブ、儀式書を読み上げながらしんがりを行く
ワトソン。オヤジ(もとい紳士)3人が真剣に謎解きに挑み姿はホンノリ微笑ましく、そしてリズミ
カルでありながらワクワク感もあり正にグラナダ版らしい雰囲気を醸し出しています。 好きなシーンです。)


そして、堀に行き当たります。 その堀の向かいにある建物にある扉に気付いたホームズはボートで堀を
渡ります(サー・レジナルドにボートを漕がせている。ホームズらしい(笑) 

ただ、この堀の部分は歩数に入らないんだろうか・・・? まぁ、固い事は言わずに(笑)


ドアから中に入った3人は、そこから(2かける2)4歩歩くがそこは何もない石の床が。

計算違いでは?と言うマスグレーブに「そんな筈は無い」と言うホームズ。儀式書を確認していた
ワトソンが指摘します。”and under”「”そしてその下に”だよ」

地下室があるか尋ねるホームズに、「勿論ある」とマスグレーブが言い、3人はランタンを手に
地下に降ります。

床にある四角い石の取っ手に結び付けられていたスカーフがブラントンの物である事に気付いた
マスグレーブ。


3人がかりで必死に石を持ち上げランタンで下を照らすとそこにはブラントンの遺体が閉じ込め
られていました。


遺体を運び出し、警察の警部に対応するマスグレーブとワトソン。

ワトソンは法医学を心得ている自分の見解として、遺体は死後2日、死因は窒息で外傷は無い
と告げます。
恐らく1人で降りて行き石の蓋が閉じたのだろうとマスグレーブが話すと、「彼はそこで何を
していたんだろう?」と言う警部に「執事の仕事は幅が広い。私には分らん」と言うマスグレーブ。
(適当には話をはぐらかしてる御領主さま)
そこへ、ジャネットが錯乱した様に駆け寄り、レイチェルが彼を殺して逃げたのだと叫びます。
不審顔の警部に、レイチェルはブラントンと婚約していた事、彼の失踪後病気で辞めた事を警部
に説明します。

地下室に戻ったワトソンとマスグレーブに ホームズは「実のところ私は自分の捜査に失望して
いる。 ここを発見した時事件が解決したと思ったが 君の祖先が何を隠したのか分からない」
と言いますが だが執事は見つかったと言うマスグレーブに、「どうして 彼は死んだのか? 
メイドはどう係わっているのか・・・」と考え込みます。

何でそんなに考え込むんだ(?)のマスグレーブに、ワトソンは小声で説明します。
「こういう時のホームズの癖なんだ。被害者の知的水準を想定しながら自分が同じ立場でどう
するかを考える」(正典ではホームズ自身がワトソンに語る形になっています)、それを横か
ら呆れた様な顔でしげしげをワトソンを眺めるマスグレーブ。
(そうなんだ・・・それほど彼の事を分かってるんだな?って感じで。そしてワトソンもチョット
得意気に説明している。ここもホームズとワトソンの関係がさり気なく描かれていて良いですね)

ここからホームズの頭の中で事件が再構築され、ブラントンの行動が推理されます。





・・・・・to be continued です。




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『新米刑事モース~オックスフォード事件簿』 シーズン2

2017-08-19 |  ∟新米刑事モース/主任警部モース
”ENDEAVOUR”: S2


前回ご紹介した ハヤカワ「ミステリマガジン」で取り上げられていたコリン・デクスターの追悼記
事掲載を見て やはり追悼の意味も込めて 以前書き残して置いて後回しになっていた「新米刑事
モース」S2を遅ればせながら残して置きます。

内容詳細にはあまり触れずに少しだけ概要です。

シーズン2は、
E1 : ”Trove” 「死のパレード」


E2 : ”Nocturne” 「顔のない少女」


E3 : ”Sway” 「情事のスケルツォ」


E4 : ”Neverland” 「汚れたネバーランド」 

以上の4エピソードからなっています。(余談ですが、↑このモースの笑顔珍しいシーンです)

(上記日本語タイトルはAXNミステリーに於ける表示ですが、他局で放送されたものは異なるタ
イトルになっているものもある様です)

シーズン2エピソード1では犯人に銃撃されたモースが復帰するも PTSDを心配するサースデイ
警部補のモースに対する心遣いが現れています。 そして一応所長からも仕事振りが認められ
現場に出る事を許されるモースの前に次から次へと事件が起こりモースは再び捜査にのめり込
みます。
サースデイ警部補との関係はより強固になって行き、彼の家族を含めモースとの繋がりが深く
なります。

各エピソードは相変わらず複雑な事件が絡み合い、各所に散りばめられた伏線を丁寧に、執念
深く追い続けるモースは益々モースらしさが特徴づけられてきている様に感じます。
『シャーロック』も特にS4に関しては情報量が多くて大変なのですが、この作品は半端なく情報
量が多く『シャーロック』どころではありません
幾つかの事件が配置されており それらが最後に見事に一つに纏まる過程はじっくりと見ていな
いとすんなりとは理解出来ない様な複雑さではありますが、『シャーロック』の様に現代的なIT
ツールがある訳でも無く 地道に直観、推理力、ひとつひとつ解き明かして行く過程にのめり込
まされるストーリー展開は見事だと感じます。 正にジックリ見せる推理ミステリーと表現して
過言では無いと思わされました。

出演者の人間関係も丁寧に描かれており、モースに対するブライト警視正の見方も大分変って来
ている様でさり気なくモースの実力も認めつつある様です。
サースデイ警部補はよりモースを心遣いながら2人の絆が強まっている様だし、モースにとって
貴重で頼りになる存在感を強めている。 ロジャー・アラムが良いですね~。

ショーン・エヴァンズ演じるモースは何となく頼りない外見で草食系風でありながら、結構女性
にモテる、これは後のモースの原点である事を感じさせます。
今シーズンでは、隣人である看護師モニカとお付き合いする様になります。 ただ、ガールフレンド
のキャスティングは・・・チョット・・・・、あ、言わずにおきましょう。

又、E3ではサースデイのラブストーリーに触れられていました。
戦時中イタリアで親密な交際をしていたらしき女性と再会し 当時の気持ちを思い出しフトよろめき
かける(”よろめく”は古いですね(笑)が、丁度銀婚式を迎えようとする糟糠の妻(これまた古い
言い方)の元に戻る。 サースデイも人の子だった。 けど、きちんと節度を守る良き夫である事が
示されていて一安心。
ただし、彼女(ルイーザ)を救う事が出来なかった事で苦しむことになるサースディです。

E3では、警察機構の改革の為と称して現場から勇退する様に仄めかされるサースデイが もしそのよう
な事になれば自分は警察を辞めると言った時モースが それであれば自分も辞めると言っているのを
見た時、デジャヴが。
「ルイス警部」で ルイスが引退しようとした時 ハサウェイがそれなら自分も辞めると言っていま
したっけ。
それを思い出した時、サースデイとモースの関係は、モースとルイスの関係より ルイスとハサウェイ
の関係に近いし似ている様に思えます。

又E3ではピーター・ジェイクス巡査部長の衝撃的な過去が明るみに出ます。
そんなこんなでE3は結構重い内容でありましたし、E4最後ではサースディとモースが危機的な状況に
陥ると言う大変なクリフハンガーで終わっていますので もう早くシーズン3を放送してくれないかと
イライラしておりますよ。 DVDレンタルって経験ないのですが(遅れてる)、放送待ちきれずレンタル
初体験しようかと・・・
本国では今年シーズン4迄放送済、来年2018年にはシーズン5も放送予定となっています。

追加ですが、今シーズンも引き続きアビゲイル・ソーがオックルフォード・デイリーメイル編集長役で
出演しています。 彼女を見ていると ふとジョン・ソーの面影を見る様で懐かしい思いが致します。

又、先日訃報が伝えられ拙記事にも触れました 「主任警部モース」の原作者であるコリン・デクスター氏
が今シリーズも再びカメオ出演されています。


カメオ出演を楽しんでいる様子を見て思わず頬が緩み、又同時にこのシーズンでカメオ出演も最後になって
いる様なので非常に残念な思いもしています。



← 『新米刑事モース』あれこれ (1)
← 『新米刑事モース』あれこれ (2)



ハヤカワ「ミステリマガジン』2017年9月号

2017-08-16 | ブックレヴュー&情報
―シャーロック・ホームズは永遠に―

ミステリマガジン 2017年9月号
(2017年7月25日) (¥1,296)

全然知りませんでした~(汗) 今頃何言ってるんだッ!って言われるかもしれませんが・・・・
「ミステリマガジン」最近読んでなかったからな~。 ん10年前頃は毎月購読していたけど、この
ところ書店でも全く手に取る事も絶えていたのですが、某アマゾンさんからご案内が届き初めて
知った次第なんです。
で、このタイトルとこの表紙!! 卑怯だぞ! なんせ一番大好きな画像が表紙に使われていちゃ
堪ったもんじゃございません(笑)

で、内容を確認しましたら、

※ 資料と研究・エッセイ
「SHERLOCK シャーロック」1~4 元ネタ徹底解説対談 日暮雅通×北原尚彦
みんな洋画観ようぜ! 【出張版】「SHERLOCK シャーロック シーズン4」 高殿円&蛇蔵
ネタバレ注意!! 「SHEROCK シャーロック」張り巡らされた伏線 Alex
ミステリDISC SIDE S 糸田屯
〈シャーロック・カフェ〉トークイベント 高橋葉介×日暮雅通
ボードゲーム「ワトソン&ホームズ」発売! ホームズゲーム体験レポート
シャーロッキアン・トレンド――イベント・映像・出版、この二年 日暮雅通

※ [短篇競作]
John & Sherlock Casebook
ジョン、モモ屋敷へ行く
北原尚彦
現代英国。ジョンとシャーロックが破格の家庭教師料を出す怪しい屋敷の謎に挑む!

六つのナポレオン〔再録〕
コナン・ドイル 大久保康雄【訳】
ナポレオンの彫像が連続して壊された理由は?「SHERLOCK」シーズン4の元ネタその1!

瀕死の探偵〔再録〕
コナン・ドイル 大久保康雄【訳】
ホームズが重病と聞き、ワトスンは駆けつけるが……「SHERLOCK」シーズン4の元ネタその2!
※「商品の内容紹介」から引用

と、まあご丁寧な内容でございます。
「シャーロック」S4で引用されていた正典「六つのナポレオン」、「瀕死の探偵」迄含まれている
ので正典を読んだ事が無い方にもご親切な内容になっていますね。 一粒で二度美味しい!

その上に、大好きなコリン・デクスターの追悼/特集という事で、

※ [短篇]
残りの半分
コリン・デクスター 鈴木恵【訳】
テムズ・バレイ署主任警部だったあの男が浮気の証拠を巡る暗号解読を解き明かす!

花婿は消えた?〔再録〕
コリン・デクスター 大村美根子【訳】
その娘のホームズへの依頼は結婚式直前に消えた婚約者探しだった――著者唯一のパスティーシュ。
※「商品の内容紹介」から引用

等が含まれているとの事。

ぶっちゃけ「シャーロック」関連記事は格別飛びつく様な目新しい内容とは思えないし(あ、これは
全く個人的な感想ですのでお含みおき下さい)、ワタクシ個人的には暫しの間「シャーロック」S4から
離れて頭を冷やそうと考えていた所なのですが、その他の記事(特にコリン・デクスター)には惹かれ
モゾモゾと食指が動きます。
何たって、この表紙! 大きな餌を投げ込まれてしまって、もう困ってしまいますねぇ。




ついでながら、

「シャーロック」S4の日本版DVDの予約受付もやっと始まっています。
DVD-Box  参考価格¥10,260(予約価格 ¥7,626)
Blu-Ray-Box 参考価格¥12,853(予約価格 ¥9,552)
過去のシーズンは大体8月には手に入ったのですが、今回は日本放送が大幅に遅れたせいで
発売予定は2017年11月10日となっています。
(因みに、過去シーズンより安くなっている様な気がするのですが・・・・思い違いでしょうか)








グラナダ版 『マスグレーブ家の儀式書』 : (2)

2017-08-15 |  ∟グラナダ版SH
グラナダ版 ”The Musgrave Ritual” (2)

(1986年) The Return of Sherlock Holmes : S3E3 : 



・・・・・続きです(2)


狩猟を楽しむ一行とは離れ 1人ベンチに座るホームズの所へワトソンとマスグレーブが戻って
来ます(この時ホームズはブランケット2枚掛け!)
マスグレーブは昨夜不審な出来事があり手掛かりになるかも知れないので ホームズの助言が
欲しいと言います。


食後に飲んだコーヒーのせいで2時になっても眠れなかった為書斎へ本を取りに行ったところ 
部屋から灯りが漏れており泥棒かと思い壁に飾らられていた斧を手に扉を開けると そこに居
たのはブラントン。(この時のマスグレーブの姿が正典挿絵とそっくり!)

引き出しの中かから一族の歴史を書いた書類を出し読みふけっていた。
信頼を裏切ったと怒るマスグレーブが明日屋敷を立ち去る様に命じた。
一旦は出て行きかけたブラントンは、罷免は恥辱であるので解雇したいのであればせめて一ヶ月
の猶予をくれと言います。
怒るマスグレーブは酌量の余地はないので公にはしないから1週間で出て行くように言うと、せ
めて2週間・・とねばるブラントン。
しかし、それは受け入れられず、結局1週間で出て行くように言われます。

「彼は妙に留まりたがっていた」と思案顔のマスグレーブにワトソンは、「ブラントンはその後自室に
戻り失踪を決意した。ジャネットの手を借りて・・・」と云うと、ジャネットは池の向こうに父親と
住んで居るし、彼女が助けるとは思えないと言うマスグレーブ。

ホームズは、ブラントンが職を失う危険を冒してまで見ていた文書を見せてくれと言うと、マスグレーブ
は何の価値もない「マスグレーブの儀式書」というものであり、一族の者が成人するとこの儀式を受ける
のだと説明します。

ホームズは「問答集になっている。 日付は無いが17世紀半ばの文章だ」と言います。
そして、ワトソンに読んでみてくれと頼むと、ワトソンが問いを、マスグレーブは暗記しているとの
事で答えを掛け合いで云い合います。


“Whose was it ?” 「 それを所有するものは?」
“His who is gone.” 『去りし人のものなり』
“Who shall have it ?” 「それはなん人のものか?」
“He who will come.” 『やがて来るべき人のものなり』
“Where was the sun ?” 「陽(ひ)はいずこに?」
“Over the oak.” 『樫の木の上に。』
“Where was the shadow ?” 「影はいずこに?」
“Under the elm.” 『楡の木の下に。』
“How was it stepped ?” 「いかに歩みしか?」
“West eight by eight, south seven by seven, west six by six, south five by five, and two by two,
and so under.” 『西へ8かける8歩、南へ7かける7歩、西へ6かける6歩、南へ5歩かける5歩、
さらに2かける2歩、そしてその下に』
“What shall we give for it ?” 「何をささげるのか?」
“All that is ours.” 『われらの持つすべての物を』
“Why should we give for it ?” 「何ゆえに?」
“For the sake of trust.” 『信義を貫くために』

※(1)
 この問答集の訳は正典翻訳者によっても色々な形で書かれていますが、17世紀半ばという古文書
らしい格調高い翻訳として新潮文庫(1953年)の延原謙氏の訳が素晴らしいと思っているのですが、ここは
もう少し現代風な訳にさせて頂きました。
※(2) 又儀式書の内容は正典とは若干異なるアレンジがされています。
方角、距離の違い(例えば”eight by eight” が正典訳では”8歩行って8歩”と解釈されているところ、
グラナダ版では”8歩X8歩=64歩”という風により広い行動範囲で解釈されています)又「 何月なりしや?」、
「初めより六番目の月なり」の部分が省かれています。
※(3) この問答集は、「シャーロック」S4E3でユーロスの歌という形に踏襲されています。
そして、「最後の問題」にも書きましたが、シャーロックは”Sixteen by six”と言う形で引用しています。

これを聞いたワトソンが「宝探しだ!」というと、マスグレーブは「いや違う。子供の頃試したが無駄だった」
と言います。
ブラントンは恐らく以前からこれを知っていただろうが記憶を確かめるために書斎の引き出しから取り出した
のではないかと・・・
マスグレーブが見た時に彼は地図の様な物を持っていた様だとの事で、もう一度検証しようと言うホームズ。
(この辺からホームズのスイッチが入ります)
「明かにある地点を示している。 ヒントは二つ、楡と樫だ」と。



窓の外を見ると古い樫の木がある事に気付き、雨の中3人は敷地に出て行きます。




ここには大きな古い樫の木があるが、これまで何人もが周辺を掘り返したが儀式書の樫では無い
と言うマスグレーブに、ホームズもコンパスで方角を確認しながら「確かにこの樫ではない。これ以外に
大きな樫はないか?」と言うと「屋敷の近くには無い」とマスグレーブ。
”Where was the sun ?", “Over the oak” と呟くホームズ。
そして、天気が悪いから諦めようと屋敷に戻る3人。

その前夜、
部屋で休んでいたレイチェルは居眠りをしている付き添い看護婦の隙をついて部屋を抜け出す。
何かが入った布袋を持ち、暗闇の中森を抜け何かに取りつかれたかのようにフラフラ池に向かって
彷徨い歩いて行きます。

翌朝、姿が見えないレイチェルの足取りを追って大勢で池の捜索が行われます。
 
遺体は見つからなかったが 最近捨てられたらしい布袋が引き上げられる。 池に向かっていたらしい
レイチェルが捨てた物だろうと思われ中身を調べるも泥にまみれ錆びて変色した金属片と石ころだけだった。

マスグレーブは大いに悩み、ブラントンとレイチェルは何処へ? 何故こんな物を池に・・・と言うと、
ホームズは、3つの謎は関連して居り 1つを解けば全てが明かになる。
(儀式書を示しながら)ブラントンはこの中に己の利益になる何かを見出したのだ。
これを解読すれば手掛かりが掴めるし2人の行方も明らかになる筈だと言います。







・・・・・to be continued です。



← グラナダ版 『マスグレーブ家の儀式書』 : (1)
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グラナダ版 『マスグレーブ家の儀式書』 : (1)

2017-08-10 |  ∟グラナダ版SH
グラナダ版 ”The Musgrave Ritual ” (1)

(1986年) The Return of Sherlock Holmes : S3E3 : 


『マスグレーブ家の儀式書』はBBC版S4E3で引用されていたのですが、改めて正典も読み直し、
グラナダ版も以前に何度か観ていたのですが色々忘れている点も多く、今回改めて見直しまして
フト気が付いたら未だ拙ブログでは取り上げていなかった事に気付きました。
丁度良い機会なので、遅まきながら・・・・

正典はワトソンと出会う前の学生時代に解決した事件として ホームズが語って聞かせる展開に
なっていますが、グラナダ版ではホームズがワトソンを伴い古い友人邸を訪れ事件を解決する形
にアレンジされています。
現在進行形の形を取り正典原作を超えた見事な脚色で非常に上手くいった変更と言われ、多くの
ファンに好まれる作品になっています。
この作品の脚本でジェレミー・ポールはアメリカMWA(アメリカ探偵作家クラブ)でエドガー賞を
受賞しています。

それと、以前も書いた事ですが カタカナ表示に関してはこれまでずっと”ワトソン”と表記していた
のですが、今頃になってやっと気づきました。
正典訳では”ワトスン”表記になっている物もありますね。 ただ、これまでずっとその様に記して
きましたので 拙ブログでは”ワトソン”で統一させて頂きます。
又、タイトルも『マスグレーブ』と表記されるものと『マスグレイブ』と表記されるものと両方あり
ますが、今回は『マスグレーブ』で統一させて頂きます。


さて、概略あらすじですが・・・・



ホームズの学生時代の友人であるレジナルド・マスグレーブの招待を受け馬車でサセックスを訪
れるホームズとワトソン。
ホームズのマスグレーブ評は辛辣で、大学時代の友人であるが 由緒正しき旧家の息子であり、
やたらにプライドが高く皆から敬遠されていた。 彼の姿を見ていると封建時代の遺物を思い出さ
せられる・・・等々
ワトソンから「それじゃ何故招待を受けたんだ?」と聞くと「君が何時も部屋を片付けろと小うるさく言う
からだ(駄々っ子の様なホームズ)。 だからこの休暇を利用して初期の仕事の整理をするつもりなんだ。
『タールトン殺人事件』、『ワイン商ヴァムベリ事件』、『ロシア人女性の冒険』、『リコレッティ―と内
反足の妻の事件”Ricoletti with the clufoot and his abominable wife”』、『アルミニウムの松葉杖の事件”
Alminum crutch”』
と足元のブリキ缶を示すと、途端に興味深々直ぐに食いついて全てメモを取りたいと
言うワトソンに、「フン、そうかい」と言いながら箱の上に足を載せて意地悪をするホームズ(笑)
(※ 上記の中、青線で記した部分はBBC版に踏襲されています。
そして、このシーンでホームズはコートではなくブランケットを肩に掛けています。 余程寒いのか
風邪をひいているのか? そう言えばゲホゲホ咳もしてます。 この後もずっとブランケットを掛け
ているのですが、この点が未だに良く分からない設定)


マスグレーブ家に到着すると執事のブラントンと共にマスグレーブが出迎えています。
ホームズによれば、ブラントンは以前教師であり、主人より格段に頭がよく、多くの楽器に通じて
いるとの事。


マスグレーブと再会の挨拶をする中で、ホームズが彼の夫人の事を尋ねると、独身だと言います。
それを聞いたホームズの一言 ”How wise” 「賢明だ」(ホームズらしい・・・)


晩餐の為正装したワトソンがホームズの部屋を訪ねると、ホームズはバスルームでお仕度中。
その間に例のブリキ缶を覗いて見ようとこっそり部屋に入ったワトソンが見た物は使用後のコカイ
ンの注射器。 複雑な表情のワトソン。 でも黙って立ち去ります。

(このシーンも当時NHK版ではカットされたそうですが・・・)


晩餐後くつろぐ三人ですが、この時もホームズは珍しくホワイトタイで正装しているにも拘らずブラ
ンケットを羽織っている。 そして椅子の上にちょこんと足を上げて座る(可愛いんですけど)、その上
意味なく大笑い(ヤクのせいでやたりにハイになっているのか・・・・)

マスグレーブは、「ブラントンは僕より我が家の歴史に詳しい」と言います。

(何故かホームズはブラントンの様子を意味深な様子で興味深そうに眺めています)
部屋を辞そうとするブラントンにレイチェルの様子を聞くマスグレーブですが、少し体調が悪いの
で早めに部屋に戻るように言ったと伝えるブラントン。
ホームズは、前回訪問した時に彼はフランス語で何時間もピッコロの起源を講釈をしてくれたと又
もや大爆笑。ワトソンが「あの才能で執事の職に長年甘んじているのが不思議だ。余程居心地が
いいに違いない」と言うのですが、このセリフがこのエピソードのキーになっています。


マスグレーブはこの屋敷を訪れた客は誰もが必ず執事を覚えている。だが、彼にも欠点がある。
女癖が悪いのだと言います。 数か月前にメイドのレイチェルと婚約したが直ぐに猟場の娘の
ジャネットと浮気をしているのだと。レイチェルは気性の激しい娘で、それ以来夜になると幽霊の
様に屋敷内を彷徨うのだと言います。
(グラナダ版冒頭シーンでブラントンとジャネットが納屋の2階で密会ちょっときわどいイチャイ
チャシーンがあり、それをレイチェルが目撃してしまうのですが、このイチャイチャシーンはNHK
版ではカットされてたらしいです)


翌朝の朝食時遅れてやって来たワトソンにコーヒーを注ごうとしているレイチェルに、ホームズが
「ブラントンは?」と尋ねると 動揺してコーヒーはこぼすし、失神してしまうレイチェル。
ワトソンが様子を見て正気付いたレイチェルにマスグレーブがブラントンを呼ぶように言いますが
彼は部屋にも何処にも居ない。行ってしまったのだと錯乱状態です。


ブラントンの部屋を調べるホームズは、ベッドは眠った様子もなく、ドアも扉も鍵が掛かっている。
貴重品を残したまま何故夜中に消えたのかと・・・・
マスグレーブは屋敷内のごたごたで2人の週末を台無しにする訳にはいかない。予定通り狩猟
に行こう。戻る頃には解決しているだろう と言いワトソンと出て行きます。


(そのままブラントンのベッドで眠ってしまうホームズ。 未だクスリが抜けていないのか?)





・・・・・to be continued です。




→ グラナダ版 『マスグレーブ家の儀式書』 : (2)

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『海賊じいちゃんの贈り物』 感想

2017-08-06 | 映画
『海賊じいちゃんの贈りもの』”What We Did on Our Holiday”

(2014年)
脚本 アンディー・ハミルトン
監督 ガイ・ジェンキン、アンディー・ハミルトン
制作 デヴィッド・M.トンプソン、ダン・ウィンチ
出演 ダグ : デヴィッド・テナント(『(Dr.Who』他)
   アビー(タグの妻) : ロザムンド・パイク(『ゴーン・ガール』他)
   ギャビン(ダグの兄) : ベン・ミラー(TVドラマ『ミステリーin パラダイス』他)
   マーガレット(ギャビンの妻) : アメリア・ブルモア(『シャーロック』S2E2他)
   ゴーディー(ダグとギャビンの父) : ビリー・コノリー(『ホビット決戦の行方』他)  

先日TV放送されていたのを何気なく全く偶然に見始めた作品です。
この映画については全然知らずにいましたし、事前の情報も無いままに観たのですが、出演者に
気付き腰を落ち着けじっくり観る事にしました。 何てったってデヴィッド・テナントでしたもん!


少しばかりネタバレしますが概略と感想です。

マクラウド一家の5人(父親のダグ、母親のアビー、9歳の長女ロッティー、6歳の長男ミッキー、
4歳の末っ子ジェス)はダグの父ゴーディーの誕生日を祝う為ロンドンからスコットランドへ向か
います。 ダグとアビー夫婦は口論が絶えない離婚寸前状態で子供たちも影響されうんざりしている。
ロッティーはお年頃で大人の嘘にも敏感に反応するメモ魔。 海賊に夢中なミッキー、石が大好き
でオシャマなジェス。
ゴーディーとダグの兄ギャビン夫婦が住むスコットランドで休暇を過ごす事になるが、ダグとギャビン
仲は良くなく、ギャビン一家も何かと問題を抱えている。 世間体ばかりを気にするギャビン、精神
不安定な妻マーガレット、その息子ケネスも周囲に構わず耳障りなヴァイオリンを弾き続ける。
本人不在で勝手に派手な誕生日の準備に大わらわの身勝手な大人達にげんなりした子供達をおじい
ちゃんはビーチへ誘います。
”ヴァイキングの子孫”だというおじいちゃんの話に大興奮する子供たち。そして自由な発想のおじ
いちゃんとのかけがえのないひと時を過ごす筈だった3人の孫達におじいちゃんの突然の死という
悲劇が訪れる。 実はおじいちゃんは末期の癌を患っていたのです。
突然の事に茫然とする3人は おじいちゃんが生前望んでいた通りに弔う事にする。
ここで3人の子供たちは茫然としながらも泣いたりしないんです。
長女のロッティーは大人たちに知らせようと慌てて屋敷に走り戻るが 大人たちはパーティーの準備
にてんてこ舞い。パーティーの成功だけを考えている様子を見たロッティーは呆れてビーチに戻り、
そして3人で力を併せ 浜辺にある材料で筏を作りおじいちゃんを乗せ、ヴァイキング式に筏に火を付
けて海に流すのです。

孫達がおじいちゃんの為を思ってしでかした行動がとんでもない大騒動を巻き起こしていきます。

崩壊しかけた家族が大騒動の末再び再生 絆を取り戻す・・・と一口で言ってしまえば代わり映えし
ない内容に思えるが、この作品は一味違っています。
子供たちの視線から見た大人たちの身勝手さ、大人げなさ、そして子供たちの視点、大人を観察する
キビシイ視線、自由で素直な行動等相まってユーモアたっぷりに描かれている。
何より子役たちの自由な演技が自然でチャーミングであり、又出演している大人の俳優陣の演技力に
も依り 深さと軽妙さのバランスが絶妙な作品になっていました。

人生で大切な事を子供たちに伝えるおじいちゃん。
死とは何か、死を弔うとはどういう事か、死者にとって本当の弔いとは何か等も考えさせられる事に
なります。
素晴らしいスコットランドの風景と共に考えさせられながら 時に笑えるブリティッシュコメディー。 
子供達のやった事、その後の後始末などツッコミどころもある事はありますが、そこは固い事言わずに。
考えさせられながらも最後は何となくホッコリさせられる作品でした。


デヴィッド・テナントは「ブロードチャーチ」の時と同じく”髭ずら”で子供たちも呆れる様なちょっと
残念な父親・夫を人間臭く演じていますが、少しコミカルな役も相変わらず上手いな~と。
ベン・ミラーも『ミステリーinパラダイス』でお気に入りだったので嬉しかったですわ。 

兎に角軽妙でありながら深い良作だと感じました。
原題の”What We Did on Our Holiday”(私達が休暇中にやった事)は日本語タイトルにはしにくいと
は思うのですが、ですが・・・
『海賊じいちゃんの贈り物』ってタイトルもチョット何だかななぁ・・・と云う気もしないでもなく。
予備知識無くこのタイトルだけを見ると子供向けのファンタジー作品かと勘違いしそう。

↓ こちらが日本語版予告編です
https://youtu.be/nuQHIUnh-Jk


↓ ロンドンプレミア時、テナント&ミラーはキルト姿!


何故映画公開時に気付かなかったのか??? 
上映館が限られていたとも知りました。 この様な作品は余りメディアに取り上げられないのでしょうかね。
残念です。







SHERLOCK S4E3 ”The Final Problem”:ユーロスと真賀田四季 & etc.

2017-08-02 |  ∟ S4E3 : The Final Problem
『シャーロック』シーズン4:「最後の問題」と 『すべてがFになる』との類似

『シャーロック』S4を書き終えて暫らくボーっとしておりましたが、初見から何となく気に
なっていながら何時までもささった刺が抜けない様なスッキリしない思いがあったのですが、
先日某所でチラッと拝見したツイッター記事を見てハッと気づきました。


S4で突然登場した シャーロックの妹”ユーロス”のキャラクターを見ていて 脳の何処かで
チリチリするものを感じていたのですが それが何なのか全く思い浮かばなかったところ、
『すべてがFになる』にそっくりだ・・・と書かれていたツイッターのご意見を拝見し、あッ!
それだ!”真賀田四季”だッ!とやっと頭の上にランプが付き思い出し 思わず膝を打ったと
いうボケでした。
ずっと気になっていながら遂に自力では思い出す事が出来なかった前頭葉が弱った記憶喪失の
Yam Yamでした(情けなや・・・)
普段殆どツイッターを見る事はないのですが、本当にたまたま行き当たりまして、そんな風ですの
で何処でこのツイートを見たのか、何方が書かれたものなのか全く覚えていないと言うテイタラク
です。 良くぞ思い出させて下さったと感謝しつつ、ここで取り上げさせて頂く事をお許しい頂きたいと
思います。

『すべてがFになる』は、

森博嗣氏の『S&M』シリーズの第一作で1998年出版された作品です。
新しいタイプのミステリーと感じ 森作品にのめり込んだ最初の作品で、個人的にも一番好きな作品
でした。
出版直後に読んだ記憶があるので かれこれ18年以上前になるのでしょうか(大昔!) だから
直ぐに思いつかなかったんですよ~、とゴニョゴニョ言い訳(汗)。
そんな大昔に読んだものですから細部は忘れていたので 今回少しばかり再確認してみました。

この『すべてがFになる』で登場したのが、 ”真賀田四季”。
愛読者もかなり多いと思うし、ご存知の方も多いかとは思うので 今更ですが・・・
『S&M』シリーズは、N大学工学部助教授の犀川創平の”S”とその教え子の西之園萌絵の(萌絵
の)”M”を冠したシリーズ。

この時初めて登場する 真賀田四季は「人類のうち最も神に近い」といわれる知能の持つ天才プ
ログラマー。
5歳の時自身の特異性を認識して以来、この時点で彼女にとっての「知識のインプット」は完了し
ているといい、数多くの偉業を達成する。
又14歳の時両親殺害の罪に問われるが心神喪失という事で無罪となり 以来外界との交流を経ち
孤島(妃真加島)の研究所に閉じ籠り密かに研究を続ける天才工学博士。
複数の人格を所有する多重人格であり、人類を超越した人格、能力は巨大企業や組織から利用され
彼女自身もそれらを様々な形で利用している。 又殺人さえタブーとしない天才。
犀川教授が妃真加島に上陸した事を機に島の研究所を脱出し、その後も色々な場所で犀川と係る
事となる。
密室ミステリーでもあり、理工系ミステリーとも評されている様です。
・・・と云ったのが概略プロフィールです。(記憶が曖昧なので「BOOK」データベース等を参照
引用させていただきました)




そうなんです、再確認してみても 今回「シャーロック」S4で登場したユーロスのキャラクター、
”孤島”設定等何やらあれこれ類似点がある事に改めて気付かされました。
勿論モファティスが”真賀田四季”を知っている筈は無いだろうし、全くの偶然だとは思うの
ですがね・・・・
ただ、ユーロスが幼い頃のシャーロックに対して持っていた感情のみに動かされていて視野が
狭く限られているスケールの小ささ。 シャーロックの愛を取り戻した後あっけなく牙を抜か
れた無害なサイコパスに戻る単純さとは全く異なります。
こんな点でもユーロスのキャラクターの曖昧さ、底の浅さ等に物足りなさを感じたところでした。

話は戻り、後の「四季シリーズ」では真賀田四季の成長物語。
又「百年シリーズ」にも繋がってきます。
(イル・サンジャックの女王の名前メグツシュカをアルファベット表記にすると、頭文字の子音
が ”mgtsk” になる。主人公サエバ・ミチルと女王の関係は・・・・)

全く話が変わりますが、”Euros”のカタカナ表記に関して、ワタクシは”ユーロス”で通させて
頂きましたが 他に”ユーラス”、”エウロス”等表記されている所もあり、その他の俳優さんの
お名前も含め外国語のカタカナ表記が難しいと先日も話題にしていたところなのですが・・・
森作品でのカタカナ表示が特徴があり、
例えば、
computer → コンピュータ
elevetor → エレベータ
shutter → シャッタ  等々

mystery → ミステリィ
story→ ストーリィ 
energy→エネルギィ 等々
英語で最後が”er”や”or”になる単語で、カタカナにしたときに、3文字以上になるものには長音
をつけない。
子音+yでおわる単語は”イ”を用いる。
初めは少し戸惑ったのですが、 
これは工学分野で用いられる表記だとの事で、工学博士である森先生のこだわりでもある様です。

あ、それから全然知らなかったんですが、この作品TVドラマ化、アニメ化されているそうですね?
全然観た事ないんです。
って言うか、知っていたとしても多分見なかったと思う。
原作を先に読んだ作品のドラマ化はまず観ないです。 全く個人的な考え方ですが、原作を先に読むと
自分なりのイメージが作られてしまうのと、映像化され作品は殆どの場合原作とは違う設定になって
いたり、大幅に内容が変わっていたりする場合も多く、殆どの場合映像化された作品は別の物って
感じてしまうのです。 それはそれでより良い作品になる場合もありますが・・・・
読んでから見るか、見てから読むか・・・・ですね。

「シャーロック」から「すべてがFになる」へ、そして森作品へと取り留めなくなってしまいました。
随分昔の事だったので、これを機会に再度「S&M」シリーズを読み直してみようかと思います。
因みに、犀川先生お気に入りです(って、聞いてないですね?)




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